当ウェブサイトを快適にご覧いただくには、ブラウザのJavaScript設定を有効(オン)にしていただく必要がございます。
日本薬局方
注射用アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム
処方箋医薬品注)
本剤に感性のブドウ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、プロテウス属、インフルエンザ菌
肺炎、肺膿瘍、膀胱炎、腹膜炎
通常成人にはスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムとして、1日6g(力価)を2回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。なお、重症感染症の場合は必要に応じて適宜増量することができるが、1回3g(力価)1日4回(1日量として12g(力価))を上限とする。
通常成人にはスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムとして、1日3g(力価)を2回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。
通常小児にはスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムとして、1日60~150mg(力価)/kgを3~4回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。静脈内注射に際しては、日局注射用水、日局生理食塩液又は日局ブドウ糖注射液に溶解し、緩徐に投与する。なお、点滴による静脈内投与に際しては、補液に溶解して用いる。
本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、β-ラクタマーゼ産生菌、かつアンピシリン耐性菌を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しない。
観察を十分に行うこと。ビタミンK欠乏による出血傾向があらわれることがある。
本剤0.75g製剤、1.5g製剤及び3g製剤にナトリウムがそれぞれ57.5mg(2.5mEq)、115mg(5mEq)及び230mg(10mEq)含まれていることに留意すること。
本剤の投与量及び投与間隔を調節する等、慎重に投与すること。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。アンピシリンの大量(3,000mg/kg/日)投与でラットに催奇形性が報告されている。アンピシリン及びスルバクタムは胎盤を通過することが報告されている。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。母乳中へ移行することが報告されている1)。
次の点に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
アロプリノール
アンピシリンとの併用により、発疹の発現が増加するとの報告がある2)。
機序不明だが薬剤性の発疹がアロプリノールとアンピシリンを併用していた67例の入院患者のうち22.4%に認められ、アンピシリン単独服用例の1,257例では7.5%に認められた。またアンピシリンを併用しないアロプリノール服用患者283例のうち2.1%が薬剤性発疹を経験したという報告がある。
抗凝血薬
ペニシリン注射液が血小板の凝集・凝固に影響を与え、出血傾向を増強するおそれがある。
抗凝血作用とペニシリン注射液の血小板凝集抑制作用により相加的に出血傾向が増強される可能性がある。
経口避妊薬
アンピシリンとの併用により避妊効果が減弱したとの報告がある。
本剤は腸内細菌叢を変化させる可能性があり、それにより経口避妊薬の腸肝循環による再吸収を抑制すると考えられている。
メトトレキサート
ペニシリンとの併用により、メトトレキサートのクリアランスが減少するおそれがある。
メトトレキサートの尿細管分泌が阻害され、体内からの消失が遅延し、メトトレキサートの毒性が増強する可能性がある。
プロベネシド
併用により、本剤の血中濃度上昇、血中濃度半減期の延長、本剤の持つ毒性リスクの上昇のおそれがある。
プロベネシドの尿細管分泌抑制作用により本剤の排泄が遅延するおそれがある。
無顆粒球症(頻度不明)、貧血(溶血性貧血を含む)(0.38%)、血小板減少(0.19%)等の重篤な血液障害があらわれることがある。
急性腎障害、間質性腎炎等の重篤な腎障害があらわれることがある。
出血性大腸炎、偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎があらわれることがあるので、腹痛、頻回の下痢があらわれた場合には直ちに投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常、好酸球増多等を伴う間質性肺炎、好酸球性肺炎があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
1%以上
0.1~1%未満
0.1%未満
頻度不明
皮膚
発疹、そう痒感
蕁麻疹
多形紅斑
血液
好酸球増多
白血球減少
肝臓
AST上昇、ALT上昇
Al-P上昇、LAP上昇、ビリルビン値上昇、γ-GTP上昇
黄疸
消化器
下痢・軟便、悪心・嘔吐
腹部不快感
黒毛舌
中枢神経
痙攣等の神経症状
菌交代
口内炎、カンジダ症
*筋骨格系及び結合組織障害
*関節痛
その他
発熱
ビタミンK欠乏症状(低プロトロンビン血症、出血傾向等)
ビタミンB群欠乏症状(舌炎、口内炎、食欲不振、神経炎等)
β-ラクタム系抗生物質製剤の脳脊髄液中濃度が高くなると、痙攣等を含む神経系の副作用を引き起こすことが考えられる。
腎機能障害患者に過量投与された場合は血液透析を用いて体内から除去すること。
溶解後は速やかに使用すること。特にグルコース、フルクトース、キシリトール、マルトース水和物等の糖質含有溶解液に溶解した場合にはアンピシリンの力価が低下するので、速やかに使用し、保存しないこと。
健康成人男子(n=4)に本剤0.75g(力価)又は1.5g(力価)を静脈内投与したときのスルバクタム及びアンピシリンの血清中濃度の推移、薬物動態パラメータは、図1、2及び表に示すとおりであった3)。
販売名
投与量(力価)
AUC0→24(μg・hr/mL)
C5min(μg/mL)
T1/2(hr)
スルバシリン静注用0.75g
スルバクタム 0.25g
25.17±3.79
31.19±6.16
1.19±0.10
アンピシリン 0.5g
38.10±6.44
58.36±9.62
1.11±0.12
スルバシリン静注用1.5g
スルバクタム 0.5g
44.83±5.09
61.46±15.17
1.13±0.11
アンピシリン 1g
63.15±4.83
105.66±24.43
1.16±0.08
(Mean±S.D.、n=4)
小児患者16例に本剤30mg(力価)/kgを静注した時の血清中濃度推移は下図のとおりであり、スルバクタム及びアンピシリンのt1/2は約1時間と、小児の場合の血中動態も成人の場合とほぼ同様であった。
体液・組織
薬物濃度(μg/mL又はμg/g)
スルバクタム
アンピシリン
喀痰
3g
2.40
1.50
腹腔内滲出液
1.5g
1.82
2.71
子宮・付属器
7.06~15.4
6.60~27
骨盤死腔滲出液
11.6~16.4
19.1~21.6
髄液(小児)
100mg/kg
17.2
16.0
膿汁(小児)
66.7mg/kg
1.34
2.66
健常成人6名に本剤0.75g(力価)又は1.5g(力価)を静注した時の投与後0~1時間の尿中濃度(平均値)は、0.75g投与でスルバクタム約2,000μg/mL及びアンピシリン約4,000μg/mL、1.5g投与でスルバクタム約4,000μg/mL及びアンピシリン約10,000μg/mLと、高い値を示した。投与後24時間までのスルバクタム、アンピシリンの累積尿中排泄率は0.75g投与、1.5g投与ともスルバクタム、アンピシリンいずれも約80%であった10)。スルバクタム、アンピシリンともほとんど代謝されず未変化体として主に尿中に排泄される11)。
CLcr(mL/min)
投与間隔
Cmax(μg/mL)
AUC0-48(μg・h/mL)
t1/2(h)
90~60
1日4回、6時間ごと
68.6~74.2
650~861
1.09~1.33
139~151
1260~1670
1.20~1.42
59~30
74.4~85.1
872~1380
1.34~1.96
151~173
1690~2690
1.43~2.02
1日3回、8時間ごと
73.3~81.5
655~1050
149~166
1270~2030
29~15
1日2回、12時間ごと
79.5~86.4
718~1120
2.00~3.03
162~176
1400~2190
2.06~3.06
14~5
1日1回、24時間ごと
83.1~90.7
599~1190
3.16~6.28
170~185
1160~2310
3.20~6.27
注:腎機能が異なる患者に本剤3g(力価)を30分かけて点滴静注したときの血漿中スルバクタム及びアンピシリン濃度推移シミュレーションから得られた薬物動態パラメータ(PKパラメータの下限値及び上限値は、それぞれCLcrの区分の上限値及び下限値に対応している)
一般臨床試験及び比較臨床試験が実施され、疾患別臨床効果は下記のとおりである。これらの症例のうちブドウ球菌属、大腸菌、プロテウス属、インフルエンザ菌によるβ-ラクタマーゼ高度産生菌検出症例における臨床効果は、肺炎・肺化膿症96.7%(29/30)、腹膜炎88.9%(8/9)、膀胱炎89.2%(33/37)であった。また、12g/日投与時の肺炎に対する有効率は94.6%(35/37)であった。検出菌別の臨床効果は、肺炎球菌で92.3%(12/13)、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリスで87.5%(7/8)であった。
疾患名
成人
小児
3g/日
4.5~6g/日
12g/日
60~150mg/kg/日
肺炎・肺化膿症
162/196(82.7%)
71/84(84.5%)
35/37a)(94.6%)
212/215(98.6%)
膀胱炎
141/200(70.5%)
-
2/2(100%)
腹膜炎
30/36(83.3%)
a:肺炎のみに対する臨床効果 ( ):有効率〔有効以上〕
細菌学的検討が行われた1,289株の菌消失率は84.1%(1,084/1,289)でこれを適応菌種に限ると86.9%(423/487)a)の菌消失率、さらにβ-ラクタマーゼ高度産生株に限ると84.2%(123/146)とほぼ同じ消失率であった。また、12g/日投与時において細菌学的検討が行われた33株の菌消失率は84.8%(28/33)で、適応菌種に限ると82.8%(24/29)b)、さらにβ-ラクタマーゼ高度産生株に限ると87.5%(7/8)の菌消失率であった。すなわち、β-ラクタマーゼ高度産生株に対しても低度産生株や非産生株に対するのと同程度の効果を発揮することが示された。
3~6g/日
全分離菌
1,084/1,289(84.1%)
28/33(84.8%)
適応菌種
423/487(86.9%)a)
24/29(82.8%)b)
β-ラクタマーゼ高度産生株
123/146(84.2%)
7/8(87.5%)
a:ブドウ球菌属、大腸菌、プロテウス属、インフルエンザ菌 株数b:aに加えて肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス
本剤は、スルバクタムがβ-ラクタマーゼのⅠc、Ⅱ、Ⅲ及びⅣ型を強く、Ⅰa及びⅤ型を軽度に不可逆的に不活化するため、アンピシリンがこれらの酵素により加水分解されることを防ぎ、アンピシリン耐性菌にも抗菌力を示す15)。アンピシリンは、細菌の細胞壁合成を妨げ、殺菌的に作用する16)。
アンピシリンナトリウム(Ampicillin Sodium)
Monosodium(2S,5R,6R)-6-[(2R)-2-amino-2-phenylacetylamino]-3,3-dimethyl-7-oxo-4-thia-1-azabicyclo[3.2.0]heptane-2-carboxylate
C16H18N3NaO4S
371.39
アンピシリンナトリウムは白色~淡黄白色の結晶又は結晶性の粉末である。本品は水に極めて溶けやすく、エタノール(99.5)にやや溶けにくい。
ABPC
スルバクタムナトリウム(Sulbactam Sodium)
Monosodium(2S,5R)-3,3-dimethyl-7-oxo-4-thia-1-azabicyclo[3.2.0]heptane-2-carboxylate 4,4-dioxide
C8H10NNaO5S
255.22
スルバクタムナトリウムは白色~帯黄白色の結晶性の粉末である。本品は水に溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、エタノール(99.5)に極めて溶けにくく、アセトニトリルにほとんど溶けない。
SBT
10バイアル
1) Matsuda, S.:Biol Res Pregnancy Perinatol. 1984;5(2):57-60
2) N Engl J Med. 1972;286(10):505-507
3) 社内資料:スルバシリン静注用の健康成人男子を対象とした単回投与臨床薬物動態試験
4) 由良 二郎ほか.:Chemotherapy(Tokyo). 1988;36(Suppl.8):324-333
5) 林 泉ほか.:Chemotherapy(Tokyo). 1988;36(Suppl.8):120-125
6) 菊山 成博ほか.:Chemotherapy(Tokyo). 1988;36(Suppl.8):317-323
7) 張 南薫ほか.:Chemotherapy(Tokyo). 1988;36(Suppl.8):466-489
8) 関口 隆憲ほか.:Jpn J Antibiot. 1989;42(3):733-742
9) 佐藤 吉壮ほか.:Jpn J Antibiot. 1989;42(3):579-593
10) 柴 孝也ほか.:Chemotherapy(Tokyo). 1988;36(Suppl.8):149-159
11) 下岡 釿雄ほか.:Chemotherapy(Tokyo). 1988;36(Suppl.8):66-80
12) Blum, R. A. et al.:Antimicrob Agents Chemother. 1989;33(9):1470-1476
13) Wright, N. et al.:J Antimicrob Chemother. 1983;11(6):583-587
14) ユナシン-S:2012年8月10日承認、CTD2.7.2.3.5
15) 第十八改正日本薬局方解説書. 2021:C-2600-C-2605
16) 第十八改正日本薬局方解説書. 2021:C-462-C-470
17) 横田 健ほか.:Chemotherapy(Tokyo). 1988;36(Suppl.8):1-12
18) 五島 瑳智子ほか.:Chemotherapy(Tokyo). 1988;36(Suppl.8):13-33
19) 川崎 賢二ほか.:Chemotherapy(Tokyo). 1988;36(Suppl.8):34-57
Meiji Seika ファルマ株式会社 くすり相談室
〒104-8002 東京都中央区京橋2-4-16
フリーダイヤル(0120)093-396 電話(03)3273-3539FAX(03)3272-2438
Meiji Seika ファルマ株式会社
東京都中央区京橋2-4-16
Copyright © Pharmaceuticals and Medical Devices Agency, All Rights reserved.