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ラズクルーズ錠80mg/ラズクルーズ錠240mg

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
1.警告
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
5.効能又は効果に関連する注意
6.用法及び用量
7.用法及び用量に関連する注意
8.重要な基本的注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.3肝機能障害患者
9.4生殖能を有する者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
9.8高齢者
10.相互作用
10.2併用注意(併用に注意すること)
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
14.適用上の注意
16.薬物動態
16.1血中濃度
16.2吸収
16.3分布
16.4代謝
16.5排泄
16.6特定の背景を有する患者
16.7薬物相互作用
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
18.薬効薬理
18.1作用機序
18.2抗腫瘍作用
19.有効成分に関する理化学的知見
21.承認条件
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
25.保険給付上の注意
26.製造販売業者等

ラズクルーズ錠80mg/ラズクルーズ錠240mg

添付文書番号

4291091F1027_1_01

企業コード

800155

作成又は改訂年月

2025年5月作成(第1版)

日本標準商品分類番号

874291

薬効分類名

抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤

承認等

ラズクルーズ錠80mg

販売名コード

YJコード

4291091F1027

販売名英語表記

LAZCLUZE Tablets

販売名ひらがな

らずくるーずじょう80mg

承認番号等

承認番号

30700AMX00070000

販売開始年月

2025年5月

貯法・有効期間

貯法

室温保存

有効期間

24カ月

ラズクルーズ錠240mg

販売名コード

YJコード

4291091F2023

販売名英語表記

LAZCLUZE Tablets

販売名ひらがな

らずくるーずじょう240mg

承認番号等

承認番号

30700AMX00071000

販売開始年月

2025年5月

貯法・有効期間

貯法

室温保存

有効期間

24カ月

一般的名称

ラゼルチニブメシル酸塩水和物

1. 警告

  1. 1.1 本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
  2. 1.2 本剤の投与により間質性肺疾患があらわれ、死亡に至った症例が報告されているので、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び定期的な胸部画像検査の実施等、観察を十分に行うこと。異常が認められた場合は本剤の投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。また、特に治療初期は入院又はそれに準ずる管理の下で、間質性肺疾患等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと。,,
  3. 1.3 本剤投与開始前に、胸部CT検査及び問診を実施し、間質性肺疾患の合併又は既往歴の有無を確認した上で、投与の可否を慎重に判断すること。
  4. 1.4 アミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用投与により、深部静脈血栓症及び肺塞栓症を含む静脈血栓塞栓症があらわれ、死亡に至った症例が報告されているので、静脈血栓塞栓症の既往歴の有無等を確認した上で、投与の可否を慎重に判断すること。また、本剤投与中は患者の状態を十分に観察し、下肢の疼痛・浮腫、突然の呼吸困難、息切れ、胸痛等の静脈血栓塞栓症が疑われる徴候や症状の発現に注意すること。,,,

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

3. 組成・性状

3.1 組成

ラズクルーズ錠80mg

有効成分(1錠中)
ラゼルチニブメシル酸塩水和物   96.48mg
(ラゼルチニブとして   80mg )
添加剤疎水性コロイド状シリカ、結晶セルロース、D-マンニトール、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、タルク、酸化チタン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、黄色三二酸化鉄注1)、三二酸化鉄注2)、黒酸化鉄注2)

ラズクルーズ錠240mg

有効成分(1錠中)
ラゼルチニブメシル酸塩水和物   289.44mg
(ラゼルチニブとして   240mg )
添加剤疎水性コロイド状シリカ、結晶セルロース、D-マンニトール、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、タルク、酸化チタン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、黄色三二酸化鉄注1)、三二酸化鉄注2)、黒酸化鉄注2)

注1):ラズクルーズ錠80mgのみに添加
注2):ラズクルーズ錠240mgのみに添加

3.2 製剤の性状

ラズクルーズ錠80mg

色・剤形黄色の楕円形のフィルムコーティング錠
外形表面
裏面
側面
大きさ長径(mm)13.9
短径(mm)7.0
厚さ(mm)4.6
重量(g)0.3914
識別コードLZ80

ラズクルーズ錠240mg

色・剤形赤紫色の楕円形のフィルムコーティング錠
外形表面
裏面
側面
大きさ長径(mm)19.6
短径(mm)9.6
厚さ(mm)7.5
重量(g)1.1742
識別コードLZ240

4. 効能又は効果

EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌

5. 効能又は効果に関連する注意

  1. 5.1 十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、EGFR遺伝子変異が確認された患者に投与すること。検査にあたっては、承認された体外診断用医薬品又は医療機器注)を用いること。
    注)承認された体外診断用医薬品又は医療機器に関する情報については、以下のウェブサイトから入手可能である:
    https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/cd/0001.html
  2. 5.2 本剤の術前・術後補助療法としての有効性及び安全性は確立していない。

6. 用法及び用量

アミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用において、通常、成人にはラゼルチニブとして240mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

7. 用法及び用量に関連する注意

  1. 7.1 アミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用投与による静脈血栓塞栓症の発症を抑制するため、当該併用投与開始後4カ月間は、アピキサバン1回2.5mgを1日2回経口投与すること。,,,
  2. 7.2 本剤投与により副作用が発現した場合には、以下の表を参考に本剤を減量、休薬又は中止すること。
    副作用発現時に本剤を減量する場合の投与量

    減量段階

    1段階減量

    2段階減量

    3段階減量

    投与量

    160mg/日

    80mg/日

    中止

    副作用発現時の処置
    間質性肺疾患

    診断

    処置

    疑い

    休薬する。

    確定

    投与を中止する。

    静脈血栓塞栓症(アミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用時)

    状況

    処置

    臨床的に不安定な事象が発現した場合(例:呼吸不全、心機能障害)

    発現した事象が臨床的に安定するまで休薬する。

    抗凝固薬による治療中に静脈血栓塞栓症が再発した場合

    投与を中止する。
    ただし、医師の判断により、同じ用量で投与を継続することもできる。

    皮膚障害又は爪障害

    重症度注1)

    処置

    Grade 2

    • 減量注2)を検討する。
    • 2週間後に観察を行う。

    Grade 3

    • 休薬し、週1回の観察を行う。
    • 2週間以内にGrade 2以下に回復した場合は減量注2)を検討した上で投与を再開し、2週間以内にGrade 2以下に回復しない場合は投与を中止する。

    Grade 4

    • 休薬し、週1回の観察を行う。
    • 2週間以内にGrade 2以下に回復した場合は減量を検討した上で投与を再開し、2週間以内にGrade 2以下に回復しない場合は投与を中止する。

    重度の水疱性又は剥脱性の皮膚障害

    投与を中止する。

    その他の副作用

    重症度注1)

    処置

    Grade 2

    • 休薬又は減量を検討する。
    • 28日以内に改善した場合は同一の用量又は減量して投与を再開することを検討し、28日より後に改善した場合は減量して投与を再開することを検討する。

    Grade 3

    • Grade 1以下又はベースラインに回復するまで休薬する。
    • 4週間以内に回復した場合は減量して投与を再開注3)することを検討し、4週間以内に回復しない場合は投与の中止を検討する。

    Grade 4

    • 原則として投与を中止する。
    • 投与を中止しない場合、Grade 1以下又はベースラインに回復するまで休薬する。4週間以内に回復した場合は減量して投与を再開注3)し、4週間以内に回復しない場合は投与を中止する。

    注1)GradeはNCI-CTCAE v5.0に準じる、注2)本剤との因果関係が強く疑われない場合、アミバンタマブ(遺伝子組換え)を先に減量する、注3)本剤との因果関係が強く疑われない場合、本剤を再開した後にアミバンタマブ(遺伝子組換え)を減量して投与を再開する

8. 重要な基本的注意

  1. 8.1 間質性肺疾患があらわれることがあるので、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び定期的な胸部画像検査の実施等、観察を十分に行うこと。必要に応じて、動脈血酸素分圧(PaO2)、動脈血酸素飽和度(SpO2)、肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)、肺拡散能力(DLco)等の検査を行うこと。また、患者に対して、初期症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう指導すること。,,
  2. 8.2 アミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用により静脈血栓塞栓症の発現頻度が増加する傾向が認められているので、初期症状(下肢の疼痛・浮腫、突然の呼吸困難、息切れ、胸痛等)の確認及び定期的な凝固能検査の実施等、観察を十分に行うこと。また、患者に対して、初期症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう指導すること。,,,
  3. 8.3 重度の皮膚障害があらわれることがあるので、必要に応じて皮膚科を受診するよう患者に指導すること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 間質性肺疾患のある患者又はその既往歴のある患者

    間質性肺疾患が悪化又は再発するおそれがある。,,,

  2. 9.1.2 静脈血栓塞栓症のある患者又はその既往歴のある患者

    静脈血栓塞栓症が悪化又は再発するおそれがある。,,,

  3. 9.1.3 心不全症状のある患者又はその既往歴のある患者

    症状が悪化するおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1 重度の肝機能障害(Child-Pugh 分類C)のある患者

    本剤は主に肝臓で代謝されるため、血中濃度が上昇する可能性がある。なお、重度の肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。

9.4 生殖能を有する者

妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後3週間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ラットでは、着床後胚損失率の増加、生存胎児数の減少及び胎児体重の減少が認められている。1),2),

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。乳汁移行に関するデータはないが、乳児が乳汁を介して本剤を摂取した場合、乳児に重篤な副作用が発現するおそれがある。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

アミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用投与については、投与の可否を慎重に判断すること。本剤とアミバンタマブ(遺伝子組換え)を併用した臨床試験において、65歳未満の患者と比較して65歳以上の患者で死亡に至った有害事象、重篤な有害事象及び投与中止に至った有害事象の発現割合が高い傾向が認められている。

10. 相互作用

  • 本剤は、チトクロームP450 3A4(CYP3A4)による代謝を受ける。また、本剤はCYP3A及びBreast Cancer Resistance Protein(BCRP)の阻害作用を示す。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子

強いCYP3A阻害剤

  • イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル等

本剤の副作用が増強されるおそれがあるので、本剤の減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分に注意すること。

これらの薬剤のCYP3A阻害作用により、本剤の血中濃度が増加する可能性がある。

グレープフルーツ含有食品

本剤の副作用が増強されるおそれがあるので、摂取しないよう注意すること。

これらの薬剤のCYP3A阻害作用により、本剤の血中濃度が増加する可能性がある。

強い又は中程度のCYP3Aの誘導剤

  • リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール等
    ,

本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、これらの薬剤との併用は可能な限り避け、CYP3A誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。

これらの薬剤のCYP3A誘導作用により、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。

セイヨウオトギリソウ(St.John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品

本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、摂取しないよう注意すること。

これらの薬剤のCYP3A誘導作用により、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。

CYP3Aの基質となる薬剤

  • タクロリムス、シンバスタチン、ミダゾラム等

これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。

本剤のCYP3A阻害作用により、これらの薬剤の血中濃度が増加する可能性がある。

BCRPの基質となる薬剤

  • メトトレキサート、シンバスタチン、ロスバスタチン等

これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。

本剤のBCRP阻害作用により、これらの薬剤の血中濃度が増加する可能性がある。

11. 副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

11.1 重大な副作用

  1. 11.1.1 間質性肺疾患

    肺臓炎(1.4%)、間質性肺疾患(1.2%)があらわれることがある。異常が認められた場合には本剤の投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。,,

  2. 11.1.2 静脈血栓塞栓症

    肺塞栓症(6.2%、1.4%)注1)、深部静脈血栓症(4.5%、1.4%)注1)等の静脈血栓塞栓症があらわれることがある。,,,

  3. 11.1.3 動脈血栓塞栓症

    本剤とアミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用投与において、心筋梗塞(0.5%)等の動脈血栓塞栓症があらわれることがある。

  4. 11.1.4 肝機能障害(31.8%)

    ALT、AST、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害があらわれることがある。

  5. 11.1.5 重度の下痢(1.9%)注2)
  6. 11.1.6 重度の皮膚障害

    発疹(17.1%)注2)、ざ瘡様皮膚炎(8.3%)注2)等の重度の皮膚障害があらわれることがある。

  7. 11.1.7 心不全(1.0%)


    注1)発現頻度は、NSC3003試験におけるアミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用投与時、本剤単独投与時の順に記載した。なお、本剤の承認された用法・用量は、下記のとおりである。
    アミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用において、通常、成人にはラゼルチニブとして240mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
    注2)NCI-CTCAEのGrade 3以上の副作用頻度

11.2 その他の副作用

10%以上

10%未満
1%以上

1%未満

感染症及び寄生虫症

爪囲炎(65.1%)

代謝及び栄養障害

食欲減退

神経系障害

錯感覚(27.3%)

眼障害

角膜炎

胃腸障害

口内炎(39.4%)、下痢(22.6%)、悪心、便秘

嘔吐

皮膚及び皮下組織障害

発疹(68.4%)、ざ瘡様皮膚炎(31.4%)、皮膚乾燥(22.8%)、そう痒症(20.4%)

爪毒性、手掌・足底発赤知覚不全症候群、湿疹

乾皮症、蕁麻疹

筋骨格系及び結合組織障害

筋痙縮

一般・全身障害及び投与部位の状態

疲労、無力症

発熱

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意

PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 単回及び反復投与

    日本人の化学療法歴のあるEGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者(5例)にラゼルチニブ240mgを1日1回反復経口投与したときの、初回投与後及び反復投与22日目の血漿中ラゼルチニブ濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった。投与22日目におけるラゼルチニブのAUCに基づく累積率は3.05であった。3)

    血漿中ラゼルチニブ濃度推移
    平均値±標準偏差、n=5
    表 ラゼルチニブの薬物動態パラメータ

    測定日
    (日)

    例数

    Cmax
    (ng/mL)

    tmax
    (h)

    AUC24h
    (ng・h/mL)

    1

    5

    451±260

    2.07(1.98、7.98)

    3,360±1,314

    22

    5

    568±200

    3.88(1.97、8.05)

    9,293±950

    平均値±標準偏差、tmaxは中央値(最小値、最大値)、*:4例

    また、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者にラゼルチニブ20~320mg注)を1日1回反復経口投与したとき、ラゼルチニブのCmax及びAUCは概ね用量に比例して増加し、ラゼルチニブ投与後15日目までに定常状態に到達した。4)(外国人データ)

16.2 吸収

  1. 16.2.1 食事の影響

    健康成人(24例)にラゼルチニブ240mgを単回経口投与注)したとき、空腹時投与に対する高脂肪食投与後におけるラゼルチニブのCmax及びAUClastの幾何平均値の比は、それぞれ0.934及び1.14であった。5)(外国人データ)

16.3 分布

EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者(4例)にラゼルチニブ240mgを単回経口投与注)したときのラゼルチニブのみかけの分布容積は4,264Lであった。(外国人データ)ヒトにおけるラゼルチニブの血漿蛋白結合率は99.2%であった(ex vivo)。6)

16.4 代謝

ラゼルチニブは主にグルタチオンS-トランスフェラーゼM1(GSTM1)を介したグルタチオン抱合により代謝され、CYP3A4を介しても代謝される(in vitro)。
健康成人(8例)に14C標識したラゼルチニブ240mgを単回経口投与注)したとき、投与24時間後までの血漿中には主に未変化体及び薬理活性を示さないグルタチオン抱合体の異化代謝物(M12)が検出された(血漿中総放射能に対する割合は、①GSTM1非欠損型及び②GSTM1欠損型の患者でそれぞれ①41.0及び23.6%並びに②49.3及び19.6%)。7)(外国人データ)

16.5 排泄

健康成人(8例)に14C標識したラゼルチニブ240mgを単回経口投与注)したとき、投与696時間後までの糞中及び尿中に、投与量のそれぞれ86.2%(未変化体として5%以下)及び3.54%(未変化体として0.2%未満)が排泄された。8)(外国人データ)

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1 肝機能障害

    ラゼルチニブ160mgを単回経口投与注)したとき、健康成人(8例)に対する中等度肝機能障害(Child-Pugh分類B)患者(8例)におけるCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ0.796及び1.03であった。9)(外国人データ)

16.7 薬物相互作用

  1. 16.7.1 イトラコナゾール

    健康成人(15例)にイトラコナゾール(強いCYP3A阻害剤)200mgを1日1回反復経口投与し、ラゼルチニブ160mgを単回経口投与注)したとき、ラゼルチニブ単独投与時に対するイトラコナゾール併用投与時のラゼルチニブのCmax及びAUClastの幾何平均値の比はそれぞれ1.19及び1.46であった。10)(外国人データ)

  2. 16.7.2 リファンピシン

    健康成人(16例)にリファンピシン(強いCYP3A誘導剤)600mgを1日1回反復経口投与し、ラゼルチニブ240mgを単回経口投与注)したとき、ラゼルチニブ単独投与時に対するリファンピシン併用投与時のラゼルチニブのCmax及びAUClastの幾何平均値の比はそれぞれ0.282及び0.162であった。10)(外国人データ)

  3. 16.7.3 エファビレンツ

    生理学的薬物動態モデルに基づいたシミュレーションにおいて、ラゼルチニブ(240mgを1日1回反復経口投与)単独投与時注)に対するエファビレンツ(中程度のCYP3A誘導剤)(600mgを1日1回反復経口投与)併用投与時のラゼルチニブのCmax及びAUCtauの幾何平均値の比は、①GSTM1非欠損型及び②GSTM1欠損型の患者でそれぞれ①0.68及び0.56並びに②0.56及び0.41と推定された。11)

  4. 16.7.4 ミダゾラム

    健康成人(19例)にラゼルチニブ160mgを1日1回反復経口投与注)し、ミダゾラム(CYP3A基質)2mgを単回経口投与したとき、ミダゾラム単独投与時に対するラゼルチニブ併用投与時のミダゾラムのCmax及びAUClastの幾何平均値の比はそれぞれ1.39及び1.47であった。12)(外国人データ)

  5. 16.7.5 ロスバスタチン

    健康成人(19例)にラゼルチニブ160mgを1日1回反復経口投与注)し、ロスバスタチン(BCRP基質)10mgを単回経口投与したとき、ロスバスタチン単独投与時に対するラゼルチニブ併用投与時のロスバスタチンのCmax及びAUClastの幾何平均値の比はそれぞれ2.24及び2.02であった。12)(外国人データ)

  6. 16.7.6 その他
    1. (1) メトホルミン

      健康成人(19例)にラゼルチニブ160mgを1日1回反復経口投与注)し、メトホルミン(OCT1基質)500mgを単回経口投与したとき、メトホルミン単独投与時に対するラゼルチニブ併用投与時のメトホルミンのCmax及びAUClastの幾何平均値の比はそれぞれ0.809及び0.943であった。12)(外国人データ)

    2. (2) その他

      ラゼルチニブはP-gpの基質である。また、ラゼルチニブはUGT1A1を阻害し、CYP1A2を誘導した(in vitro)。13)
      注)本剤の承認された用法・用量は、「ラゼルチニブとして240mgを1日1回経口投与」である。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

  1. 17.1.1 国際共同第Ⅲ相試験(NSC3003試験)

    化学療法歴のないEGFR遺伝子変異陽性注1)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者1,074例(日本人78例含む)を対象に、本剤注2)とアミバンタマブ(遺伝子組換え)注3)との併用投与(Ami/Laz)と、オシメルチニブ(Osi)注4)投与を比較する無作為化比較試験を実施した。
    主要評価項目である盲検下独立中央判定による無増悪生存期間[中央値(95%信頼区間)]は、Ami/Laz群で23.72カ月(19.12~27.66カ月)及びOsi群で16.59カ月(14.78~18.46カ月)であった[ハザード比:0.70、95%信頼区間:0.58~0.85、p=0.0002(層別ログランク検定)、2023年8月11日カットオフ]。14)

    図 無増悪生存期間のKaplan-Meier曲線[NSC3003試験]

    注1)EGFR遺伝子活性型変異であるエクソン19の欠失(Ex19del)変異又はエクソン21の変異(L858R)が腫瘍組織検体で確認された患者が組み入れられた。
    注2)240mgを1日1回経口投与した。
    注3)4週間を1サイクルとし、体重別に以下の用法及び用量で点滴静注した。
    体重80kg未満の場合:1サイクル目の1日目に350mg、2日目に700mg、8日目、15日目、22日目、2サイクル目以降の1日目、15日目に1,050mg
    体重80kg以上の場合:1サイクル目の1日目に350mg、2日目に1,050mg、8日目、15日目、22日目、2サイクル目以降の1日目、15日目に1,400mg
    注4)80mgを1日1回経口投与した。
    Ami/Laz群421例(日本人29例含む)中408例(96.9%)に副作用が認められた。主な副作用は、発疹288例(68.4%)、爪囲炎274例(65.1%)、口内炎166例(39.4%)、ざ瘡様皮膚炎132例(31.4%)、ALT増加120例(28.5%)であった。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

本剤は、活性型変異(Ex19del及びL858R)を有するEGFRチロシンキナーゼ並びに活性型変異及びT790M変異を有するEGFRチロシンキナーゼに対して阻害作用を示すことにより、EGFR遺伝子変異を有する腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。15)

18.2 抗腫瘍作用

  1. 18.2.1 in vitro試験

    本剤は、EGFR活性型変異(Ex19del)を有する非小細胞肺癌(NSCLC)由来PC9細胞株、並びにEGFR活性型変異(L858R)及びT790M変異を有するNSCLC由来H1975細胞株の増殖を抑制した。16)

  2. 18.2.2 in vivo試験

    本剤は、PC9細胞株又はH1975細胞株を皮下移植したヌードマウスにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示した。17),18)本剤は、H1975細胞株を脳内に移植したヌードマウスにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示した。19) H1975細胞株又は肝細胞増殖因子(HGF)を過剰発現させたH1975細胞株を皮下移植したヌードマウスにおいて、本剤とアミバンタマブの併用投与はそれぞれの単独投与よりも高い腫瘍増殖抑制作用を示した。20)

19. 有効成分に関する理化学的知見

一般的名称

ラゼルチニブメシル酸塩水和物(Lazertinib Mesilate Hydrate)

化学名

N-{5-[(4-{4-[(Dimethylamino)methyl]-3-phenyl-1H-pyrazol-1-yl}pyrimidin-2-yl)amino]-4-methoxy-2-(morpholin-4-yl)phenyl}prop-2-enamide monomethanesulfonate monohydrate

分子式

C30H34N8O3・CH4O3S・H2O

分子量

668.76

性状

白色~淡黄褐色の粉末

化学構造式

融点

約218℃

分配係数

Log P:>4.00(1-オクタノール/水性緩衝液pH 10.0)

溶解性

水 4.5g/100mL
エタノール 0.70g/100mL

21. 承認条件

医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

22. 包装

  • 〈ラズクルーズ錠80mg〉

    14錠[7錠(PTP)×2]

  • 〈ラズクルーズ錠240mg〉

    14錠[7錠(PTP)×2]

23. 主要文献

1) 社内資料:ラゼルチニブのラット受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験成績(2025年3月27日承認、CTD2.6.6.6.1.1)

2) 社内資料:ラゼルチニブのラット胚・胎児発生に関する試験成績(2025年3月27日承認、CTD2.6.6.6.2.1)

3) 社内資料:73841937NSC1001試験(2025年3月27日承認、CTD2.7.2.2.1.3(2)1))

4) 社内資料:YH25448-201(73841937NSC2001)試験(2025年3月27日承認、CTD2.7.2.2.1.2(1))

5) 社内資料:YH25448-101試験(2025年3月27日承認、CTD2.7.1.2.4.1)

6) 社内資料:分布(2025年3月27日承認、CTD2.7.2.3.1.2(2))

7) 社内資料:代謝(2025年3月27日承認、CTD2.7.2.3.1.2(3))

8) 社内資料:排泄(2025年3月27日承認、CTD2.7.2.3.1.2(4))

9) 社内資料:73841937NSC1007試験(2025年3月27日承認、CTD2.7.2.2.2.1(1))

10) 社内資料:併用薬がラゼルチニブの薬物動態に及ぼす影響(2025年3月27日承認、CTD2.7.2.3.5.1)

11) 社内資料:生理学的薬物速度論モデルシミュレーション(2025年3月27日承認、CTD2.7.2.2.5)

12) 社内資料:ラゼルチニブが併用薬の薬物動態に及ぼす影響(2025年3月27日承認、CTD2.7.2.3.5.2)

13) 社内資料:ヒト生体試料を用いて実施した試験(2025年3月27日承認、CTD2.7.2.1.1)

14) 社内資料:アミバンタマブ/ラゼルチニブ併用療法の非小細胞肺癌患者に対する臨床成績(73841937NSC3003試験)(2025年3月27日承認、CTD2.7.6.10)

15) 社内資料:ラゼルチニブの効力を裏付ける試験に関する非臨床試験成績(2025年3月27日承認、CTD2.6.2.2.1)

16) 社内資料:ラゼルチニブの効力を裏付ける試験に関する非臨床試験成績(2025年3月27日承認、CTD2.6.2.2.1.4)

17) 社内資料:ラゼルチニブの効力を裏付ける試験に関する非臨床試験成績(2025年3月27日承認、CTD2.6.2.2.2.1)

18) 社内資料:ラゼルチニブの効力を裏付ける試験に関する非臨床試験成績(2025年3月27日承認、CTD2.6.2.2.2.3)

19) 社内資料:ラゼルチニブの効力を裏付ける試験に関する非臨床試験成績(2025年3月27日承認、CTD2.6.2.2.2.5)

20) 社内資料:ラゼルチニブの効力を裏付ける試験に関する非臨床試験成績(2025年3月27日承認、CTD2.6.2.2.2.6)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

ヤンセンファーマ株式会社 メディカルインフォメーションセンター

〒101-0065 東京都千代田区西神田3-5-2

フリーダイヤル 0120-183-275
https://www.janssenpro.jp

25. 保険給付上の注意

本剤は新医薬品であるため、厚生労働省告示第107号(平成18年3月6日付)に基づき、2026年5月末日までは、投薬は1回14日分を限度とされている。

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元(輸入)

ヤンセンファーマ株式会社

〒101-0065 東京都千代田区西神田3-5-2

〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル

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