令和4年11月4日
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
1. 調査対象の範囲
公財)日本医療機能評価機構(以下、「評価機構」という。)による医療事故情報収集等事業報告書中の記述情報及び評価機構ホームページ上の公開データ中の医療機器に関連する医療事故及びヒヤリ・ハット事例
1)医療事故関係について
評価機構による医療事故情報収集等事業第67回及び第68回報告書(以下、「当該報告書」という。)中の記述情報及び評価機構ホームページ上の公開データから抽出した令和3年7月1日~12月31日の間に報告された事例。
2)ヒヤリ・ハット事例関係について
当該報告書に掲載された令和3年7月1日~12月31日の間に報告された事例。
3)その他
当該報告書に掲載された医療機器にかかる以下の事例。
- 外来化学療法室で行う抗がん剤治療に関連した事例
- 医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)に関連した事例
- 患者間違いに関連した事例
- 新型コロナウイルス感染症に関連した事例
- 使用期限を過ぎた中心静脈カテーテルを使用した事例
- 輸液ポンプから輸液ラインを外した際、クレンメとアンチフリーフロークランプを開放していたことによりプロポフォール静注が急速投与された事例
2. 検討方法
医療機器に起因するヒヤリ・ハット等の事例について、医療機器としての観点から安全対策に関する専門的な検討を行うため、各医療関係職能団体代表、学識経験者等の専門家及び製造販売業者の代表から構成される標記検討会を開催し、医療機器の物的要因に対する安全管理対策について検討した。
3. 調査結果
- 医療機器毎の事例数について
調査対象の各事例において使用されている医療機器毎に、各事例の報告者意見に基づく事故の内容及び事故の程度を分類し、まとめた結果を図1~図4、表1及び表2に示す。
また、表1及び表2においては、各医療機器におけるヒューマンエラー・ヒューマンファクターに起因する事例の事故の程度と内容の内訳を示している。
なお、参考として過去に報告されたドレーン・チューブ及びドレーン・チューブ以外の医療機器の年度別累積件数を参考1~参考2に示す。
図1 ドレーン・チューブにおける事故の内容の内訳
集計対象期間:令和3年1月1日~6月30日 |
集計対象期間:令和3年7月1日~12月31日 |
図2 ドレーン・チューブにおける事故の程度の内訳
集計対象期間:令和3年1月1日~6月30日 |
集計対象期間:令和3年7月1日~12月31日 |
種類 | 事故の程度 | 事故の内容 | 別添2 No. |
---|---|---|---|
中心静脈ライン | 死亡 | その他のドレーン・チューブ類の使用に関する内容 | 1 |
気管カニューレ | 死亡 | 使用中の点検・管理ミス | 2 |
その他のドレーン・チューブ類の使用に関する内容 | 3 | ||
気管カニューレ | 障害残存の可能性がある(高い) | 使用中の点検・管理ミス | 4 |
栄養チューブ(NG・ED) | 障害残存の可能性がある(高い) | 自己抜去 | 5 |
尿道カテーテル | 障害残存の可能性がある(高い) | 使用中の点検・管理ミス | 6 |
脳室・脳槽ドレーン | 障害残存の可能性がある(高い) | その他のドレーン・チューブ類の使用に関する内容 | 7 |
血液浄化用カテーテル・回路 | 障害残存の可能性がある(高い) | 空気混入 | 8 |
その他のドレーン・チューブ類の使用に関する内容 | 9 | ||
その他のドレーン・チューブ類 | 障害残存の可能性がある(高い) | ドレーン・チューブ類の不適切使用 | 10 |
その他のドレーン・チューブ類の使用に関する内容 | 11 |
※事故の程度が「死亡」又は「障害残存の可能性がある(高い)」事例のみ
図3 ドレーン・チューブ以外の医療機器における事故の内容の内訳
集計対象期間:令和3年1月1日~6月30日 |
集計対象期間:令和3年7月1日~12月31日 |
図4 ドレーン・チューブ以外の医療機器における事故の程度の内訳
集計対象期間:令和3年1月1日~6月30日 |
集計対象期間:令和3年7月1日~12月31日 |
種類 | 事故の程度 | 事故の内容 | 別添2 No. |
---|---|---|---|
人工呼吸器 | 死亡 | その他の医療機器等・医療材料の使用に関する内容 | 12 |
障害残存の可能性がある(高い) | 医療機器等・医療材料の不適切使用 | 13,14 | |
その他の医療機器等・医療材料の使用に関する内容 | 15 | ||
人工心肺 | 障害残存の可能性がある(高い) | その他の医療機器等・医療材料の準備に関する内容 | 16 |
その他の医療機器等・医療材料の使用に関する内容 | 17 | ||
心電図・血圧モニター | 死亡 | その他の医療機器等・医療材料の管理に関する内容 | 18 |
その他の医療機器等・医療材料の使用に関する内容 | 19 | ||
その他の医療機器等 | 死亡 | その他の医療機器等・医療材料の管理に関する内容 | 20 |
障害残存の可能性がある(高い) | 医療機器等・医療材料の不適切使用 | 21 | |
使用中の点検・管理ミス | 22 | ||
その他の医療機器等・医療材料の使用に関する内容 | 23,24 |
※事故の程度が「死亡」又は「障害残存の可能性がある(高い)」事例のみ
参考1 過去に報告されたドレーン・チューブ |
参考2 過去に報告されたドレーン・チューブ以外 |
- 同様事例数について
調査対象の各事例において、これまでに同様の事例が集積され、PMDA医療安全情報を作成・配信し、注意喚起を実施している事例と同様の事例数をまとめた結果を表3と表4に示す。
分類 | 調査件数 | 同様事例数の内訳 | 事例件数 |
---|---|---|---|
中心静脈ライン | 24 |
|
4 |
末梢静脈ライン | 4 | 0 | |
動脈ライン | 3 | 0 | |
気管チューブ | 43 |
|
8 |
気管カニューレ | 26 |
|
6 |
栄養チューブ(NG・ED) | 11 |
|
4 |
尿道カテーテル | 20 |
|
12 |
胸腔ドレーン | 18 |
|
3 |
腹腔ドレーン | 4 | 0 | |
脳室・脳槽ドレーン | 3 |
|
1 |
皮下持続吸引ドレーン | 2 | 0 | |
硬膜外カテーテル | 2 |
|
1 |
血液浄化用カテーテル・回路 | 10 | 0 | |
その他のドレーン・チューブ類 | 40 |
|
3 |
合計 | 210 | 42 |
分類 | 調査件数 | 同様事例数の内訳 | 事例件数 |
---|---|---|---|
人工呼吸器 | 14 |
|
2 |
酸素療法機器 | 3 | 0 | |
麻酔器 | 4 | 0 | |
人工心肺 | 4 | 0 | |
ペースメーカー | 4 | 0 | |
輸液・輸注ポンプ | 1 | 0 | |
血液浄化用機器 | 1 |
|
1 |
保育器 | 1 | 0 | |
内視鏡 | 1 | 0 | |
低圧持続吸引器 | 1 | 0 | |
心電図・血圧モニター | 5 |
|
2 |
パルスオキシメーター | 2 | 0 | |
歯科用回転研削器具 | 2 | 0 | |
その他の医療機器等 | 67 |
|
8 |
合計 | 110 | 13 |
- 安全使用対策の必要性
医療機器の製造販売業者等による安全使用対策の必要性の有無について、調査対象の全320事例の調査結果を表5に示す。
調査結果 | 事例数 | 割合 |
---|---|---|
医療機器の安全使用に関して製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えられた事例 | 0 | 0.00% |
製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例 | 9 | 2.81% |
製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例 | 311 | 97.19% |
合計 | 320 | 100% |
4. 調査結果の内訳
- 製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例(別添1)
- 麻酔回路の閉塞事例(1番)
- 皮下植込み型ポートのカテーテル断裂の事例(2~9番)
- 製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例(ヒューマンエラー、ヒューマンファクター)(別添2)
- 製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例(情報不足等)(別添3)
以上