独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

平成24年度 第2回医薬品・医療機器安全使用対策検討結果報告(医薬品関連事例) 別添4

本文別添1別添2別添3|別添4

 

情報不足等のため製造販売業者による対策が困難と考えられた事例(医療事故)

No 事故の程度 販売名等 製造販売業者等 事故の内容 事故の背景要因の概要 改善策 調査結果
1 死亡 エルネオパ2号輸液
塩化ナトリウム注10%
大塚製薬
大塚製薬
15時30分点滴を交換し、24時間で交換すべき高カロリー輸液(エルネオパ2号輸液1000ml+塩化ナトリウム注10%20ml)が、17時30分に終了しているのを発見した。15時30分点滴交換施行。オムツ交換後、点滴が滴下しないことに気づいた。16時10分看護師は腹部エコーをしていた医師に、滴下改善のため生食フラッシュを依頼した。医師はその場でフラッシュし、滴下良好となった。看護師は滴下調整をした。17時、受け持ち看護師は血圧を測った。点滴の滴下はみていなかった。医師はエコー中だった。17時30分準夜の看護師が訪室すると翌日15時までの点滴が終了しているのを発見した。発見時、血糖値が596mg/dlに上昇していたため、生理食塩水の輸液に変更し、1時間ごとに血糖測定を行った。
2時間後557mg/dl、3時間後440mg/dl、4時間後220mg/dlに低下したため、インスリンを投与せず経過観察した。しかし、22時30分に血圧が50台に低下し、ドパミン製剤を開始した。呼吸状態の悪化は認めず、血圧は90台まで回復したが尿量が20ml/Hr前後と低下した。その後、血圧は90台を維持していたが尿量の増加は認めなかった。
14時30分CVカテーテルを入れ替えし、カテ先培養、血液培養を提出し、抗生剤(メロペネム)の投与を開始した。その後、全身状態の悪化を認めず経過していたが、急速に血圧が低下し、呼吸微弱となり、死亡確認した。
  1. 敗血症という症状経過の中で生じたことであり、直接的な因果関係はないものとする。
  2. ルートフラッシュ後の滴下観察が不十分だった。
    医師が検査中であり、遠慮していた。
  3. 医師、看護師間でのコミュニケーションが不足していた。
    滴下速度の確認を連携して観察していなかった。
  1. 点滴交換後は15分後に滴下を確認する。
  2. CVの滴下確認は1時間ごとに行う。(マニュアルでの取り決め)
  3. 体位交換後、ルートの屈曲の有無を確認する。
  4. 勤務交替時には点滴の確認を行う。
  5. 滴下にムラがある場合は、入れ替え、ポンプの使用など、アセスメントする。
  6. 点滴管理は、医師、看護師が協力して行うよう周知する。
  7. 5.6.及び一般的な輸液管理について、事例を通して、全体へ周知した。
24時間で交換する高カロリー輸液が約2時間後に終了しており、患者が高血糖状態になっていたとのことであるが、短時間で投与された原因が不明であり、検討困難と考える。
2 障害なし プロポフォール 丸石 15時35分に手術室から帰室した。鎮静の目的でプロポフォールを持続投与していた。血圧が160台だったものが100と低下してきたのでプロポフォール25ml/Hrを20mlに減量して100から80台で経過していた。2時間毎のシリンジポンプ薬液交換を考えて看護師が17時18分からプロポフォールを輸液ポンプ投与に変更した。17時20分に血圧68/22と低下、アラームに気付いたとなりのベッドサイドにいた看護師が輸液ポンプを見たところ輸液ポンプの輸液スピードが130ml/Hrになっていることに気付いた。医師に報告し、プロポフォール中止、点滴全開で投与したが17時22分 血圧44/22と低下、エホチール2mg、プレドパを開始し血圧の上昇を見た。2分間に約4.3ml本来の7倍量のプロポフォールが与薬された。 昨年にも同様のインシデントがありマニュアル変更を行い、交換時や設定変更時などはポンプ設定をダブルチェックするようにしていたが実施できていなかった。自病棟で作成した確認方法の指導を行っていた。勤務交替時で確認等の確認が不十分であった。 マニュアルにしたがって設定・設定変更時・薬液交換時はダブルチェックを声に出し、指差しして行う。 プロポフォールを投与速度25ml/hに設定していたが、アラームが鳴り確認したところ130ml/hとなっていたとのことであるが、設定が変更された原因が不明であり、検討困難と考える。
3 障害なし ソルメルコート 不明
  1. 脳神経外科による脊椎固定術中、ソルメルコート1000mgのうち500mg程静脈注射後にショックが発生し、血圧が低下し、心肺停止状態となる。
  2. 直ちに心蘇生マッサージ施行したが、心拍再開せず、中心静脈ライン確保。PICESを心臓外科医師に入れてもらい、心臓マッサージしつつCT室に移動し、胸CT撮影実施。
  3. 肺塞栓・大動脈解離の所見はなく、14:08、除細動施行した後より、心拍再開。
  4. 体外式ペースメーカー装着、血圧も安定したため、PICES抜去し、ICU管理とした。
麻酔中の心電図記録が全て残っており、ソルメルコート静注後から血圧が低下し、ST上昇、3度の房室ブロックをきたして心肺停止したことから、ソルメルコートに起因したものと判断される。
おそらく、ソルメルコートによるアナフィラキシーショックが一番の原因だと考えられる。
  1. ソルメルコートの速やかな採用中止(富士製工)。
  2. ソルメドロール(ファイザー製薬)に戻す。
  3. ソルメルコートの安全性について、業者に確認。
ソルメルコートによる副作用症状とも考えられるが、手術手技及び患者の既往歴等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。
4 障害残存の可能性なし イオメロン300 エーザイ 胸部大動脈瘤に対してステントグラフト内挿術を施行した。
右大腿動脈よりデバイスを挿入し、内挿する部位まで進め、ステントグラフトを展開する前に留置位置決定を目的とした動脈造影検査を施行し11時59分、イオメロン300を25ml投与した。12時00分には心電図モニター検査にて房室ブロックとなり脈拍40回/分の徐脈を呈した。アトロピン0.5mgを静注して徐脈は改善したが、血圧60mmHgに低下。エフェドリン・ノルアドレナリン投与したが反応乏しく、この時点(12時05分)でアナフィラキシーショックと診断し、ボスミンを投与して血圧回復。サクシゾン300mgを投与し、血圧132mmHgまで回復した。
  1. 昨年緊急入院時、看護師はアナムネ用紙で把握したが、「疑い」の時は電子カルテのアレルギー登録を入力しなくてよいと思い登録しなかった。
  2. 主治医は前医の2回の造影CTで問題なかったため、患者には確認しなかった。
  3. 病棟看護師:前回の入院時(昨年の緊急入院時)、看護サマリーで、既往歴にヨード造影剤アレルギー「あり」になっていたが、その後の造影CT2回で副作用出現していなかった。患者と夫からも、アレルギーは無いと言われ手術連絡票と看護サマリーに薬剤アレルギー「無し」と記載した。主治医に報告せず、アレルギー無しと判断してしまった。
  4. 麻酔医は術前診察でヨードアレルギーを患者から聴取しプログレスに記載はしたが(昔、一度痒くなったがその後は問題なし)登録を忘れた。
  5. タイムアウト時に主治医はヨード造影を実施すると言ったが、麻酔医は過去2回発症しなかったため大丈夫だと思った。
  1. 現在、造影剤や抗生剤の皮内テストなどは実施しないため、アレルギーの予測は不可能であり、充分な問診を徹底する。
  2. 造影剤アレルギー発症時対応策の熟知を徹底。酸素投与、輸液、昇圧剤投与。
  3. 電子カルテを利用した「アレルギー」項目の登録(疑い例も含めた)の徹底。(医療安全対策委員会、医療安全ニュースで周知)
  4. 電子カルテにおいて、過去に検査で異常が発症した時に、次に検査を行う時には過去の情報が閲覧できるシステムを検討。
イオメロンによる副作用症状とも考えられるが、患者の既往歴等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。
5 障害なし 中耳炎を認め、鼓膜切開を予定した。鼓膜切開術前に左耳内に鼓膜麻酔液を浸したカット綿を挿入する際、左耳孔より左側頸部に添って少量の麻酔液が垂れた。すぐにティッシュで拭き取り、痛み等はなく経過観察した。帰宅した後に発赤と疼痛を認め、翌日に皮膚科受診した。軟膏にて発赤・疼痛は軽快したが、麻酔液が垂れた部分が色素沈着の形で跡が残った。 当院での勤務経験が8ヶ月と浅く、鼓膜麻酔液使用経験がなかった。鼓膜麻酔液(フェノール入り)の皮膚への危険性について知識がなかった。医師一人で処置を行った。
  • 鼓膜麻酔液について、危険性や使用方法の手順等を診療科内で学習し、周知する。
  • 指導・教育を継続的に実施する。
  • 鼓膜麻酔液の容器、表示の改善・鼓膜切開術と麻酔液使用について、丁寧に患者へ説明し、同意書を取得する。
フェノール含有の麻酔薬による発疹・疼痛とのことであるが、フェノール含有の麻酔薬は市場にないため院内薬剤の可能性があり、検討困難と考える。
6 障害残存の可能性なし ベナンバックス注用300mg サノフィ・アヴェンティス株式会社 ベナンバックス(カリニ肺炎治療剤)の副作用とみられる低血糖の影響を考慮していなかったため、低血糖状態の遷延(GLU値37)が翌日になって判明、投与を中止した。中止翌日のGLU値8。 薬剤の影響(副作用)を考慮していなかった。 警鐘事例として院内周知を行った。 ベナンバックスによる副作用症状とも考えられるが、患者の合併症や既往歴及び併用薬等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。
7 障害残存の可能性なし スルバクタム・アンピシリン サンド 患者は、腰椎椎間板ヘルニアの後方摘出術が予定され、12時55分、手術室に搬入され、麻酔科医師により、麻酔導入、挿管が行われた。13時25分、患者は腹臥位に体位変換され、抗生剤スルバクタム・アンピシリン1.5gの投与が開始された。タイムアウトが行われ、13時45分、術者が皮膚切開を行った直後、SpO280%、血圧が55mmHgまで徐々に低下し、麻酔科医師が手押し換気を行ったが、患者の換気バックは重く、バイタルサインの回復が見られなかった。アナフィラキシーショック、または肺塞栓症が疑われたため、14時、手術が中止され、ステイプラーにて皮膚縫合し、仰臥位へ体位変換された。
全身皮膚は紅潮しており、上肢末梢の皮膚は無血色を呈しており、純酸素、アドレナリン、ステロイドが投与され、血圧は上昇した。補液が行われ、血圧60mmHgであるが、SpO2:97%に回復し、その後も徐々に回復した。14時20分、動脈ラインやCVCが確保され、14時55分、挿管・麻酔未覚醒の状態で、全身管理目的にICUに入室した。執刀直前より投与していた抗菌薬スルバクタム・アンピシリン1.5gが原因のアナフィラキシーショックが疑われた。
状態が少し安定した段階で整形医師より家族に、以前風邪薬で起こした発作と同様と思われる発作のため手術を中止し、対応を行いました。現在状態は徐々に安定してきていますが、まだ予断は許さない状態です。やむを得ない合併症とは考えています。今後の再手術等についてはまた改めて相談しましょう。引き続き十分な対応を行います、と説明が行われ、同意が得られた。
事故発生後、患者が治療を受けた病院に確認がおこなわれ、患者のカルテにユナシン禁と記載されている情報が得られた。
  1. 医師や看護師は、患者から風邪のため他院で処方された薬を服用後、顔面紅潮、呼吸困難感のため治療を受けたと聞き、抗生剤とは思わなかった。
  2. 術前にアレルギーの薬剤名を把握しようとしていなかった。
  3. 患者は風邪薬の新薬と聞いており、アレルギーをおこした薬剤名など詳細な説明や指導を受けていないことが推察された。
  1. 薬剤でのアレルギーの情報を得た場合は、可能な限り薬品名を前医に問い合わせる。
  2. 薬剤アレルギーを発症した患者には、薬剤指導を行う。
  3. 患者に、アレルギーを含めた医療上の注意情報を記入した物を渡し、指導することを検討する。
  4. アレルギーを発生しやすい薬剤を投与する際は、初回のみ15分間は継続して患者観察を行う。
抗生剤による副作用症状とも考えられるが、患者の既往歴等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。
8 障害なし 注射用ナオタミン50 旭化成ファーマ
  1. 急性腎盂腎炎にて救急搬送入院。DICが進行し、全身状態悪く危険な状態であった。入院時より、末梢からDIC治療のためナオタミン持続点滴が行われていた。翌日12時頃、点滴漏れによる右下腿の点滴刺入部の皮膚の色調変化(淡いピンク色)を発見。熱感、腫脹等なし。直ちに点滴中止し、抜針。その後、中心静脈カテーテル挿入し、ナオタミン持続点滴続行。
  1. 通常DICの治療には別の薬剤が使われることが多く、当該薬剤の使用例がほとんどなかった。
  2. ナオタミンは後発医薬品であり、点滴もれによる皮膚への影響に対する知識が不足していたため、医師への報告が遅れた。
  3. 全身状態が悪く、皮膚も脆弱であり、血管確保が困難で点滴漏れが起きやすい状態であった。
  1. 血管外漏出時の対応について医療安全マニュアルの見直しを行う。
  2. 特に知らない薬剤に関しては、効用、副作用等の確認を徹底する。
  3. 全身状態も悪く、皮膚も脆弱であり、血管確保が困難な状況である場合、医師と連携を図り、末梢留置でなく中心静脈カテーテル留置を早期に検討する。
ナオタミン投与中に点滴漏れを認めたとのことであるが、手技を含め原因等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。
9 障害残存の可能性がある(低い) マイスリー錠 アステラス製薬
  1. 患者の状態:21時頃にマイスリー(10)1錠内服し就寝。AM1時頃、大きな音がしたため妻が確認すると転倒しているのを発見。
  2. 発見者及び当事者の対応・状況:意識も今ひとつはっきりとはしていなかったため、妻が救急要請し当院救急外来搬送。
  3. 医学的処置(手術、治療、投薬等)の内容(時系列で記載する。)
    来院時軽度意識障害あり、血圧、脈拍等のバイタルサインは正常、各種血液検査で著明異常値なし。頭部CTで右側頭葉に高吸収域あり。左頬骨に骨折あり。脳神経外科診察依頼され、外傷性クモ膜下出血と診断された。手術等はおこなわず保存的に加療する方針となった。
最近の血糖、血圧は安定しており、転倒の原因はマイスリーの過剰効果によるものを第一に考える。マイスリーは高齢者等では5mgが初期投与量である。強い不眠を訴えていたため10mg投与おこなったが、肝機能異常もあり5mgから開始すべきであった。 高齢者や肝機能、腎機能障害のある症例では少量から慎重に投与を行う。
年齢の割りに元気な患者で、インスリン自己注射や血糖自己測定もしっかり実行できており、毎日の運動も欠かさず行っていた。そのため、高齢者という意識が自分にも少し薄かったと思った。肝障害もありやはり慎重に投与すべきだった。
マイスリーによる副作用症状とも考えられるが、患者の原疾患及び既往歴等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。
10 障害残存の可能性なし ブスコパン注射薬 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 検査後に蕁麻疹様の発疹が出た。 過去4年続けて当院の人間ドックを受診し、胃透視では鎮痙剤もバリウムも今回と同じものが投与されていたが異常は起こらなかった。今回の処置後に行った問診で、20歳頃にエビ・カニ若しくは魚介類のアレルギーを起こしたことがあった事が分かった。しかし要因は絞りきれない。 次回からは胃のバリウム検査を禁忌とする。また鎮痙剤の投与に関しても今回の件を外科に申し送る。 ブスコパンによる副作用症状とも考えられるが、患者の原疾患及び既往歴等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。
11 障害残存の可能性がある(高い) リーマス錠200 大正製薬株式会社 精神科外来受診の際、意識障害、認知機能低下、運動失調があり、緊急入院となる。翌日のリチウム濃度は2.58と高度であり、リチウム中毒による意識障害と判断された。 精神科外来にて、定期的にリチウム血中濃度が測定されていない。 関係診療科内での検討および医療安全部門への報告(報告書作成)を行った。 リーマスによる副作用症状とも考えられるが、投与量や患者の服薬状況等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。
12 障害なし ザンタック注射液50mg グラクソ・スミスクライン 抗がん剤投与前にザンタック100mgと生理食塩水20mLを静脈注射したところ、終了時から口腔内の違和感を訴え、デカドロン6.6mgを静脈注射した。その後、呼吸困難、嘔気が生じ血圧低下を認めた。直ちに酸素投与と輸液量増加、エホチール2mgを投与し呼吸困難は改善しバイタルサインも安定した。経過観察のため、集中治療室に1日入院となった。今回と同量のザンタックをこれまでの化学療法で4回使用したが、今回のような症状は無かった。 ザンタック過敏症によるアナフィラキシーショックと考える。
  • 今後の治療継続に当たっては、前投薬を変更し慎重投与する。
  • より安全に化学療法を行うために、入院による治療も検討する。
ザンタックによる副作用症状とも考えられるが、患者の既往歴及び併用薬等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。
13 障害残存の可能性がある(低い) メイロン静注7% 大塚工場 右正中皮静脈に末梢ルート確保、メイロン静注7%を全開で投与。1時間後、血管外漏出をしていた。5時間後、重篤な皮膚障害を発症。(広範囲に水泡形成を起こし、一部潰瘍化に移行) メイロンはアルカリ性製剤であり、血管外漏出時の危険性に対する知識不足。転棟先の看護部への引継ぎ不足により対応が遅れた。 看護師・医師に対して、緊急警告として広報し、周知する。 メイロン投与中に血管外漏出を認めたとのことであるが、手技を含め原因等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。