医療情報データベースを用いた調査の安全対策への活用
PMDAでは、医療情報データベースを用いて医薬品の安全性を評価するための調査を実施し、安全対策に活用しています。PMDAが実施する調査は、シグナルの検出、シグナルの強化、シグナルの検証又は安全対策措置の影響評価等、安全対策措置に関連する様々な目的で調査を実施しています。
また、PMDAは2022年1月から、MID-NET®を用いて安全対策における早期検討段階における情報収集を主な目的とした「早期安全性シグナルモニタリング」を開始しました。
(注)シグナルとは?
単一あるいは複数のデータソース(観察研究及び試験)から得られた情報であり、それらは、介入と事象の関係、あるいは有害事象若しくは有用な事象の中での新たな潜在的な因果関係や、既に知られている関係での新たな側面を示すものであり、検証するに足りる十分な可能性があると判断されるもの。
引用: ICH E2C(R2) ガイドライン「定期的ベネフィット・リスク評価報告(PBRER)」
PMDAで用いられている主な医療情報データベース
PMDAでは、主にMID-NET(詳細はこちら)や、厚生労働省保険局が保有する匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース(NDB)(詳細はこちら)を用いて調査を実施しています。各データベースの特徴を踏まえ、調査目的に照らし、適切なデータベースを選択して調査を実施しています。各データベースの特徴については関連文献(こちら)もご覧ください。
調査一覧
実施中の調査についての調査名称、使用する医療情報データベース等を、また、終了した調査については結果概要および関連する安全対策措置情報を掲載しています。
「調査結果の概要」については医療情報データベースを用いた調査結果の概要を示したものであり、安全対策措置に関するPMDAの見解は含まれません。安全対策措置については、医療情報データベースを用いて得られた情報のみに基づき決まるものではなく、副作用症例報告や文献情報等、様々な情報源から得られた情報を基に検討しています。
No. | 調査開始年月 | 調査の名称 | 使用データベース | 利活用の概要 | 結果の 概要 |
関連情報(注) |
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33 | 2023年5月 | VEGF/VEGFR阻害作用を有する薬剤の顎骨壊死に関するリスク評価 | NDB | ― | 実施中 | |
32 | 2022年12月 | MID-NET®を用いたチキサゲビマブ(遺伝子組換え)・シルガビマブ(遺伝子組換え)による臨床検査値異常のリスク評価(シグナル検出) | MID-NET | (2023年6月時点) | ||
(2023年6月時点) | ||||||
31 | 2022年12月 | MID-NET®を用いたエンシトレルビル フマル酸による臨床検査値異常のリスク評価(シグナル検出) | MID-NET | (2023年6月時点) | ||
(2023年6月時点) | ||||||
30 | 2022年10月 | ピオグリタゾン塩酸塩による骨折発現のリスク評価 | NDB | ― | 実施中 | |
29 | 2022年10月 | 免疫チェックポイント阻害薬による1型糖尿病発現のリスク評価 | NDB | ― | 実施中 | |
28 | 2022年7月 | MID-NET®を用いたスタチンに属するジェネリック医薬品の安全性評価に関する疫学調査 | MID-NET | 実施中 | ||
27 | 2022年7月 | MID-NET®に基づくCOVID-19ワクチンに関する安全性プロファイル等の評価 | MID-NET | 実施中 | ||
26 | 2022年7月 | MID-NET®を用いたGLP-1受容体作動薬が処方された2型糖尿病患者における肝機能障害の発現状況の評価 | MID-NET | 実施中 | ||
25 | 2022年4月 | NDBを用いたギラン・バレー症候群の発現率に関する調査 | NDB | ― | 第80回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第5回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催) 資料1-9(2022/6/10掲載) |
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24 | 2022年1月 | ドンペリドン又はメトクロプラミドによる致死性不整脈イベント発現のリスク評価 | NDB | ― | 実施中 | |
23 | 2021年度 | 早期安全性シグナルモニタリングのうちシグナル強化に該当する調査(2021年度新規申出分) | MID-NET | 実施中 | ||
22 | 2021年10月 | NDBを用いた非ステロイド性抗炎症薬による心血管系イベント発現のリスク評価 | NDB | ― | 実施中 | |
21 | 2021年10月 | NDBを用いたチアジド系利尿薬及びチアジド系類似薬処方後の非黒色腫皮膚がん発現のリスク評価 | NDB | ― | ||
20 | 2021年9月 | MID-NET®に基づくCOVID-19治療薬の処方実態調査及びベネフィット・リスク評価 | MID-NET | |||
19 | 2021年8月 | VEGF/VEGFR阻害作用を有する薬剤の動脈解離に関するリスク評価 | NDB | ― | (英語版はこちら) |
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18 | 2020年12月 | MID-NETを用いた抗うつ薬による血小板減少指標への影響評価 | MID-NET | (英語版はこちら) |
使用上の注意の改訂(2024/1/10掲載) (英語版はこちら) |
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17 | 2020年12月 | MID-NETを用いた乾癬治療薬による好中球数減少のリスク評価 | MID-NET | (英語版はこちら) |
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16 | 2020年11月 | MID-NETを用いたACE阻害薬による肝障害関連指標への影響評価 | MID-NET | 実施中 | ||
15 | 2020年5月 | NDBを用いたメトホルミン製剤の処方実態調査 | NDB | ― | 論文発表(No.22) | |
14 | 2020年2月 | MID-NETを用いたビスホスホネート製剤の腎機能障害患者における低カルシウム血症のリスク評価に関するデータベース調査 | MID-NET | (英語版はこちら) |
使用上の注意の改訂(2023/1/17掲載) (英語版はこちら), 学会発表(No.104) |
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13 | 2020年2月 | MID-NETを用いたメトホルミンの添付文書改訂の影響に関するデータベース調査 | MID-NET | 令和4年度第25回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 資料2(2022/2/21掲載) |
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12 | 2019年10月 | バイオ後続品の安全性評価へのMID-NET利用可能性の検討 | MID-NET | 論文発表(No.20) | ||
11 | 2019年10月 | MID-NETを用いた抗精神病薬処方患者における消化管障害発現に関するデータベース調査 | MID-NET | 論文発表(No.23) | ||
10 | 2019年8月 | NDBを用いた高尿酸血症治療薬による心血管系イベント発現のリスク評価 | NDB | ― | 論文発表(No.19) | |
9 | 2019年6月 | MID-NETを用いたチアマゾールと顆粒球減少に関するリスク因子探索調査 | MID-NET | 論文発表(No.21) | ||
8 | 2019年6月 | MID-NETを用いたチアマゾールと顆粒球減少に関する検査実態調査 | MID-NET | 論文発表(No.21) | ||
7 | 2019年5月 | NDBを用いたフルオロキノロン系抗菌薬による網膜剥離のシグナル評価 | NDB | ― | 論文発表(No.22 ) | |
6 | 2019年1月 | MID-NETを用いた医薬品による肝機能障害のリスク評価法に係る調査 | MID-NET | 論文発表(No.20) | ||
5 | 2018年9月 | C型肝炎直接型抗ウイルス薬処方患者における腎機能 検査値異常発現の定量的評価 | MID-NET | 論文発表(No.18) | ||
4 | 2018年6月 | G-CSF製剤と血小板減少との関連に関する薬剤疫学調査 | MID-NET | (英語版はこちら) |
使用上の注意の改訂(2020/3/31掲載) (英語版はこちら) 論文発表(No.16) |
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3 | 2018年7月 | NDBを用いたバルサルタンAA錠の処方実態調査 | NDB | ― | 事務連絡 (2018/10/5掲載) 論文発表(No.22 ) |
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2 | 2018年6月 | ワルファリン服用患者におけるC型肝炎治療薬による血液凝固能への影響に関する調査 | MID-NET | (英語版はこちら) |
使用上の注意の改訂(2020/2/25掲載) (英語版はこちら) 論文発表(No.15) |
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1 | 2018年4月 | NDBを用いたトリプタンの薬物乱用性頭痛に関連する処方実態調査 | NDB | ― | 使用上の注意の改訂(2019/6/4掲載) 学会発表(No.92) 論文発表(No.22 ) |
(注)調査結果の論文発表や、調査結果に基づいた安全対策措置に関連する情報を掲載しています。使用上の注意の改訂に関する情報は、掲載日の14時以降に公開予定です。
PMDAが実施した疫学調査関連の公表論文, 学会発表等
これまでMIHARI Projectで実施した調査結果の公表(学会発表、論文)に関連する情報を集約しているページです。
PMDAが実施する疫学調査の位置づけ
PMDAは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(第十五条第一項第五号ハ及びへ)の規定に基づく業務として電子診療情報データベースを活用した疫学調査を実施しています。当該疫学調査については、法律に基づく業務であり、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の対象ではなく、倫理審査委員会(Institutional Review Boards: IRB)での審議は不要とされていますが、適切な情報管理の下で実施しております。
なお、過去の試行段階のMIHIRI projectにおいて研究として実施した疫学調査を含め、研究として実施する疫学調査については、上記の倫理指針に従い、IRB での審議が必要とされています。
PMDAが実施する疫学調査の位置づけに関する厚生労働省からの回答はこちら