平成30年11月7日
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
1. 調査対象の範囲
公財)日本医療機能評価機構(以下、「評価機構」という。)による医療事故情報収集等事業報告書中の記述情報及び評価機構ホームページ上の公開データ中の医療機器に関連する医療事故及びヒヤリ・ハット事例
1)医療事故関係について
評価機構による医療事故情報収集等事業第51回及び第52回報告書(以下、「当該報告書」という。)中の記述情報及び評価機構ホームページ上の公開データから抽出した平成29年7月1日~12月31日の間に報告された事例。
2)ヒヤリ・ハット事例関係について
当該報告書中の記述情報から抽出した平成29年7月1日~12月31日の間に報告された事例。
3)その他
当該報告書中の記述情報から別途抽出した医療機器にかかる以下の事例。
- インプラントの準備に関する事例
- 手術中のインプラントの選択に関する事例
- 画像診断報告書の確認不足に関する事例
- セントラルモニタの送信機の電池切れに関する事例
- 誤った貯血バッグに自己血貯血を行った事例
- 眼科の術前処置時に左右を間違えた事例
- 注射器のガスケットが破損し、サイフォニング現象が起きた事例
- 体位変換時に胸腔ドレーンが抜けた事例
- 開放式ドレーンチューブの迷入に関する事例
- 院内で滅菌する医療機器を滅菌していなかった事例
- 輸液の隔壁を開通せず、薬剤が投与されなかった事例
- 末梢静脈ラインから高カロリー輸液を投与した事例
- 対極板を貼付する際にキャビロンを塗布し、熱傷をきたした事例
2. 検討方法
医療機器に起因するヒヤリ・ハット等の事例について、医療機器としての観点から安全対策に関する専門的な検討を行うため、各医療関係職能団体代表、学識経験者等の専門家及び製造販売業者の代表から構成される標記検討会を開催し、医療機器の物的要因に対する安全管理対策について検討した。
3. 調査結果
- 医療機器毎の事例数について
調査対象の各事例において使用されている医療機器毎に、各事例の報告者意見に基づく事故の内容及び事故の程度を分類し、まとめた結果を図1~図5、表1及び表2に示す。
なお、ドレーン・チューブ以外の医療機器の「その他の医療機器」については、これまでに同様の事例が集積され、PMDA医療安全情報を作成・配信し、注意喚起を実施している事例に関連する医療機器における内訳を図4として示している。
また、表1及び表2においては、各医療機器におけるヒューマンエラー・ヒューマンファクターに起因する事例の事故の程度と内容の内訳を示している。
図1 ドレーン・チューブにおける事故の内容の内訳
図2 ドレーン・チューブにおける事故の程度の内訳
表1 ドレーン・チューブにおけるヒューマンエラー・ヒューマンファクターに起因する事例の事故の程度と内容の内訳(表1)
図3 ドレーン・チューブ以外の医療機器における事故の内容の内訳
図4 ドレーン・チューブ以外の医療機器の「その他の医療機器」における事故の内容の内訳
図5 ドレーン・チューブ以外の医療機器における事故の程度の内訳
表2 ドレーン・チューブ以外の医療機器におけるヒューマンエラー・ヒューマンファクターに起因する事例の事故の程度と内容の内訳(表2)
- 類似事例数について
調査対象の各事例において、これまでに同様の事例が集積され、PMDA医療安全情報を作成・配信し、注意喚起を実施している事例と同様の事例数をまとめた結果を表3と表4に示す。
分類 | 総件数 | 類似事例数 | 内訳 |
---|---|---|---|
中心静脈ライン | 35 | 0 | |
気管チューブ | 21 | 4 | ・PMDA医療安全情報No.30(1件) 「気管チューブの取扱い時の注意について」 ・PMDA医療安全情報No.36(3件) 「チューブやラインの抜去事例について」 |
気管カニューレ | 19 | 4 | ・PMDA医療安全情報No.36 「チューブやラインの抜去事例について」 |
尿道カテーテル | 17 | 8 | ・PMDA医療安全情報No.36(1件) 「チューブやラインの抜去事例について」 ・PMDA医療安全情報No.54(7件) 「膀胱留置カテーテルの取扱い時の注意について」 |
胸腔ドレーン | 14 | 0 | |
末梢静脈ライン | 9 | 0 | |
栄養チューブ(NG・ED) | 7 | 4 | ・PMDA医療安全情報No.42 「経鼻栄養チューブ取扱い時の注意について」 |
腹腔ドレーン | 7 | 0 | |
硬膜外カテーテル | 4 | 1 | ・PMDA医療安全情報No.47 「薬液投与ルートの取扱いについて」 |
脳室・脳そうドレーン | 2 | 0 | |
皮下持続吸引ドレーン | 2 | 0 | |
血液浄化用カテーテル・回路 | 2 | 0 | |
その他のドレーン・チューブ類 | 27 | 1 | ・PMDA医療安全情報No.42 「経鼻栄養チューブ取扱い時の注意について」 |
合計 | 166 | 22 |
分類 | 総件数 | 類似事例数 | 内訳 |
---|---|---|---|
心電図・血圧モニター | 7 | 0 | |
人工呼吸器 | 4 | 0 | |
輸液・輸注ポンプ | 4 | 0 | |
血液浄化用機器 | 3 | 0 | |
パルスオキシメータ | 3 | 0 | |
ペースメーカ | 2 | 0 | |
酸素療法機器 | 1 | 0 | |
麻酔器 | 1 | 0 | |
人工心肺 | 1 | 0 | |
IABP | 1 | 0 | |
内視鏡 | 1 | 0 | |
歯科用回転研削器具 | 1 | 0 | |
その他の医療機器 | 49 | 3 | ・PMDA医療安全情報No.13(1件) 「ガスボンベの取り違え事故について」 ・PMDA医療安全情報No.33(2件) 「光源装置、電気メス、レーザメスを用いた手術時の熱傷事故について」 |
合計 | 78 | 3 |
- 安全使用対策の必要性
医療機器の製造販売業者等による安全使用対策の必要性の有無について、調査対象の全244事例の調査結果を表5に示す。
調査結果 | 事例数 | 割合 |
---|---|---|
医療機器の安全使用に関して製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えられた事例 | 0 | 0.0% |
製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例 | 9 | 3.7% |
製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例 | 235 | 96.3% |
計 | 244 | 100% |
4. 調査結果の内訳
- 製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例(別添1)
- 人工心肺回路の陰圧吸引補助ライン閉塞事例(1番)
- 固定包埋装置におけるクロロホルムの酸性化事例(2番)
- 膀胱留置カテーテルの抜去困難事例(3番)
- PEGチューブの十二指腸への脱落事例(4番)
- 皮下植込み型ポートのカテーテル断裂の事例(5~9番)
- 製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例(ヒューマンエラー、ヒューマンファクター)(別添2)
- 製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例(情報不足等)(別添3)
以上