令和3年5月17日
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
1. 調査対象の範囲
公財)日本医療機能評価機構(以下、「評価機構」という。)による医療事故情報収集等事業報告書中の記述情報及び評価機構ホームページ上の公開データ中の医療機器に関連する医療事故及びヒヤリ・ハット事例
1)医療事故関係について
評価機構による医療事故情報収集等事業第61回及び第62回報告書(以下、「当該報告書」という。)中の記述情報及び評価機構ホームページ上の公開データから抽出した令和2年1月1日~6月30日の間に報告された事例。
2)ヒヤリ・ハット事例関係について
当該報告書中の記述情報から抽出した令和2年1月1日~6月30日の間に報告された事例。
3)その他
当該報告書中の記述情報から別途抽出した医療機器にかかる以下の事例。
- 輸液ポンプ・シリンジポンプの流量に数値を誤って入力した事例
- 多量の生理食塩液や灌流液等を固定用バルーンに注入した事例
- 排液バッグを排液口ではなく別の接続口に接続した事例
- 眼内レンズに関連した事例(検査値入力・転送時)
- 眼内レンズに関連した事例(実施時)
2. 検討方法
医療機器に起因するヒヤリ・ハット等の事例について、医療機器としての観点から安全対策に関する専門的な検討を行うため、各医療関係職能団体代表、学識経験者等の専門家及び製造販売業者の代表から構成される標記検討会を開催し、医療機器の物的要因に対する安全管理対策について検討した。
3. 調査結果
- 医療機器毎の事例数について
調査対象の各事例において使用されている医療機器毎に、各事例の報告者意見に基づく事故の内容及び事故の程度を分類し、まとめた結果を図1~図4、表1及び表2に示す。
また、表1及び表2においては、各医療機器におけるヒューマンエラー・ヒューマンファクターに起因する事例の事故の程度と内容の内訳を示している。
なお、参考として過去に報告されたドレーン・チューブ及びドレーン・チューブ以外の医療機器の年度別累積件数を参考1~参考2に示す。
図1 ドレーン・チューブにおける事故の内容の内訳 ※赤線までの製品で全体の約6割を占めている。
集計対象期間:令和元年7月1日~12月31日 |
集計対象期間:令和2年1月1日~6月30日 |
図2 ドレーン・チューブにおける事故の程度の内訳
集計対象期間:令和元年7月1日~12月31日 |
集計対象期間:令和2年1月1日~6月30日 |
表1 ドレーン・チューブにおけるヒューマンエラー・ヒューマンファクターに起因する事例の事故の程度と内容の内訳(表1)
図3 ドレーン・チューブ以外の医療機器における事故の内容の内訳
集計対象期間:令和元年7月1日~12月31日 |
集計対象期間:令和2年1月1日~6月30日 |
図4 ドレーン・チューブ以外の医療機器における事故の程度の内訳
集計対象期間:令和元年7月1日~12月31日 |
集計対象期間:令和2年1月1日~6月30日 |
表2 ドレーン・チューブ以外の医療機器におけるヒューマンエラー・ヒューマンファクターに起因する事例の事故の程度と内容の内訳(表2)
参考1 過去に報告されたドレーン・チューブ |
参考2 過去に報告されたドレーン・チューブ以外 |
- 類似事例数について
調査対象の各事例において、これまでに同様の事例が集積され、PMDA医療安全情報を作成・配信し、注意喚起を実施している事例と同様の事例数をまとめた結果を表3と表4に示す。
分類 | 総件数 | 類似事例数 | 内訳 |
---|---|---|---|
中心静脈ライン | 32 | 3 |
|
末梢静脈ライン | 7 | 0 | |
動脈ライン | 3 | 0 | |
気管チューブ | 23 | 5 |
|
気管カニューレ | 16 | 3 |
|
栄養チューブ(NG・ED) | 9 | 5 |
|
尿道カテーテル | 22 | 7 |
|
胸腔ドレーン | 11 | 1 |
|
腹腔ドレーン | 4 | 1 |
|
脳室・脳槽ドレーン | 6 | 3 |
|
皮下持続吸引ドレーン | 1 | 0 | |
硬膜外カテーテル | 6 | 0 | |
血液浄化用カテーテル・回路 | 7 |
0 | |
三方活栓 | 1 | 1 |
|
その他のドレーン・チューブ類 | 36 | 3 |
|
合計 | 184 | 32 |
分類 | 総件数 | 類似事例数 | 内訳 |
---|---|---|---|
人工呼吸器 | 7 | 2 |
|
酸素療法機器 | 2 | 0 | |
麻酔器 | 3 | 0 | |
人工心肺 | 8 | 0 | |
ペースメーカ | 3 | 0 | |
輸液・輸注ポンプ | 2 | 1 |
|
血液浄化用機器 | 1 | 0 | |
低圧持続吸引器 | 2 | 0 | |
心電図・血圧モニター | 5 | 3 |
|
歯科用回転研削器具 | 1 | 0 | |
その他の医療機器 | 45 | 11 |
|
合計 | 79 | 17 |
- 安全使用対策の必要性
医療機器の製造販売業者等による安全使用対策の必要性の有無について、調査対象の全263事例の調査結果を表5に示す。
調査結果 | 事例数 | 割合 |
---|---|---|
医療機器の安全使用に関して製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えられた事例 | 0 | 0.0% |
製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例 | 8 | 3.0% |
製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例 | 254 | 96.6% |
現在調査中の事例 | 1 | 0.4% |
計 | 263 | 100% |
4. 調査結果の内訳
- 製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例(別添1)
- 自動縫合器の縫合不良による出血事例(1番)
- 透析装置のソフトウェアのバグによる電子カルテ動作不良の事例(2番)
- アブレーション治療中の空気塞栓の事例(3番)
- シリンジポンプの閉塞アラームの事例(4番)
- フローズングローブによる水疱形成の事例(5番)
- CVポート抜去困難の事例(6~8番)
- 製造販売業者によるモノの対策は困難と考えられた事例(ヒューマンエラー、ヒューマンファクター)(別添2)
- 製造販売業者によるモノの対策は困難と考えられた事例(情報不足等)(別添3)
- 現在調査中の事例(別添4)
- 植込み型除細動器の急速電池消耗の事例(1番)
以上