令和4年4月28日
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
1. 調査対象の範囲
公財)日本医療機能評価機構(以下、「評価機構」という。)による医療事故情報収集等事業報告書中の記述情報及び評価機構ホームページ上の公開データ中の医療機器に関連する医療事故及びヒヤリ・ハット事例
1)医療事故関係について
評価機構による医療事故情報収集等事業第65回及び第66回報告書(以下、「当該報告書」という。)中の記述情報及び評価機構ホームページ上の公開データから抽出した令和3年1月1日~6月30日の間に報告された事例。
2)ヒヤリ・ハット事例関係について
当該報告書中の記述情報から抽出した令和3年1月1日~6月30日の間に報告された事例。
3)その他
当該報告書中の記述情報から別途抽出した医療機器にかかる以下の事例。
- 研修医に関連した事例(処置の事例)
- 研修医に関連した事例(共通の手技の事例)
- 発声機能付き気管切開チューブの取り扱いや管理に関連した事例
(発声機能付き気管切開チューブが分泌物で閉塞した事例) - カテコラミン製剤の交換が遅れたことにより持続投与が中断した事例
- 個室隔離のためバーコード認証ができず、他患者の注射薬を投与した事例
- 患者Xと患者Yの生体情報モニタを逆に設定した事例
- 医療関係者が磁性体を持ち込んだ事例(車椅子)
- 医療関係者が磁性体を持ち込んだ事例(テープカッター)
- 医療関係者が磁性体を持ち込んだ事例(清掃用送風機)
- 医療関係者が磁性体を持ち込んだ事例(補聴器)
- 発声機能付き気管切開チューブの取り扱いや管理に関連した事例
(気管切開チューブ交換時のサイズの選択が適切でなかった事例) - スピーチバルブの管理や取り扱いに関連した事例
(吸引時にスピーチバルブの外し方を誤り、バルブシートが気管支内に入った事例) - スピーチバルブの管理や取り扱いに関連した事例
(スピーチバルブと間違えてキャップを装着した事例) - 外来で腹水穿刺を行う予定であったが、誤って胸水穿刺を行った事例
- 病理に関連した事例(第24回報告書)-他の病理検体の混入-
(検体採取後に容器に入れる時に混入した事例の内容) - 病理検査室での検体処理時に混入した事例
(病理検査室での検体処理時の事例の内容) - 医療関係者が磁性体を持ち込んだ事例 (磁性アタッチメント構造の義歯)
- 胸腔ドレーン挿入時の左右の取り違え(医療安全情報No.99)(準備)
- 胸腔ドレーン挿入時の左右の取り違え(医療安全情報No.99)(実施)
2. 検討方法
医療機器に起因するヒヤリ・ハット等の事例について、医療機器としての観点から安全対策に関する専門的な検討を行うため、各医療関係職能団体代表、学識経験者等の専門家及び製造販売業者の代表から構成される標記検討会を開催し、医療機器の物的要因に対する安全管理対策について検討した。
3. 調査結果
- 医療機器毎の事例数について
調査対象の各事例において使用されている医療機器毎に、各事例の報告者意見に基づく事故の内容及び事故の程度を分類し、まとめた結果を図1~図4、表1及び表2に示す。
また、表1及び表2においては、各医療機器におけるヒューマンエラー・ヒューマンファクターに起因する事例の事故の程度と内容の内訳を示している。
なお、参考として過去に報告されたドレーン・チューブ及びドレーン・チューブ以外の医療機器の年度別累積件数を参考1~参考2に示す。
図1 ドレーン・チューブにおける事故の内容の内訳
集計対象期間:令和2年7月1日~12月31日 |
集計対象期間:令和3年1月1日~6月30日 |
図2 ドレーン・チューブにおける事故の程度の内訳
集計対象期間:令和2年7月1日~12月31日 |
集計対象期間:令和3年1月1日~6月30日 |
種類 | 事故の程度 | 事故の内容 | 別添2 No. |
---|---|---|---|
中心静脈ライン | 障害残存の可能性がある(高い) | その他のドレーン・チューブ類の使用に関する内容 | 1,2 |
気管カニューレ | 障害残存の可能性がある(高い) | 閉塞 | 3 |
栄養チューブ(NG・ED) | 死亡 | その他のドレーン・チューブ類の使用に関する内容 | 4 |
尿道カテーテル | 障害残存の可能性がある(高い) | その他のドレーン・チューブ類の使用に関する内容 | 5 |
硬膜外カテーテル | 障害残存の可能性がある(高い) | その他のドレーン・チューブ類の使用に関する内容 | 6 |
その他のドレーン・チューブ類 | 障害残存の可能性がある(高い) | 接続間違い | 7 |
※事故の程度が「死亡」又は「障害残存の可能性がある(高い)」事例のみ
図3 ドレーン・チューブ以外の医療機器における事故の内容の内訳
集計対象期間:令和2年7月1日~12月31日 |
集計対象期間:令和3年1月1日~6月30日 |
図4 ドレーン・チューブ以外の医療機器における事故の程度の内訳
集計対象期間:令和2年7月1日~12月31日 |
集計対象期間:令和3年1月1日~6月30日 |
種類 | 事故の程度 | 事故の内容 | 別添2 No. |
---|---|---|---|
その他の医療機器等 | 障害残存の可能性がある(高い) | 医療機器等・医療材料の不適切使用 | 8 |
その他の医療機器等・医療材料の使用に関する内容 | 9 | ||
破損 | 10 |
※事故の程度が「死亡」又は「障害残存の可能性がある(高い)」事例のみ
参考1 過去に報告されたドレーン・チューブ |
参考2 過去に報告されたドレーン・チューブ以外 |
- 同様事例数について
調査対象の各事例において、これまでに同様の事例が集積され、PMDA医療安全情報を作成・配信し、注意喚起を実施している事例と同様の事例数をまとめた結果を表3と表4に示す。
分類 | 調査件数 | 同様事例数の内訳 | 事例件数 |
---|---|---|---|
中心静脈ライン | 32 |
|
4 |
気管チューブ | 21 |
|
4 |
末梢静脈ライン | 16 | 0 | |
尿道カテーテル | 14 |
|
7 |
気管カニューレ | 14 |
|
3 |
栄養チューブ (NG・ED) |
12 |
|
5 |
胸腔ドレーン | 11 |
|
2 |
腹腔ドレーン | 8 |
|
1 |
血液浄化用カテーテル・回路 | 5 | 0 | |
硬膜外カテーテル | 4 |
|
1 |
動脈ライン | 2 | 0 | |
脳室・脳槽ドレーン | 1 | 0 | |
皮下持続吸引ドレーン | 1 | 0 | |
三方活栓 | 1 |
|
1 |
その他のドレーン・チューブ類 | 40 |
|
2 |
合計 | 182 | 30 |
分類 | 調査件数 | 同様事例数の内訳 | 事例件数 |
---|---|---|---|
人工呼吸器 | 12 | 0 | |
酸素療法機器 | 7 | 0 | |
輸液・輸注ポンプ | 6 | 0 | |
歯科用回転研削器具 | 2 | 0 | |
人工心肺 | 1 | 0 | |
血液浄化用機器 | 1 | 0 | |
内視鏡 | 1 |
|
1 |
心電図・血圧モニター | 1 | 0 | |
パルスオキシメーター | 1 |
|
1 |
高気圧酸素療法装置 | 1 | 0 | |
その他の医療機器等 | 67 |
|
5 |
合計 | 100 | 7 |
- 安全使用対策の必要性
医療機器の製造販売業者等による安全使用対策の必要性の有無について、調査対象の全282事例の調査結果を表5に示す。
調査結果 | 事例数 | 割合 |
---|---|---|
医療機器の安全使用に関して製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えられた事例 | 0 | 0.00% |
製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例 | 7 | 2.48% |
製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例 | 275 | 97.52% |
合計 | 282 | 100% |
4. 調査結果の内訳
- 製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例(別添1)
- 植込み型補助人工心臓システムのポンプ停止の事例(1番)
- 自動縫合器による血管の切離不良の事例(2番)
- 皮下植込み型ポートのカテーテル断裂の事例(3~7番)
- 製造販売業者によるモノの対策は困難と考えられた事例(ヒューマンエラー、ヒューマンファクター)(別添2)
- 製造販売業者によるモノの対策は困難と考えられた事例(情報不足等)(別添3)
以上