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安全対策業務

令和4年度 第1回医薬品・再生医療等製品安全使用対策検討結果報告(薬局ヒヤリ・ハット事例)

令和4年10月27日
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

1. 調査対象の範囲

 公財)日本医療機能評価機構による薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業において収集され評価機構ホームページで公表されている事例から、以下のとおり抽出した全3,301事例。

 令和3年1月1日~令和3年10月31日までに報告された94,620事例のうち、事例の区分が「調剤に関するヒヤリ・ハット事例」(以下、「調剤」という。)及び「疑義照会や処方医への情報提供に関する事例」(以下、「疑義照会」という。)であり、発生要因が「医薬品の名称類似」、「医薬品や包装の外観類似」または「医薬品包装表示・添付文書の要因」のいずれかに該当する6,680事例から、以下の事例を抽出。
(1)事例の区分「調剤」では、「事例の内容」が「規格・剤形間違い」又は「薬剤取違え(同成分)」のいずれにも該当しない事例。
(2)事例の区分「疑義照会」では、「仮に変更前の処方通りに服用した場合の患者への影響」については「患者に健康被害が生じたと推測される」に該当する事例、「処方通りに服用した患者への影響」については「患者に健康被害があった」に該当する事例。

2. 検討方法

 薬局ヒヤリ・ハットの事例について、医薬品の使用方法及び名称・包装等の観点から安全管理対策に関する専門的な検討を行うため、各医療関係職能団体代表、学識経験者等の専門家及び製造販売業者の代表から構成される標記検討会を開催し、医薬品の物的要因に対する安全管理対策について検討した。

3. 調査結果

 医薬品の製造販売業者等による安全使用対策の必要性の有無について、3,301事例のうち処方箋からの保険者番号等の転記ミスや調剤報酬の算定誤り等を除いた3,287事例の調査結果を表1に示す。

 
表1 薬局ヒヤリ・ハット事例に関する調査結果
調査結果 事例数 割合
医薬品の安全使用に関して製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えられた事例 0 0%
製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例 260 7.9%
製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例 3,027 92.1%
3,287 100%

 

4. 調査結果の内訳

  1. 製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例(別添1
    1. キサンチン系気管支拡張剤と向精神作用性てんかん治療剤・躁状態治療剤との販売名類似による取違え等の事例(1~3番、144~148番)
    2. ドパミン作動性パーキンソン病治療剤、レストレスレッグス症候群治療剤とアルツハイマー型認知症治療剤との外観類似による取違え等の事例(4番)
    3. 入眠剤と抗てんかん剤との販売名類似による取違え等の事例(5~8番、150~179番)
    4. 一般名称類似による取違え等の事例(9~26番、34~39番、78~143番、180~191番、195番、222~223番)
    5. アレルギー性疾患治療剤と持続性Ca拮抗降圧剤との販売名類似による取違え等の事例(27~33番、192~194番)
    6. アレルギー性鼻炎治療剤とアレルギー性結膜炎治療剤との販売名類似による取違え等の事例(40番)
    7. 抗てんかん剤と消化酵素製剤との販売名類似による取違え等の事例(41番、196~210番)
    8. 選択的DPP-4阻害剤/SGLT2阻害剤 配合剤-2型糖尿病治療剤-とSGLT2阻害剤との販売名類似による取違え等の事例(42~47番、211~215番)
    9. スルホニルウレア系経口血糖降下剤と高血圧症・狭心症・不整脈治療剤、本態性振戦治療剤との販売名類似による取違え等の事例(48番)
    10. 前立腺癌治療剤(CYP17阻害剤)と前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤(ホスホジエステラーゼ5阻害剤)との販売名類似による取違え等の事例(49~51番、216番)
    11. 経皮吸収型鎮痛・消炎剤と外用鎮痛・消炎固形軟膏との販売名類似による取違え等の事例(52~54番)
    12. COPD治療配合剤と長時間作用性吸入気管支拡張剤との販売名類似による取違え等の事例(55~75番、217~218番)
    13. アスピリン/ランソプラゾール配合剤とカリウムイオン競合型アシッドブロッカー-プロトンポンプインヒビター-との販売名類似による取違え等の事例(76~77番、219~221番)
    14. 免疫抑制剤と免疫抑制剤との一般名が同一であることによる取り違え等の事例(149番)
    15. 鎮咳剤と不整脈治療剤との販売名類似による取違え等の事例(224~229番)
    16. 抗精神病剤とその他の循環器官用薬との販売名類似による取違え等の事例(230~235番)
    17. キサンチン系気管支拡張剤と徐放性カリウム剤との販売名類似による取違え等の事例(236~239番)
    18. 抗乳癌剤と高血圧症・狭心症治療薬、持続性Ca拮抗薬との販売名類似による取違え等の事例(240~248番)
    19. 選択的DPP-4阻害剤-2型糖尿病治療剤-と筋緊張緩和剤との販売名類似による取違え等の事例(249番)
    20. 持続性気管支拡張剤、腹圧性尿失禁治療剤とうつ病・うつ状態治療剤、遺尿症治療剤との販売名類似による取違え等の事例(250番)
    21. 副腎皮質ホルモン外用剤と外用副腎皮質ホルモン剤との販売名類似による取違え等の事例(251~252番)
    22. 尿酸排泄薬と選択的α1A遮断薬、前立腺肥大症に伴う排尿障害改善薬との販売名類似による取違え等の事例(253~258番)
    23. 選択的SGLT2阻害剤-2型糖尿病治療剤-とアレルギー性疾患治療剤との販売名類似による取違え等の事例(259~260番)
  2. 製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例(ヒューマンエラー、ヒューマンファクター)(別添2
  3. 製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例(副作用、情報不足等)(別添3

5. その他

 令和3年度第2回医薬品・再生医療等製品安全使用対策検討会(令和4年3月開催)において「現在調査中の事例」として報告したインチュニブ錠(以下、本剤)に係る事例について、以下のとおり調査結果を報告する。

 当該事例では、医療従事者の間で本剤が徐放性製剤であることが認識されておらず、「症状に応じて割って調節しながら服用する」という不適切な指示が患者に伝達されていた。
 本剤の製造販売業者である塩野義製薬株式会社に対し、同様事例の集積状況及び追加の安全対策等の必要性について確認したところ、以下の回答を得た。

 本剤が発売された2017年5月以降、同様事例の1ヶ月当たりの報告件数は、本剤の処方制限解除(2018年5月)以降は一定の範囲内で推移しており、出荷数量あたりの報告件数は、発売後約1年間は比較的高く推移しているが、その後は減少傾向にある。
 これまで安全対策として、添付文書や患者向医薬品ガイド、医療従事者及び患者/保護者向け資材等により注意喚起を行ってきたが、2022年3月からは安全管理部門によるMRへの追加教育を実施し、本剤の粉砕・分割・嚙み砕き(以下、粉砕等)を行わないよう医療従事者及び患者/保護者へ注意喚起することの更なる徹底を図ることとした。また、今後とも同様事例の報告状況を継続して確認し、報告件数等に増加傾向が認められた場合には、安全対策の強化を検討する予定である。そのため、2023年度以降の本剤の安全性定期報告に、本剤の粉砕等の報告状況及び追加の安全対策の必要性に係る見解を含めることとする。

 機構は、粉砕等の事例が継続して報告されていること等を踏まえ、本剤については定期的に報告件数等を確認し、追加の安全対策の必要性について今後も検討が必要と判断した。

 これらのことより、現時点での調査結果は「製造販売業者等により既に対策が取られているもの、もしくは対策を既に検討中の事例」に該当するものと考える。

 

以上