独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

ブラッドアクセス留置用カテーテルセット等に係る使用上の注意等の自主点検等について

薬食審査発第1007002号
薬食安発第1007001号
平成16年10月7日

各都道府県衛生主管部(局)長 殿

厚生労働省医薬食品局審査管理課長

厚生労働省医薬食品局安全対策課長

ブラッドアクセス留置用カテーテルセット等に係る使用上の注意等の自主点検等について

 人工透析を行うためにブラッドアクセス留置用カテーテルセットを留置している患者で分岐管とエクステンションチューブの接合部が緩んでいるとの事象が報告された。検証の結果(詳細は別紙1参照)、接合部に消毒用アルコールが湿潤している状態で使用された場合に接続部の接着強度が低下し出血等の重篤な不具合が発現する可能性が示唆された。
 接着方法及び製造工程にも依存するが、現在使用されているブラッドアクセス留置用カテーテルセットの多くに同様のリスクが考えられるため、当該製品群の製造業者、輸入販売業者、外国製造承認取得者又は国内管理人(以下「製造業者等」という。)に対し、下記のとおり自主点検等を行い、適切な措置を速やかに講ずるよう、御指導方お願いする。

  1. 上記と同様のリスクを有する当該製品群の製造業者等においては、使用されることが予想され得る有機溶媒を含む消毒剤等で影響があるのか詳細な調査を行い、影響が認められる場合には添付文書の禁忌欄に、以下の点が明記されているか自主点検を行い、記載が不十分である場合には、速やかに添付文書を改訂すること。また、併せて医療機関に対し適切な使用方法及び当該リスクについて注意喚起すること。

    1)禁忌欄に「消毒用アルコール、ハイポ液(ヨード系消毒剤使用後に皮膚洗浄用として用いられる消毒・洗浄液)等のアルコール系消毒剤を本品の連結チューブの接合部に接触させないこと。」

    2)上記1)の理由として「アルコール系消毒剤を接合部に接触することにより強度が低下し接着部の脱落を起こす可能性があるため。」

    3)上記1)のアルコール系消毒剤については、医療現場で使用されることが容易に想像されるものを各製品ごとで検証し、影響のある消毒剤についてを記載すること。

    4)禁忌欄に「本品の材質に影響を及ぼすと考えられる有機溶媒等は使用しないこと。」

    5)上記4)の理由として「有機溶媒を使用することにより、本品の形状変化、劣化、切断、剥離が起こる可能性があるため」

    6)上記4)の有機溶媒については、医療現場で使用されることが容易に想像されるものを各製品ごとで検証し、影響のある有機溶媒についてを記載すること。

  2. 同様のリスクを有するブラッドアクセス留置用カテーテルセットを承認申請中の者においても、添付文書(案)について自主点検を行い、必要な改訂を行う旨、医薬品医療機器総合機構に申し出ること。
  3. 同様のリスクを有するブラッドアクセス留置用カテーテルセットを治験中の者においても、必要に応じ治験実施医療機関に対して情報提供を速やかに行い、注意喚起すること。
  4. 製造業者等においては、本リスクを考え、影響の少ない接合方法及び製造工程を確立できないか検討すること。
  5. 製造業者等においては、今後新たに販売される消毒剤、有機溶媒等の影響について常に監視及び検証を行い、影響を及ぼすことが判明した場合には速やかに添付文書の改訂を行うことともに、医療機関に対して情報提供を行うこと。

別紙

ブラッドアクセス留置用カテーテルセットの接着部の脱落の発生メカニズムについて

  1. ブラッドアクセス留置用カテーテルセットの使用目的及び使用方法
    ブラッドアクセス留置用カテーテルセットは、腎不全、肝不全、薬物中毒等の患者の透析等のためブラッド・アクセスを行う場合に使用するもの。大腿静脈、鎖骨下静脈又は内頚静脈等に挿入し、一方の孔より血液を取り出し、他方より返血する医療用具である。
  2. 今回の不具合発現箇所

    不具合発現箇所図

  3. 今回の不具合発現メカニズム
    以下の理由により、接合部の接着強度の低下が起こる。

    (1)使用後に消毒剤をガーゼに浸し留置部位の上部に貼付した場合に、接合部に消毒剤に含まれる有機溶媒が浸潤又は飛散し接合部の接着剤を溶解する。

    (2)使用ごとに消毒を行うが、その消毒剤に含まれる有機溶媒が接触し接着剤を溶解する。

  4. 汎用消毒剤の影響
    不具合の発生したブラッドアクセス留置用カテーテルセットを以下の消毒薬等の溶媒で浸漬し、37℃の恒温槽で96時間経過後引張り試験を行うと以下の接着強度の低下が見られた。
浸水なし 生食 消毒エタノール(70%) 3%ヨードチンキ(5倍希釈) 5%ハイポ液(50%)
100% 91% 29% 83% 59%

*浸水なしを100とした場合の強度比較