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安全対策業務

医薬品・医療機器等安全性情報 No.212

目次

  1. ゲフィチニブ検討会の検討結果について
  2. 平成16年4月から平成17年2月までに発出した自主点検通知等の概略について
  3. 市販直後調査への協力依頼について

この医薬品・医療機器等安全性情報は,厚生労働省において収集された副作用情報をもとに,医薬品・医療機器等のより安全な使用に役立てていただくために,医療関係者に対して情報提供されるものです。

平成17年(2005年)4月
厚生労働省医薬食品局

【情報の概要】

No. 医薬品等 対策 情報の概要
1 ゲフィチニブ検討会の検討結果について 使  FDAの承認条件に基づき海外において実施されたISEL試験について,腫瘍縮小効果では統計学的に有意な改善がみられたが,主要評価項目である生存期間に関しては,統計学的に有意な延命効果に至らなかったことが報告されたことから,日本における本剤の臨床的有用性に対する影響等を検討するためゲフィチニブ検討会を開催したので,検討の概要等について紹介します。
2 平成16年4月から平成17年2月までに発出した自主点検通知等の概略について 使  医療機器における市販後の安全対策として,平成16年4月から平成17年2月までの医療機器の安全性に関する自主点検通知や添付文書の改訂指示を行った通知の概要を,この安全性情報によりとりまとめたものです。
 今後,医療機器においても「医薬品・医療機器等安全性情報」の各号において,通知の概要を随時ご紹介します。
3 市販直後調査への協力依頼について     新医薬品の承認までに得られる有効性,安全性に関する情報等については,患者数,併用薬,合併症,年齢等に関する一定の制限のもとに行われる治験等により得られたものであることから,限定された情報とならざるを得ません。しかし,新医薬品がいったん販売開始されると,治験時に比べてその使用患者数が急激に増加するとともに,使用患者の状況も治験時に比べて多様化することから,治験段階では判明していなかった重篤な副作用等が発現することがあります。このように新医薬品の特性に応じ,販売開始から6ヵ月間について,特に注意深い使用を促し,重篤な副作用が発生した場合の情報収集体制を強化する市販直後調査は,市販後安全対策の中でも特に重要な制度であります。市販直後調査の趣旨をご理解いただき,医師,歯科医師,薬剤師等の医療関係者の方々におかれましては,積極的に副作用等報告にご協力をお願いします。

緊:緊急安全性情報の配布 使:使用上の注意の改訂 症:症例の紹介

目次へ

ゲフィチニブ検討会の検討結果について

 

成分名
販売名(会社名)
成分名 販売名(会社名)
ゲフィチニブ イレッサ錠250(アストラゼネカ)
薬効分類等 その他の腫瘍用薬
効能効果 手術不能又は再発非小細胞肺癌

 

(1)はじめに

 ゲフィチニブ(販売名:イレッサ錠250)は,「手術不能又は再発非小細胞肺癌」を効能・効果とする抗悪性腫瘍剤であり,平成14年7月5日に承認された。
 現在,国内では承認条件に基づき,1又は2レジメン以上の化学治療歴を有する治癒不能な非小細胞肺癌患者を対象にゲフィチニブとドセタキセルの生存期間を比較する多施設共同非盲検無作為化群間比較第III相試験が実施されている。
 また,ゲフィチニブは平成17年4月現在,36ヵ国で承認されているが,平成16年12月,FDAの承認条件に基づき海外において実施されたISEL試験(IRESSA Survival Evaluation in Lung cancer)について,初回解析を実施した結果,腫瘍縮小効果では統計学的に有意な改善がみられたが,主要評価項目である生存期間に関し,全症例を対象とした解析では統計学的に有意な延命効果に至らなかったことが報告されたことから日本における本剤の臨床的有用性に対する影響等を検討するためゲフィチニブ検討会を開催したので,その検討の概要等について報告する。

 

(2)ISEL試験の概要

 ISEL試験は,1~2レジメンの化学療法歴のある再発又は進行非小細胞肺癌患者を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検第III相比較臨床試験で,日本を除く世界28ヵ国で試験が行われた。
(1)試験期間:2003年7月15日~2004年8月2日
(2)対象患者:1692例(1129例ゲフィチニブ,563例プラセボ)
        210施設,28ヵ国
(3)主要評価項目:生存期間
(4)副次的評価項目:治療変更までの期間,奏効率,QOL,EGFR発現,EGFR遺伝子の変異とその他バイオマーカー,安全性

 

(3)ISEL試験結果の評価とゲフィチニブ使用に関する当面の対応

 本検討会は,ISEL試験の初回解析結果について,平成17年1月20日に検討を行い「ゲフィチニブISEL試験の初回解析結果に関する意見」をとりまとめた。その意見において,本試験結果の日本におけるゲフィチニブの臨床的有用性に対する影響を判断するためには,詳細な解析結果を待つ必要があるとされた。
 また,サブグループ解析結果から,日本人は含まれていないものの東洋人においては本剤の投与が生存期間の延長に寄与することが示唆されること,非小細胞肺癌におけるEGFR遺伝子の変異が腫瘍の本剤に対する反応性に関わっているとの報告や当該遺伝子の変異の割合が米国に比し日本で高いとの報告があることを考慮すると,現時点で本剤の使用を制限する等の措置を講じる必要性に乏しく,引き続き少なくとも投与開始後4週間は入院またはそれに準ずる管理の下で,間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うなど,添付文書に記載されている安全対策を継続しつつ,肺癌化学療法に十分な経験をもつ医師による使用を徹底するなど,本剤の適正使用を進めることが適当であるとされた。
 その後,本年3月に,企業から詳細な解析結果が提出されたことから,本検討会において,ISEL試験の詳細解析結果,本年1月の検討会において指摘のあったEGFR遺伝子変異に関する知見及び厚生労働省からの依頼に基づき改訂された「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」(日本肺癌学会作成)について,本年3月10日,17日及び24日の3回にわたり検討し,次のような結論を得た。

 

1)ISEL試験結果について

 企業から提出された資料を評価した結果,ISEL試験は,well-controlled trialであることを確認した。その上で,詳細な解析結果を検討し,ISEL試験について次のとおり確認した。

ア) 全症例を対象とした場合,ゲフィチニブ投与群とプラセボ投与群との比較で腫瘍縮小効果(奏効率)では統計学的に有意な差が認められたが,主要評価項目である生存期間について,プロトコールに記載された解析手法により解析した結果,統計学的に有意な差は認められなかった。
イ) 東洋人を対象としたサブグループ解析において,ゲフィチニブの投与が生存期間の延長に寄与することが示唆された。このサブグループ解析の結果は,頑健性が認められた。

 

2)EGFR遺伝子変異の臨床応用について

 EGFR遺伝子変異とゲフィチニブの有効性に関する最近の知見について検討し,次のとおり確認した。

ア) GFR遺伝子変異は,ゲフィチニブの有効性(腫瘍縮小効果)を予測しうる重要な因子であること。
イ) EGFR遺伝子変異検査については,

(1) 標準的な測定・評価方法が確立していないことや,EGFR遺伝子変異検査の結果に偽陰性がありうること,

(2) EGFR遺伝子変異が確認されない症例においても,奏効する症例が少数ながら存在すること

 から,現在の測定・評価方法において,EGFR遺伝子変異が確認されていない場合でも,その結果がゲフィチニブの投与を行わないこととするだけの決定的な根拠とはなり得ないこと。

 

3)ゲフィチニブ使用に関する当面の対応について

 本検討会において,上記1),2)及び本年3月に改訂された「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」について,検討した結果,従来の安全対策を引き続き実施するとともに,国及び企業は,当面,次のとおり対応することが適当であるとされた。

ア) 国は,ゲフィチニブの適正使用を進めるため,以下のような方法により,本ガイドラインの医療関係者及び患者に対する周知を図ること。
(1) 企業に対し,ゲフィチニブを使用するに当たって,本ガイドラインを参考とする旨を添付文書に記載することを指示すること。
(2) 企業に対し,企業の行う情報提供活動において医療関係者に本ガイドラインを配布し,関係者に周知することを指導すること。
(3) 関係学会・団体等を通じて,医療関係者に対して,本ガイドラインを周知するとともに,医薬品医療機器情報提供ホームページ等を通じて,患者に対しても本ガイドラインの情報提供を行うこと。
イ) 企業は,患者情報の把握に一層努めるとともに,関係学会と協力するなどして,ゲフィチニブの有効性と関係する変異の解明,EGFR遺伝子変異検査方法の確立等に向けて努力し,得られた成果については積極的に公表し,医療関係者及び患者に対して情報提供すること。
ウ) ゲフィチニブの日本人における生存期間に対する有効性を評価するためには,現在実施中のドセタキセルを対照とした非盲検無作為化群間比較試験の結果が必要であり,企業は早急な試験の完了に向けて努力すること。
エ) 企業は,急性肺障害,間質性肺炎発症原因の解明や回避方法の策定に向けて努力し,得られた成果については積極的に公表し,医療関係者及び患者に対して情報提供すること。

 

(4)ゲフィチニブ検討会結果に基づく対応について

 本検討会の検討結果に基づき,ゲフィチニブの適正使用を進めるため,「使用上の注意」の改訂を行い,関係学会・団体等を通じて,医療関係者に対して,「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」の周知をお願いした。

(1) [重要な基本的注意]の項に,「本剤を投与する際は,日本肺癌学会の「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」等の最新の情報を参考に行うこと。」を追記した。
(2) [その他の注意]の項に,「海外で実施された1~2レジメンの化学療法歴のある再発又は進行非小細胞肺癌患者を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検第III相比較臨床試験において,腫瘍縮小効果では統計学的に有意差が認められたが,対象患者全体(HR=0.89,p=0.09,中央値5.6ヶ月vs5.1ヶ月),腺癌患者群(HR=0.84,p=0.09,中央値6.3ヶ月vs5.4ヶ月)で生存期間の延長に統計学的な有意差は認められなかった。」を追記した。

 

(5)最後に

 本剤による治療を検討するに際しては,添付文書を熟読するとともに「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」等の最新の情報を参考とし,患者に対してISEL試験結果など本剤の有効性・安全性等について十分に説明し,同意を得た上で投与することが重要である。
 また,本剤との因果関係が否定できない間質性肺炎等の副作用が発現した場合には,薬事法第77条の4の2第2項の規定に基づき,厚生労働省医薬食品局安全対策課へ速やかに副作用報告を行っていただきたい。
 「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」については,独立行政法人医薬品医療機器総合機構の情報提供ホームページでも入手できるのでご活用いただきたい。
(http://www.info.pmda.go.jp/happyou/happyou_index.html)
 なお,ゲフィチニブ検討会で使用した資料については,厚生労働省のホームページから入手できるのでご参照いただきたい。
(http://www.mhlw.go.jp/shingi/other.html#iyaku)

 

(参考)

急性肺障害・間質性肺炎の症状は,発熱,乾性咳嗽,息切れ,呼吸困難等であり,これら症状の全てに注意すること。間質性肺炎の診断には注意深い聴診が重要である。また,酸素飽和度(SpO2)の測定,胸部X線写真の撮影を適宜行うこと。
<注釈>文献2に詳しく記載してある。

  

 

日本肺癌学会

「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン作成委員会」

 

 

ゲフィチニブ使用に関するガイドライン

2005年2月19日作成

2005年3月2日第1回修正

2005年3月15日第2回修正

 

日本肺癌学会会長 藤澤武彦

「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン作成委員会」

西條長宏(委員長)

加藤治文,工藤翔二,多田弘人,田村友秀,早川和重,福岡正博,

光冨徹哉,山本信之,根来俊一

 ゲフィチニブ(イレッサ)は,EGFRチロシンキナーゼ阻害作用により抗腫瘍活性を発揮するとされている抗悪性腫瘍剤である。我が国も参加した第II相国際共同治験(略称IDEAL-1,文献1)で,プラチナ製剤を含む前化学療法無効ないし再発進行非小細胞肺癌に対して,日本人では27.5%の奏効率が認められ,2002年7月5日世界に先駆けて手術不能又は再発非小細胞肺癌を適応症として厚生労働省(以下厚労省)から承認された。その後,2003年5月5日に米国食品医薬品局(FDA)は,標準的化学療法に不応となった進行非小細胞肺癌に対しゲフィチニブを単独投与で使用することを承認した。現在まで35の国と地域で承認されている。

 我が国では市販後本剤投与が原因と思われる重篤な間質性肺炎/急性肺障害が次々と報告され社会的問題となってきた。2004年12月28日現在,厚労省,医薬品医療機器総合機構(以下機構)に報告されている「ゲフィチニブ使用との関連が疑われている急性肺障害・間質性肺炎等の副作用発現状況」によると,1473例が報告され,うち588人が死亡したとのことである。アストラゼネカ社(以下ア社)が厚労省に報告した同時期のゲフィチニブ服用推定累積患者数は86800人とされている。2002年10月15日に厚労省の指示により,本剤による間質性肺炎/急性肺障害についての「緊急安全性情報」が発出された。2002年12月25日に厚労省は「第1回ゲフィチニブ安全性問題検討会」を開催し,翌26日に「検討結果に基づく対応通知」が発出された。同検討会は2003年5月2日にも開催された。ア社は「ゲフィチニブの急性肺障害・間質性肺炎に関する専門家会議」を組織し,本剤との関連が疑われる急性肺障害・間質性肺炎発症例を解析し,2003年3月26日付で結果を報告した(文献2)。
 ア社は2004年8月に「イレッサ錠250プロスペクティブ調査(特別調査)に関する結果と考察」を報告した(文献3)。それによると,2003年6月から同12月に登録された症例中,安全性評価対象3322例について検討が行われ,「市販後調査における急性肺障害・間質性肺炎判定委員会」による評価結果は,「急性肺障害・間質性肺炎の発現率は5.81%(193例/3322例)」,「死亡例の割合は2.3%(75例/3322例)」とされた。急性肺障害・間質性肺炎の発現因子に関する多変量解析結果は,PS>2,有喫煙歴,間質性肺炎合併例,有化学療法歴が有意な因子とされた。急性肺障害・間質性肺炎の予後不良因子(転帰死亡)に関する多変量解析結果は,男性,PS>2が有意な因子とされた。これらの報告・分析などに基づき,本剤の添付文書は何度か改訂され,現在2005年2月改訂第10版が使用されている。

 日本肺癌学会はゲフィチニブの適正使用に関する見解をまとめることを目的として「ゲフィチニブの適正使用検討委員会」を設け,主として安全性の面から臨床試験及び実地医療でのゲフィチニブ使用に関するガイドラインをまとめ,『「ゲフィチニブ」に関する声明』を本学会雑誌「肺癌」(第43巻第6号,2003年10月号)で公表した(文献4)。

 2004年春米国からEGFRの遺伝子変異がゲフィチニブの感受性予測因子であることを示唆する報告がなされ注目を集めた(文献5,6)。しかも,EGFRの遺伝子変異を有する症例の背景因子が,臨床的にすでに明らかにされてきていた奏効予測因子,すなわち非喫煙者,腺癌,女性,日本人(東洋人)とも相関する(文献7)ことが示され,本剤の感受性に深く関わりがあるのではないかと考えられている。

 2004年12月17日ア社(本社,英国)は,1692例を対象とした生存期間を主要評価項目とする臨床試験(略称ISEL,日本の施設はこの研究には参加していない)の初回解析結果を公表した。それによると,ゲフィチニブは「全症例を対象とした解析(ハザード比0.89,p=0.11,生存期間中央値5.6 vs 5.1ヶ月),腺癌症例を対象とした解析(ハザード比0.83,p=0.07,生存期間中央値6.3 vs 5.4ヶ月)においてプラセボに比較し生存期間を有意に延長しなかった」ことが示された。ただし,342例の東洋人のサブセット解析では,ゲフィチニブ群で生存期間が改善することが示唆された(生存期間中央値9.5 vs 5.5ヶ月)。

 また,374例の非喫煙者を対象としたサブセット解析でも,ゲフィチニブ群で生存期間が改善することが示唆された(生存期間中央値8.9 vs 6.1ヶ月)。しかし,東洋人の喫煙者(201例)に限るとプラセボ群と変わりなかった(生存期間中央値5.7 vs 6.3ヶ月)。この結果に対して,FDAは市場からのイレッサ回収の可能性をも含めた妥当な規制措置を決める予定との声明を出した。一方,ア社は欧州医薬品審査庁(EMEA)への承認申請を取り下げると発表した。本邦では,厚労省が2005年1月20日に「ゲフィチニブ検討会」を開催し,同会での検討結果を「ゲフィチニブISEL試験の初回解析結果に関する意見」として公表した。その要点は,1)ISEL試験結果の詳細な解析結果を待つ必要があること,2)現時点で本剤の使用を制限する等の措置を講じる必要性に乏しいことの2点である。FDAは2005年3月4日に「Oncologic Drugs Advisory Committee」(略称ODAC)と称する公聴会においてISEL試験結果を討議した。

 このような背景の中で,2005年2月に厚労省医薬食品局安全対策課から日本肺癌学会に対して,最近の知見を踏まえて実地医療でのゲフィチニブ使用に関するガイドラインの改訂が依頼された。これを受けて日本肺癌学会会長は2005年2月17日「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン作成委員会」(以下作成委員会と略す)を組織した。作成委員会は,2003年10月に本学会が公表した『「ゲフィチニブ」に関する声明』をもとにその後の知見を踏まえて,ゲフィチニブから利益を得られる可能性の高い集団を明らかにし,本剤の実地医療におけるベネフィット/リスク比を高める観点から「実地医療でのゲフィチニブ使用に関するガイドライン」を作成した。

 なお,本ガイドラインは刻々変化するゲフィチニブに関する世界情勢の中で,上記経緯から短期間に急遽作成された暫定的なものであることに留意されたい。

  

 

 

実地医療でのゲフィチニブ使用に関するガイドライン

●適応
1. 本剤添付文書の「効能・効果」に記載されている適応症である「手術不能又は再発非小細胞肺癌」を厳守すること。
2. 本剤添付文書の「効能・効果に関連する使用上の注意」に記載されているように,「1.化学療法未治療例における有効性及び安全性は確立していない,2.術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない」ため,これらの症例に対しては実地医療としては本剤を使用すべきではない。
<注釈>第1項に関しては,本邦で少なくとも3つの臨床第II相試験が公表(文献8-10)されており,その奏効率は約30%で,生存期間中央値(MST)が明らかにされている2試験では,14.5ヶ月と10.0ヶ月であった。一方,1試験では10%の急性肺障害による死亡が報告された。以上から,添付文書の「化学療法未治療例における有効性及び安全性は確立していない」という記載を覆すにいたる医学的根拠には現時点では乏しいといえる。
3. ゲフィチニブ投与により利益(延命,症状改善,腫瘍縮小効果)が得られる可能性の高い患者群が明らかにされてきた。すなわち,腺癌,女性,非喫煙者,日本人(東洋人),EGFRの遺伝子変異を示す症例である。今後本剤投与にあたっては,本剤から利益を得られやすいこれら患者群に投与することが推奨される。
<注釈1>本剤の本邦における第I相試験(文献11)段階で,各種悪性腫瘍31例中PR5例は全例非小細胞肺癌で,組織型は全例腺癌で,4例が女性であったことが報告されていた。IDEAL-1の日本人サブセット解析(文献12)では,女性対男性のMSTは414日対309日,腺癌対非腺癌のMSTは406日対275日で統計学的有意差は明示されていないが,生存曲線はいずれも両群間で大きな開きがみられた。実地医療においても同様の結果(文献13-15)が示された。これらのことが根拠としてあげられる。
<注釈2>EGFRの遺伝子変異がゲフィチニブの感受性予測因子であることを示唆する米国からの初期の報告(文献5,6,16)から,ゲフィチニブ投与条件としてEGFRの遺伝子変異例に限定するという考え方を主張する学者もいる。しかし,(1)EGFRの遺伝子変異をみる標準的な測定・評価方法が確立されておらず,方法・手技により検出率が異なる可能性があること,また切除不能肺癌においては正常細胞の混入の少ない検体を得ることが困難なことがしばしばあること,(2)測定に数週間要する場合があること,(3)解析可能な研究施設が限定されておりルーチン化は現時点では困難なこと,(4)EGFR-TKドメインをコードするエクソン以外に,遺伝子変異が存在する可能性もあること,(5)またゲフィチニブの感受性を高めるEGFR遺伝子変異の他に抵抗性をもたらす遺伝子変異も発見されたこと(文献17,18),(6)EGFR遺伝子以外にも感受性に関与している遺伝子の存在の可能性があること,(7)確かにEGFRの遺伝子変異と本剤の臨床的効果との相関性は高く,EGFRの遺伝子変異が重要なゲフィチニブの感受性予測因子であることは間違いない。しかし,遺伝子変異と感受性とが完全には一致しないことが本邦の研究(文献19-23)で示されている。このことから,本剤投与例全例に予めEGFR遺伝子変異の有無を測定し,本剤投与の適応を決定するほどの確実性・現実性は現時点ではないと判断するのが妥当である。
4. 本剤と他の抗悪性腫瘍剤や放射線治療との同時併用における有効性と安全性は証明されていないので,実地医療としては本剤を単剤で投与すること。
<注釈>未治療進行非小細胞肺癌を対象とした標準的化学療法にゲフィチニブを追加することの意義を問う2つの第III相試験(INTACT,文献24,25,日本の施設はこの研究に参加していない)で本剤の追加効果が示されなかった。ビノレルビンとの併用で重篤な骨髄抑制が出現したことが報告された(文献26,27)。
5. ゲフィチニブ投与症例の選択基準として,本邦も参加した本剤の国際共同第II相試験(文献1)の症例選択・除外基準(付1)を参考とすること。その他本邦で安全に実施された医師主導の臨床試験の症例選択・除外基準も参考とすること。これら以外の症例への投与は安全性の検討が行われていないことから,現時点では臨床試験以外では原則的に投与すべきではない。
6. 本剤の急性肺障害・間質性肺炎発症のリスクファクターとされているPS2以上の全身状態不良例,喫煙歴を有する者,間質性肺炎(特発性肺線維症,放射線肺炎,薬剤性肺炎など)合併症例,男性,低酸素血症を有する者,塵肺,扁平上皮癌などに対する本剤投与は,当該患者が本剤から得られる利益が本剤投与による危険性を上回ると判断される場合に限定すること。
<注釈>急性肺障害・間質性肺炎発症のリスクファクターおよび発症後の予後不良因子については,文献2,3,13に詳しく記載されており参照すること。
7. 本剤は,肺癌化学療法に十分な経験をもつ医師が使用するとともに,投与に際しては緊急時に十分に措置ができる医療機関で行うこと。なお,間質性肺炎の専門医の助言を適宜得られる環境下での使用が望ましい。
8. 患者に本剤投与の目的,投与法,予想される効果(ISEL試験結果も含む)と副作用(重篤な間質性肺炎/急性肺障害の発生と死亡例がみられていること含む),代替治療法の有無と有りの場合における当該治療法の利害得失などを十分に説明した後に,患者の自由意思による同意を文書で得ておくこと。
9. 以上の条件を全て満たした場合に,本剤の投与を行うべきである。

 

●投与中の注意点
1. 急性肺障害・間質性肺炎の症状は,発熱,乾性咳嗽,息切れ,呼吸困難等であり,これら症状の全てに注意すること。間質性肺炎の診断には注意深い聴診が重要である。また,酸素飽和度(SpO2)の測定,胸部X線写真の撮影を適宜行うこと。
<注釈>文献2に詳しく記載してある。
2. 患者に予め上記自覚症状の意味を説明し,もしそれらを自覚した場合は,直ちに担当医師(医療機関)を受診するよう指導しておくこと。
<注釈>これら自覚症状に最も早く気づくのはいうまでもなく患者本人であるから,急性肺障害・間質性肺炎の早期発見のためには,患者と医師をはじめ医療関係者との共同作業が重要であることを再確認する必要がある。
3. 医療機関側は,上記自覚症状を訴えた患者が常時受診可能な体制を整備しておくこと。
4. 本剤添付文書「警告」欄の第2項に「…また,急性肺障害や間質性肺炎が本剤の投与初期に発生し,致死的な転帰をたどる例が多いため,少なくとも投与開始後4週間は入院またはそれに準ずる管理の下で,間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと」とされており,投与にあたってはこの「警告」を遵守すること。
<注釈>文献3を参照。なお,本剤投与開始1~2週間以内の急性肺障害・間質性肺炎の発症は死亡率が高いとの報告(文献13)もあることから,特に投与開始後2週間は入院による厳重な観察を行うことを強く推奨する。
5. 上記自覚症状を認めた場合,直ちに胸部単純X線写真撮影,胸部CT(可及的にHRCT),動脈血ガス分析(特にAaDO2開大に注意),DLco測定等を行い,急性肺障害・間質性肺炎発症の有無を鑑別すること。鑑別には投与前との比較が重要であり,投与前にもこれら検査を行っておくことが望ましい。
6. 本剤の治療効果は投与後早期に認められることが多い(文献28)ので,開始後1ヶ月以上経過しても肺癌に伴う自覚症状の改善がみられないか,画像上の腫瘍縮小効果が全く認められない場合,本剤の投与継続については,再度当該患者の全身状態,患者希望,急性肺障害・間質性肺炎のリスクファクターの有無等を総合的に判断して慎重に決定すること。

  

●急性肺障害・間質性肺炎出現時の対応
1. 急性肺障害・間質性肺炎出現時は,直ちに本剤の投与を中止する。
2. ステロイドホルモンの投与が,一部の急性肺障害・間質性肺炎に効果があるとの報告が散見される。ステロイドホルモンの投与が禁忌でなければ,メチルプレドニゾロン500~1000mgを3日間投与するパルス療法を考慮すること。なお,ステロイド剤の継続投与で効果がみられた症例では,その漸減は慎重に行うこと。
3. 免疫抑制剤の効果は不明確である。
付) ゲフィチニブの効果因子やILDの発症因子などの新知見により本ガイドラインはその都度改訂される。

  

付1(参考)
「1~2レジメンの化学療法歴(少なくとも1レジメンは白金製剤を含む)を有する進行非小細胞肺癌を対象としたZD1839(IRESSATM)250mg/日及び500mg/日の有効性を検討する無作為化二重盲検並行群間第II相多施設共同臨床試験」における症例選択基準及び除外基準

 

選択基準
1. 局所進行(もしくは転移性)で手術または放射線療法で治癒可能でないIII期,または,IV期のNSCLC患者。組織学的又は細胞学的にNSCLCと確認されている患者。
2. 1~2レジメンによる化学療法(少なくとも1レジメンは白金製剤を含む)を受け再発もしくは抵抗性を示した患者。
3. 病巣周辺が明瞭な二方向測定可能病変が1つ以上ある患者。あるいは,病巣周辺が明瞭でないが,X線で評価可能な病変が1つ以上ある患者。
4. WHO Performance Status(PS)が0~2の患者。
5. 12週以上の生存が予測される患者。
6. 18歳以上の患者。
7. 治験に参加することについて文書で同意が得られている患者。

  

除外基準
1. 過去に3レジメン以上の化学療法を受けた患者。
2. 治療1日目の前21日以内に抗癌剤の全身投与の最終投与を受けた患者。
3. 以前に抗癌療法を受けてからCTCグレード2を超える慢性毒性が消失していない患者(脱毛症を除く)。
4. 治療1日目の前14日以内に放射線療法が施行された患者。
5. 以前の腫瘍手術又はその他の大手術からの回復が不十分である患者。
6. 上大静脈症候群を合併する患者。
7. 新たに脳内転移が診断された患者。なお,以前に脳内転移と診断され,治療された患者については,治療1日目の2ヵ月前以上,臨床的及び放射線学的に状態が安定している場合は,組み入れ可とする。
8. 脊髄圧迫を伴う神経学的症状の徴候を有する患者。
9. 治験責任医師等の判断により,重度又はコントロールされていない全身疾患があり,その結果PSが2を超えている患者。
10. 当該治験に参加することが望ましくないと考えられる著しい臨床症状又は臨床検査値の異常を有する患者。
11. 好中球が1500/mm3未満又は血小板が7万5千/mm3未満の患者。
12. 血清ビリルビンが基準値上限の1.25倍を超える患者。
13. 肝転移が認められない場合,ALT又はASTが基準値上限の2.5倍を超える患者。あるいは,肝転移がある場合,基準値上限の5倍を超える患者。
14. 血清クレアチニンが基準値上限の1.5倍を超える患者。
15. ヒト免疫不全ウイルス(HIV)又はB型肝炎を,血液や他の体液から感染させる危険性があると治験責任医師等が判断した患者。
16. 妊娠中又は授乳中の患者。

  

文献
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平成16年4月から平成17年2月までに発出した自主点検通知等の概略について

 医療機器における市販後の安全対策として,平成16年4月から平成17年2月までの医療機器の安全性に関する自主点検通知や添付文書の改訂指示を行った通知の概要を,この安全性情報によりとりまとめたものです。なお,詳細については,医薬品医療機器総合機構情報提供ホームページ(https://www.pmda.go.jp/)の機器安全対策通知に掲載しているので,各項目の自主点検通知等をご覧ください。  今後,医療機器においても「医薬品・医療機器等安全性情報」の各号において,通知の概要を随時ご紹介します。

 

(1)二酸化炭素吸収剤による発火等に係る自主点検等について(平成16年9月6日)

 閉鎖循環式麻酔器には各種の二酸化炭素吸着剤が使用されているが,ある種の乾燥した二酸化炭素吸収剤と麻酔薬セボフルランの使用により,発火又は異常発熱するという外国事例の報告がなされた。麻酔器及び二酸化炭素吸着剤の製造業者,輸入販売業者等に調査を依頼したところ,二酸化炭素吸収剤は10~20%程度の水分を含んだ水酸化カルシウムを主成分とするアルカリ性物質であるが,当該発熱のリスクは特定の製品に限定されるものではなく,乾燥させて使用することに伴う共通のリスクである可能性があり,発火等以外にも一酸化炭素の発生や二酸化炭素吸収能力の低下が考えられるとの報告があった。
 このため,二酸化炭素吸着剤を用いる閉鎖循環式麻酔器等の製造業者等に対し,禁忌・禁止の欄について,次の事項の記載の有無について点検を行い,記載が不十分である場合には,速やかに添付文書を改訂するよう,また,併せて医療機関に対し適切な使用方法及び当該リスクについて注意喚起するよう通知したものである。

「二酸化炭素吸収剤を開封したまま放置すること,循環式呼吸回路に新鮮ガス(主に酸素)が供給された状態のまま放置すること等により二酸化炭素吸収剤を乾燥させないこと[二酸化炭素吸着剤の水分が失われた状態で,吸入麻酔薬と併用することで,発火,異常発熱,一酸化炭素の発生又は二酸化炭素吸収能の低下の可能性があるため]。」

 

(2)自己血回収セット等に係る使用上の注意等の自主点検等について(平成16年9月10日)

 自己血回収セットの準備中にアスピレーションライン(術野側の吸引チューブ)で異物がリザーバー(血液を一時保持する場所)内に混入したとの報告がなされた。検証の結果,アスピレーションラインを閉塞させ減圧度を保った状態で吸引源(院内の壁吸引,装置内のポンプ及び医療機関での外付けポンプ)の減圧度を下げることにより,自己血回収セットのリザーバーの両側(アスピレーション側と吸引源側)で圧の逆転現象が発現し,これによりリザーバーの吸引源側のラインに存在する異物等の混入が引き起こされる可能性が示唆された。
 このため,自己血回収セットの多くに同様のリスクが考えられるため当該製品群の製造業者等に対し,禁忌・禁止の欄に次の事項の記載の有無について点検を行い,記載が不十分である場合には,速やかに添付文書を改訂するよう,また,併せて医療機関に対し適切な使用方法及び当該リスクについて注意喚起するよう通知したものである。

 

1) 「アスピレーションライン(術野側の吸引チューブ)を閉塞させた状態で吸引器の減圧操作を行わないこと。[アスピレーションライン(術野側の吸引チューブ)を閉塞させた状態で,吸引源(院内の壁吸引,装置内のポンプ及び医療機関での外付けポンプ)からの吸引の中止又は減少が起こった場合に,圧の逆転現象が発生し,リザーバー(血液を一時保持する場所)と壁吸引部との間に存在する異物が混入する可能性があるため。]」
2) 「吸引源とリザーバーの間に必ずレギュレーター(吸引制御装置)を使用すること。また,レギュレーターとリザーバーの間に使用する吸引ライン(レギュレーターとリザーバーを繋いでいるチューブ)は滅菌済みのものか単回使用で滅菌が施されているものを使用すること。なお,レギュレーターの設定値は吸引源で規定されている吸引圧以下の設定にはしないこと。[レギュレーターを使用しても圧の逆転現象は完全に防げないことからレギュレーターとリザーバーの間に使用する吸引ラインは滅菌済みのものを使用する。また,レギュレーターの吸引圧の設定は,吸引源で規定されている吸引圧以下とした場合にレギュレーターが適切に使用できないため,設定値以下にはしないこと。]」
3) 「レギュレーターとリザーバーの設置位置について,リザーバーはレギュレーターに比べ高い位置で設定すること。また,設定できない場合にはレギュレーターとリザーバーの間に使用する吸引ラインをレギュレーターとリザーバーポートの低い位置で弛ませること。[リザーバーポートを高い位置で設定することにより,圧の逆転現象を軽減し,異物のリザーバーへの混入のリスクを低減するため。また,体温などによる結露がリザーバーポートに混入しないため。]」
4) 「吸引源とリザーバーへの接続ラインは分岐をさせずに,単独のラインとする。[他の分岐ラインの圧開放による圧の逆転現象を防止するため。]」

 

(3)バイポーラ電極を有する電気手術器に係る自主点検等について(平成16年9月24日)

 バイポーラ電極を有する電気手術器により止血等の治療が行われているところであるが,バイポーラコードの電極端子には現在,固定形φ4mmプラグと二股φ4mmプラグが流通している。このうち二股φ4mmプラグ(以下「フライングリード」という。)については,モノポーラ電極の3極出力端子に誤接続出来てしまうことが確認されており,誤接続(バイポーラ電極をモノポーラ端子に接続)に気付かず使用すると,バイポーラピンセットの電極先端同士が接触した時にモノポーラの出力スイッチが押されたのと同じ状態になり,通常のバイポーラ出力の数倍~10倍のモノポーラ出力が生ずることが確認されており,微細なバイポーラによる手術を行う脳外科,形成外科等においては,重篤な有害事象を引き起こす可能性があることから次の事項の記載の有無について点検を行い,記載が不十分である場合には,速やかに添付文書を改訂するよう,また,併せて医療機関に対し適切な使用方法及び当該リスクについて注意喚起するよう通知したものである。

 

1) バイポーラ出力により止血・凝固を意図した電気手術器等のうち当該フライングリードを取り扱う製造業者等は,禁忌・禁止の項に,「本品はバイポーラ端子専用のコードであり,モノポーラ端子には接続しないこと。[誤って本コードをモノポーラ出力端子に接続すると,予期せぬ出力電力が発生し,重篤な有害事象を引き起こす可能性がある。]」
2) バイポーラ出力により止血・凝固を意図した電気手術器等のうち固定形φ4mmプラグを取り扱う製造業者等は,警告の項に,「本品には指定された付属品(固定形φ4mmプラグ)のみ使用すること。」

 

(4)電気手術器と穿刺用ニードルガイド等の併用に係る自主点検等について(平成16年9月24日)

 ラジオ波による焼灼療法及びマイクロ波による凝固療法が行われているところであるが,当該治療を経皮的に施行する際に使用される超音波プローブと併用する金属製ニードルガイドによって電気手術器のニードルカニューレ上の絶縁皮膜が損傷し,患者に熱傷を引き起こした事例が報告された。調査の結果,電気手術器をニードルガイド等に挿入する際及びニードルガイド上のニードルカニューレを焼灼部位に応じて移動する際に絶縁皮膜を損傷する可能性等が示唆されたことから,次の事項の記載の有無について点検を行い,記載が不十分である場合には,速やかに添付文書を改訂するよう,また,併せて医療機関に対し適切な使用方法及び当該リスクについて注意喚起するよう通知したところである。

 

1) 穿刺針による焼灼療法等を意図する電気手術器等を扱う製造業者等
(1) 警告の項に「本品使用時に穿刺用ニードルガイド等を併用する際は,ニードルカニューレの絶縁皮膜を損傷しないよう,ニードルカニューレの操作を慎重に行うこと。[穿刺用ニードルガイド等への挿入の際及び穿刺用ニードルガイドに沿って出し入れを行う際,絶縁皮膜を損傷させ,損傷部周囲の組織に熱傷を引き起こす可能性がある。]」
(2) 重要な基本的注意の項に「穿刺ニードルガイド等を併用する場合には,本品ニードルカニューレ装着面に破損等がなくスムーズに稼動することを確認の上,慎重に操作すること。」
2)金属製又は非金属性の穿刺用ニードルガイド等を扱う製造業者等
(1) 警告の項に「本品のガイド下で電気手術器のニードルカニューレを使用する際は,ニードルカニューレの絶縁皮膜を損傷しないよう,ニードルカニューレの操作を慎重に行うこと。[電気手術器のニードルカニューレを本品に挿入する際及び本品に沿って出し入れを行う際,ニードルカニューレ上の絶縁皮膜を破損させ,破損部周囲の組織に熱傷を引き起こす可能性がある。]」
(2) 重要な基本的注意の項に「使用前に必ずニードルカニューレ装着面に破損等がなくスムーズに稼動することを確認の上,慎重に操作すること。」

 

(5)ブラッドアクセス留置用カテーテルセット等に係る使用上の注意等の自主点検等について(平成16年10月7日)

 人工透析を行うためにブラッドアクセス留置用カテーテルセットを留置している患者で分岐管とエクステンションチューブの接合部が緩んでいるとの事象が報告された。検証の結果,接合部に消毒用アルコールが湿潤している状態で使用された場合に接続部の接着強度が低下し出血等の重篤な不具合が発現する可能性が示唆された。
 接着方法及び製造工程にも依存するが,現在使用されているブラッドアクセス留置用カテーテルセットの多くに同様のリスクが考えられるため,当該製品群の製造業者等においては,使用されることが予想され得る有機溶媒を含む消毒剤等で影響があるのか詳細な調査を行い,影響が認められる場合には添付文書の禁忌欄に,次の点が明記されているか自主点検を行い,記載が不十分である場合には,速やかに添付文書を改訂するよう,また,併せて医療機関に対し適切な使用方法及び当該リスクについて注意喚起するよう指示したところである。

 

1) 「消毒用アルコール,ハイポ液(ヨード系消毒剤使用後に皮膚洗浄用として用いられる消毒・洗浄液)等のアルコール系消毒剤を本品の連結チューブの接合部に接触させないこと。[アルコール系消毒剤を接合部に接触することにより強度が低下し接着部の脱落を起こす可能性があるため。]」
2) 「本品の材質に影響を及ぼすと考えられる有機溶媒等は使用しないこと。[有機溶媒を使用することにより,本品の形状変化,劣化,切断,剥離が起こる可能性があるため。]」

 

(6)加温加湿器に係る使用上の注意等の改訂について(平成16年11月26日)

 平成16年3月15日付薬食審査発第0315001号審査管理課長通知及び薬食安発第0315001号安全対策課長通知「加温加湿器に係る使用上の注意等の自主点検等について」によって,加温加湿器の電源を入れたまま,加温加湿器チャンバーを人工呼吸回路から外し,加温加湿器チャンバーをバイパスして人工呼吸回路を直結した後,ガスポートより給水し,給水後速やかに人工呼吸回路に加温加湿器チャンバーを再接続しなかった場合に,気道内熱傷などの重篤な健康被害を引き起こす可能性が示唆されたことから,加温加湿器の給水用ポートの使用の徹底を図ることにより,当該医療機器を使用する患者の安全をさらに確保するため,次のとおり注意喚起するよう通知したところである。

  • 同様のリスクを有する加温加湿器の製造業者等及び当該医療用具を併用する人工呼吸器の製造業者等においては,以下のとおり速やかに添付文書(簡略記載が認められる付属品の添付文書を含む。)を改訂すること。また,併せて医療機関に対し注意喚起すること。

 

1) 禁忌・禁止欄に,加温加湿器に給水する際には,ガスポートを使用しないことを明記すること。
[誤接続及び誤接続による火傷,ガスポートを介した菌による人工呼吸回路内汚染の可能性があり得る。]
2) 警告欄に,加温加湿器に給水する際には,給水用ポートを使用し給水することを明記すること。
3) 上記1)及び2)に伴い,操作方法又は使用方法欄及び使用上の注意欄において,給水用ポートによる給水方法又は持続的給水が可能な医療用具による給水方法について,適切に使用できるよう明記すること。

 

(7)真空採血管等における使用上の注意等の追加等について(平成17年1月4日)

 平成15年11月17日付薬食安発第1117001号安全対策課長通知「真空採血管の使用上の注意等の自主点検等について」において,真空採血管は適切な手順で採血を行わなかった場合に採血管内の内容物や細菌等(以下「内容物等」という。)が逆流し,患者の体内に入る可能性があることから,逆流を発生させるおそれのあるリスクについて整理し,より詳細な真空採血管の使用方法等の注意喚起を行うなど製造業者等に対し,適切な措置を講ずるよう,通知したが,その後,真空採血管,採血針,ホルダー又はこれら製品を組み合わせた製品の製造業者等により,滅菌済み真空採血管,単回使用採血ホルダー及び耐圧性能を有するゴムスリーブ付採血針の改良がなされた製品が供給されることに伴い,真空採血管等の添付文書等の取り扱いを次のとおりとしたので,自主点検を行い,適切な措置を講ずるよう通知したところである。

第1 滅菌済み真空採血管における使用上の注意等の自主点検について

 

1. 滅菌済みの真空採血管を扱う製造業者等のうち併用する採血針,ホルダーが耐圧性能を有するゴムスリーブ付採血針,単回使用のホルダーであり,かつ真空採血管とその製品の組合せ以外の組合せを禁止する旨が禁忌・禁止の欄で規定されている真空採血管を扱う製造業者等においては,以下の点が明記されているか自主点検を行い,記載が不十分である場合には速やかに添付文書を改訂すること。また,併せて既に該当する製品を販売したすべての医療機関に対し,滅菌済みの真空採血管使用時の適切な採血方法及び逆流のリスクについて周知徹底すること。
(1) 禁忌・禁止欄に,以下の事項を記載すること。
(1) 採血管が室内温度に戻らないうちに採血を行わないこと。(採血管の温度により採血管内の圧力が変化し,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
(2) 採血管を抜くまで,被採血者の腕の血管の圧迫を解除したり,動かしたりしないこと。(圧迫を解除した際,あるいは腕の配置によっては静脈血圧が急激に低下し,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
(3) 採血管に血液が流入し始めた後は,採血ホルダーに押し込むような力を採血管に加えないこと。(採血管内の圧力が変化し,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
(4) 採血終了後,採血管に採血針が刺さったままの状況で駆血帯を外さないこと。(駆血帯を外すことによる圧力の変動により,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
(5) ホルダーは患者ごとの使用とし,使用後は廃棄すること。(ホルダーに血液が付着した場合は,交差感染のおそれがあるため。)
(6) 体外循環回路又は中心静脈から採血は行わないこと。(圧力の変動により,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
(2) 操作方法又は使用方法等(用法・用量を含む)欄に,少なくとも以下の事項を記載し,その他必要事項を詳細かつ簡潔に記載すること。
(1) 室内温度になった採血管を準備すること。
(2) 駆血帯をかけた後に,皮膚の消毒等を行うこと。
(3) 採血管はホルダーにまっすぐ完全に押し込むこと。
(4) 採血の血流が停止したら,直ちに採血管を採血ホルダーから外すこと。
(5) 連続採血する場合には,ホルダーを固定したまま,採血管を取り替えること。
(6) 採血終了後,採血管をホルダーから抜去した後に駆血帯を外すこと。
(3) 使用上の注意欄に,重要な基本的注意事項として,以下の事項を追加記載すること。
(1) 患者の腕及び採血管が採血中常に下向きであることを確認すること。
(2) 翼付針チューブを使用して採血する際は,採血管の位置が上下に動かないようにすること。
2. 滅菌済みの真空採血管を扱う製造業者等のうち併用する採血針,ホルダーが耐圧性能を有するゴムスリーブ付採血針,単回使用のホルダーであり,かつ真空採血管とその製品の組合せ以外の組合せを禁止する旨が禁忌・禁止の欄で規定されていない真空採血管を扱う製造業者等は,以下の点が明記されているか自主点検を行い,記載が不十分である場合には速やかに添付文書を改訂すること。また,併せて既に該当する製品を販売したすべての医療機関に対し,滅菌済みの真空採血管使用時の適切な採血方法及び逆流のリスクについて周知徹底すること。
(1) 禁忌・禁止欄に,以下の事項を記載すること。
1) 併用する採血針,ホルダーが耐圧性能を有するゴムスリーブ付採血針,単回使用のホルダーであり,かつその製品の組合せ以外の組合せを採血針,ホルダー又はその組合せ製品における添付文書で禁止する旨が禁忌・禁止の欄に規定されており,操作方法又は使用方法等(用法・用量を含む)欄で駆血帯を外すタイミングが,採血管をホルダーから抜去後であるとされている場合
(1) 採血管が室内温度に戻らないうちに採血を行わないこと。(採血管の温度により採血管内の圧力が変化し,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
(2) 採血管を抜くまで,被採血者の腕の血管の圧迫を解除したり,動かしたりしないこと。(圧迫を解除した際,あるいは腕の配置によっては静脈血圧が急激に低下し,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
(3) 採血管に血液が流入し始めた後は,採血ホルダーに押し込むような力を採血管に加えないこと。(採血管内の圧力が変化し,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
(4) 採血終了後,採血管に採血針が刺さったままの状況で駆血帯を外さないこと。(駆血帯を外すことによる圧力の変動により,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
(5) ホルダーは患者ごとの使用とし,使用後は廃棄すること。(ホルダーに血液が付着した場合は,交差感染のおそれがあるため。)
(6) 体外循環回路又は中心静脈から採血は行わないこと。(圧力の変動により,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
2) 併用する採血針,ホルダーが耐圧性能を有するゴムスリーブ付採血針,単回使用のホルダーであり,かつその製品の組合せ以外の組合せを採血針,ホルダー又はその組合せ製品における添付文書で禁止する旨が禁忌・禁止の欄に規定されているもの以外であり,操作方法又は使用方法等(用法・用量を含む)欄で駆血帯を外すタイミングが,最初の採血管をホルダーに装着する前であるとされている場合
(1) 次の(2)を記載し,次に1)の(1)~(3)を記載し,さらに次の(3)を記載し,最後に1)の(6)を記載すること。
(2) 駆血帯を装着した状態で採血管をホルダーに挿入しないこと。(駆血帯を装着した状態で採血を開始し,採血後採血管を挿入した状態で駆血帯を外した場合,静脈血圧が急激に低下し,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
(3) ホルダーは患者ごとの使用とすること。(ホルダーに血液が付着した場合は,交差感染のおそれがあるため。)
(2) 操作方法又は使用方法等(用法・用量を含む)欄に,少なくとも以下の事項を記載し,その他必要事項を詳細かつ簡潔に記載すること。
1) 併用する採血針,ホルダーが耐圧性能を有するゴムスリーブ付採血針,単回使用のホルダーであり,かつその製品の組合せ以外の組合せを採血針,ホルダー又はその組合せ製品における添付文書で禁止する旨が禁忌・禁止の欄に規定されており,操作方法又は使用方法等(用法・用量を含む)欄で駆血帯を外すタイミングが,採血管をホルダーから抜去後であるとされている場合
(1) 室内温度になった採血管を準備すること。
(2) 駆血帯をかけた後に,皮膚の消毒等を行うこと。
(3) 採血管はホルダーにまっすぐ完全に押し込むこと。
(4) 採血の血流が停止したら,直ちに採血管を採血ホルダーから外すこと。
(5) 連続採血する場合には,ホルダーを固定したまま,採血管を取り替えること。
(6) 採血終了後,採血管をホルダーから抜去した後に駆血帯を外すこと。
2) 併用する採血針,ホルダーが耐圧性能を有するゴムスリーブ付採血針,単回使用のホルダーであり,かつその製品の組合せ以外の組合せを採血針,ホルダー又はその組合せ製品における添付文書で禁止する旨が禁忌・禁止の欄に規定されているもの以外であり,操作方法又は使用方法等(用法・用量を含む)欄で駆血帯を外すタイミングが,最初の採血管をホルダーに装着する前であるとされている場合
(1) 1)の(1)から(5)を記載し,(2)の後に次の(2)を追加すること。
(2) 採血針を血管に穿刺したら,採血管を装着する前に駆血帯を外すこと。
(3) 使用上の注意欄に,重要な基本的注意事項として,以下の事項を追加記載すること。
(1) 患者の腕及び採血管が採血中常に下向きであることを確認すること。
(2) 翼付針チューブを使用して採血する際は,採血管の位置が上下に動かないようにすること。

第2 採血針,ホルダー又はその組合せ製品における使用上の注意等の自主点検について

 

1. 採血針及びホルダーが耐圧性能を有するゴムスリーブ付採血針,単回使用のホルダーであり,かつその製品の組合せ以外の組合せを禁止する旨が禁忌・禁止の欄で規定している採血針,ホルダー又はその組合せ製品を扱う製造業者等においては,以下の点が明記されているか自主点検を行い,記載が不十分である場合には速やかに添付文書を改訂すること。また,併せて既に該当する製品を販売したすべての医療機関に対し,真空採血管使用時の適切な採血方法及び逆流のリスクについて周知徹底すること。
(1) 禁忌・禁止欄に,以下の事項を記載すること。
(1) 採血終了後,採血管に採血針が刺さったままの状況で駆血帯を外さないこと。(駆血帯を外すことによる圧力の変動により,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
(2) ホルダーは患者ごとの使用とし,使用後は廃棄すること。(ホルダーに血液が付着した場合は,交差感染のおそれがあるため。)
(2) 操作方法又は使用方法等(用法・用量を含む)欄に,少なくとも以下の事項を記載し,その他必要事項を詳細かつ簡潔に記載すること。
(1) 駆血帯をかけた後に,皮膚の消毒等を行うこと。
(2) 採血管はホルダーにまっすぐ完全に押し込むこと。
(3) 採血の血流が停止したら,直ちに採血管を採血ホルダーから外すこと。
(4) 連続採血する場合には,ホルダーを固定したまま,採血管を取り替えること。
(5) 採血終了後,採血管をホルダーから抜去した後に駆血帯を外すこと。
2. 採血針及びホルダーが耐圧性能を有するゴムスリーブ付採血針,単回使用のホルダーであり,かつその製品の組合せ以外の組合せを禁止する旨が禁忌・禁止の欄で規定している採血針,ホルダー又はその組合せ製品以外を扱う製造業者等においては,以下の点が明記されているか自主点検を行い,記載が不十分である場合には速やかに添付文書を改訂すること。また,併せて既に該当する製品を販売したすべての医療機関に対し,真空採血管使用時の適切な採血方法及び逆流のリスクについて周知徹底すること。
1)禁忌・禁止欄に,以下の事項を記載すること。
(1) 駆血帯を装着した状態で採血管をホルダーに挿入しないこと。(駆血帯を装着した状態で採血を開始し,採血後採血管を挿入した状態で駆血帯を外した場合,静脈血圧が急激に低下し,採血管内の内容物等が患者の体内に逆流するおそれがある。)
(2) ホルダーは患者ごとの使用とすること。(ホルダーに血液が付着した場合は,交差感染のおそれがあるため。)
2) 操作方法又は使用方法等(用法・用量を含む)欄に,少なくとも以下の事項を記載し,その他必要事項を詳細かつ簡潔に記載すること。
(1) 駆血帯をかけた後に,皮膚の消毒等を行うこと。
(2) 採血針を血管に穿刺したら,採血管を装着する前に駆血帯を外すこと。
(3) 採血管はホルダーにまっすぐ完全に押し込むこと。
(4) 採血の血流が停止したら,直ちに採血管を採血ホルダーから外すこと。
(5) 連続採血する場合には,ホルダーを固定したまま,採血管を取り替えること。

 

(8)尿管ステントに係る自主点検通知について(平成17年2月1日)

 尿管の閉塞や狭窄時等の導尿を目的とした尿管ステントを抜去する際,抵抗を感じ容易に牽引できない場合がある旨の複数の報告がなされており,いずれもX線下で尿管ステント端のコイルが腎盂内で結び目を形成していることが確認されている。調査の結果,多様な尿管長に対応することができるマルチレングスタイプの尿管ステントにおいては,ピッグテイルタイプに比べ過剰なステント端のコイルが形成されていること及びその過剰なステント端のコイル部分に結石が付着するなどにより,留置中の体動や抜去時の牽引により結び目が形成される可能性が示唆された。
 このような場合において,強制的な尿管ステントの引き抜きは,腎盂や尿管に外傷を与える危険性があるため,尿管ステントの先端コイル形状を確認し,結び目が形成される可能性を点検の上,添付文書の警告欄に,次の点について速やかに明記する等の改訂を行うこと。また,併せて医療機関に対し当該リスク等について注意喚起すること。

 

1) 「本品の使用の際は,使用前に患者の尿管長を測定し,過剰なステント端のコイル部分が形成されないことを確認して,リスクに応じ他の先端形状のステント使用も考慮すること。[留置中又は抜去時に,腎盂側のステント先端に結び目が形成される危険性があるため。]」
2) 「抜去の際,抵抗を感じた場合は,X線等により抵抗の原因を確認した上で適切な処置を行うこと。[無理に抜去した場合,腎盂や尿管を傷つける可能性があるため。]」

 

(9)簡易血糖自己測定器(グルコース脱水素酵素法のうち補酵素にピロロキノリンキノンを使用するもの)の安全対策について(平成17年2月7日)

 グルコース脱水素酵素(GDH)法を用いた簡易血糖自己測定器の安全対策について,平成16年9月29日付事務連絡により,警告の項に「マルトースを含む輸液等を投与中の患者,イコデキストリンを含む透析液を投与中の患者,ガラクトース負荷試験を実施中の患者及びキシロース吸収試験を実施中の患者については,実際の血糖値より高い値を示すため,使用しない」旨を追記する「使用上の注意」の改訂を行い注意喚起を図ってきたところである。  しかしながら,その後もマルトースを含む輸液を投与中の患者に本機器を使用し,その測定値に基づきインスリンを投与した結果,当該患者に低血糖が発現したという症例が複数報告された。当該事例は,医療機関における不適正使用によると思われ,更なる安全対策が必要と考えられることから,速やかに次の措置を講じるよう製造業者等に対し通知したところである。

  • グルコース脱水素酵素法のうち補酵素にピロロキノリンキノンを使用した簡易血糖自己測定器を扱う製造業者等は,自社が製造又は輸入している本機器の添付文書について自主点検を行い,以下の事項について追記等の改訂を速やかに行い,併せて本機器を使用する医療機関に対し注意喚起を行うこと。

 

警告の項を
 「実際の血糖値より高い値を示すため,以下の患者には使用しないこと。

と改め,

 「医療機関において,輸液を投与中の患者に本機器を使用し,その測定値に基づきインスリンを投与した結果,患者に低血糖症状が生じた事例が報告されていることから,本機器は,原則として患者自身が自宅等で血糖を測定する場合に使用すること。

を追記する。

輸液等を投与中の患者(マルトースを含む輸液を投与中の患者で実際の血糖値より高い値を示すため)
イコデキストリンを含む透析液を投与中の患者
ガラクトース負荷試験を実施中の患者
キシロース吸収試験を実施中の患者」

 

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市販直後調査への協力依頼について

 新医薬品の承認までに得られる有効性,安全性に関する情報等については,患者数,併用薬,合併症,年齢等に関する一定の制限のもとに行われる治験等により得られたものであることから,限定された情報とならざるを得ません。しかし,新医薬品がいったん販売開始されると,治験時に比べてその使用患者数が急激に増加するとともに,使用患者の状況も治験時に比べて多様化することから,治験段階では判明していなかった重篤な副作用等が発現することがあります。このように新医薬品の特性に応じ,販売開始から6ヵ月間について,特に注意深い使用を促し,重篤な副作用が発生した場合の情報収集体制を強化するため,平成13年10月から「市販直後調査」制度が施行されました。
 また,市販直後調査の基準について,従来は製造業者等の遵守事項として「医薬品の市販後調査の基準に関する省令」(GPMSP)を施行していましたが,平成17年4月1日より市販後安全対策の強化として製造販売業者等の許可要件とした「医薬品,医薬部外品,化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準に関する省令」(GVP)を施行しています。
 市販直後調査により副作用が早期に見つかった事例としては,ゲフィチニブの間質性肺炎,ガチフロキサシンの低血糖・高血糖,レフルノミドの間質性肺炎等があり,市販後直ちに使用上の注意の改訂等が行われています。
 以上のように,市販直後調査は市販後安全対策の中でも特に重要な制度であり,市販直後調査の趣旨をご理解いただき,医師,歯科医師,薬剤師等の医療関係者の方々におかれましては,積極的に副作用等報告にご協力をお願いします。
 なお,参考として,平成17年4月1日現在,市販直後調査を実施している医薬品名を表1に示します。今後,「医薬品・医療機器等安全性情報」の各号において,市販直後調査の対象品目を紹介することとします。

 

表1 市販直後調査の対象品目一覧

(平成17年4月1日現在)

一般名 製造販売業者名 販売開始年月日
販売名
三酸化ヒ素 日本新薬(株) 平成16年12月8日
トリセノックス注10mg
ゾレドロン酸水和物 日本チバガイギー(株) 平成17年1月21日
ゾメタ注射液4mg
アデホビルピボキシル グラクソ・スミスクライン(株) 平成16年12月8日
ヘプセラ錠10
ラミブジン グラクソ・スミスクライン(株) 平成16年12月8日
ゼフィックス錠100*1
ペグインターフェロンアルファ-2b(遺伝子組換え) シェリング・プラウ(株) 平成16年12月8日
ペグイントロン皮下注用50μg,同皮下注用100μg,同皮下注用150μg
リバビリン シェリング・プラウ(株) 平成16年12月8日
レベトールカプセル200mg*2
パミドロン酸二ナトリウム 日本チバガイギー(株) 平成16年11月29日
アレディア注15mg,同注30mg*3
バルガンシクロビル塩酸塩 田辺製薬(株) 平成16年11月5日
バリキサ錠450mg
ホスアンプレナビルカルシウム水和物 グラクソ・スミスクライン(株) 平成16年12月24日
レクシヴァ錠700
酢酸オクトレオチド 日本チバガイギー(株) 平成16年10月22日
サンドスタチン注射液50μg,同注射液100μg
臭化チオトロピウム水和物 日本ベーリンガーインゲルハイム(株) 平成16年12月10日
スピリーバ吸入用カプセル18μg
プロピオン酸ベクロメタゾン 大日本製薬(株) 平成17年1月24日
キュバール50エアゾール,同100エアゾール
塩酸プラルモレリン 科研製薬(株) 平成17年2月25日
注射用GHRP科研100
硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸 三菱ウェルファーマ(株) 平成17年3月15日
ジオン注無痛化剤付,同注生食液付
塩酸エピナスチン 日本ベーリンガーインゲルハイム(株) 平成17年3月23日
アレジオンドライシロップ1%
エタネルセプト(遺伝子組換え) ワイス(株) 平成17年3月30日
エンブレル皮下注用25mg
注)効能追加等における対象
*1:効能追加された「アデホビルピボキシルとの併用の場合」
*2:効能追加された「ペグインターフェロンアルファ-2b(遺伝子組換え)との併用による次のC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善」
*3:効能追加された「乳癌の溶骨性骨転移」

 

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お知らせ

 医薬品・医療機器等安全性情報は,医薬品医療機器情報提供ホームページ(https://www.pmda.go.jp/)又は厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)からも入手可能です。

 また,NTTのファクシミリ通信網サービス「Fネット」を通じ,最近1年間の「医薬品・医療機器等安全性情報」がお手元のファクシミリから随時入手できます(利用者負担)。

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