独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

医薬品・医療機器等安全性情報 No.216

目次

  1. 骨セメント使用時における重篤な健康被害について
  2. 新方式携帯電話端末及びRFID機器による植込み型医用機器(心臓ペースメーカ及び除細動器)への影響について
  3. 重要な副作用等に関する情報
    1. バルプロ酸ナトリウム
    2. プラノプロフェン(経口剤)
    3. 補中益気湯
  4. 使用上の注意の改訂について(その168)
    カルバマゼピン他(12件)
  5. 市販直後調査の対象品目一覧

この医薬品・医療機器等安全性情報は、厚生労働省において収集された副作用等の情報をもとに、医薬品・医療機器等のより安全な使用に役立てていただくために、医療関係者に対して情報提供されるものです。

平成17年(2005年)8月
厚生労働省医薬食品局

【情報の概要】
No. 医薬品等 対策 情報の概要
1 骨セメント使用時における重篤な健康被害について     骨セメントの使用に伴い、血圧低下、ショックなどが発現することについては、これまで、平成4年9月発行「医薬品副作用情報 No.116」、平成10年3月発行「医薬品等安全性情報 No.147」及び平成13年3月発行「医薬品・医療用具等安全性情報 No.165」により、重篤症例や添付文書の「使用上の注意」の改訂内容の紹介を行うなど、注意を喚起してきた。
 その後も骨セメントの使用については、リスクの高い患者への使用、麻酔医の監視がない状況での使用等により、血圧低下、ショック、肺塞栓症などを発症し、死亡した症例が報告されていることから、本号において、改めて医療関係者へ使用に当たっての注意喚起を図るものである。
2 新方式携帯電話端末及びRFID機器による植込み型医用機器(心臓ペースメーカ及び除細動器)への影響について     携帯電話端末等による植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器(以下「植込み型医用機器」という)への影響については、医薬品副作用情報において過去3回の注意喚起を行い、盗難防止装置等による植込み型医用機器への影響については、医薬品等安全性情報等において過去4回の注意喚起を行ってきたところである。
 総務省において、平成16年度に実施した、新方式携帯電話端末から発射される電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響に関する調査の結果において「携帯電話端末を植込み型心臓ペースメーカ装着部位から22cm程度以上離すこと」などとした現行指針は妥当であることが確認された。
 また、RFID機器(据置き型及びモジュール型)から発射される電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響については、平成15年度に確認したハンディ型のRFID機器と同様に、22cm以上離せば影響が避けられることが確認された。
 今回は当該報告の内容について紹介し、改めて医療関係者等に注意喚起を行うこととした。さらに、総務省より、平成16年度までに得られた、各種電波利用機器についての調査結果に基づき、影響防止のための指針が公表されたので併せて紹介する。
3 バルプロ酸ナトリウム他(2件) (使)
(症)
 前号(医薬品・医療機器等安全性情報No.215)以降に改訂を指導した医薬品の使用上の注意のうち重要な副作用等について、改訂内容、参考文献等とともに改訂の根拠となった症例の概要に関する情報を紹介する。
4 カルバマゼピン他(12件)    使用上の注意の改訂について(その168)
5 市販直後調査対象品目    平成17年8月1日現在、市販直後調査の対象品目一覧を紹介する。

(緊):緊急安全性情報の配布 (使):使用上の注意の改訂 (症):症例の紹介

 

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骨セメント使用時における重篤な健康被害について

 

一般的名称
販売名(会社名)
一般的名称 販売名(会社名)
骨セメント エンデュランス ボーンセメント(デピュー・ジャパン)
オーソセット ハイビスコシティ ボーンセメント(ライトメディカルテクノロジー インク)
オーソセット ロービスコシティ ボーンセメント(ライトメディカルテクノロジー インク)
オステオボンド コポリマー ボーンセメント(ジンマー)
サージカルシンプレックス(日本ストライカー)
ジンマーボーンセメント(ジンマー)
セメックス RX(佐多商会)
セメックス システム(佐多商会)
類  別 医療用品 4 整形用品
適  応 人工関節の固定等

 

(1)経緯

大腿骨頸部骨折や関節リウマチ等、関節に障害が起こった場合、骨頭(大腿骨の上端部分)を切除して人工の骨頭に置き換える人工骨頭置換術や、関節全体を人工関節に置き換える人工関節置換術が行われる。この際、人工関節等のインプラント材を生体骨に固着するため、「骨セメント」と呼ばれるアクリル製樹脂を生体骨内に注入することが医療上必要な場合がある。しかし、骨セメントの使用に伴う手術中の副作用として、死亡に至る重篤な血圧低下、ショック、肺塞栓症などが発現することについては、これまで厚生労働省において、平成4年9月発行「医薬品副作用情報 No.116」、平成10年3月発行「医薬品等安全性情報 No.147」及び平成13年3月発行「医薬品・医療用具等安全性情報 No.165」により、重篤症例や添付文書の「使用上の注意」の改訂内容の紹介を行うなどの注意を喚起してきたところである。

 

(2)これまでの注意喚起等について

これまでの骨セメント使用時における重篤な症例に基づく、骨セメント関係企業の現行添付文書の警告欄を以下に示す。

1) 心肺血管系疾患のある患者、全身状態不良患者、悪性腫瘍の大腿骨転移患者、高齢者、骨粗鬆症患者、副腎皮質ステロイド剤の投与を受けている患者、循環血液量が減少した状態にある患者、低酸素状態にある患者、肥満のある患者については、血圧低下、特に重篤な循環不全に至るリスクが他の患者と比較して大きいので、骨セメントの使用による有効性がこれらのリスクを上回ると判断される場合にのみ使用すること。
2) 循環血液量を十分保ち、できる限りより良好な全身状態のもとに使用すること。
3) 急な血圧低下、重篤な循環不全に備えて、緊急対応のできる麻酔医等の監視のもとに使用すること。また、患者の血圧変化等を継続的にモニターするとともに、重篤な循環不全に備えて治療が直ちに行えるよう必要な準備をしておくこと。
4) 未重合のモノマーが血管内に吸収され、心筋抑制等を起こすことを予防するため、骨セメントの混合時間を十分とり、ある程度重合するまで充填しないこと。
5) 長管骨髄腔(大腿骨等)に使用する場合、塞栓になる可能性のある骨髄の組織(骨髄、骨片及び血液)を十分除去すること。
6) セメントガンにより低粘性の骨セメントを大腿骨腔に充填する場合には、未重合のモノマー、髄腔内容物の循環器系への流入を可能な限り少なくするため、髄腔の遠位端を栓でふさぐこと。
7) 骨セメント充填時の大腿骨髄腔内圧の上昇が呼吸器、循環器に影響するので、減圧のためのチューブを一時的に挿入するなど、骨髄内圧上昇を最小限にするよう注意すること。

 

(3)最近の報告件数等について

平成13年4月から平成17年3月末までの4年間における、当該企業及び医療機関から骨セメントの使用による死亡等を含む重篤な国内症例が37例報告されている。以下の表は、骨セメント関係企業が調査した各年度の販売数量と報告件数を示したものであるが1症例における骨セメントの使用個数が一定でないため、販売数量は実際の使用症例数と直接関連するものではない。

 

   販売数量 報告件数
平成13年度 約82,000個 11件
平成14年度 約94,000個 4件
平成15年度 約83,500個 10件
平成16年度 約83,800個 12件

 

(4)報告症例の解析

平成13年4月から平成17年3月末までの4年間における骨セメント関係企業及び医療機関から報告のあった骨セメントの使用に伴う死亡等を含む重篤な国内症例37例(うち死亡32例)のうち、医療機関の協力が得られず詳細情報が入手できなかった5例を除く32例(表1参照)について症例解析を行ったのでその内容を簡潔に示す。

 

1) 使用目的
全例、大腿骨頸部等の骨折による人工骨頭置換術における大腿骨への置換材料の固定を目的に骨セメントが注入されたものであった。
2) 年齢等
患者の年齢は69~96歳であり、平均年齢は約83歳であった。また性別については、女性30例、男性1例、不明1例であった。
3) 受傷日から手術日までの期間
8例において受傷日から手術日までの期間が確認されており、その期間は3~9日間であった。
4) 既往歴
32症例中には、添付文書の警告欄において注意喚起している心肺血管系疾患12例(胸部大動脈瘤、心臓弁膜症、心筋梗塞、狭心症など)、骨粗鬆症11例、リウマチ3例及び肥満(高血圧及び糖尿病の既往歴あり)1例などが含まれていた。
5) 麻酔医による監視
32症例中麻酔医の監視のもとで、手術の実施が確認できた症例は25例であり、4例が麻酔医不在、3例が調査不能のため不明であった。
6) 血圧の変動について
全例に血圧降下を認めており、術前の血圧値及び骨セメント注入後の血圧値ともに調査できた症例のほとんどが、注入直後に測定不能を含めた急激な血圧下降を認めていた。
7) 転帰等
解析対象とした32症例中27例が死亡し、3例が意識障害(未回復)と判断された。なお死亡例のうち剖検等により肺等への脂肪または血液による塞栓が確認された症例が7例に認められた。
8) 手技等
セメントガン*1は2例を除く全症例で使用されていた。セメントプラグ*2の使用については、未使用1例及び不明1例を除き全症例で使用されていた。ベントチューブ*3の使用については、使用5例及び不明5例を除く22例が未使用であった。またセメント圧を高めるためのプレッシャライザー*4の使用については、使用4例及び不明5例を除く23例で未使用であった。髄腔洗浄の実施については、パルスによる洗浄が12例、シリンジによる洗浄が9例、その他の方法10例、不明2例であった。

〈用語の説明〉
*1 セメントガン:シリンジを用いて骨セメントを骨髄腔内に充填する器具。
*2 セメントプラグ:骨髄腔内への過剰な骨セメント充填を防ぐために、骨髄腔遠位端を閉塞する栓。
*3 ベントチューブ:骨セメント充填時に骨髄腔内の空気の排出通路として使用するチューブ。
*4 プレッシャライザー:セメントを間隙なく骨髄腔内に充填するために使用する加圧補助器具。

 

(5)まとめ及び今後の市販後安全対策等について

報告された症例を解析した結果から、リスクの高い患者への使用が多数認められ、麻酔医による監視がなされていない症例、血液等による塞栓が認められた症例などが散見された。また、上記症例のうち11例においては、X線等による確認の結果、セメントプラグが大腿骨遠位に移動しており、うち1例は初期設置時に近位に設置しすぎたと報告がなされていることから、骨セメントがセメントプラグを越えて髄腔に飛ばないよう適切なプラグサイズの選択と設置が必要と考えられる。そのほか血栓や肺塞栓の危険因子として長期臥床が挙げられるため、骨折等の場合には受傷後早期の手術が望まれる。
 以上の点について注意を払うとともに、骨セメント製品の添付文書に記載されている「使用上の注意」についても再度、十分注意いただくようお願いする。

 

(6)脊椎圧迫骨折への使用について

現在、薬事法上承認されている骨セメントの効能又は効果等は「関節置換術において、骨とインプラント材料の固定」であるが、最近、骨粗鬆症による脊椎の圧迫骨折等に対する経皮的椎体形成術時に欠損病変部位へ骨セメントが注入される報告が散見される。国内においては、脊椎圧迫骨折に対する椎体形成術に骨セメントを使用して、注入直後に血圧低下、ショック状態に陥り、死亡したとの事例が医療機関から報告されたところである。骨セメントの使用を伴う当該療法により骨セメントとの因果関係を否定できない重篤な不具合症例があった場合においても、薬事法第77条の4の2第2項に基づく医療機器安全性情報報告をお願いする。なお、これに関して米国FDA及び英国MHRA(旧MDA)が2003、2004年に安全性情報を発出して注意喚起を行っているので、以下にその概要を簡単に紹介する。

(概要)  FDA等の安全性情報によると、骨粗鬆症などによる脊椎圧迫骨折に対しこの治療法(Vertebroplasty法及びKyphoplasty法)により骨セメントが使用された患者において、骨セメントの漏出に伴う神経根の疼痛、軟部組織の損傷、肺塞栓症、心不全、死亡等が報告されていること、この治療法については、長期の安全性及び有効性を確認できる比較臨床試験等はないなど記載されている。
 また、同安全性情報によると、使用される骨セメントにX線画像の鮮明化のために造影剤を混合するが、配合比率などによる骨セメントの硬化時間や強度及び安全性などのガイドラインは確立されておらず、予測不能な危険性が警告されている。

表1-1 不具合報告症例一覧

症例/
項目
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
使用目的 大腿骨近位部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部/
転子部骨折
大腿骨骨幹部
骨折
大腿骨頸部/
転子部骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部/
転子部骨折
大腿骨頸部/
転子部骨折
大腿骨頸部
骨折
性別 女性 女性 女性 女性 女性 女性 女性 女性 女性 女性 女性
年齢 79 82 87 80 92 91 69 82 79 80 91
受傷日から手術日までの期間 不明 不明 不明 6日目 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明
既往歴 心肺血管系疾患                        
骨粗鬆症               
リウマチ                              
脳血管系疾患                           
糖尿病                        
その他         
体質 肥満                                 
麻酔 部位 全麻 腰麻 腰麻 腰麻 腰麻 全麻 腰麻 不明 腰麻 不明 腰麻
麻酔医による監視 あり 不明 あり あり あり あり あり あり あり あり あり
血圧 術前血圧 170/60 162/88 154/92 160/100 148/90 120/75 130/60 不明 120/65 138/80 100/55
骨セメント注入
後の最低血圧
測定不能 測定不能 90/50 80/50 不明 不明 130/80 不明 100/60 測定不能 48/28
不具合
事象
血圧低下
肺等への塞栓 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明
死亡 (意識障害)
手技等 セメント注入法 セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン
セメントプラグ
使用の有無
あり あり あり あり あり なし あり 不明 あり あり あり
ベントチューブ
使用の有無
なし 不明 不明 あり なし なし なし 不明 なし なし 不明
プレッシャライザー
使用の有無
なし 不明 なし なし なし 不明 なし 不明 なし なし なし
髄腔洗浄 シリンジ パルス シリンジ パルス スポイト洗浄 パルス ブラシ 不明 シリンジ スポイト/
ガーゼ洗浄
パルス
報告者 企業 企業 企業 企業 企業 企業 企業 企業 企業 企業 企業

表1-2 不具合報告症例一覧

症例/
項目
12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
使用目的 大腿骨頸部/
転子部骨折
大腿骨頸部/
転子部骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部/
転子部骨折
大腿骨頸部
骨折
性別 女性 女性 女性 女性 女性 女性 女性 女性 女性 男性 女性
年齢 75 86 92 80 83 83 81 80 87 96 82
受傷日から手術日までの期間 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明
既往歴 心肺血管系疾患               
骨粗鬆症                           
リウマチ                           
脳血管系疾患                              
糖尿病                              
その他                  
体質 肥満                              
麻酔 部位 腰麻 不明 腰麻 全麻 腰麻 不明 腰麻 不明 不明 腰麻 腰麻
麻酔医による監視 あり なし あり あり あり あり あり なし あり あり 不明
血圧 術前血圧 152/90 130/80 160/92 不明 210/90 135/75 不明 130/60 不明 110/65 120/60
骨セメント注入
後の最低血圧
40/25 不明 不明 不明 130/66 不明 不明 85/45 不明 不明 不明
不具合
事象
血圧低下
肺等への塞栓 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明
死亡 (意識障害) (意識障害)
手技等 セメント注入法 セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン マニュアル セメントガン
セメントプラグ
使用の有無
あり あり あり あり あり あり あり あり あり あり あり
ベントチューブ
使用の有無
なし なし なし なし なし なし なし なし あり なし なし
プレッシャライザー
使用の有無
あり なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし
髄腔洗浄 パルス パルス 洗浄 パルス 洗浄 洗浄 パルス 洗浄 パルス/
シリンジ
シリンジ パルス
報告者 企業/医療機関 企業 企業 企業 企業 企業 企業 企業 企業 企業 企業

表1-3 不具合報告症例一覧

症例/
項目
23 24 25 26 27 28 29 30 31 32
使用目的 大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
大腿骨頸部
骨折
性別 女性 女性 女性 女性 女性 女性 女性 女性 不明 女性
年齢 88 79 84 85 69 88 88 82 82 86
受傷日から手術日までの期間 6日目 不明 不明 6日目 9日目 3日目 不明 9日目 4日目 7日目
既往歴 心肺血管系疾患                     
骨粗鬆症                     
リウマチ                              
脳血管系疾患                        
糖尿病                        
その他                     
体質 肥満                              
麻酔 部位 全麻 全麻 不明 腰麻 全麻 腰麻 不明 腰麻 全麻 腰麻
麻酔医による監視 あり あり あり なし あり なし 不明 あり あり あり
血圧 術前血圧 126/60 120/50 不明 118/59 不明 200/60 不明 不明 165/130 140/56
骨セメント注入
後の最低血圧
70/35 46/15 不明 69/24 130/65 不明 不明 不明 80/50 測定不能
不具合
事象
血圧低下
肺等への塞栓 不明 不明 不明 不明 不明 不明
死亡      
手技等 セメント注入法 セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン セメントガン マニュアル
セメントプラグ
使用の有無
あり あり あり あり あり あり あり あり あり あり
ベントチューブ
使用の有無
なし なし あり あり なし あり 不明 なし なし なし
プレッシャライザー
使用の有無
なし なし なし あり あり 不明 不明 なし あり なし
髄腔洗浄 洗浄 洗浄 シリンジ シリンジ 洗浄 パルス 不明 パルス シリンジ シリンジ
報告者 企業 企業 企業 企業 企業/医療機関 企業/医療機関 企業 企業 企業 企業

(参考)
FDA
http://www.fda.gov/cdrh/safety/bonecement.html

MDA(現MHRA)
http://www.medical-devices.gov.uk/mda/mdawebsitev2.nsf/webvwSearchResults/33D3E46766AA7E5980256EB5002819E5?OPEN

 

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新方式携帯電話端末及びRFID機器による植込み型医用機器(心臓ペースメーカ及び除細動器)への影響について

 携帯電話端末等による植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器(以下「植込み型医用機器」という)への影響については、医薬品副作用情報No.136(平成8年3月号)、No.137(平成8年5月号)及びNo.143(平成9年6月号)において注意喚起を行い、盗難防止装置等による植込み型医用機器への影響については、医薬品等安全性情報No.155(平成11年6月号)、医薬品・医療用具等安全性情報No.173(平成14年1月号)、No.190(平成15年6月号)及びNo.203(平成16年7月号)において注意喚起を行ってきたところである。
 総務省において、平成12年度から電波の医用機器への影響に関する調査を実施しているところであるが、平成16年度に実施した、新たに導入された方式による携帯電話端末(以下「新方式携帯電話端末」という」)から発射される電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響に関する調査の結果において、「携帯電話端末を植込み型心臓ペースメーカ装着部位から22cm程度以上離すこと」などとした現行指針「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」(平成9年3月、不要電波問題対策協議会(現電波環境協議会))は妥当であることが確認された。
 また、RFID機器*1(据置き型及びモジュール型)から発射される電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響については、平成15年度に確認したハンディ型のRFID機器と同様に、22cm以上離せば影響が避けられることが確認された。
 今回は当該報告の内容について紹介し、改めて医療関係者等に注意喚起を行うこととした。さらに、総務省より、平成16年度までに得られた、各種電波利用機器についての調査結果に基づき、影響防止のための指針として「各種電波利用機器の電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響を防止するための指針」が公表されたので併せて紹介する。

 

(1)経緯

携帯電話端末等から発射される電波による植込み型医用機器及び医療機関内で使用される医用機器に及ぼす影響については、本誌No.179においてとりまとめを紹介し、RFID機器(ゲート型及びハンディ型)から発射される電波が植込み型医用機器に及ぼす影響については、本誌No.203においてとりまとめを紹介してきたところである。
 今般、総務省より、平成16年度に実施した、新方式携帯電話端末から発射される電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響、及びRFID機器(据置き型及びモジュール型)から発射される電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響について調査結果が公表されたことから、医療機関、医療従事者、医療機器業者等に対し紹介することとした。

 

(2)調査概要

新たに実用化された携帯電話サービスで用いられる携帯電話端末及び現在使用されているRFID機器の代表的機種から発射される電波が、現在使用されている植込み型医用機器の代表的機種へ及ぼす影響について、その影響が一番大きくなる最悪の実験条件を設定して調査した。RFID機器については、平成15年度のゲート型RFID機器及びハンディ型RFID機器についての調査に引き続き、据置き型RFID機器及びモジュール型RFID機器について調査を実施した。
 調査機種数は、次のとおりである。

1)電波発射源

 (1)携帯電話端末

  携帯電話事業者の協力を得て、以下の携帯電話端末について調査を実施した。

ア)CDMA2000 1X/CDMA2000 1xEV-DO(800MHz帯):3機種

イ)CDMA2000 1X/CDMA2000 1xEV-DO(2GHz帯):2機種

 (2)RFID機器

  (社)日本自動認識システム協会の協力を得て、以下のRFID機器について調査を実施した。

ア)据置き型RFID機器:45機種

イ)モジュール型RFID機器:16機種

注: ここでは、公共施設や商業区域などの一般環境下で使用されるRFID機器として(社)日本自動認識システム協会により選定されたRFID機器を対象としており、工場内など一般人が入ることができない管理区域でのみ使用されるRFID機器(管理区域専用RFID機器)については対象外としている。

 

2)植込み型医用機器

 ペースメーカ協議会の協力を得て、以下の植込み型医用機器について調査を実施した。

 (1)植込み型心臓ペースメーカ:33機種

 (2)植込み型除細動器:7機種

 

(3)調査結果の概要

1)携帯電話端末が植込み型医用機器へ及ぼす影響

(1)CDMA2000 1X/CDMA2000 1xEV-DO(800MHz帯)携帯電話端末が植込み型医用機器へ及ぼす影響

ア) 心臓ペースメーカについては、ペーシングパルスへの影響*2を生じる場合があることが確認された。この影響は、携帯電話端末を遠ざければ正常に復する可逆的なもので、最も遠く離れた位置でこの影響が確認されたときの距離は8cmであった。
イ) 除細動器のペースメーカ機能*3については、ペーシングパルスへの影響を生じる場合があることが確認された。この影響は、携帯電話端末を遠ざければ正常に復する可逆的なもので、最も遠く離れた位置でこの影響が確認されたときの距離は2cmであった。
また、除細動器の除細動機能*4については、影響は確認されなかった。

(2)CDMA2000 1X/CDMA2000 1xEV-DO(2GHz帯)携帯電話端末が植込み型医用機器へ及ぼす影響

ア) 心臓ペースメーカについては、ペーシングパルスへの影響を生じる場合があることが確認された。この影響は、携帯電話端末を遠ざければ正常に復する可逆的なもので、最も遠く離れた位置でこの影響が確認されたときの距離は1cmであった。
イ) 除細動器については、ペースメーカ機能及び除細動機能のいずれに対しても影響は確認されなかった。

 

注: 本調査では、植込み型医用機器へ及ぼす影響が最大となるよう、携帯電話端末の送信出力を最大にするなどの厳しい条件で試験をしており、調査結果(最も遠く離れた位置で影響が確認された距離等)を通常の通信状態における携帯電話通話方式間と比較して用いることは適当ではない。

 

2)RFID機器が植込み型医用機器へ及ぼす影響

(1)据置き型RFID機器が植込み型医用機器へ及ぼす影響

ア) 心臓ペースメーカについては、ペーシングパルスへの影響を生じる場合があることが確認された。この影響は、据置き型RFID機器から遠ざかれば正常に復する可逆的なものであり、最も遠く離れた位置でこの影響が確認されたときの距離は14cmであった。
イ) 除細動器のペースメーカ機能については、ペーシングパルスへの影響を生じる場合があることが確認された。この影響は、据置き型RFID機器から遠ざかれば正常に復する可逆的なものであり、最も遠く離れた位置でこの影響が確認されたときの距離は6cmであった。
また、除細動器の除細動機能については、不要除細動ショック*5が発生する場合があることが確認された。最も遠く離れた位置でこの影響が確認されたときの距離は6cmであった。

(2)モジュール型RFID機器が植込み型医用機器へ及ぼす影響

ア) 心臓ペースメーカについては、モジュール型RFID機器のアンテナ部に密着させた状態で、ペーシングパルスへの影響を生じる場合があることが確認された。この影響は、モジュール型RFID機器から遠ざかれば正常に復する可逆的なものであった。
イ) 除細動器については、ペースメーカ機能及び除細動機能のいずれに対しても影響は確認されなかった。

 

(4)植込み型医用機器を使用している患者に対する注意事項

1)携帯電話端末等について
 今回の調査の結果からCDMA2000 1X/CDMA2000 1xEV-DO(800MHz帯)及びCDMA2000 1X/CDMA2000 1xEV-DO(2GHz帯)の携帯電話端末が植込み型医用機器へ及ぼす影響の度合いは「22cm程度以上離すこと」との指針が示された平成9年当時の端末が及ぼす影響度合いに比べて小さくなっていることが認められる。しかしながら、現在使用されている携帯電話端末の機種を考慮すると、現行指針における携帯電話端末が植込み型医用機器へ与える影響を防止するための対応策は現在でも妥当であると考えられるため、引き続き現行指針(22cm)を守るよう注意する必要がある。

2)RFID機器について
 今回の調査の結果から、据置き型及びモジュール型のRFID機器については、ハンディ型同様、不用意に植込み型医用機器の22cm以内にRFID機器を接近させないように注意することが必要である。

 

(5)医療機関へのお願い

今回の報告書の内容を踏まえて、新たな方式の携帯電話端末等から発射される電波については、現行指針(22cm)を遵守するよう患者への指導を引き続きお願いしたい。また、RFID機器(据置き型及びモジュール型)から発射される電波については、どのような方式の装置が特に植込み型医用機器に影響を与えるのかは明らかにされていないが、植込み型医用機器装着者の健康被害防止の観点から、装着部位を据置き型及びモジュール型のRFID機器のアンテナ部より22cm以内に近づかないよう患者への指導をお願いするとともに、患者が小児の場合には、保護者への指導の徹底も併せてお願いしたい。

 

〈用語の説明〉

*1 RFID(Radio Frequency IDentification)機器:電子回路を内蔵したタグとリーダライタとの間で非接触で通信を行うことによりタグのデータを読み書きすることが可能な機器であり、物流、在庫管理や商品等の精算など、さまざまな分野で利用されている。
また、リーダライタの形状から次のような種類がある。
  • ゲート型:リーダライタがゲート状に設置されるもの
  • ハンディ型:リーダライタを手に持つなど携帯して使用するもの
  • 据置き型:リーダライタを据え置いて使用するもの
  • モジュール型:プリンタ等に内蔵して使用するもの
*2 ペーシングパルスへの影響:外部からの電波の影響により以下の状態が発生すること。

 

ア) 心臓ペースメーカ等が設定された周期でペーシングパルスを発生している状態において、外部からの電波の影響を受けたことによりペーシングパルスが抑圧された状態又は設定された周期からのずれが発生してしまった状態。
イ) 心臓ペースメーカ等のペーシングパルスが抑圧されている状態において、外部からの電波の影響を受けたことによりペーシングパルスが発生してしまった状態。

 

*3 除細動器のペースメーカ機能:植込み型除細動器は、通常、植込み型心臓ペースメーカとして機能しており、このペースメーカ機能のこと。
*4 除細動器の除細動機能:植込み型除細動器が心室細動(致死性不整脈の一種であり、心臓が突然痙攣を起こす現象)を検出した場合に、これを止めるために強力な電気ショックを与える機能のこと。
*5 不要除細動ショック:心室細動がないにも係わらず、植込み型除細動器の除細動機能が働く現象のことで、可逆的影響であるものの、直ちに患者の病状を悪化させる可能性がある。

 

(6)その他

総務省より、平成16年度までに実施したこの調査の結果を基に、平成17年8月付で「各種電波利用機器の電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響を防止するための指針」のとりまとめが公表されたので参考までに紹介する。

 

(参考)

 

各種電波利用機器の電波が植込み型医用機器へ
及ぼす影響を防止するための指針

(総務省 平成17年8月)
 

 近年、国民の身近で各種の電波利用機器(携帯電話端末、PHS端末、ワイヤレスカード(非接触ICカード)システム、電子商品監視(EAS)機器、RFID(電子タグ)機器及び無線LAN機器)の利用が拡大しているが、総務省では、これら機器から発射される電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響を防止するため、調査を実施し、その結果を公表してきたところである。
 本指針は、平成16年度までに実施したこの調査の結果を基に、これら機器の電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響を防止するための指針として取りまとめたものである
 調査に当たっては、関係団体等の協力を得て、調査時点において市場に出回っている代表的な機種を網羅するように調査対象を選定したが、市場に出ているすべての機種を調査対象としたわけではなく、また、新たな機種が市場に出されることなどもあるので、本指針の活用に当たっては、この点を十分に考慮しておく必要がある。

※ 不要電波問題対策協議会(学識経験者、関係省庁、関係業界団体等から構成。現在の電波環境協議会。)により、医療機関の医用電気機器をも対象とした「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」が平成9年に示されており、その後新しい方式による携帯電話端末が使用されることとなったこと等を踏まえ、上記調査により、携帯電話端末及びPHS端末の電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響について、同指針の該当部分の妥当性を確認している。今回取りまとめた指針においては、その確認した内容を盛り込んでいる。

 
1 携帯電話端末及びPHS端末の電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響を防止するための指針
植込み型医用機器の装着者は、携帯電話端末の使用及び携行に当たっては、携帯電話端末を植込み型医用機器の装着部位から22cm程度以上離すこと。
また、混雑した場所では付近で携帯電話端末が使用されている可能性があるため、十分に注意を払うこと。
植込み型医用機器の装着者は、PHS端末の使用に当たっては、アの携帯電話端末と同様に取り扱うこと。
【PHS端末を植込み型医用機器へ近づけた場合に全く影響を受けないわけではなく、また、PHS端末と携帯電話端末が外見上容易に区別がつきにくく、慎重に取り扱うという意味で、携帯電話端末と同様に取り扱うことが望ましい。】
携帯電話端末及びPHS端末の所持者は、植込み型医用機器の装着者と近接した状態となる可能性がある場所(例:満員電車等)では、その携帯電話端末等の電源を切るよう配慮することが望ましい。
 
2 ワイヤレスカード(非接触ICカード)システムの電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響を防止するための指針
心臓ペースメーカ装着者は、ワイヤレスカードシステムのリーダライタ部(アンテナ部)から心臓ペースメーカの装着部位を12cm以上離すこと。
除細動器装着者は、日常生活において特別にワイヤレスカードシステムを意識する必要はないが、除細動器装着部位をワイヤレスカードシステムのリーダライタ部(アンテナ部)に密着させることは避けるべきである。
ワイヤレスカードシステムの製造業者等は、リーダライタ部(アンテナ部)を明確に認識できるよう表示等を工夫することが影響防止に有効である。また、断続磁界モードは、影響が大きくなるので、できる限り連続磁界モードを利用することが影響防止には有効である。
注: 本指針の対象としているワイヤレスカード(非接触ICカード)システムとは、外部の読み取り装置(リーダライタ部)とこれが発信する弱い電波を利用してデータを送受信するICカードからなるもので、各種交通機関や入退出管理等で用いられている。
 
3 電子商品監視(EAS)機器の電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響を防止するための指針
植込み型医用機器の装着者は、EAS機器が設置されている場所及びEASステッカ(下図)が貼付されている場所では、立ち止まらず通路の中央をまっすぐに通過すること。
植込み型医用機器の装着者は、EAS機器の周囲に留まらず、また、寄りかかったりしないこと。
植込み型医用機器の装着者は、体調に何らかの変化があると感じた場合は、担当医師に相談すること。
植込み型医用機器に対するEAS機器の影響を軽減するため、更なる安全性の検討を関係団体で行っていくこと。
図 EASステッカ
注: 本指針の対象としている電子商品監視(EAS)機器とは、感知ラベルのタグを貼り付けた商品がレジカウンターで精算されずにこの機器のセンサーを通過したときに警報音を発することにより商品の不正持ち出しを防止する機器のことである。
図のEASステッカは、日本EAS機器協議会の許諾を得て使用しています。
 
4 RFID(電子タグ)機器の電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響を防止するための指針注1
植込み型医用機器の装着者は、ゲートタイプRFID機器が設置されている場所及びRFIDステッカ(図1)が添付されている場所では、立ち止まらずに通路の中央を真っ直ぐに通過すること。
植込み型医用機器の装着者は、ゲートタイプRFID機器の周囲に留まらず、また、寄りかかったりしないこと。
植込み型医用機器の装着者は、体調に何らかの変化があると感じられる場合は、担当医師に相談すること。
植込み型医用機器に対するゲートタイプRFID機器の影響を軽減するため、更なる安全性の検討を関係団体で行っていくこと。
図1 RFIDステッカ

(2) ハンディタイプ、据置きタイプ及びモジュールタイプのRFID機器注2
ハンディタイプRFID機器の操作者は、ハンディタイプRFID機器のアンテナ部を植込み型医用機器の装着部位より22cm以内に近づけないこと。
植込み型医用機器の装着者は、装着部位を据置きタイプ及びモジュールタイプのRFID機器のアンテナ部より22cm以内に近づけないこと。
植込み型医用機器に対するハンディタイプ、据置きタイプ及びモジュールタイプのRFID機器の影響を軽減するため、更なる安全性の検討を関係団体で行っていくこと。
注1: ここでは、公共施設や商業区域などの一般環境下で使用されるRFID機器を対象としており、工場内など一般人が入ることができない管理区域でのみ使用されるRFID機器(管理区域専用RFID機器)については対象外としている。なお、管理区域専用RFID機器については、(社)日本自動認識システム協会において、一般環境への流出を防止するため、取扱説明書等に注意書きを記載するとともに、管理区域専用RFID機器用ステッカ(図2)を添付することとされている。
図2 管理区域専用RFID機器用ステッカ
図3 各タイプのRFID機器
 
注2: ここでは、RFID機器をリーダライタの形状から次のように分類している。
ゲートタイプ:リーダライタがゲート状に設置されるもの
ハンディタイプ:リーダライタを手に持つなど携帯して使用するもの
据置きタイプ:リーダライタを据え置いて使用するもの
モジュールタイプ:プリンタ等に内蔵して使用するもの
図1及び図2のRFIDステッカは、(社)日本自動認識システム協会の許諾を得て使用しています。
5 無線LAN機器の電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響を防止するための対応
無線LAN機器によって影響を受けた植込み型医用機器は、1機種であったことから、厚生労働省の協力を得て、医療機関を通じ同機種の利用者全員に対して、試験結果に基づく注意喚起を行った。
よって、現時点で特段の注意をされていない植込み型医用機器の装着者は、無線LAN機器に対しては特別の注意は必要としない。


参考1

本指針の作成の基となる調査研究報告書等


 
1 「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」(平成9年3月、不要電波問題対策協議会)
URL:http://www.arib.or.jp/emcc/
調査時期:平成7~8年度
調査対象とした電波利用機器:携帯電話端末、PHS端末等
 
2 「電波の医用機器等への影響に関する調査研究報告書」(平成13年3月)
URL:http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pressrelease/japanese/sogo_tsusin/010515_1.html
調査時期:平成12年度
調査対象とした電波利用機器:携帯電話端末及びPHS端末
 
3 「電波の医用機器等への影響に関する調査研究報告書」(平成14年3月)
URL:http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/020702_3_1.html
調査時期:平成13年度
調査対象とした電波利用機器:携帯電話端末及びPHS端末
 
4 「電波の医用機器等への影響に関する調査研究報告書」(平成15年3月)
URL:http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/030620_1b.html
調査時期:平成14年度
調査対象とした電波利用機器:ワイヤレスカード機器及びEAS機器
 
5 「電波の医用機器等への影響に関する調査研究報告書」(平成16年3月)
URL:http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040618_2.html#mokuji
調査時期:平成15年度
調査対象とした電波利用機器:EAS機器、無線LAN機器及びRFID機器
 
6 「電波の医用機器等への影響に関する調査研究報告書」(平成17年3月)
調査時期:平成16年度
調査対象とした電波利用機器:携帯電話端末及びRFID機器
 
参考2

調査対象及び調査実施時期

 
1 携帯電話端末及びPHS端末 調査実施時期
アナログ方式(800MHz) H7~8年度
PDC(800MHz) H7~8年度
H12~13年度
PDC(1.5GHz) H7~8年度
H12~13年度
W-CDMA(2GHz) H12~13年度
cdmaOne / CDMA2000 1X(800MHz) H12~13年度
CDMA2000 1X / CDMA2000 1xEV-DO(800MHz、2GHz) H16年度
PHS(1.9GHz) H7~8年度
H12~13年度
 
2 ワイヤレスカードシステム 調査実施時期
近接型(13.56MHz) H14年度
近傍型(13.56MHz) H14年度
 
3 EAS機器 調査実施時期
磁気方式(200Hz~14kHz) H14~15年度
電波方式(1.8~8.2MHz、2.4GHz) H14~15年度
磁気自鳴方式(22~37.5kHz) H14~15年度
音響磁気方式(58kHz) H14~15年度
複合方式(電波方式+磁気自鳴方式)(22~37.5kHz、8.2MHz) H14~15年度
 
4 RFID機器 調査実施時期
ゲートタイプ(125kHz、134.2kHz、135kHz、500kHz、13.56MHz) H15年度
ハンディタイプ(125kHz、134.2kHz、135kHz、13.56MHz、300MHz、2.4GHz) H15年度
据置きタイプ(125kHz、134.2kHz、135kHz、13.56MHz、300MHz、2.4GHz) H16年度
モジュールタイプ(125kHz、134.2kHz、135kHz、13.56MHz、300MHz) H16年度
 
5 無線LAN機器 調査実施時期
IEEE802.11(2.4GHz) H15年度
IEEE802.11b(2.4GHz) H15年度
IEEE802.11g(2.4GHz) H15年度
IEEE802.11a(5GHz) H15年度

 

目次へ

重要な副作用等に関する情報

 前号(医薬品・医療機器等安全性情報 No.215)以降に改訂を指導した医薬品の使用上の注意のうち重要な副作用等について、改訂内容、参考文献等とともに改訂の根拠となった症例の概要に関する情報を紹介いたします。

【1】 バルプロ酸ナトリウム

販売名(会社名) エスダブル錠200mg(東洋ファルマー)
エピレナート徐放顆粒40%、同錠、同シロップ(藤永製薬)
サノテン錠(辰巳化学)
セボトボル錠(共和薬品工業)
セレニカR顆粒、同R錠200mg(日研化学)
セレブシロップ(太田製薬)
デパケン細粒200、同細粒400、同錠100、同錠200、同R錠100、同R錠200、同シロップ(協和発酵工業)
ハイセレニン細粒20、同細粒40%、同錠100、同錠200(日本オルガノン)
バルプラムR顆粒(小林製薬工業)
バルプロ酸ナトリウム細粒20%「EMEC」(サンノーバ)
バレリン錠100mg、同錠200mg、同シロップ(大日本製薬)
薬効分類等 抗てんかん剤、精神神経用剤
効能効果 各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療
躁病および躁うつ病の躁状態の治療
 
《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
[副作用
(重大な副作用)]
過敏症症候群があらわれることがあるので、観察を十分に行い、初期症状として発疹、発熱がみられ、さらにリンパ節腫脹、肝機能障害、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意すること。
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム量の増加、高張尿等があらわれた場合には水分摂取の制限等の適切な処置を行うこと。
〈参考〉 企業報告
販売開始後(約30年間)の関連副作用報告数
(「因果関係が否定できるもの」以外のもので、「因果関係が不明なもの」も含む。)
  • 過敏症症候群:10例(うち死亡0例)
  • 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH):5例(うち死亡0例)
関係企業が推計したおおよその年間使用者数:55万人(平成16年度)


症例の概要
 
NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
1
20代
双極性感情障害[躁うつ病]
(なし)
600mg
17日間
 ↓
800mg
14日間
 ↓
(2日間投与なし)
 ↓
800mg
3日間
過敏症症候群
投与開始日 双極性感情障害の治療目的にて入院し、本剤600mg、炭酸リチウム600mg等を投与開始。
投与18日目 本剤および炭酸リチウムをそれぞれ800mgに増量。
投与30日目 倦怠感あり、37.3℃の発熱を認める。
投与31日目
(投与中止日)
発熱は38℃台に上昇し、体幹に紅斑が出現し、トランスアミラーゼ上昇、血小板減少、好酸球上昇を認める。使用薬剤を投与中止。
中止1日後 異型リンパ球1.0%検出。
中止2日後
(再投与開始日)
体温は下降せず、頸部・耳後部のリンパ節腫脹、全身浮腫を認めた。異型リンパ球6.0%。精神運動興奮に対し本剤800mgを再開。
再投与3日目
(再投与中止日)
本剤の投与を再度中止。
再投与中止1日後 異型リンパ球7.0%。
再投与中止2日後 異型リンパ球4.0%。
再投与中止4日後 ベタメタゾン、グリチルリチン・グリシン・システイン配合剤の点滴投与を開始(6日間)。
再投与中止10日後 全身状態悪化のため他院へ転院。CPAP(持続的陽圧呼吸療法)施行し(4日間)、徐々に改善。
再投与中止
約1ヵ月半後
症状回復。
パッチテスト:本剤(陽性)、炭酸リチウム(陰性)
DLST:本剤(陽性)、炭酸リチウム(陽性)
HHV-6 IgG:2560倍、HHV-6 DNA PCR(+)
企業報告
臨床検査値
   投与開始日 中止1日後 再投与中止
1日後
再投与中止
9日後
再投与中止
15日後
再投与中止
約1ヵ月半後
白血球数(/mm3 8530 6110 15780 3560 5700 5540
好酸球(%) 0.7 6.0 13.0 0.0 12.1
異型リンパ球(%) 1.0 7.0 1.0
血小板数(×104/mm3 31.1 10.4 11.0 19.0 26.8
AST(GOT)(IU/L) 18 183 244 39 71 35
ALT(GPT)(IU/L) 17 389 434 102 126 41
LDH(IU/L) 187 459 816 393 191
併用薬:炭酸リチウム、塩酸クロルプロマジン、塩酸ビペリデン、エチゾラム、非ピリン系感冒剤
 
NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
2
80代
てんかん発作
(糖尿病)
800mg
約3年7ヵ月間
抗利尿ホルモン不適合分泌
投与開始日 欠神発作(意識消失発作)に対し本剤を投与開始。
投与約4ヵ月後 血液検査にて、血清ナトリウム129mEq/Lを認め(本剤投与開始約1年前、血清ナトリウム140mEq/L)、以後血清ナトリウム126~135mEq/Lと低値継続。
投与約3年7ヵ月後 精査目的にて入院。血清ナトリウム128mEq/L、血漿浸透圧270mOsm/kg、尿浸透圧345mOsm/kg、尿中ナトリウム132mEq/日、抗利尿ホルモン0.5pg/mL、脱水なし、浮腫なし。
本剤による抗利尿ホルモン不適合分泌 (SIADH)と診断し、本剤を投与中止。
中止49日後 抗利尿ホルモン0.7pg/mL、血清ナトリウム135mEq/Lと改善。
企業報告
臨床検査値
   投与約1年前 投与
約4ヵ月後
投与約2年
9ヵ月後
投与約3年
7ヵ月後
中止49日後
クレアチニン(mg/dL) 0.9 0.8 0.9 0.8 0.9
BUN(mg/dL) 17 13 18 16 18
血清ナトリウム(mEq/L) 140 129 128 128 135
血清カリウム(mEq/L) 3.7 4.1 4.5 4.6 4.3
血清クロール(mEq/L) 105 96 96 98 103
血漿浸透圧(mOsm/kg) 264 270 285
抗利尿ホルモン(バソプレシン)
(pg/mL)
1.6 0.5 0.7
尿中ナトリウム(mEq/日) 132
尿浸透圧(mOsm/kg) 491 345 401
併用薬:グリクラジド、塩酸ジフェニドール


【2】 プラノプロフェン(経口剤)
販売名(会社名) イテオパン錠(東和薬品)
エリカプリック錠(シオノケミカル)
セスフラン錠(長生堂製薬)
ニフラン錠(三菱ウェルファーマ)、同シロップ(同仁医薬化工)
ノイペインカプセル(日本医薬品工業)
プラノプロフェン液1.5%MEEK(小林化工)
プランサスシロップ(久光製薬)
プランドフェン錠(ニプロファーマ)
マブールカプセル(大正薬品工業)
ルポック錠(東洋ファルマー)
薬効分類等 解熱鎮痛消炎剤
効能効果 (錠剤、カプセル剤、液剤)
(1)下記疾患ならびに症状の消炎・鎮痛
 慢性関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、頸肩腕症候群、歯根膜炎、痛風発作
(2)下記疾患の解熱・鎮痛
 急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
(3)外傷後、小手術後ならびに抜歯後の消炎・鎮痛
(シロップ剤)
下記疾患の解熱
 急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
 
《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
[副作用
(重大な副作用)]
間質性肺炎、好酸球性肺炎:間質性肺炎、好酸球性肺炎があらわれることがあるので、発熱、咳嗽、呼吸困難等の症状があらわれた場合には投与を中止し、速やかに胸部X線検査、血液検査等を実施し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
〈参考〉 企業報告
販売開始後(約25年間)の関連副作用報告数
(「因果関係が否定できるもの」以外のもので、「因果関係が不明なもの」も含む。)
  • 間質性肺炎、好酸球性肺炎:6症例(うち死亡0例)
関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約170万人(平成16年4月1日~平成17年3月31日)


症例の概要
 
NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
1
50代
感冒
(頸椎症、高脂血症、高血圧)
225mg
6日間
間質性肺疾患
15年前より高血圧、約半年前より頸椎症の治療を受けていた。
投与開始日 発熱、咳、痰の症状あり。
通院中の他院で本剤、オフロキサシンの投与を受ける(白血球数5400/mm3)。その後も発熱が続いた。
投与6日目
(投与中止日)
胸部レントゲン写真で肺炎と診断(白血球数11450/mm3)。スルベニシリンナトリウム注射用、トシル酸トスフロキサシンに変更した。
中止2日後 ホスホマイシンナトリウム追加。
中止6日後 塩酸セフォチアム、スパルフロキサシンに変更した。症状は続いた。
中止9日後 当科受診。入院後、塩酸ミノサイクリンを投与し、酸素投与開始。
中止10日後 気管支鏡にて経気管支肺生検を行ったところ、間質性肺炎を認めた。経過より、薬剤性肺炎を疑い経過をみたが、以後発熱はなく徐々に軽快した(白血球数5560/mm3、LDH1015IU/L)。
中止34日後 DLST試験(本剤203%、オフロキサシン121%)で本剤に陽性を示し、本剤による薬剤性肺炎と診断した。
中止37日後 白血球数4350/mm3、LDH335IU/Lとなる。
中止38日後 回復。
企業報告
臨床検査値
   投与開始日 投与6日目
(投与中止日)
中止8日後 中止10日後 中止37日後
白血球数(/mm3 5400 11450 6700 5560 4350
LDH(IU/L) 1015 335
併用薬:ザルトプロフェン、塩酸エペリゾン、ジクロフェナクナトリウム、シサプリド、オフロキサシン、アルプラゾラム、プラバスタチンナトリウム、メチルドパ、ピンドロール、塩酸ラニチジン
 
NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
2
40代
上気道炎
(なし)
225mg
3日間
急性好酸球性肺炎
投与開始日 上気道炎の治療を目的に本剤等を近医にて投与される。
投与3日目
(投与中止日)
発熱、咳嗽、呼吸困難が発現する。
中止1日後 近医を受診し投薬を中止する。
中止2日後 当院へ入院。入院時、好酸球28%、PaO2 60mmHg、胸部X線:Kerley B line、両側胸水。セフタジジム、塩酸ミノサイクリンを使用し順調に回復した。
後日行った白血球遊走阻止テストで本剤が陽性を示した。
BAL(気管支肺胞洗浄)では好酸球39%と増加。
TBLB(経気管支肺生検)では肺胞腔内へ好酸球浸潤。
企業報告
臨床検査値
   中止2日後 中止11日後
体温(℃) 37
白血球数(/mm3 8300 5700
好酸球分画(%) 28 5
CRP(mg/dL) 2.7
併用薬:ヒベンズ酸チペピジン、塩酸セフカペンピボキシル


【3】 補中益気湯
 
販売名(会社名) オースギ補中益気湯エキスG(高砂薬業)
カネボウ補中益気湯エキス細粒(カネボウ)
コタロー補中益気湯エキス細粒(小太郎漢方製薬)
サカモト補中益気湯エキス顆粒(阪本漢法製薬)
三和補中益気湯エキス細粒(三和生薬)
JPS補中益気湯エキス顆粒〔調剤用〕(ジェ-ピ-エス製薬)
ジュンコウ補中益気湯FCエキス細粒医療用(康和薬通)
太虎堂の補中益気湯エキス顆粒、同エキス散(太虎精堂製薬)
ツムラ補中益気湯エキス顆粒(医療用)(ツムラ)
テイコク補中益気湯エキス顆粒(帝國漢方製薬)
〔東洋〕補中益気湯エキス細粒(東洋薬行)
補中益気湯エキス顆粒T(東亜薬品)
ホノミ補中益気湯Nエキス顆粒(剤盛堂薬品)
本草補中益気湯エキス顆粒-M(本草)
薬効分類等 漢方製剤
効能効果 コタロー補中益気湯エキス細粒
 胃腸機能減退し、疲労倦怠感があるもの、あるいは頭痛、悪寒、盗汗、弛緩性出血などを伴うもの。
 結核性疾患および病後の体力増強、胃弱、貧血症、夏やせ、虚弱体質、低血圧、腺病質、痔疾、脱肛。
三和補中益気湯エキス細粒
 体力が乏しく貧血ぎみで、胃腸機能が減退し、疲労倦怠感や食欲不振あるいは盗汗などあるものの次の諸症
 病後・術後の衰弱、胸部疾患の体力増強、貧血症、低血圧症、夏やせ、胃弱、胃腸機能減退、多汗症
ツムラ補中益気湯エキス顆粒(医療用)
 消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症
 夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症
その他
 元気がなく胃腸のはたらきが衰えて疲れやすいものの次の諸症
 虚弱体質、疲労倦怠、病後の衰弱、食欲不振、ねあせ
 
《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
[副作用
(重大な副作用)]
間質性肺炎:発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、速やかに胸部X線等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。また、発熱、咳嗽、呼吸困難等があらわれた場合には、本剤の服用を中止し、ただちに連絡するよう患者に対し注意を行うこと。
〈参考〉 企業報告
販売開始後(約21年間)の関連副作用報告数
(「因果関係が否定できるもの」以外のもので、「因果関係が不明なもの」も含む。)
  • 間質性肺炎:5例(うち死亡1例)
年間使用者数:約14万人(平成16年度)


症例の概要
 
NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
1
80代
食欲不振
(気管支喘息、骨粗鬆症)
7.5g
170日間
間質性肺炎
投与開始日 食欲不振のため、本剤投与開始。
投与5ヵ月目 労作時の息切れ自覚。
投与169日目 手指にチアノーゼ出現。
投与170日目
(投与中止日)
本剤投与中止。
中止1日後 近医受診、血液ガスPaO2 35.5(room air)、PaCO2 42.3(room air)。胸部X線上、両肺野に強い間質陰影、同日当院紹介入院となる。入院時胸部X線、CTより両側上葉優位にスリガラス状、網状影が認められる。薬剤性、マイコプラズマ、日和見感染が当初疑われた。メロペネム三水和物0.5g×2及び塩酸ミノサイクリン100mg×2(10日間)、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム1000mg(3日間)のパルス療法開始。
中止4日後 血液ガスの改善、胸部X線の改善が認められないため、シクロホスファミド500mg投与。その後中止6日後、中止8日後、中止10日後にも100mgずつ投与。
中止6日後 次第に体温上昇(発熱)。白血球日増しに上昇。
中止9日後 意識混濁、38℃台の発熱、血圧80~100/50~60mmHgと低下、敗血症が疑われた。胸部X線上間質影の改善みられず。
中止10日後 意識レベルIII-300、呼吸状態著明に悪化。
中止11日後 死亡。
企業報告
臨床検査値
   中止1日後 中止6日後 中止9日後 中止10日後
白血球数(/mm3 10100 14400 16400 27100
LDH(IU/L) 560 638 939
CRP(mg/dL) 5.48 3.84 13.31 14.23

血液ガス(02 10L/分)
   中止1日後 中止6日後 中止9日後 中止10日後
pH 7.498 7.442 7.221 7.127
PaO2(torr) 92.9 84.1 68.2 60.9
PaCO2(torr) 44.4 52.8 69.8 91.0

免疫血清検査
   中止2日後
RAテスト 陰性
抗核抗体 陰性
抗DNA抗体 陰性
免疫複合体(μEq/mL) <1.5
補体CH50(CH50単位) 32.7
併用薬:テオフィリン、ビフィズス菌製剤、スクラルファート、メナテトレノン、酸化マグネシウム、乳酸カルシウム、アルファカルシドール
 
NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
2
80代
便秘
(高血圧症、神経因性膀胱、脳血管性痴呆、脳梗塞)
7.5g
1119日間
間質性肺炎
投与開始日 便秘のため、本剤投与開始。
投与933日目 軽度の息切れ自覚(初診時にはなかった症状であった)。
投与1085日目 倦怠感、息苦しさ、食欲不振あり。
投与1098日目 発熱、心窩部痛、息苦しさ増強し、外来受診。喀痰喀出(-)、咳(-)。胸部X線上、両下肺野中心に軽度の間質性陰影、胸水貯留、胸膜変化(+)。抗生剤の点滴を行うが不明瞭な増悪(CRP30.0mg/dL)。コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウムの点滴で症状はやや改善するが完治せず。
投与1119日目
(投与中止日)
本剤投与中止。
中止2日後 コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウムのパルス療法に変更し、CRP及び症状改善。
中止5日後 発熱消失、息切れ症状は改善傾向。
企業報告
臨床検査値
   投与1098日目 投与1111日目 中止2日後 中止7日後
白血球数(/mm3 11500 13400 9000 11700
好酸球(%) 1 1 0 1
LDH(IU/L) 511 395 315 372
CRP(mg/dL) 30.0 28.0 6.1 2.4
併用薬:塩酸チクロピジン、ニソルジピン、塩酸イミプラミン、塩酸タムスロシン、フルバスタチンナトリウム、フロセミド

 

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使用上の注意の改訂について(その168)

 前号(医薬品・医療機器等安全性情報 No.215)以降に改訂を指導した医薬品の使用上の注意(本号の「3 重要な副作用等に関する情報」で紹介したものを除く。)について、改訂内容、主な該当販売名、参考文献等をお知らせいたします。

 
1 〈抗てんかん剤、精神神経用剤〉
カルバマゼピン
[販売名] テグレトール細粒50%、同錠100mg、同錠200mg(ノバルティスファーマ)他
[副作用
(重大な副作用)]
再生不良性貧血、汎血球減少、白血球減少、無顆粒球症、溶血性貧血、赤芽球癆、血小板減少:重篤な血液障害があらわれることがあるので、定期的に血液検査を実施するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
過敏症症候群:初期症状として発熱、発疹がみられ、さらにリンパ節腫脹、関節痛、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現、肝脾腫、肝機能障害等の臓器障害を伴う遅発性の重篤な過敏症状があらわれることがある。また、発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意すること。なお、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)等のウイルス再活性化を伴うことが多い。このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
〈参考〉 企業報告

 

2 〈鎮けい剤〉
塩酸チザニジン
[販売名] テルネリン顆粒0.2%、同錠1mg(ノバルティスファーマ)他
[禁忌]
フルボキサミン又はシプロフロキサシンを投与中の患者
[相互作用
(併用禁忌)]
フルボキサミン、シプロフロキサシン
〈参考〉 企業報告

 

3 〈高脂血症用剤〉
コレスチミド
[販売名] コレバイン顆粒70%、同ミニ83%、同錠500mg(三菱ウェルファーマ)
[慎重投与] 高齢者又は嚥下困難がある患者
[重要な基本
的注意]
誤って気道に入った本剤が膨潤し、呼吸困難を起こした症例が報告されているので、以下の事項に注意して服用させること。
1)本剤は十分量(200mL程度)の水で服用させること。のどの奥に残った場合には、さらに水を飲み足させること。
 2)温水(湯、温かい茶等)にて服用すると膨らんで服用できない場合があるので常温の水又は冷水で服用させること。
 3)口中に長く留めていると膨らんで服用できない場合があるので速やかに嚥下させること。
 4)錠剤の場合は1錠ずつ服用させること。
〈参考〉 企業報告

 

4 〈鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤〉
ブフェキサマク
[販売名] アンダーム軟膏、同クリーム(帝國製薬)他
[副作用
(重大な副作用)]
接触皮膚炎:本剤使用部位に発現したそう痒感、発赤・紅斑、腫脹、浮腫、水疱・びらん等の皮膚炎症状が全身に拡大し、重篤化することがあるので、異常が認められた場合には直ちに使用を中止し、適切な処置を行うこと。
〈参考〉 企業報告

 

5 〈止血剤〉
ポリドカノール
[販売名] エトキシスクレロール1%注射液(堺化学工業)
[重要な基本
的注意]
本剤の投与により食道血腫を形成することがあるので、経過観察を十分に行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。
〈参考〉 企業報告

 

6 〈糖尿病用剤〉
塩酸メトホルミン
[販売名] グリコラン錠(日本新薬)、メルビン錠(住友製薬)他
[副作用
(重大な副作用)]
肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、Al-P、γ-GTP、ビリルビンの著しい上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
〈参考〉 企業報告

 

7 〈漢方製剤〉
小青竜湯
[販売名] カネボウ小青竜湯エキス細粒(カネボウ)他
[副作用
(重大な副作用)]
間質性肺炎:発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、速やかに胸部X線等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。また、発熱、咳嗽、呼吸困難等があらわれた場合には、本剤の服用を中止し、ただちに連絡するよう患者に対し注意を行うこと。
〈参考〉 企業報告

 

8 〈合成抗菌剤〉
シプロフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン
[販売名] シプロキサン注200mg、同注300mg、同錠100mg、同錠200mg(バイエル薬品)他
[禁忌]
塩酸チザニジンを投与中の患者
[相互作用
(併用禁忌)]
塩酸チザニジン
〈参考〉 企業報告

 

9 〈抗ウイルス剤〉
リン酸オセルタミビル
[販売名] タミフルカプセル75、同ドライシロップ3%(中外製薬)
[副作用
(重大な副作用)]
出血性大腸炎:出血性大腸炎があらわれることがあるので、血便、血性下痢等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
〈参考〉 企業報告

 

10 〈他に分類されない治療を主目的としない医薬品〉
ニコチン
[販売名] ニコチネルTTS30、同20、同10(ノバルティスファーマ)
[副作用
(重大な副作用)]
アナフィラキシー様症状:低血圧、頻脈、呼吸困難、蕁麻疹、血管浮腫等の全身症状を伴うアナフィラキシー様症状があらわれることがある。このような場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
〈参考〉 企業報告

 

11 一般用医薬品
ブフェキサマク含有製剤
[販売名] マックカラミラクリーム(福地製薬)、ロマーナクリーム(東光薬品工業)
[相談すること] 次の場合は、直ちに使用を中止し、この文書を持って医師又は薬剤師に相談すること
 使用後、次の症状があらわれた場合
  まれに下記の重篤な症状が起こることがあります。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
   接触皮膚炎:塗布部に発疹・発赤、かゆみ、はれ、かぶれ等があらわれ、これらの症状が全身に広がり、症化することがある。
〈参考〉 企業報告

 

12 一般用医薬品
小青竜湯
[販売名] ツムラ漢方小青竜湯エキス顆粒他
[相談すること] 次の場合は、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師又は薬剤師に相談すること
 服用後、次の症状があらわれた場合
  まれに下記の重篤な症状が起こることがあります。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
   間質性肺炎:せきを伴い、息切れ、呼吸困難、発熱等があらわれる。
〈参考〉 企業報告

 

13 一般用医薬品
補中益気湯
[販売名] ツムラ漢方補中益気湯エキス顆粒他
[相談すること] 次の場合は、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師又は薬剤師に相談すること
 服用後、次の症状があらわれた場合
  まれに下記の重篤な症状が起こることがあります。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
   間質性肺炎:せきを伴い、息切れ、呼吸困難、発熱等があらわれる。
〈参考〉 企業報告

 

 

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市販直後調査の対象品目一覧

(平成17年8月1日現在)

一般名 製造販売業者名 市販直後調査開始年月日
販売名
塩酸プラルモレリン 科研製薬(株) 平成17年2月25日
注射用GHRP科研100
硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸 三菱ウェルファーマ(株) 平成17年3月15日
ジオン注無痛化剤付、同注生食液付
塩酸エピナスチン 日本ベーリンガーインゲルハイム(株) 平成17年3月23日
アレジオンドライシロップ1%
エタネルセプト(遺伝子組換え) ワイス(株) 平成17年3月30日
エンブレル皮下注用25mg
オキサリプラチン (株)ヤクルト本社 平成17年4月6日
エルプラット注射用100mg
タクロリムス水和物 アステラス製薬(株) 平成17年4月11日
プログラフカプセル0.5mg、同カプセル1mg*1
エムトリシタビン 日本たばこ産業(株) 平成17年4月19日
エムトリバカプセル200mg
エムトリシタビン・フマル酸テノホビルジソプロキシル配合剤 日本たばこ産業(株) 平成17年4月19日
ツルバダ錠
ロスバスタチンカルシウム アストラゼネカ(株) 平成17年4月27日
クレストール錠2.5mg、同錠5mg
ボセンタン水和物 アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン(株) 平成17年6月10日
トラクリア錠62.5mg
タミバロテン 東光薬品工業(株) 平成17年6月13日
アムノレイク錠2mg
トシリズマブ(遺伝子組換え) 中外製薬(株) 平成17年6月13日
アクテムラ点滴静注用200
アデノシン 第一サントリーファーマ(株) 平成17年6月21日
アデノスキャン注60mg
ボリコナゾール ファイザー(株) 平成17年6月27日
ブイフェンド錠50mg、同錠200mg、同200mg静注用
ルリコナゾール ポーラ化成工業(株) 平成17年7月20日
ルリコンクリーム1%、同液1%

注)効能追加等における対象
*1:効能追加された「関節リウマチ(既存治療で効果不十分な場合に限る)」

 

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お知らせ
医薬品・医療機器等安全性情報は、医薬品医療機器情報提供ホームページ(https://www.pmda.go.jp/)又は厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)からも入手可能です。
また、NTTのファクシミリ通信網サービス「Fネット」を通じ、最近1年間の「医薬品・医療機器等安全性情報」がお手元のファクシミリから随時入手できます(利用者負担)。
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