独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

医薬品・医療機器等安全性情報 No.233

目次

  1. 重要な副作用等に関する情報
    1. リツキシマブ(遺伝子組換え)
    2. 塩酸セフカペンピボキシル
    3. 女神散
  2. 使用上の注意の改訂について(その184)
    ラベプラゾールナトリウム他(2件)
  3. 市販直後調査の対象品目一覧

 

この医薬品・医療機器等安全性情報は, 厚生労働省において収集された副作用等の情報をもとに, 医薬品・医療機器等のより安全な使用に役立てていただくために, 医療関係者に対して情報提供されるものです。

平成19年(2007年)2月
厚生労働省医薬食品局





 

厚生労働大臣への副作用等報告は, 医療関係者の業務です。

 医師, 歯科医師, 薬剤師等の医療関係者は, 医薬品や医療機器による副作用, 感染症, 不具合を知ったときは, 直接又は当該医薬品等の製造販売業者を通じて厚生労働大臣へ報告してください。
 なお, 薬種商販売業や配置販売業の従事者も医療関係者として, 副作用等につき, 報告することが求められています。
 

目次へ

 

重要な副作用等に関する情報

 平成18年12月21日及び平成19年1月12日に改訂を指導した医薬品の使用上の注意のうち重要な副作用等について, 改訂内容等とともに改訂の根拠となった症例の概要等に関する情報を紹介いたします。

【1】リツキシマブ(遺伝子組換え)

販売名(会社名) リツキサン注10mg/mL(全薬工業)
薬効分類等 その他の腫瘍用薬
効能効果 CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫
 
使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
[警   告]

警告

B型肝炎ウイルスキャリアの患者で, 本剤の治療期間中又は治療終了後に, 劇症肝炎又は肝炎の増悪, 肝不全による死亡例が報告されている(「重要な基本的注意」, 「重大な副作用」の項参照)。
[重要な基本
的注意]
B型肝炎ウイルスキャリアの患者で, 本剤の投与により, 劇症肝炎又は肝炎が増悪することがあるので, 本剤の治療期間中及び治療終了後は継続して肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど患者の状態を十分に観察し, 異常が認められた場合は投与を中止し, 直ちに抗ウイルス剤を投与するなど適切な処置を行うこと。なお, 投与開始前にHBs抗原陰性の患者において, B型肝炎ウイルスによる劇症肝炎を発症し, 死亡に至った症例が報告されている(「重大な副作用」の項参照)。
本剤の治療中より末梢血リンパ球の減少があらわれ, 治療終了後も持続すること, また免疫グロブリンが減少した例が報告されていることなど, 免疫抑制作用により細菌やウイルスによる感染症が生じる又は悪化する可能性があるので, 患者の状態を十分観察すること。感染症が生じた場合は適切な治療を行うこと。
[副作用
(重大な副作用)]
B型肝炎ウイルスによる劇症肝炎, 肝炎の増悪:B型肝炎ウイルスによる劇症肝炎又は肝炎の増悪による肝不全があらわれることがあるので, 肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど患者の状態を十分に観察すること(「重要な基本的注意」の項参照)。
肝機能障害, 黄疸:AST(GOT), ALT(GPT), Al-P, 総ビリルビン等の肝機能検査値の上昇を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがあるので, 肝機能検査を行うなど患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合は投与を中止し, 適切な処置を行うこと。
消化管穿孔:消化管穿孔があらわれることがあるので, 消化管穿孔の初期症状としての腹痛, 腹部膨満感, 下血, 吐血, 貧血等の観察を十分に行い, 異常が認められた場合は, 直ちにX線, CT検査等を実施して出血部位, 穿孔所見の有無を確認し, 適切な処置を行うこと。
〈参  考〉 直近約2年間(平成16年11月4日~平成18年12月11日)の副作用報告(因果関係が否定できないもの)の件数
・劇症肝炎:6例(うち死亡5例)
・消化管穿孔:3例(うち死亡1例)
関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約1万6000人(平成17年11月~平成18年10月)
販売開始:平成13年9月
 

症例の概要

No. 患者 1日投与量
投与期間
副作用
性 ・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
1
40代
非ホジキンリンパ腫
(HBVキャリア, 脂肪肝)
600mg
3回
重症肝炎
非ホジキンリンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma), 臨床病期:I, 既往歴:45歳時, 心筋梗塞にてバイパス手術施行, 家族歴:母, 弟, 妹がHBVキャリア
投与38日前 右精巣腫瘍にて摘出術施行。病理結果にて右精巣悪性リンパ腫診断。
投与16日前 HBs抗原(+), HBs抗体(-), HBc抗体(+), HBe抗原(-), HBe抗体(+), HBV-DNA3.9LGE/mL。腹部USにて脂肪肝を認める。
投与1日前 AST(GOT)30IU/L, ALT(GPT)114IU/L。
投与1日目
(投与開始日)
本剤+THP-COP療法(塩酸ピラルビシン, 硫酸ビンクリスチン, シクロホスファミド, プレドニゾロン)1コース目施行。
投与13日目 本剤+THP-COP療法2コース目施行。
投与27日目 本剤+THP-COP療法3コース目施行。
AST(GOT)30IU/L, ALT(GPT)81IU/L。
終了11日後 再発防止のため, 左睾丸に放射線療法開始(計40Gy)。
終了42日後 放射線療法終了し, 退院。
終了75日後 外来再診時, AST(GOT)55IU/L, ALT(GPT)136IU/L。
終了94日後 全身倦怠感, 食欲不振のため救急外来受診。
AST(GOT)2358IU/L, ALT(GPT)3106IU/Lと著明な肝機能異常を認め, 同日入院。
B型肝炎の急性増悪による重症肝炎と診断。G-I療法, ラミブジン200mg/日投与開始。
終了98日後 AST(GOT)7073IU/L, ALT(GPT)5151IU/Lと上昇し, プロトロンビン時間20.5%と低値になる。
ステロイドパルス療法施行。
終了101日後 AST(GOT)1888IU/L, ALT(GPT)3150IU/Lに改善したが, 肝性脳症II度出現。
劇症肝炎に移行, 同日より血漿交換, CHDF開始。
終了106日後 死亡。
死因:劇症肝炎
剖検所見:肝萎縮と小黄白斑の壊死像をびまん性に認める。
臨床検査値
   投与
16日前
投与
1日前
投与
27日目
終了
11日後
終了
75日後
終了
94日後
終了
95日後
終了
98日後
終了
101日後
アルブミン(g/dL) - 3.8 4.2 3.9 4.6 4.0 - - 3.6
総ビリルビン(mg/dL) - 0.42 - - - - - - -
AST(GOT)(IU/L) - 30 30 14 55 2358 2915 7073 1888
ALT(GPT)(IU/L) - 114 81 41 136 3106 3343 5151 3150
LDH(IU/L) - 175 189 154 - - - 2072 -
プロトロンビン時間(%) - - - - - - - 20.5 -
HBs抗原 (+) - - - - - - - -
HBs抗体 (-) - - - - - - - -
HBc抗体 (+) - - - - - - - -
HBe抗原 (-) - - - - - (-) - -
HBe抗体 (+) - - - - - (+) - -
HBV-DNA(LGE/mL) 3.9 - - - - - >8.7 - -
併用薬:塩酸ピラルビシン, 硫酸ビンクリスチン, シクロホスファミド, プレドニゾロン
 
No. 患者 1日投与量
投与期間
副作用
性 ・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
2
60代
悪性リンパ腫[MALT型]
(糖尿病, 高血圧)
740mg
5回
B型肝炎
悪性リンパ腫(MALT型), 既往歴, 家族歴に肝疾患なし。
投与約4年前 左涙腺MALTリンパ腫にて切除術。
投与約1年前 全身のリンパ節でのMALTリンパ腫再発のため, COP療法(シクロホスファミド, 硫酸ビンクリスチン, プレドニゾロン)6コース施行。
投与28日前 MALTリンパ腫再燃のためCHO療法(シクロホスファミド, 塩酸ドキソルビシン, 硫酸ビンクリスチン)開始。
投与25日前 HBs抗原(-)。
投与1日目
(投与開始日)
本剤投与開始(R-CHO療法として)。
投与100日目 本剤5回目投与。
終了1日後 CHO療法6コース目施行。
終了2ヵ月後 倦怠感, 食欲不振, 尿の黄染が認められる。
終了65日後 血液検査にて肝機能障害認める(AST(GOT)5760IU/L, ALT(GPT)4310IU/L, Al-P432IU/L, 総ビリルビン8.7mg/dL)。
CT上, 明らかなMALTリンパ腫の再発はみられなかったが, HBs抗原(+), HBs抗体(-), HBc抗体(+), HBe抗原(-), HBe抗体(+), HBV-DNA8.6LGE/mLとHBs抗原陰性キャリアからの急性発症と判断。ラミブジン, ステロイドパルスによる治療を開始。
終了75日後 肝機能障害が徐々に進行し, 血漿交換開始。
終了76日後 HBV-DNA5.2LGE/mL, AST(GOT)412IU/L, ALT(GPT)482IU/L, 総ビリルビン20.1mg/dL, プロトロンビン時間35.0%, アンモニア76μg/dL。
終了79日後 意識障害認める。
終了80日後 持続透析開始したが改善見られず。
終了85日後 死亡。
死因:劇症B型肝炎
剖検所見:肝萎縮, 胆汁うっ滞があり, 出血症状が散在していた。
 

臨床検査値

   投与
25日前
投与
1日目
(投与開始日)
投与
31日目
投与
78日目
終了
20日後
終了
65日後
終了
71日後
終了
76日後
終了
80日後
終了
85日後
アルブミン(g/dL) 4.7 4.2 4.3 3.7 - - 3.2 3.0 - -
総ビリルビン(mg/dL) 0.6 0.3 0.6 0.7 0.3 8.7 13.8 20.1 15.0 23.0
AST(GOT)(IU/L) 19 14 19 21 25 5760 596 412 118 81
ALT(GPT)(IU/L) 25 19 25 19 34 4310 1267 482 114 63
Al-P(IU/L) 132 137 132 178 211 432 576 298 246 216
LDH(IU/L) 161 119 161 141 155 1505 359 368 341 705
APTT(秒) 30.4 - - - - 37.9 - - - 42.8
プロトロンビン時間(%) 101.8 - - - - 46.7 - 35.0 34.7 22.0
アンモニア(μg/dL) - - - - - 36 - 76 88 73
HBs抗原 (-) - (-) - - (+) - - - -
HBs抗体 - - - - - (-) - - - -
HBc抗体 - - - - - (+) - - - -
HBe抗原 - - - - - (-) - - - -
HBe抗体 - - - - - (+) - - - -
HBV-DNA(LGE/mL) - - - - - 8.6 - 5.2 - -

併用薬:シクロホスファミド, 塩酸ドキソルビシン, 硫酸ビンクリスチン, スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤, カンデサルタンシレキセチル, ボグリボース, メコバラミン

No. 患者 1日投与量
投与期間
副作用
性 ・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
3
60代
非ホジキンリンパ腫
(なし)
500mg
2回
消化管穿孔
非ホジキンリンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)
臨床病期:IVA, Performance Status:3, 投与前LDH値:正常値×1<, 既往歴:なし, 合併症:なし, アレルギー歴:なし
投与7ヵ月前 非ホジキンリンパ腫発症, 胃部に病変を認める。CHOP療法を6コース施行(本剤投与2ヵ月前まで)。
投与1ヵ月前 MEDOCH療法1コース施行。寛解に至らず増悪, 中枢神経再発を来した。
投与9日前 非ホジキンリンパ腫治療のため, コハク酸プレドニゾロンナトリウム投与開始(20mg/日)。
投与1日目
(投与開始日)
本剤1回目投与。
投与8日目 本剤2回目投与。
終了4日後 腹部異和感, 腹痛が発現。腹部X線検査の結果, free air(-)。ペンタゾシン投与にて一時腹痛軽減。コハク酸プレドニゾロンナトリウム投与終了。
終了5日後 腹部エコーで穿孔の疑いがあり, 腹部CTを実施したところ回腸に消化管穿孔の所見を認めた。腹痛の訴えはあまりなかった。外科に転科し, 緊急手術を施行。穿孔部位の手術標本にリンパ腫が認められた。
終了22日後 術後経過良好にて内科に転科。
併用薬:コハク酸プレドニゾロンナトリウム, シメチジン, スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤, ジアスターゼ配合剤, スクラルファート, メコバラミン, ブロチゾラム, フルニトラゼパム
 
No. 患者 1日投与量
投与期間
副作用
性 ・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
4
70代
非ホジキンリンパ腫
(なし)
560mg
3回
小腸穿孔
非ホジキンリンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma), 既往歴:なし, 合併症:なし
投与2ヵ月前 発熱を主訴に近医を受診。貧血も認め, 上部消化管内内視鏡検査(GS)にて胃体上部後壁に潰瘍性病変を認める。生検でMALTリンパ腫と診断。
H.pylori 除菌療法施行するも, 発熱, 貧血は改善せず。治療のため紹介入院。
腹部CTでは小腸に径10cm大の腫瘤を認める。小腸透視では空腸に全周性陰影欠損を認める。腹部超音波検査にて著明な低エコーを呈する小腸壁肥厚を認める。血中IL-2レセプター抗体は4040U/mLと上昇していた。十二指腸にも病変があり, 同部からの生検の結果, diffuse large B-cell lymphomaと診断。以上より消化管悪性リンパ腫と診断された。PETにて胸腰椎に集積を認め, stageIVと診断された。
投与27日前 THP-COP(塩酸ピラルビシン, シクロホスファミド, 硫酸ビンクリスチン, プレドニゾロン)1コース目施行。
投与1日目
(投与開始日)
本剤1回目投与。THP-COP2コース目施行。
以後, GS, 腹部CT, 腹部エコーでは小腸腫瘍の著明な縮小を認める。
投与23日目 本剤2回目投与。THP-COP3コース目施行。
投与33日目 全身の脱力, 嘔気, 腹満感あり。症状悪化し, 同日, 救急車にて搬送。腹部CTにて腹腔内free airを認め, 小腸穿孔と診断。
投与34日目 緊急手術。腫瘤が存在したと思われる部位に穿孔を認め, 周囲の癒着部を含め切除。切除部の病理では穿孔部に潰瘍を認めたが, 腫瘍組織は認めなかった。
投与87日目 回復し退院。
投与120日目 本剤3回目投与。THP-COP4コース目施行。再発なし。
併用薬:塩酸ピラルビシン, シクロホスファミド, 硫酸ビンクリスチン, プレドニゾロン


 

【2】塩酸セフカペンピボキシル

販売名(会社名) フロモックス小児用細粒100mg, 同錠75mg, 同錠100mg(塩野義製薬)
薬効分類等 主としてグラム陽性・陰性菌に作用するもの
効能効果 (細粒)
<適応菌種>
セフカペンに感性のブドウ球菌属, レンサ球菌属, 肺炎球菌, モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス, 大腸菌, シトロバクター属, クレブシエラ属, エンテロバクター属, セラチア属, プロテウス属, モルガネラ・モルガニー, プロビデンシア属, インフルエンザ菌, ペプトストレプトコッカス属, バクテロイデス属, プレボテラ属(プレボテラ・ビビアを除く), アクネ菌
<適応症>
表在性皮膚感染症, 深在性皮膚感染症, リンパ管・リンパ節炎, 慢性膿皮症
咽頭・喉頭炎, 扁桃炎(扁桃周囲炎, 扁桃周囲膿瘍を含む), 急性気管支炎, 肺炎
膀胱炎, 腎盂腎炎
中耳炎, 副鼻腔炎
猩紅熱
(錠剤)
<適応菌種>
セフカペンに感性のブドウ球菌属, レンサ球菌属, 肺炎球菌, 淋菌, モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス, 大腸菌, シトロバクター属, クレブシエラ属, エンテロバクター属, セラチア属, プロテウス属, モルガネラ・モルガニー, プロビデンシア属, インフルエンザ菌, ペプトストレプトコッカス属, バクテロイデス属, プレボテラ属(プレボテラ・ビビアを除く), アクネ菌
<適応症>
表在性皮膚感染症, 深在性皮膚感染症, リンパ管・リンパ節炎, 慢性膿皮症
外傷・熱傷及び手術創等の二次感染, 乳腺炎, 肛門周囲膿瘍
咽頭・喉頭炎, 扁桃炎(扁桃周囲炎, 扁桃周囲膿瘍を含む), 急性気管支炎, 肺炎, 慢性呼吸器病変の二次感染
膀胱炎, 腎盂腎炎
尿道炎, 子宮頸管炎
胆嚢炎, 胆管炎
バルトリン腺炎, 子宮内感染, 子宮付属器炎
涙嚢炎, 麦粒腫, 瞼板腺炎
外耳炎, 中耳炎, 副鼻腔炎
歯周組織炎, 歯冠周囲炎, 顎炎
 
使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
[副作用
(重大な副作用)]
劇症肝炎, 肝機能障害, 黄疸劇症肝炎等の重篤な肝炎, AST(GOT), ALT(GPT), Al-P等の上昇を伴う肝機能障害, 黄疸があらわれることがあるので, 定期的に検査を行うなど観察を十分に行い, 異常が認められた場合には投与を中止し, 適切な処置を行うこと。
〈参  考〉 直近約3年間(平成15年4月1日~平成18年12月5日)の副作用報告(因果関係が否定できないもの)の件数
・劇症肝炎:3例(うち死亡1例)
関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約2000万人(平成18年1月~平成18年12月)
販売開始:平成9年6月
 

症例の概要

No. 患者 1日投与量
投与期間
副作用
性 ・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
1
10歳未満
上気道炎
(てんかん)
50mg
1日間
劇症肝炎
既往歴:なし
投与約3年6ヵ月前 てんかん発症のため, カルバマゼピン投与開始(当科紹介時300mg/日投与中)。
投与約2年8ヵ月前 てんかんに対し, フェニトイン投与開始(当科紹介時110mg/日投与中)。
投 与 日 発熱を認めたため, 午前中に前医受診。
白血球数16000/mm3, CRP2.1mg/dL, AST(GOT)49IU/L, ALT(GPT)29IU/L。
本剤, 水薬(詳細不明)を処方され帰宅。
いずれも1回のみ服用。
同日夜からうとうとしだした。
中止1日後 うとうとする時間が長く, 服薬もできなかった。
中止2日後 前医再診, 血液検査で肝不全と診断され, 当科紹介転院。当科入院時, AST(GOT)7070IU/L, ALT(GPT)4100IU/L, プロトロンビン時間8%, 肝性昏睡IV度が認められたため, 劇症肝炎と診断された。CV(中心静脈)確保後, メシル酸ナファモスタット, ステロイドパルス, 塩酸セフォチアム, グリチルリチン・グリシン・システイン配合剤を点滴投与, ラクツロース, 硫酸カナマイシンを経鼻注入, D-ソルビトール・D-マンニトール配合剤を点滴投与。
第1回血漿交換+血液透析施行。
カルバマゼピン, フェニトイン投与中止。
中止3日後 AST(GOT)2985IU/L, ALT(GPT)1886IU/L, プロトロンビン時間31%。
第2回血漿交換+血液透析施行, JCS(Japan Coma Scale)は1桁に意識レベル改善。
中止4日後 AST(GOT)569IU/L, ALT(GPT)769IU/L, プロトロンビン時間34%。
第3回血漿交換+血液透析施行。
中止5日後 AST(GOT)171IU/L, ALT(GPT)381IU/L, プロトロンビン時間82%。
人工肝補助療法は施行せず, 経過観察。
脳波所見改善。
肝不全用成分栄養剤を経鼻注入開始。
中止7日後 CV抜去。
中止8日後 経口摂取開始。
中止11日後 DLST施行:本剤(陽性), フェニトイン(陽性), カルバマゼピン(陽性)
中止14日後 軽快(AST(GOT)43IU/L, ALT(GPT)62IU/L, プロトロンビン時間96%)。
全身状態良好にて, 他院へ転院。
ウイルス検査結果(入院時):IgM-HA抗体(-), IgM-HBc抗体(-), HBs抗原(-), HCV抗体(-), EBV-VCA IgG:80倍, EBV-VCA IgM:<10倍, EBV-EBNA:40倍, CMV IgG:14.3, CMV IgM:0.21, エコーウイルス抗体11型:<8倍, アデノウイルス抗体(CF):<4倍, コクサッキーウイルス抗体A9型:16倍, コクサッキーウイルス抗体B3型:16倍
臨床検査値
   投与日
(投与前)
中止2日後 中止3日後 中止4日後 中止5日後 中止14日後
AST(GOT)(IU/L) 49 7070 2985 569 171 43
ALT(GPT)(IU/L) 29 4100 1886 769 381 62
Al-P(IU/L) 926 1328 - - - -
LDH(IU/L) 267 6460 558 340 194 226
γ-GTP(IU/L) - 203 - - - -
総ビリルビン(mg/dL) 0.21 2.6 2.1 2.4 1.4 0.6
アンモニア(μg/dL) - 79 111 86 97 37
プロトロンビン時間(%) - 8 31 34 82 96
併用薬:フェニトイン, カルバマゼピン
 
No. 患者 1日投与量
投与期間
副作用
性 ・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
2
50代
抜歯後の感染予防
(なし)
300mg
3日間
劇症肝炎
既往歴:なし
投与開始日 某歯科医にて, 抜歯後の感染予防として本剤を処方された。
同時に塩化リゾチーム, ビオヂアスターゼ1000配合剤も処方された。
投与3日目
(投与終了日)
本剤, 塩化リゾチーム, ビオヂアスターゼ1000配合剤の投与終了。
終了約2週後 黄疸, 全身倦怠感を自覚。
終了18日後 近医にて, 肝障害(AST(GOT)908IU/L, ALT(GPT)1211IU/L, 総ビリルビン10.6 mg/dL, 直接ビリルビン7.0 mg/dL)を指摘。
終了20日後 A病院に入院。グリチルリチン・グリシン・システイン配合剤100mL/日, FFP(新鮮凍結人血漿)輸注開始。
終了26日後 AST(GOT)815IU/L, ALT(GPT)1176IU/L, 総ビリルビン25.1mg/dL, 直接ビリルビン16.1mg/dL, アルブミン2.3g/dL, アンモニア165μg/dL, プロトロンビン時間28%, ヘパプラスチンテスト17%と改善は乏しい。
終了27日後 当院へ転院。意識状態は肝性脳症II度, AST(GOT)667IU/L, ALT(GPT)915IU/L, 総ビリルビン27.2mg/dL, 直接ビリルビン17.3mg/dL, アンモニア121μg/dL, プロトロンビン時間30%, ヘパプラスチンテスト22%。
直ちに血漿交換施行。
終了28日後 血液検査値より改善を認めたため, 血漿交換行わず, FFP輸注のみ行った。
終了29日後 AST(GOT)438IU/L, ALT(GPT)690IU/L, 総ビリルビン31.0mg/dL, 直接ビリルビン17.4mg/dL, アンモニア221μg/dL, プロトロンビン時間31%, ヘパプラスチンテスト21%と悪化, 意識状態も肝性脳症IV度と悪化。
ステロイドパルス療法(コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム1g×3日間, 以後漸減), 血漿交換連日(4日間), 持続濾過透析連日を開始。
終了33日後 意識は肝性脳症IV~V度と不変。血漿交換を一旦中止し, FFP輸注。
終了34日後 肝再生を促すため, ソマトロピン(遺伝子組換え)3.9mg皮下注投与(3日間)。
終了36日後 意識状態は肝性脳症II度程度に改善。血液検査でも改善傾向。
終了38日後 午後より高熱発現。意識レベルもやや低下。イミペネム・シラスタチン配合剤0.5g/日, 人免疫グロブリン2.5g/日とともに, エンドトキシン吸着療法を施行。
終了39日後 カテーテル培養, 血液培養でMRSA検出, テイコプラニン800mg/日追加。
終了41日後 やや解熱傾向であったが, 意識状態はIII~IV度に低下, 尿量も減少傾向。
腎機能も徐々に悪化, BUN47mg/dL, クレアチニン3.2mg/dL。
終了42日後 血圧低下に対し, 塩酸ドパミン, 塩酸ドブタミン, ノルエピネフリン使用していたが, 徐々に血圧低下, 死亡。
死因:劇症肝炎, 敗血症
剖検所見:あり
IgM-HA(-), HBs抗原(-), HBs抗体(+), HBV-DNA:<3.7LEG/mL, HCV抗体(-), HCV-PCR(-), CMV-IgM(-), CMV-IgG(+), EBV-VCA IgG:160倍, EBV-VCA IgA:<10倍, EBV-VCA IgM:<10倍, EBV-EA IgA:<10倍, EBV-EA IgG:<10倍, 抗EBNA:40倍, PV-19 IgM(-), 抗核抗体:18.9倍
臨床検査値
   終了18日後 終了26日後 終了27日後 終了29日後 終了37日後 終了41日後
AST(GOT)(IU/L) 908 815 667 438 62 77
ALT(GPT)(IU/L) 1211 1176 915 690 82 71
Al-P(IU/L) 409 - 391 - 315 410
LDH(IU/L) 855 - 395 - 343 668
γ-GTP(IU/L) 229 - - - 33 36
総ビリルビン(mg/dL) 10.6 25.1 27.2 31.0 26.8 31.5
直接ビリルビン(mg/dL) 7.0 16.1 17.3 17.4 15.7 18.1
アルブミン(g/dL) - 2.3 - - 3.3 3.2
アンモニア(μg/dL) - 165 121 221 74 132
プロトロンビン時間(%) - 28 30 31 - -
ヘパプラスチンテスト(%) - 17 22 21 - -
併用薬:塩化リゾチーム, ビオヂアスターゼ1000配合剤


 

【3】 女神散

販売名(会社名) ツムラ女神散エキス顆粒(医療用)(ツムラ)
薬効分類等 漢方製剤
効能効果 のぼせとめまいのあるものの次の諸症
産前産後の神経症, 月経不順, 血の道症
 
使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
[副作用
(重大な副作用)]
肝機能障害, 黄疸:AST(GOT), ALT(GPT), Al-P, γ-GTP等の著しい上昇を伴う肝機能障害, 黄疸があらわれることがあるので, 観察を十分に行い, 異常が認められた場合には投与を中止し, 適切な処置を行うこと。
〈参  考〉 直近約3年間(平成15年4月~平成18年11月)の副作用報告(因果関係が否定できないもの)の件数
・肝機能障害, 黄疸:3例(うち死亡0例)
関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約6500人(平成17年度)
販売開始:昭和61年
 

症例の概要

No. 患者 1日投与量
投与期間
副作用
性 ・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
1
30代
月経前緊張症
(慢性甲状腺炎)
7.5g
113日間
肝機能障害
投与開始日 月経前緊張症にて本剤投与開始。
投与70日目 全身倦怠感出現。以降持続するも放置。
投与105日目 近医にて健康診断受診。AST(GOT)205IU/L, ALT(GPT)337IU/L, γ-GTP164IU/L。
投与113日目
(投与中止日)
本剤投与中止。
中止2日後 当院紹介され外来受診。全身倦怠感は持続。AST(GOT)239IU/L, ALT(GPT)337IU/L, γ-GTP180IU/Lと高値より入院予約。
中止6日後 当院入院。安静加療とともに, 5%グルコース500mLの補液及びグリチルリチン・グリシン・システイン配合剤等経静脈内投与開始。
中止7日後 経口摂取は良好。
中止9日後 全身倦怠感, 軽快傾向。
中止13日後 全身倦怠感, ほぼ消失。
中止18日後 外出許可。帰院後著変なし。
中止21日後 外泊許可。帰院後著変なし。
中止24日後 退院。
中止30日後 外来受診。症状出現なし。
臨床検査値
   投与18日目 投与105日目 中止2日後 中止6日後 中止30日後
AST(GOT)(IU/L) 32 205 239 364 35
ALT(GPT)(IU/L) 14 337 337 531 43
Al-P(IU/L) 159 - 342 436 336
γ-GTP(IU/L) 11 164 180 233 111
LDH(IU/L) 418 - 203 260 160
総ビリルビン(mg/dL) 0.6 - 0.8 0.9 0.6
ウイルスマーカー
   中止2日後
IgM-HA抗体 陰性(≦0.1)
HBs抗原 陰性(0.1)
HCV抗体 陰性(0.3)
免疫血清検査
   中止6日後
抗核抗体 <40倍
抗ミトコンドリア抗体 <20倍
併用薬:イブプロフェン, 臭化ブチルスコポラミン


 

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使用上の注意の改訂について(その184)

 平成19年1月12日以降に改訂を指導した医薬品の使用上の注意(本号の「1重要な副作用等に関する情報」で紹介したものを除く。)について, 改訂内容, 主な該当販売名等をお知らせいたします。

 
1 〈消化性潰瘍用剤〉
ラベプラゾールナトリウム
[販売名] パリエット錠10mg, 同錠20mg(エーザイ)
[副作用
(重大な副作用)]
急性腎不全, 間質性腎炎急性腎不全, 間質性腎炎があらわれることがあるので, 腎機能検査(BUN, クレアチニン等)に注意し, 異常が認められた場合には投与を中止し適切な処置を行うこと。
低ナトリウム血症:低ナトリウム血症があらわれることがあるので, 異常が認められた場合には投与を中止し適切な処置を行うこと。
横紋筋融解症:筋肉痛, 脱力感, CK(CPK)上昇, 血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがあるので, このような場合には投与を中止し適切な処置を行うこと。
 
2 一般用医薬品
ネオシーダー
[販売名] ネオシーダー(アンターク本舗)
[してはいけないこと] 次の人は使用しないこと
   喫煙習慣のない人。
   未成年の人。
本剤を使用している間は, 次の医薬品を使用しないこと
   禁煙補助剤
 
3 一般用医薬品
女神散
[販売名] 女神散料エキス顆粒KM(カーヤ)
[相談すること]
次の場合は, 直ちに服用を中止し, この文書を持って医師又は薬剤師に相談すること
   服用後, 次の症状があらわれた場合
   まれに下記の重篤な症状が起こることがあります。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
   肝機能障害:全身のだるさ, 黄疸(皮ふや白目が黄色くなる)等があらわれる。
 

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市販直後調査の対象品目一覧

(平成19年2月1日現在)
一般名 製造販売業者名 市販直後調査開始年月日
販売名
イヌリン (株)富士薬品 平成18年8月22日
イヌリード注
アレンドロン酸ナトリウム水和物 萬有製薬(株) 平成18年9月15日
フォサマック錠35mg
アレンドロン酸ナトリウム水和物 帝人ファーマ(株) 平成18年9月15日
ボナロン錠35mg
イトラコナゾール ヤンセンファーマ(株) 平成18年9月15日
イトリゾール内用液1%
テモゾロミド シェリング・プラウ(株) 平成18年9月15日
テモダールカプセル20mg, 同カプセル100mg
ブデソニド アストラゼネカ(株) 平成18年9月15日
パルミコート吸入液0.25mg, 同液0.5mg
エンテカビル水和物 ブリストル製薬(有) 平成18年9月21日
バラクルード錠0.5mg
酢酸セトロレリクス 日本化薬(株) 平成18年9月21日
セトロタイド注射用0.25mg, 同注射用3mg
塩化マンガン四水和物 明治乳業(株) 平成18年9月25日
ボースデル内用液10
ガバペンチン ファイザー(株) 平成18年9月25日
ガバペン錠200mg, 同錠300mg, 同錠400mg
塩酸オロパタジン 日本アルコン(株) 平成18年10月5日
パタノール点眼液0.1%
ブスルファン 麒麟麦酒(株) 平成18年10月10日*1
ブスルフェクス点滴静注用60mg 平成18年10月20日*2
塩酸フェキソフェナジン サノフィ・アベンティス(株) 平成18年10月20日
アレグラ錠60mg*3
塩酸ランジオロール 小野薬品工業(株) 平成18年10月20日
注射用オノアクト50
モザバプタン塩酸塩 大塚製薬(株) 平成18年10月24日
フィズリン錠30mg
インターフェロンベータ-1a(遺伝子組換え) バイオジェン・アイデック・ジャパン(株) 平成18年11月6日
アボネックス筋注用シリンジ30μg
塩酸モキシフロキサシン 日本アルコン(株) 平成18年11月6日
ベガモックス点眼液0.5%
肺炎球菌ワクチン 萬有製薬(株) 平成18年11月29日
ニューモバックスNP
ボルテゾミブ ヤンセンファーマ(株) 平成18年12月1日
ベルケイド注射用3mg
イトラコナゾール ヤンセンファーマ(株) 平成18年12月6日
イトリゾール注1%
ロピニロール塩酸塩 グラクソ・スミスクライン(株) 平成18年12月6日
レキップ錠0.25mg, 同錠1mg, 同錠2mg
ランソプラゾール 武田薬品工業(株) 平成18年12月7日
タケプロン静注用30mg
ロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジド 萬有製薬(株) 平成18年12月8日
プレミネント錠
ポリドカノール 堺化学工業(株) 平成18年12月14日
ポリドカスクレロール0.5%注2mL, 同1%注2mL, 同3%注2mL
塩酸フェキソフェナジン サノフィ・アベンティス(株) 平成19年1月9日
アレグラ錠30mg
ペルフルブタン 第一製薬(株) 平成19年1月10日
ソナゾイド注射用
ペメトレキセドナトリウム水和物 日本イーライリリー(株) 平成19年1月22日
アリムタ注射用500mg
レミフェンタニル塩酸塩 ヤンセンファーマ(株) 平成19年1月22日
アルチバ静注用2mg, 同静注用5mg
インフリキシマブ(遺伝子組換え)*4 田辺製薬(株) 平成19年1月26日
レミケード点滴静注用100
ザナミビル水和物*5 グラクソ・スミスクライン(株) 平成19年1月26日
リレンザ
タクロリムス水和物*6 アステラス製薬(株) 平成19年1月26日
プログラフカプセル0.5mg, 同カプセル1mg
バクロフェン*7 第一製薬(株) 平成19年1月26日
ギャバロン髄注0.005%, 同髄注0.05%, 同髄注0.2%
ミカファンギンナトリウム*8 アステラス製薬(株) 平成19年1月26日
ファンガード点滴用25mg, 同点滴用50mg, 同点滴用75mg
 
*1: 初めに承認された成人用量
*2: 用法追加された「小児」
*3: 用法追加された「小児(7歳以上)」
*4: 効能追加された「ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」
*5: 効能追加された「A型又はB型インフルエンザ感染症の予防」
*6: 効能追加された「ループス腎炎(ステロイド剤の投与が効果不十分, 又は副作用により困難な場合)」
*7: 用法追加された「小児」
*8: 効能追加された「造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予防」
 

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お知らせ

医薬品・医療機器等安全性情報は, 医薬品医療機器情報提供ホームページ(http://www.info.pmda.go.jp/)又は厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)からも入手可能です。