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安全対策業務

医薬品・医療用具等安全性情報 No.188

目次

  1. ゲフィチニブにおける市販後安全対策について
  2. ガチフロキサシン水和物による重篤な低血糖, 高血糖について

 

 この医薬品・医療用具等安全性情報は, 厚生労働省において収集された副作用情報をもとに, 医薬品・医療用具等のより安全な使用に役立てていただくために, 医療関係者に対して情報提供されるものです。

 

平成15年(2003年)4月
厚生労働省医薬局

情報の概要

No. 医薬品等 対策 情報の概要
1 ゲフィチニブ
使
 ゲフィチニブは平成14年7月5日に承認された, 手術不能又は再発非小細胞肺癌に使用されている抗悪性腫瘍剤であり, 同年7月16日から販売されている。海外での承認事例はなく, 我が国で初めて承認された医薬品である。ゲフィチニブの副作用である「急性肺障害・間質性肺炎」については, 現在までに緊急安全性情報の配布, ゲフィチニブ安全性問題検討会の開催などにより安全対策が取られてきているところであるが, 今般それらについてまとめるとともに, 改めて注意を喚起することとした。
2 ガチフロキサシン水和物
使
 ガチフロキサシン水和物投与との関連性が否定できない重篤な低血糖症例が75例, 高血糖症例が14例報告され, このうち糖尿病患者は低血糖で58例, 高血糖で11例であったが, 糖尿病でない患者においても発現していたことから, 糖尿病の患者を「禁忌」とするとともに, 重篤な低血糖, 高血糖が現れることがあるので注意すること, 本剤の投与に際しては糖尿病の既往の有無について十分確認すること, 糖尿病でない患者においても重篤な低血糖, 高血糖が現れることがあるので患者に十分な説明を行うことなどを「警告」及び「重要な基本的注意」に記載する添付文書の改訂を行い, 併せて「緊急安全性情報」の配布を行い, 医療現場への情報提供の徹底を図った。
 

緊:緊急安全性情報の配布 使:使用上の注意の改訂 症:症例の紹介

目次へ

 

 

ゲフィチニブにおける市販後安全対策について

成分名
該当販売名
成分名 該当販売名
ゲフィチニブ イレッサ錠250(アストラゼネカ)
薬効分類等 抗悪性腫瘍剤
効能効果 手術不能又は再発非小細胞肺癌

 

1.はじめに

  ゲフィチニブは平成14年7月5日に承認された, 手術不能又は再発非小細胞肺癌に使用されている抗悪性腫瘍剤であり, 同年7月16日から販売されている。海外での承認事例はなく, 我が国で初めて承認された医薬品である。ゲフィチニブの副作用である「急性肺障害・間質性肺炎」については, 現在までに緊急安全性情報の配布, ゲフィチニブ安全性問題検討会の開催などにより安全対策が取られてきているところであるが, 今般それらについてまとめるとともに, 改めて注意を喚起することとした。

2.緊急安全性情報について

(1)経緯

 ゲフィチニブによる「間質性肺炎」については, 臨床試験の結果に基づき, 承認時より使用上の注意の「重大な副作用」の項に「間質性肺炎」を記載して, 医療関係者に注意を喚起していた。しかしながら, 製造販売元であるアストラゼネカ株式会社より, 販売開始以来22例(うち死亡11例)の間質性肺炎を含む肺障害が, また, 医療機関から平成14年10月, 同様の報告が4例(うち死亡2例)が厚生労働省に報告された。これらの症例には投与開始後早期に症状が発現し, 急速に進行する症状がみられていたことから, 急性肺障害, 間質性肺炎について警告に記載するなどの使用上の注意の改訂を行うとともに「緊急安全性情報」を配布し, 本副作用について改めて医療関係者の注意を喚起するよう, アストラゼネカ株式会社に指示した。

(2)症例の紹介

 報告された症例のうち2例を表1に紹介する。

(3)安全対策

 緊急安全性情報の使用上の注意の改訂内容は, 以下のとおりである。

ア)本剤の投与により急性肺障害, 間質性肺炎があらわれることがあるので, 胸部X線検査等を行うなど観察を十分に行い, 異常が認められた場合には投与を中止し, 適切な処置を行うこと。なお, 患者に対し副作用の発現について十分説明すること。(「重要な基本的注意」および「重大な副作用」の項参照)(「警告」に追加)

 

イ)急性肺障害, 間質性肺炎等の重篤な副作用が起こることがあり, 致命的な経過をたどることがあるので, 本剤の投与にあたっては, 臨床症状(呼吸状態, 咳および発熱等の有無)を十分に観察し, 定期的に胸部X線検査を行うこと。また必要に応じて胸部CT検査, 動脈血酸素分圧(PaO2), 肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDo2), 肺拡散能力(DLco)などの検査を行い, 急性肺障害, 間質性肺炎等が疑われた場合には, 直ちに本剤による治療を中止し, ステロイド治療等の適切な処置を行うこと。(「重要な基本的注意」に追加)

 

ウ)本剤を投与するにあたっては, 本剤の副作用について患者に十分に説明するとともに臨床症状(息切れ, 呼吸困難, 咳および発熱等の有無)を 十分に観察し, これらが発現した場合には, 速やかに医療機関を受診するように患者を指導すること。(「重要な基本的注意」に追加)

 

エ)急性肺障害, 間質性肺炎があらわれることがあるので, 胸部X線検査等を行うなど観察を十分に行い, 異常が認められた場合には, 投与を中止し, 適切な処置を行うこと。(「重大な副作用」に急性肺障害を追加)

 

3.ゲフィチニブ安全性問題検討会について

(1)経緯

 平成14年11月25日までに, 急性肺障害, 間質性肺炎等の副作用症例が291例(うち死亡症例81例)報告されたことなどを踏まえ, 平成14年12月25日に医学・薬学等の専門家等からなる「ゲフィチニブ安全性問題検討会」を開催し, さらなる適正使用の措置がとられた。

(2)検討会における結果について(今後の対応)

 (1)インフォームド・コンセントや情報提供の徹底

  • 本剤による治療を開始するにあたり, 患者に本剤の有効性・安全性, 息切れ等の副作用の初期症状, 非小細胞肺癌の治療法, 致命的となる症例があること等について十分に説明し, 同意を得た上で投与すること。
  • 企業による医療機関への有効性および安全性等の適正使用に資する情報提供を徹底すること。
  • 企業による副作用情報の収集に対して医療関係者は協力すること。
 

(2)より適切な管理の下での使用の徹底

  • 肺癌化学療法に十分な経験をもつ医師が使用するとともに, 投与に際して緊急時に十分に措置できる医療機関で行うこと。
  • 間質性肺炎が投与初期に発生し, 致死的な転帰をたどる例が多いため, 少なくとも投与開始後4週間は入院またはそれに準ずる管理の下で, 間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと。
 

(3)間質性肺炎, 肺線維症, またはこれらの疾患の既往歴のある患者への使用を慎重投与に設定

  • 間質性肺炎が増悪し, 致死的となる症例があるため, 急性肺障害及び間質性肺炎, 肺線維症, またはこれらの疾患の既往歴のある患者を慎重投与とする。
 

(4)「服用者向け情報提供資料」の作成等

  • 間質性肺炎等発生時の処置が手遅れとならないよう、「服用者向け情報提供資料」を適正に作成し, 副作用発現数や死亡例について具体的に記載するなど, 患者・家族等に受診を促すよう直接の注意喚起を徹底すること。
 

(5)企業による市販後安全対策の強化

  • 承認条件として附された間質性肺炎等の科学的究明等の試験研究を早急に実施するとともに, その原因究明のための専門家による検討会等を設置し, それらの検討結果について逐次報告すること。
  • 企業における重篤な副作用情報の収集や医療機関等への情報提供等の実施方法について再検討するとともに, 間質性肺炎・急性肺障害の発現危険因子, およびハイリスクの患者背景等を明らかにするためのプロスペクティブな調査・分析を行うこと等により, 本剤の適正使用を推進すること。

 

(3)安全対策

 上記の検討結果に基づき, 平成14年12月26日には, 以下の通知を発出した。

 

《アストラゼネカ株式会社代表取締役社長宛厚生労働省安全対策課長通知》

 

「ゲフィチニブ安全性問題検討会における検討結果に基づく対応について」  平成14年12月25日に開催された標記会議における検討結果に基づき, ゲフィチニブ(販売名:イレッサ錠250)について, 下記を行うとともに, 別紙のとおり使用上の注意事項の変更を行うこと等により, 本剤をより一層安全に使用するために必要な措置を講じられたい。

 

  1. 医療機関への有効性および安全性等の適正使用に資する情報提供を徹底すること。
  2. 患者・家族等に対して本剤の安全性に関する理解を促し, 間質性肺炎等発生時の処置が手遅れとならないよう受診を促すため、「服用者向け情報提供資料」を適正に作成し, 副作用発現数や死亡例について具体的に記載するなど, 直接の注意喚起を徹底すること。
  3. 承認条件として附された間質性肺炎等の科学的究明等の試験研究を早急に実施するとともに, その原因究明のための専門家による検討会等を設置し, それらの検討結果について逐次報告すること。
  4. 重篤な副作用情報の収集や医療機関等への情報提供等の実施方法について再検討するとともに, 間質性肺炎・急性肺障害の発現危険因子, およびハイリスクの患者背景等を明らかにするためのプロスペクティブな調査・分析を行うこと等により, 本剤の適正使用を推進すること。

 

(別紙)
【医薬品名】 ゲフィチニブ
【措置内容】 以下のように使用上の注意を改めること。

 

[警告]の項を
本剤による治療を開始するにあたり, 患者に本剤の有効性・安全性, 息切れ等の副作用の初期症状, 非小細胞肺癌の治療法, 致命的となる症例があること等について十分に説明し, 同意を得た上で投与すること。
本剤の投与により急性肺障害, 間質性肺炎があらわれることがあるので, 胸部X線検査等を行うなど観察を十分に行い, 異常が認められた場合には投与を中止し, 適切な処置を行うこと。また, 急性肺障害や間質性肺炎が本剤の投与初期に発生し, 致死的な転帰をたどる例が多いため, 少なくとも投与開始後4週間は入院またはそれに準ずる管理の下で, 間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと。
本剤は, 肺癌化学療法に十分な経験をもつ医師が使用するとともに, 投与に際しては緊急時に十分に措置できる医療機関で行うこと。


と改め, [慎重投与]の項に
急性肺障害, 間質性肺炎, 肺線維症またはこれらの疾患の既往歴のある患者

を追記する。
(下線部追加改訂部分)

《(社)日本医師会会長宛厚生労働省安全対策課長通知》

  1. 企業による副作用情報の収集に対してより一層協力願いたいこと。
  2. 当職から企業に対して「服用者向け情報提供資料」の作成等を指示したので, 本剤の投与の際に活用願いたいこと。
  3. 当職から企業に対して別紙のとおり使用上の注意の変更を指示したので, 使用上の注意の変更前であっても, 本剤の投与にあたっては留意願いたいこと。

 

《(社)日本薬剤師会会長宛厚生労働省安全対策課長通知》

  1. 企業による副作用情報の収集に対してより一層協力願いたいこと。
  2. 当職から企業に対して「服用者向け情報提供資料」の作成等を指示したので, 調剤の際に活用願いたいこと。
  3. 当職から企業に対して別紙のとおり使用上の注意の変更を指示したので, 使用上の注意の変更前であっても, 調剤にあたっては留意願いたいこと。
  4. 患者・家族等に対して, 本剤に関する情報提供及び服薬指導等のより一層の充実を図られたいこと。

 

《(社)日本病院薬剤師会会長宛厚生労働省安全対策課長通知》

  1. 企業による副作用情報の収集に対してより一層協力願いたいこと。
  2. 当職から企業に対して「服用者向け情報提供資料」の作成等を指示したので, 調剤の際に活用願いたいこと。
  3. 当職から企業に対して別紙のとおり使用上の注意の変更を指示したので, 使用上の注意の変更前であっても, 調剤にあたっては留意願いたいこと。
  4. 患者・家族等に対して, 本剤に関する情報提供及び服薬指導等のより一層の充実を図られたいこと。

 

表1 症例の概要

NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
1
60代
非小細胞肺癌
(脳転移)
250mg
7日間
間質性肺炎
既往歴 なし
投与約20週前 左眼瞼痙攣にて他院受診。頭部CTで脳転移を認めた。肺X線像及びCTにて肺癌が疑われた。検査にて腺癌検出。治療目的で入院。左下葉原発の肺癌で両肺に散在性に転移を認めた。
投与約19週前 脳転移部にγ-ナイフ施行。
投与約18週前 入院。
両肺よりラ音聴取。LDH正常。KL-6:2510U/mL。血液ガス:O21L投与下で血液ガスSat. 95<(room air)
投与約17週前 パクリタキセル+カルボプラチン治療を2コース実施。28%縮小。
投与約8週前 ビノレルビン治療を開始したが血管炎のため1回で中止。
投与約7週前 左胸水に対しドレーン挿入。その4日後, ピシバニール胸腔内投与。
投与約6週前 ドセタキセル(weekly)投与開始。
投与開始日 本剤の投与を開始。
KL-6:4280U/mL。血液ガスSat. 80~60台。FiO2 100%吸入下でSat. 90>。
投与7日目 夜より咳嗽出現。
投与8日目
(投与中止日)
呼吸苦出現し, 本日からの本剤の投与中止。PaO2の低下と胸部X線上, 網状影の急激な増加を認め, 肺炎, 間質性肺炎, 癌性リンパ管症等を考え, ビアペネム, O2投与, メチルプレドニゾロン1000mgのパルス療法開始。
中止1日後 O2100%とするも効果乏しく, 呼吸苦改善のため塩酸モルヒネ投与。
中止6日後 死亡。
企業報告
臨床検査値
   投与1ヵ月前 投与1日前 中止 2日後 中止 3日後 中止 5日後
体温(℃) 36.0 36.6 37.0 36.6 36.7
白血球数(/mm3 9690 8230 23920 29000 28190
好中球(%) 75.9 74.7 94.6 96.0 97.9
好酸球(%) 5.0 0.9 0.0 0.0 0.0
リンパ球(%) 12.3 11.1 3.4 2.5 1.4
ヘモグロビン(g/dL) 11.3 11.7 12.7 12.6 13.1
ヘマトクリット(%) 34.3 35.3 38.5 37.9 38.5
LDH(IU/L) 337 433 403 429 671
CRP(mg/dL) 1.01 0.37 21.69 8.54 11.93
併用薬:ランソプラゾール, 酸化マグネシウム, トリアゾラム, エチゾラム
 
NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
2
60代
非小細胞肺癌[腺癌]
(多発性筋炎, アルコール性肝硬変, 肺アスペルギルス症)
250mg
8日間
間質性肺炎
既往歴 アルコール歴(焼酎1合), 喫煙歴(20本×40年), 高血圧
投与約4年前 肺癌(腺癌;adeno alveolar cell type)と診断。
投与約3年半前 右下葉切除術施行。
投与約3ヵ月半前 約3ヵ月間にわたり化学療法(塩酸ゲムシタビン800mg/m2, ドセタキセル50mg/m2)4クール施行。
投与5日前 38℃台の発熱発現。シプロフロキサシン300mg点滴静注開始。
CRP:9.72, PaO2:80torr(N/C:1.5L)。
投与1日前 解熱傾向にあり。CRP:7.8。
投与開始日 本剤の投与を開始。
投与3日目頃 両下肢と背部に円板状の直径5cm×5cm程度の皮疹出現。
CRP:9.5, PaO2:72torr(N/C:1.5L)。クリンダマイシン600mg点滴静注併用開始。
投与5日目 CRP:6.7, PaO2:66torr(N/C:1.5L)。
投与7日目 38℃の発熱発現。PaO2:108torr(N/C:5L), CRP:8.73。
胸部X線にて左中肺野に硬化像出現。血中アスペルギルス抗原(+)であり, 真菌感染に対しイトラコナゾール200mg投与を再開。シプロフロキサシンは硫酸セフピロムに変更。
投与8日目
(投与中止日)
夕方より酸素化悪化。O210LにてSpO2:90~94%。
胸部X線にて左全肺野に淡いスリガラス影が出現。
胸部CTにて左全肺野に非区域性の淡いスリガラス影が出現。
薬剤性間質性肺炎を疑い, メチルプレドニゾロン2gパルス開始。真菌に対してはイトラコナゾールの投与を中止し, アムホテリシンB1mgより点滴静注開始。本剤の投与を中止。
中止1日後 O212L, PaO2:66torr, CRP:14.63, LDH上昇。画像上もさらに悪化。
中止3日後 ジャクソンリース15LにてSpO2:99%。患者の苦痛が強く, 塩酸モルヒネ, ハロペリドールによる鎮静開始。
中止4日後 死亡。
企業報告
臨床検査値
   投与約
4ヵ月前
投与
1日前
投与
2日目
投与
5日目
投与
7日目
中止
1日後
中止
3日後
体温(℃) 36.7 37.0 36.9 37.1 37.5 36.8 36.8
白血球数(/mm3 11100 11700 10900 9100 11500 17000 28000
好中球(%) 77.9 82.3 71.2
好酸球(%) 1.6 0.3 1.0 1.1 3.0
リンパ球(%) 16.5 13.0 15.0 17.1 11.0 4.0 2.0
ヘモグロビン(g/dL) 9.8 8.0 7.6 8.2 8.6 9.0 9.9
ヘマトクリット(%) 28.8 23.9 28.8 24.6 25.8 26.7 28.4
LDH(IU/L) 177 260 268 276 355 512 822
CRP(mg/dL) 4.05 7.80 9.35 6.70 8.73 14.63 12.73
併用薬:センノシド, エチゾラム, アロプリノール, メコバラミン, クラリスロマイシン, イトラコナゾール, ファモチジン, エスタゾラム, スルファメトキサゾール・トリメトプリム, リン酸ベタメタゾンナトリウム, フドステイン, 塩酸タムスロシン, アルファカルシドール, エバスチン, リン酸コデイン
 



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ガチフロキサシン水和物による重篤な低血糖, 高血糖について

成分名
該当販売名
成分名 該当販売名
ガチフロキサシン水和物 ガチフロ錠100mg(杏林製薬)
薬効分類等 合成抗菌剤
効能効果 ブドウ球菌属, レンサ球菌属, 腸球菌, 肺炎球菌, 淋菌, モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス, 大腸菌, シトロバクター属, クレブシエラ属, エンテロバクター属, セラチア属, プロテウス属, モルガネラ・モルガニー, プロビデンシア属, 緑膿菌, インフルエンザ菌, バーグホルデリア・セパシア, ステノトロホモナス(キサントモナス)・マルトフィリア, アシネトバクター属, ペプトストレプトコッカス属, バクテロイデス属, アクネ菌, クラミジア・トラコマティス, クラミジア・ニューモニエ, 肺炎マイコプラズマのうち本剤感性菌による下記感染症
  • 表在性皮膚感染症(急性表在性毛包炎), 深在性皮膚感染症(蜂巣炎, 丹毒, リンパ管(節)炎, せつ, せつ腫症, よう, 化膿性爪囲炎, ひょう疽), 慢性膿皮症(感染性粉瘤, 化膿性汗腺炎, 皮下膿瘍)
  • 乳腺炎, 肛門周囲膿瘍, 外傷・手術創等の表在性二次感染
  • 急性上気道感染症群(扁桃炎, 咽喉頭炎, 急性気管支炎等), 慢性呼吸器疾患の二次感染(慢性気管支炎, びまん性汎細気管支炎, 気管支拡張症, 肺気腫, 肺線維症, 気管支喘息等), 肺炎
  • 腎盂腎炎, 膀胱炎, 前立腺炎, 淋菌性尿道炎, 非淋菌性尿道炎
  • バルトリン腺炎, 子宮頸管炎, 子宮内感染, 子宮付属器炎
  • 涙嚢炎, 麦粒腫, 瞼板腺炎
  • 外耳炎, 中耳炎, 副鼻腔炎
  • 歯周組織炎, 歯冠周囲炎, 顎炎

 

(1)経緯

 ガチフロキサシン水和物は, 急性上気道感染症をはじめとする各科領域の感染症に適応を有する経口抗菌薬で, 我が国では, 平成14年6月の販売開始以降(平成14年4月承認), 平成15年2月末までに約420万人に使用されたと推定される。海外においては, 米国, ドイツをはじめ12ヵ国で販売されている。
 重篤な低血糖, 高血糖については, 海外における副作用として承認時より「重大な副作用」に記載し注意喚起していたところである。市販後において, 重篤な低血糖が15例, 高血糖が5例報告され, このうち糖尿病患者は低血糖で13例, 高血糖で5例であったことから, 平成14年10月に「慎重投与」の項に糖尿病の患者を記載するとともに, 海外における重大な副作用として記載されていた「重大な副作用」の項の記載を改め, 医療関係者に対して注意喚起及び情報提供を行ってきた。
 しかしながら, その後も重篤な低血糖, 高血糖が発現し, 重篤な低血糖75例, 高血糖14例が報告され, このうち糖尿病患者は低血糖で58例, 高血糖で11例であったが, 糖尿病でない患者においても発現していることから, 糖尿病の患者を「禁忌」とするとともに, 重篤な低血糖, 高血糖が現れることがあるので注意すること, 本剤の投与に際しては糖尿病の既往の有無について十分確認すること, 糖尿病でない患者においても重篤な低血糖, 高血糖が現れることがあるので患者に十分な説明を行うことなどを「警告」及び「重要な基本的注意」に記載する添付文書の改訂を行い, 併せて「緊急安全性情報」の配布を行い, 医療現場への情報提供の徹底を図った。

(2)症例の紹介

 報告された重篤な低血糖, 高血糖の発症症例のうち5例を表2に紹介する。

(3)安全対策

 本剤についてはこれまでも重篤な低血糖, 高血糖が発現することなどの注意がなされてきたが, 糖尿病患者には投与しないこと, 投与の際には糖尿病の既往の有無を十分確認すること, 糖尿病でない患者においても重篤な低血糖, 高血糖が発現することがあるので, 低血糖症状(脱力感, 空腹感, 発汗, 動悸, 振戦, 頭痛, 不安, 興奮, 神経過敏, 集中力低下, 精神障害, 意識障害, 痙攣等), 高血糖症状(口渇, 多飲, 多尿, 頻尿等)に注意するよう患者に十分な説明を行っておくことが重要である。

《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
〈ガチフロキサシン水和物〉
[警   告]

警 告

1.本剤の投与後に重篤な低血糖, 高血糖があらわれることがあるので十分注意すること。
2.これらの副作用は, 特に糖尿病患者に多くみられていることから, 糖尿病患者には本剤の投与を避けること。
3.投与に際しては糖尿病の既往の有無について十分確認すること。
4.糖尿病でない患者においても重篤な低血糖, 高血糖があらわれることがあるので, これらの副作用の発現等について患者に十分な説明を行うこと。
[禁   忌]
1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.糖尿病の患者[低血糖, 高血糖があらわれることがある。]
3.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦, 産婦, 授乳婦等への投与」の項参照)
4.小児等(「小児等への投与」の項参照)
[重要な基本的注意] (1)糖尿病の患者において, 重篤な低血糖, 高血糖があらわれることがあるので, 糖尿病の患者ではないことを十分確認すること。
(2)糖尿病でない患者においても重篤な低血糖, 高血糖があらわれることがあるので, 次の点を患者に十分説明すること。

1)低血糖症状(脱力感, 空腹感, 発汗, 動悸, 振戦, 頭痛, 不安, 興奮, 神経過敏, 集中力低下, 精神障害, 意識障害, 痙攣等)があらわれた場合は, 本剤の服用を中止し, 砂糖の入ったジュース, キャンディー等を摂取するとともに, 速やかに医師の診察を受けること。

2)高血糖症状(口渇, 多飲, 多尿, 頻尿等)があらわれた場合は, 本剤の服用を中止し, 速やかに医師の診察を受けること。

[副作用(重大な副作用)] 下記の重大な副作用があらわれることがあるので, 観察を十分に行い, 異常が認められた場合には投与を中止し, 適切な処置を行うこと。

 1)低血糖

 2)高血糖

 3)痙攣

 4)ショック, アナフィラキシー様症状(呼吸困難, 浮腫, 蕁麻疹等)

 5)心室性頻拍(Torsades de pointesを含む), QTc延長

 6)急性腎不全

 7)錯乱, 幻覚等の精神症状

 8)肝機能障害, 黄疸

 9)偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎

 10)横紋筋融解症(急激な腎機能悪化を伴う場合がある)

 11)アキレス腱炎, 腱断裂等の腱障害

 12)皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群), 中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)

[副作用(重大な副作用・類薬)] 他のニューキノロン系抗菌薬で下記の重大な副作用が報告されているので, 観察を十分に行い, 異常が認められた場合には投与を中止し, 適切な処置を行うこと。

 1)過敏性血管炎

 2)間質性肺炎

 

表2 症例の概要

NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
1
80代
尿路感染症, 褥瘡
(糖尿病, 両膝関節症, 腰痛症, 胃炎, めまい, 便秘)
400mg
3日間
低血糖
2~3年前より糖尿病にて近医通院。
グリベンクラミド10mg, ボグリボース0.6mgで糖尿病はコントロール良好であった。
投与15日前 腰痛のため当院入院。
グリベンクラミド10mg, ボグリボース0.6mgを開始した。
投与3日前 14:00 血糖145mg/dL。
投与開始日 尿培養, 褥瘡培養より, P.aeruginosaを検出。夕方より本剤400mgを分2で投与開始した。
投与2日目 朝食:5割摂取、昼食:3割摂取。
定期採血で14時血糖54mg/dLと低下。50%TZ(ブドウ糖)静注するが回復せず, 電解質輸液を持続点滴し, その点滴内にも50%TZを入れるが低血糖持続。グリベンクラミド, ボグリボースは昼で中止。
16:00 血糖45mg/dL→50%TZ 1A静注。
17:00 血糖74mg/dL。夕食:1割摂取, 電解質輸液の持続点滴開始。
21:00 血糖57mg/dL→50%TZ 1A静注。
22:00 血糖54mg/dL→50%TZ 1A静注, 電解質輸液内へ50%TZ 2A追加。
投与3日目
(投与中止日)
朝, 本剤投与中止。その後も50%TZ静注繰り返す。
7:00 血糖35mg/dL→50%TZ 1A静注。朝食2割摂取。
8:00 血糖140mg/dL。
10:00 血糖120mg/dL。
11:30 血糖54mg/dL。昼食3割摂取。
13:00 血糖60mg/dL→50%TZ 1A静注。
15:45 血糖41mg/dL→50%TZ 1A静注。
16:45 血糖83mg/dL。
中止1日後 7:00 血糖86mg/dL。朝食:3割摂取。
11:30 血糖268mg/dL。回復した。
企業報告
臨床検査値
   投与3日前 投与3日目(投与中止日)
赤血球数(×104/μL) 231 212
白血球数(/μL) 10400 9200
血小板数(×104/μL) 20.1 22.5
BUN(mg/dL) 17 12
クレアチニン(mg/dL) 0.9 1.1
血糖(mg/dL) 155(朝食前) 115(朝食前)
尿糖 3+
HbA1c(%) 5.7
併用薬:グリベンクラミド, ボグリボース, ジピリダモール, アズレンスルホン酸ナトリウム・L-グルタミン, メシル酸ベタヒスチン, センノシド, メロキシカム
 
NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
2
60代
尿路感染症
(糖尿病, うっ血性心不全, 高コレステロール血症, 高尿酸血症)
400mg
2日間
低血糖
投与10日前 肉眼的血尿, 尿道刺激症状あり。
投与開始日 当院内科受診。CRP:1.39mg/dLと上昇。
尿路感染症と診断し本剤400mgを投与する。同日, 夕食後より内服を開始した。
(本剤内服前までは朝の空腹時血糖は82~114mg/dLと良好であったが, 食後の血糖は147~232mg/dLとコントロールはやや不良であった。)
投与2日目
(投与中止日)
5:45 起床時血糖52mg/dL。ジュース, ビスケット, あめを摂取。
8:30 血糖70mg/dL。あめ, ビスケット摂取。朝食を摂取し, 本剤200mg内服。昼食も摂取。
14:40 血糖67mg/dL。
18:15 血糖44mg/dL。あめ, ビスケット, ジュース摂取。
夕食をとり, 本剤200mg内服した。
18:50 血糖63mg/dL。
20:30 血糖57mg/dL。
22:45 血糖70mg/dL。あめ摂取。
23:45 血糖55mg/dL。あめ摂取。
中止1日後 0:13 血糖55mg/dL。低血糖状態が続く。
0:50 当院救急外来受診。血糖53mg/dL。点滴にて維持液200mL+50%グルコース(側注), 50%グルコース1Aを投与した。投与中, 血糖110mg/dLまで上昇した。
2:10頃 帰宅した。帰宅後も低血糖続き, 朝, グリベンクラミドは服用しなかった。
13:55 血糖107mg/dLと回復し, その後100~200mg/dL程度となった。
中止2日後 グリベンクラミドを同量にて再開したが, 低血糖は出現せず。
企業報告
併用薬:グリベンクラミド, ボグリボース, エパルレスタット, アトルバスタチンカルシウム, アロプリノール, クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム
 
NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
3
50代
尿路感染症
(糖尿病, 統合失調症, 高血圧)
400mg
4日間
低血糖
投与開始日 HbA1c値4.7%と良好。
投与4日目
(投与中止日)
18:30頃 夕食摂取(全量)。食事は1600kcal/日相当。
18:50頃 本剤他, 食後に薬剤服用。
中止1日後 0:00 意識障害(JCS:III-300レベル)あり。
血糖チェック(簡易血糖計)測定外低値。
ブドウ糖静注にて意識レベルII-10に回復。血糖106mg/dL。
6:00 血糖チェックで再び測定外低値となりブドウ糖静注を行い, 血糖96mg/dLに回復。
以後ブドウ糖液点滴静注にて低血糖発作は認めず。
食事は3食とも全量摂取。
中止2日後 9:30 血糖203mg/dL。
中止3日後 6:00 血糖153mg/dL。
中止4日後 6:00 血糖162mg/dLと回復した。
企業報告
併用薬:グリクラジド, 塩酸スルトプリド, 塩酸イミダプリル, ベシル酸アムロジピン, ロサルタンカリウム, ハロペリドール, 塩酸トリヘキシフェニジル, フルニトラゼパム, 塩酸クロルプロマジン, エチゾラム
 
NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
4
80代
急性気管支炎
(慢性腎不全, 完全房室ブロック[ペースメーカー植え込み後], 僧帽弁閉鎖不全症, 慢性心不全, 心室性期外収縮)
400mg
2日間
低血糖
投与2日前 発熱, 咳を認め, トラネキサム酸, クラリスロマイシン400mgを投与された。
投与開始日 発熱が続くため, 総合感冒剤2g, 塩酸ホミノベン160mg, 本剤400mgを投与された。
投与2日目
(投与中止日)
11:45 元気なし。昼食とれず。
13:30 坐位保持困難, 意識レベル低下(JCS:II-10)を認めるため, 外来受診し入院。血糖測定器にてLowのため, 50%TZ 70mL静注, 電解質輸液500mL点滴施行し, 状態回復。
19:20 血糖100mg/dL。
中止1日後 蛋白アミノ酸製剤1000mL輸液中, 4:15意識レベル低下(JCS:II-10)を認め, 血糖測定器にてLowのため, 50%TZ 40mL静注。蛋白アミノ酸製剤内に, 50%TZ 100mL加注した。意識改善。
21:00に補食。
中止2日後 0:00より, 電解質輸液500mLに変更後, 10:00で輸液中止。
中止4日後 回復。
企業報告
臨床検査値
   投与2日目 中止1日後 中止2日後 中止3日後 中止4日後 中止6日後
血糖
(mg/dL)
52 4:15 Low
7:00  52
11:00  76
16:00  66
21:00  89
24:00 158
3:00 154
7:00 161

16:00 158
21:00 133
24:00 149
3:00 119
7:00 132
11:00 164
16:00 119

 

7:00 112



 

7:00  83



 
併用薬:総合感冒剤, 塩酸ホミノベン, メチルジゴキシン, フロセミド, スピロノラクトン, リン酸ジソピラミド
 
NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
5
60代
非定型抗酸菌症
(糖尿病, 骨粗鬆症, 肝硬変, 肺線維症, 浮腫)
400mg
13日間
高血糖
投与開始日 咳嗽, 血痰があり, 胸部X線上, 右上肺野に空洞を伴う浸潤影を認めたため本剤の投与を開始した。
それまでの血糖は125~134mg/dL, HbA1c7.9~8.0%であった。
投与9日目 血糖値は, 本剤投与後よりずっと400mg/dL以上であったとのこと。この日の検査においても血糖438mg/dL, HbA1c8.3%であった。喀痰より抗酸菌を検出し(培養), MAC(+)であった。血糖コントロール不良となる。
投与13日目
(投与中止日)
自覚症状として著しい口渇を訴えていた。
本剤投与中止, 他剤に変更。
中止16日後 高血糖のインスリンによるコントロール, および抗結核剤の投与のため入院。血糖値434mg/dL。
中止21日後 抗結核剤(リファンピシン, 塩酸エタンブトール)の投与開始。
中止26日後 治療により血糖値117mg/dL(インスリン治療)となる。
企業報告
臨床検査値
   投与27日前 投与開始日 投与5日目 投与9日目 中止3日後 中止16日後 中止26日後
血糖(mg/dL) 125 200 438 292 434 117
赤血球数(×104/μL) 354 361 324 357 385 326 304
白血球数(/μL) 4600 5400 4800 5000 4600 3800 6000
血小板数(×104/μL) 7.9 8.6 7.4 7.0 5.9 6.7 6.8
BUN(mg/dL) 19 20 23 18 17 25
クレアチニン(mg/dL) 1.29 1.36 1.42 1.31 1.14 1.39
併用薬:グリクラジド, ボグリボース, 臭化水素酸デキストロメトルファン, アルファカルシドール, スピロノラクトン

 

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