独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

医薬品・医療用具等安全性情報 No.203

目次

  1. 医薬品による重篤な皮膚障害について
  2. 盗難防止装置等による電波の医用機器への影響
  3. 重要な副作用等に関する情報
    1. オレイン酸モノエタノールアミン
    2. クラリスロマイシン
    3. テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム
    4. メルファラン(注射剤)
  4. 使用上の注意の改訂について(その157)
    塩酸ミルナシプラン他(6件)

 

この医薬品・医療用具等安全性情報は,厚生労働省において収集された副作用情報をもとに,医薬品・医療用具等のより安全な使用に役立てていただくために,医療関係者に対して情報提供されるものです。

平成16年(2004年)7月
厚生労働省医薬食品局

【情報の概要】
No. 医薬品等 対策 情報の概要
1 医薬品による重篤な皮膚障害について     医薬品の副作用として皮膚障害が発現することは,よく知られているところである。皮膚障害のうち重篤なものとして,スティーブンス・ジョンソン症候群〔皮膚粘膜眼症候群:Stevens-Johnson syndrome(SJS)〕,中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)がある。
 SJS,TENについては,医薬品・医療用具等安全性情報No.163(平成12年11月号)及びNo.177(平成14年5月号)において,その病態等の説明とともに,平成9年度から平成12年度までに厚生省(当時)へ報告されたこれらに関する副作用症例報告の状況等を紹介しているところであるが,その後の厚生労働省への副作用症例報告を踏まえ,改めて注意を喚起することとした。
2 盗難防止装置等による電波の医用機器への影響     盗難防止装置等による植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器への影響については,医薬品等安全性情報No.155(平成11年6月号)並びに医薬品・医療用具等安全性情報No.173(平成14年1月号)及びNo.190(平成15年6月号)において注意喚起してきたところである。
 総務省において,平成14年度より2年間にわたり「電波の医用機器等への影響に関する調査研究」が実施され,今般,盗難防止装置等から発射される電波の植込み型の医用機器(心臓ペースメーカ及び除細動器)に及ぼす影響についての調査が電波産業会によってまとめられた。この調査研究の調査結果によると,医薬品・医療用具等安全性情報No.173において紹介した指針は妥当であることが確認されたことから,当該報告の内容について紹介し,改めて医療関係者等に注意喚起を行うこととした。
3 オレイン酸モノエタノールアミン他(3件) 使
 前号(医薬品・医療用具等安全性情報No.202)以降に改訂を指導した医薬品の使用上の注意のうち重要な副作用等について,改訂内容,参考文献等とともに改訂の根拠となった症例の概要に関する情報を紹介する。
4 塩酸ミルナシプラン他(6件)    使用上の注意の改訂について(その157)

緊:緊急安全性情報の配布 使:使用上の注意の改訂 症:症例の紹介

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医薬品による重篤な皮膚障害について

(1)はじめに

 医薬品の副作用として皮膚障害が発現することは,よく知られているところである。皮膚障害のうち重篤なものとして,スティーブンス・ジョンソン症候群〔皮膚粘膜眼症候群:Stevens-Johnson syndrome(SJS)〕,中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)がある。
 SJS,TENについては,医薬品・医療用具等安全性情報No.163(平成12年11月号)及び医薬品・医療用具等安全性情報No.177(平成14年5月号)において,その病態等の説明とともに,平成9年度から平成12年度までに厚生省(当時)へ報告されたこれらに関する副作用症例報告の状況等を紹介しているところであるが,その後の厚生労働省への副作用症例報告を踏まえ,SJS,TENについて,No.163,No.177の内容の再掲の部分もあるが,改めて注意を喚起することとした。

(2)スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群),中毒性表皮壊死症について

 スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群:SJS)は,重症型多形滲出性紅斑(erythema exsudativum multiforme major:EEMM)と同義語とされており,これらの皮膚疾患の中で最も重篤とされているのが中毒性表皮壊死症である1)
 中毒性表皮壊死症(TEN)は,ライエル症候群(Lyell syndrome)とも呼ばれる。なお,類似症状を示す疾患としてブドウ球菌性TEN(staphylococcal scalded skin syndrome:SSSS)や輸血後の移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)などがある。
 これらの発生頻度は,人口100万人当たり各々年間1~6人,0.4~1.2人2,3)と極めて低いものの,発症すると予後不良となる場合があり,皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器官等に障害を残すこともある。

1)初期症状と臨床経過

SJSの初期症状は,発熱,左右対称的に関節背面を中心に紅斑(target lesion等)が出現し,急速に紅斑の数を増し,重症化するにつれ,水疱,びらんを生じ,融合する。眼,口腔粘膜,外陰部などの粘膜疹を伴うことも多く,検査所見では白血球増多,赤沈亢進,CRP陽性などを示す。発熱などの全身症状とともに,多形滲出性紅斑様皮疹(target lesion),広範な粘膜疹が急激に生じることにより診断は困難ではない。呼吸器障害(肺炎等)や肝障害等の合併症を来し,その死亡率は6.3%との報告がある4)
 一方,TENは,発熱や腋窩,外陰部,体幹などに広範囲な紅斑が出現した後,急速に水疱を生じ,水疱は破れやすく(ニコルスキー現象),全身びらん症状を呈する。II度熱傷に似て,疼痛も著明である。検査所見では血液,肝,電解質などに異常を認めることが多い。多臓器障害の合併症(肝障害,腎障害,呼吸器障害,消化器障害等)を来し,死亡率も高く20~30%とする報告が多い4,5)

2)発症原因と機序

単純疱疹ウイルス,肺炎マイコプラズマ,細菌,真菌等の種々のウイルスや細菌による感染症,医薬品,食物,内分泌異常,悪性腫瘍,物理的刺激などによって起こるアレルギー性の皮膚反応(III型アレルギー)と考えられている。医薬品が原因となる場合が多いとされており,文献によるとSJSの59%は医薬品が原因と推定されたとする報告4)や,TENの90%以上は医薬品が原因と推定されたとの報告もある4,5)。これら皮膚疾患の発症機序の詳細はいまだ明確ではなく,また,これら重篤な皮膚疾患の発症を医薬品の投与に先立って予知することは非常に困難である。

3)原因医薬品

原因医薬品は,抗生物質製剤,解熱鎮痛消炎剤,抗てんかん剤,痛風治療剤,サルファ剤,消化性潰瘍用剤,催眠鎮静剤・抗不安剤,精神神経用剤,緑内障治療剤,筋弛緩剤,高血圧治療剤などであり,その他種々の医薬品で発生することが報告されている2,4-7)

4)治療

医薬品によるSJS,TENに対しては,発熱や発疹等の初期症状を認めた場合,原因と推定される医薬品の投与を直ちに中止することが最も重要で最良の治療法である。しかし,投与を中止してもSJS,TENへと重症化する場合があるので注意が必要である。一般にSJS,TENが発症した場合,副腎皮質ホルモン剤の全身投与,あるいは血漿交換療法,ビタミン類の投与,更に二次感染予防の目的で抗生物質製剤投与が行われ,皮膚面に対しては外用抗生物質製剤,外用副腎皮質ホルモン製剤が用いられている。粘膜面にはこれらとともに,うがい,洗眼など開口部の処置が行われている6-8)。なお,これらの治療は,皮膚科の入院施設のある病院で行うことが望ましいとされている9,10)

(3)平成13年度~15年度(電子報告移行前まで)の厚生労働省への副作用症例報告について

従来は製薬企業からの副作用報告は紙媒体で受け付けていたが,平成15年10月27日より電子的に報告を受け付けるシステムを稼働した。そのことから,今回は平成13年度以降電子報告に移行するまでの間(平成15年10月26日までの約2年7ヵ月)についてまとめた。この期間に薬事法に基づく企業からの企業報告,医療機関から直接厚生労働省へ報告される医薬品等安全性情報報告制度によって報告された副作用症例報告数は72,409件であった。それらのうち副作用がSJSあるいはTENとされた報告は約1.5%の1,064件であり,そのうち一般用医薬品が被疑薬に含まれている報告は約5%の58件であった。1,064件の転帰は,約66%の702症例は“軽快”あるいは“回復”とされた症例であり,66症例(約6%)は報告された時点で未回復,62症例(約6%)は何らかの後遺症を来し,106症例(約10%)は医薬品が関連した死亡とされた症例であった。残り約12%の128症例については,医薬品以外の原因による死亡,あるいは転帰不明とされた症例であった。これらの数字をNo.163及びNo.177で紹介した平成9年4月1日から平成13年3月31日までの4年間の報告と比較してみると,発生傾向や転帰等に目立った差は見られなかった。なお,これらの報告症例については重複症例があること,医薬品との因果関係が明確でない症例も含まれていることに御留意いただきたい。
 被疑薬として報告があった医薬品は283成分であり,報告数の多かった医薬品の品目及び薬効分類を表1と表2に示す。報告が多かった医薬品について比較すると,解熱鎮痛消炎剤(NSAIDs)が多いのが目立っている他は従来と傾向に大きな違いはなかった。なお,報告数順位については,各医薬品の販売量が異なること,また,使用法,使用頻度,併用医薬品,原疾患,合併症等が症例により異なるため,単純に比較することはできないことに御留意いただきたい。

表1 報告の多い推定原因医薬品(医薬品別)
カルバマゼピン
アロプリノール
ジクロフェナクナトリウム
レボフロキサシン
ロキソプロフェンナトリウム
ゾニサミド
アジスロマイシン水和物
セフジニル
塩酸セフカペンピボキシル
クラリスロマイシン
(平成13年4月1日から平成15年10月26日までの症例報告より)
 
表2 報告の多い推定原因医薬品(薬効分類別)
抗生物質製剤
解熱鎮痛消炎剤
抗てんかん剤
総合感冒剤
痛風治療剤
消化性潰瘍用剤
合成抗菌剤
サルファ剤
高脂血症用剤
精神神経用剤
(平成13年4月1日から平成15年10月26日までの症例報告より)

(4)まとめ

SJS,TENは,その発生頻度は極めてまれではあるものの,いったん発症すると多臓器障害の合併症等により致命的な転帰をたどることがあったり,皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器官等に障害を残したりするなど,重篤な皮膚疾患である。これらの皮膚障害は,非常にまれとはいえ,個人や医薬品を問わず起こり得る可能性がある。したがって,投与前の問診を十分に行うとともに,薬疹に対しては被疑薬の投与を中止することが最も重要で最良の治療法とされており,医薬品投与後に高熱を伴う発疹等を認めたときは,直ちに被疑薬の投与を中止し,SJS,TENの発症を疑った場合には,皮膚科の専門医を紹介することが必要と思われる。

〈参考文献〉

1) Assier, H., et al.:Erythema Multiforme With Mucous Membrane Involvement and Stevens-Johnson Syndrome Are Clinically Different Disorders With Distinct Causes, Arch. Dermatol., 131:539-543(1995)
2) Roujeau, J-C., et al.:Medication Use and The Risk of Stevens-Johnson Syndrome or Toxic Epidermal Necrolysis, N. Engl. J. Med., 333:1600-1607(1995)
3) Rzany, B., et al.:Epidemiology of Erythema Exsudativum Multiforme Majus, Stevens-Johnson Syndrome, and Toxic Epidermal Necrolysis in Germany(1990-1992):Structure and Results of a Population Based Registry, J. Clin. Epidemiol., 49:769-773(1996)
4) 相原道子,池澤善郎:本邦におけるToxic Epidermal Necrolysis(TEN)死亡例の臨床的検討-TEN生存例およびStevens-Johnson syndrome(SJS)死亡例との比較検討-,日皮会誌,109(11):1581-1590(1999)
5) 南光弘子:本邦におけるToxic Epidermal Necrolysis 126例の臨床的解析-輸血後GVHDとの鑑別は可能か否か-,45:571-578(1991)
6) 高橋隆一監修:臨床医が書いた薬の重大な副作用がわかる本-患者が気づく副作用症状-,エルゼビア・ジャパン(1998)
7) 伊崎誠一:「TEN(中毒性表皮壊死融解症)」,川越クリニカル・カンファレンス,KCCシリーズ,No.39(1998)
8) 池田重雄,他編集:標準皮膚科学 第5版,医学書院(1997)
9) 塩原哲夫:診断と治療,87(Suppl):37-41(1999)
10) 原田昭太郎,他:臨床医薬,17(9):1261-1273(2001)
 

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盗難防止装置等による電波の医用機器への影響

 盗難防止装置等による植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器への影響については,医薬品等安全性情報No.155(平成11年6月号)並びに医薬品・医療用具等安全性情報No.173(平成14年1月号)及びNo.190(平成15年6月号)において注意喚起してきたところである。
 総務省において,平成14年度より2年間にわたり「電波の医用機器等への影響に関する調査研究」が実施され,今般,盗難防止装置等から発射される電波の植込み型の医用機器(心臓ペースメーカ及び除細動器)に及ぼす影響についての調査が電波産業会(以下,「産業会」という)によってまとめられた。この調査研究の調査結果によると,医薬品・医療用具等安全性情報No.173において紹介した指針は妥当であることが確認されたことから,当該報告の内容について紹介し,改めて医療関係者等に注意喚起を行うこととした。

(1)経緯

 盗難防止装置〔産業会の報告書では「EAS(Electronic Article Surveillance):電子商品監視機器」とされている〕から発射される電波が植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器に及ぼす影響については,本誌No.190において中間とりまとめを紹介してきたところである。
 今般,この調査を委託された産業会に設置された「電波の医用機器等への影響に関する調査研究会」において,1)盗難防止装置,2)(据え置き型を除く)RFID機器(Radio Frequency IDentification device)及び3)無線LAN(Local Area Network)の調査報告書がまとまり,総務省より公表されたことから,医療機関,医療従事者,医療機器業者等に対し,当該報告内容について紹介することとした。

<用語の説明>

1) 盗難防止装置とは,種々なタイプのタグ(荷札)を商品に貼り付け,商品が通過した場合に,タグを非接触通信で検出する装置であり,電波方式,磁気方式,磁気自鳴方式,音響磁気方式及び複合式といわれるものが知られている。形状としては,ゲート型の他に天井又はフロア埋め込み型がある。
2) RFID機器とは,情報を電子回路に記憶し,非接触通信で交信が可能なものであり,ICチップとアンテナを内蔵したタグ(荷札)と検出器との電波の交信により情報のやりとりを行う機器で,物流や在庫管理,製品の精算等に使用される。検出器の形態によりゲート型,ハンディ型,据え置き型に大別される。
3) 無線LANとは,コンピュータやPC,周辺機器などを1Mbps~54Mbps程度の伝送速度を実現することのできる2.4GHz又は5.4GHzのマイクロ波の無線媒体を用い,一つのオフィスやフロア,建物群など地理的に限られた範囲内で直接的に通信を可能とするデータ通信システムである。

(2)調査概要

 今回実施された調査は,盗難防止装置,RFID機器及び無線LANを対象として,基本的に平成14年度に実施された盗難防止装置及びワイヤレスカードシステムから発射される電波による植込み型医用機器(心臓ペースメーカ及び除細動器)に及ぼす影響の評価に用いられた評価方法と同様の方法で検討が行われた。

1)盗難防止装置が植込み型医用機器に及ぼす影響

現在,導入されている機種を網羅するよう平成7年以前の製品から平成11年以降に市場に流通している代表的な植込み型心臓ペースメーカ28台(48モード)及び植込み型除細動器7台(10モード)を試験対象医用機器とし,電波方式15台,磁気方式14台,磁気自鳴方式7台(フロア型2台,天井型2台を含む)及び音響磁気方式3台,複合式1台の合計40(フロア型2台,天井型2台を含む)機種を試験対象装置として,以下の4種類の試験を行い,盗難防止装置による植込み型医用機器への影響を調査した。
<試験1>

試験内容: 植込み型医用機器装着者が盗難防止装置の中央を通過する状況を再現し,医用機器に影響がでるゲートの中心からの距離を計測する。

<試験2>

試験内容: 植込み型医用機器装着者がゲート内で振り返る状況を再現するため,ゲート内で身体を回転させながら電波を送信しているゲートに20cmまで近づき,ゲートからの距離とゲートに対する回転角度の違いによる医用機器への影響の発現状況を計測する。

<試験3>

試験内容: 植込み型医用機器装着者がゲート内で身体を回転させられない近距離(20cm以内)でゲート自体(送受信板)に密着するまで接近する状況を再現し,医用機器に影響がでるゲートからの距離を計測する。

<試験4>

試験内容: <試験1>で影響を受けた植込み型医用機器を対象に,植込み型医用機器装着者がゲート外でゲートの周囲(送受信板)に接近する状況を再現し,医用機器に影響がでるゲートからの距離をゲートの真横,ゲートから45度,90度の各角度で計測する。

2)RFID機器が植込み型医用機器に及ぼす影響

植込み型医用機器については1)と同じ製品を試験対象医用機器とし,ゲート型RFID機器10台,ハンディ型RFID機器21台のRFID機器(合計31台)を試験対象装置として,医用機器への影響の調査を行った。
 RFID機器の構造特性に鑑み,ゲート型のRFID機器については,1)の盗難防止装置と同様の方法で影響を調査した。また,ハンディ型のRFID機器については以下の2種類の試験方法により植込み型医用機器への影響を調査した。
<試験A>

試験内容: ハンディ型のRFID機器を人体に近づけた状況を再現し,ハンディ型のRFID機器を密着させた状態から次第に離していき,影響が出なくなるまでの距離を計測する。

<試験B>

試験内容: 影響がなくなる植込み型医用機器の感度を調査するため,<試験A>で影響が観測された場合に,植込み型医用機器の感度を順次落としていき,影響が観測されなくなるまで<試験A>と同様の試験を行う。

3)無線LANが植込み型医用機器に及ぼす影響

植込み型医用機器については1)と同じ製品を試験対象医用機器とし,全方式の無線LANのアクセスポイント8台,無線LAN移動機8台(合計16台)を試験対象装置として,医用機器への影響の調査を行った。
 試験方法は2)のハンディ型RFIDの試験方法と同じ方法を用いた。

(3)調査結果の概要

1)盗難防止装置による植込み型医用機器への影響について

(1)植込み型心臓ペースメーカ
 ゲート型盗難防止装置については,次の表に示すように試験1において177試験モード(10.2%),試験2において671試験モード(38.8%),試験3において797試験モード(46.1%)の組み合わせにおいて何らかの影響が観測された。観測されたほとんどの影響は一時的なものであり,ゲートから遠ざかることにより正常に復した。
 また,フロア型盗難防止装置については3試験モード(3.1%)で何らかの影響が観測された。天井型盗難防止装置については影響は観測されなかった。

   試験1 試験2 試験3 試験4
干渉率 10.2% 38.8% 46.1%
最大干渉距離 275cm 280cm

注1:干渉率は影響を受けた植込み型心臓ペースメーカモードの割合を意味する。
注2:最大干渉距離は,植込み型心臓ペースメーカが影響を受けた最大距離を意味する。

 なお,試験2又は試験3において,プログラムリセットされたケース(最大干渉距離25cm)があった。

(2)植込み型除細動器
 ゲート型盗難防止装置については,次の表に示すように試験1において5試験モード(1.4%),試験2において34試験モード(9.4%),試験3において59試験モード(16.4%)の組み合わせにおいてペースメーカ機能に何らかの影響が観測された。観測されたほとんどの影響は一時的なものであり,ゲートから遠ざかることにより正常に復した。
 また,試験2において13試験モード(3.6%),試験3において29試験モード(8.1%)の組み合わせにおいて除細動機能に何らかの影響が観測された。観測されたほとんどの影響は一時的なものであり,ゲートから遠ざかることにより正常に復した。
 なお,フロア型及び天井型盗難防止装置についてはペースメーカ機能及び除細動機能のいずれにも影響は観測されなかった。

 <ペースメーカ機能>

   試験1 試験2 試験3
干渉率 1.4% 9.4% 16.4%
最大干渉距離 65cm

 <除細動機能>

   試験1 試験2 試験3
干渉率 0% 3.6% 8.1%
最大干渉距離

注1:干渉率は影響を受けた植込み型除細動器モードの割合を意味する。
注2:最大干渉距離は,植込み型除細動器が影響を受けた最大距離を意味する。

 なお,試験2または試験3において,5機種29モード試験モード(8.1%)で不要除細動ショックを起こす影響が確認された。この際の最大干渉距離は42.5cmであり,ゲートとの角度が90度(ゲートに正対状態)であった。

2)RFID機器が植込み型医用機器に及ぼす影響

(1)植込み型心臓ペースメーカ
 ゲート型RFID機器については,次の表に示すように試験1において5試験モード(1.0%),試験2において22試験モード(4.6%),試験3において89試験モード(18.5%)の組み合わせにおいて何らかの影響が観測された。観測されたほとんどの影響は一時的なものであり,ゲートから遠ざかることにより正常に復した。
 なお,ハンディ型RFID機器については,最大干渉距離は15cmであり,50試験モード(5.0%)で何らかの影響が観測されたが,プログラムがリセットされたケースはなかった。

   試験1 試験2 試験3
干渉率 1.0% 4.6% 18.5%
最大干渉距離 50cm

注1:干渉率は影響を受けた植込み型心臓ペースメーカモードの割合を意味する。
注2:最大干渉距離は,植込み型心臓ペースメーカが影響を受けた最大距離を意味する。

(2)植込み型除細動器
 ゲート型RFID機器については,次の表に示すように試験3において4試験モード(4.0%)において何らかの影響が観測された。観測されたほとんどの影響は一時的なものであり,ゲートから遠ざかることにより正常に復した。ペースメーカ機能及び除細動機能ともに密着した状態で影響が観測され,除細動機能においては不要除細動ショックが発生する影響が観測された。
 なお,ハンディ型RFID機器については,ペースメーカ機能において最大干渉距離は2cmであり,7試験モード(3.3%)に何らかの影響が観測され,除細動機能においては,最大干渉距離は1cmであり,5試験モード(2.4%)で不要除細動ショックが発生する影響が観測された。観測されたほとんどの影響は一時的なものであり,ゲートから遠ざかることにより正常に復した。

 <ペースメーカ機能>

   試験1 試験2 試験3
干渉率 0% 0% 4.0%
最大干渉距離 0cm

 <除細動機能>

   試験1 試験2 試験3
干渉率 0% 0% 4.0%
最大干渉距離 0cm

注1:干渉率は影響を受けた植込み型除細動器が影響を受けた最大距離を意味する。
注2:最大干渉距離は,植込み型除細動器が影響を受けた最大距離を意味する。

3)無線LANが植込み型医用機器に及ぼす影響

(1)植込み型心臓ペースメーカ
 無線LANのアクセスポイントについては,最大干渉距離は6cmであり,4試験モード(1.0%)に何らかの影響が観測され,移動機側については,最大干渉距離は1cm以下であり,4試験モード(1.0%)に何らかの影響が観測された。
(2)植込み型除細動器
 無線LANのアクセスポイント側及び移動機側いずれについても影響は観測されなかった。

(4)植込み型医用機器を使用している患者に対する注意事項

1)盗難防止装置について

当該研究においては,どのような方式の装置が特に植込み型医用機器に影響を与えるのかは明らかにされていないが,ゲート中央の通過で10%程度,ゲート内で身体を回転させてゲートに近づいた場合は40%程度,ゲート(送受信板)へ密着するまでの接近では50%近くの盗難防止装置と植込み型心臓ペースメーカの組み合わせで影響が観測されていることから,ゲート内から可能な限り速やかに退去することが重要であるといえる。
 また,ゲート内においては,ゲート間において体を捩るなど,ゲート(送受信板)に胸と背中を向けることにより,より影響を受けやすくなる傾向が見られており,ゲートを横切る際は,真っ直ぐに正面を向いて横切ることが推奨される。これは,植込み型除細動器においてゲートとの角度90度,42.5cmの距離で不要除細動ショックが観測されていることからも,特に重要なことといえる(正面を向いた状態では,ゲートの設置幅の1/4以内にゲートに近づかなければ,ショックは出ないことが確認されている)。
 ゲート外であってもゲート内と同様の距離で影響を受けることが示唆されているので,ゲート外であっても可能な限り盗難防止装置に近づかないように注意する必要がある。

2)RFID機器について

平成15年度の当該研究においては,ゲート型及びハンディ型のRFID機器について検討されている。
 ゲート型については,ゲート中央の通過で1%程度,ゲート中央において向きを変える場合に5%程度,ゲート(送受信板)への接近では20%近くのRFID機器と植込み型心臓ペースメーカの組み合わせで影響が観測されていること,また,密着状態であるものの植込み型除細動器において不要除細動ショックが観測されていること,更に外見上盗難防止装置と判別不能であることから,1)の盗難防止装置と同様の注意が必要であると考えられる。
 ハンディ型については,植込み型除細動器で1cmで,不要除細動ショックが観測されていること,また,ハンディ型であるため容易に身体に接近させることができることから,不用意に植込み型医用機器の22cm以内にRFID機器を接近させないように注意することが必要である。

3)無線LANについて

現在流通している無線LANにおいて影響が観測されたものについては,すべて同一の植込み型心臓ぺースメーカであり,既に当該機種を利用している患者については該当企業から注意喚起の連絡がなされているところである。他の植込み型医用機器については,影響は観測されていないものの,不必要に電磁波を発生しているものに植込み型医用機器を接近させないという一般的な注意を引き続き払うことが適当である。

(5)医療機関へのお願い

今回は,盗難防止装置,RFID機器(据え置き型を除く)及び無線LANについての検討結果を紹介したが,特に影響率が高かった盗難防止装置については当該研究においては,どのような方式の装置が特に植込み型医用機器に影響を与えるのかは明らかにされていないが,植込み型医用機器装着者の健康被害防止の観点から,以下の事項を遵守するよう患者への指導の徹底を引き続きお願いするとともに,患者が小児の場合には,保護者への指導の徹底も併せてお願いしたい。

  • 盗難防止装置のゲート内に立ち止まる,もたれかかる等不用意に近寄ることのないように留意する。
  • 盗難防止装置等をやむを得ず通過する場合には,中央を真っ直ぐ正面を向いて速やかに通過する。
  • ゲート型RFID機器については,盗難防止装置と見かけ上判別しにくいため,盗難防止装置と同様の注意を払うこと。
  • ハンディ型RFID機器については,不用意に植込み型医用機器の22cm以内にRFID機器を接近させないように注意すること。
 

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重要な副作用等に関する情報

前号(医薬品・医療用具等安全性情報 No.202)以降に改訂を指導した医薬品の使用上の注意のうち重要な副作用等について,改訂内容,参考文献等とともに改訂の根拠となった症例の概要に関する情報を紹介いたします。

【1】 オレイン酸モノエタノールアミン

販売名(会社名) オルダミン注射用(富士化学工業)
薬効分類等 止血剤
効能効果 食道静脈瘤出血の止血及び食道静脈瘤の硬化退縮

 

《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
[重要な基本
的注意]
標的とする部位以外への流出により急性呼吸窮迫症候群,肺水腫があらわれることがあるので,対処部位での血流動態を観察して,食道静脈瘤以外への流出に注意すること。
[副作用
(重大な副作用)]
急性呼吸窮迫症候群,肺水腫:急性呼吸窮迫症候群,肺水腫があらわれることがあるので,観察を十分に行い,急速に進行する呼吸困難,低酸素血症,胸部X線による両側性びまん性肺浸潤陰影が認められた場合には,呼吸管理,循環管理等の適切な処置を行うこと。
〈参   考〉 企業報告

 

症例の概要

NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
1
70代
食道静脈瘤(肝硬変,糖尿病,高血圧) 〔オルダミン注射用(10%)として〕
3.5mL
1回
肺塞栓,成人呼吸窮迫症候群
既往歴 右肺区域切除
投 与 日 内視鏡的硬化療法として,食道静脈瘤に対して5%液7mLを静脈瘤内に注入。静脈瘤外への漏れはなし。口側バルーンで薬剤を5分間停滞させた。抜針時にトロンビンを散布。内視鏡を抜去直後,乾性咳嗽と呼吸困難が発現。術中も酸素吸入を行っていたが,引き続き酸素吸入を継続(3L/分)。SaO2は100%から80%へ低下し,ステロイド大量投与を行い,ICU管理に移行。
胸部X線検査で両肺にびまん性粒状影を認めた。
投与3日後 呼吸困難などの症状消失。
企業報告
併用薬:イオパミドール

 

NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
2
70代
食道静脈瘤(肝硬変,C型慢性肝炎,胃静脈瘤,骨粗鬆症) 〔オルダミン注射用(10%)として〕
5.25mL
1回
肺水腫
投与約4年前 肝硬変,食道静脈瘤を指摘。
投与11日前 食道静脈瘤の内視鏡的硬化療法目的で入院。食道に固有筋層を貫く貫通静脈あり。
投与7日前 食道静脈瘤結紮療法を実施。引き続き硬化療法を実施するも薬物が血管外へ漏れたため,中止。
投 与 日 内視鏡的硬化療法として,食道静脈瘤に対して5%液0.5mL(血管外),7.0mL(血管内)に注入。透視画像で血管内への流入を確認し,肝臓側への過度の流入がないことを確認。注入後間もなくして顔面紅潮,喘鳴,胸痛が出現。そのため,食道バルーンの空気量20mLを脱気後,治療継続。この際,酸素飽和度は98%であった。0.5mL(血管外)を注入後に,胸痛がありミダゾラム5mgを静注。酸素飽和度は85~87%へ低下,酸素3Lを経鼻投与。さらに,0.5mL(血管外),2mL(血管内)を注入,酸素飽和度の改善がないため,本剤注入直後にフルマゼニル10mgを静注。酸素飽和度は93~95%に改善し,バルーンで2回,針穴を圧迫止血。
投与30分後 内視鏡を抜去直後,呼吸苦を訴え,チアノーゼ,ピンク色泡沫様痰を認めた。
投与40分後 酸素飽和度は70%で改善せず,意識状態の低下を認め,直ちに気管内挿管し,純酸素にて換気。胸部X線で両側(左側優位)にびまん性浸潤影を認めた。心エコーに著変なく心原性肺水腫,肺塞栓は否定的で肺水腫と診断。
投与1時間後 ICUへ。人工呼吸器に接続するも,酸素飽和度は85%で不良,PEEPを併用した補助換気を実施。血圧が低下しショックとなり,ステロイドパルス療法,ウリナスタチン,塩酸ドパミンの投与を実施。
投与2時間30分後 酸素分圧の上昇を確認。
投与2日後 抜管し一般病棟へ。
投与32日後 退院。
企業報告
併用薬:イオパミドール,リドカイン,乳酸リンゲル液,ペンタゾシン,塩酸ヒドロキシジン,臭化ブチルスコポラミン,ミダゾラム,フルマゼニル

 

【2】 クラリスロマイシン

販売名(会社名)
クラリシッド錠50mg小児用,同錠200mg,同ドライシロップ小児用(アボットジャパン)
クラリス錠50小児用,同錠200,同ドライシロップ小児用(大正製薬)
薬効分類等 主としてグラム陽性菌,マイコプラズマに作用するもの
効能効果 (クラリシッド錠50mg小児用,同ドライシロップ小児用,クラリス錠50小児用,同ドライシロップ小児用の場合)
一般感染症
クラリスロマイシン感性のブドウ球菌属,レンサ球菌属(腸球菌を除く),ブランハメラ・カタラリス,インフルエンザ菌,百日咳菌,カンピロバクター属,マイコプラズマ属,クラミジア属による下記感染症
  • 毛嚢炎,丹毒,蜂巣炎,リンパ管(節)炎,ひょう疽,化膿性爪囲炎,皮下膿瘍,汗腺炎,集簇性ざ瘡,感染性粉瘤,慢性膿皮症,外傷・熱傷・手術創などの表在性二次感染
  • 咽喉頭炎,急性気管支炎,扁桃炎,慢性気管支炎,肺炎,肺化膿症
  • カンピロバクター腸炎
  • 猩紅熱
  • 百日咳
  • 中耳炎
  • 副鼻腔炎
後天性免疫不全症候群(エイズ)に伴う播種性マイコバクテリア感染症

(クラリシッド錠200mg,クラリス錠200の場合)
一般感染症
クラリスロマイシン感性のブドウ球菌属,レンサ球菌属(腸球菌を除く),ペプトストレプトコッカス属,ブランハメラ・カタラリス,インフルエンザ菌,カンピロバクター属,マイコプラズマ属,クラミジア属による下記感染症

  • 毛嚢炎,せつ,せつ腫症,よう,丹毒,蜂巣炎,リンパ管(節)炎,ひょう疽,化膿性爪囲炎,皮下膿瘍,汗腺炎,集簇性ざ瘡,感染性粉瘤,慢性膿皮症,肛門周囲膿瘍,外傷・熱傷・手術創などの表在性二次感染
  • 咽喉頭炎,急性気管支炎,扁桃炎,慢性気管支炎,びまん性汎細気管支炎,気管支拡張症(感染時),慢性呼吸器疾患の二次感染,肺炎,肺化膿症
  • 非淋菌性尿道炎
  • カンピロバクター腸炎
  • 子宮頸管炎
  • 中耳炎,副鼻腔炎
  • 歯周組織炎,歯冠周囲炎,顎炎
後天性免疫不全症候群(エイズ)に伴う播種性マイコバクテリア感染症
胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ感染

 

《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
[禁  忌]
ピモジド,エルゴタミン含有製剤,シサプリドを投与中の患者
[相互作用
(併用禁忌)]
(テルフェナジンを削除)
エルゴタミン(酒石酸エルゴタミン,メシル酸ジヒドロエルゴタミン)含有製剤
[相互作用
(併用注意)]
カルシウム拮抗剤(ニフェジピン,塩酸ベラパミル等)
[副作用
(重大な副作用)]
劇症肝炎,肝機能障害,黄疸,肝不全劇症肝炎,AST(GOT),ALT(GPT),γ-GTP,LDH,Al-Pの上昇等を伴う肝機能障害黄疸,肝不全があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,投与を中止し,適切な処置を行うこと。
血小板減少,汎血球減少,溶血性貧血,白血球減少,無顆粒球症:血小板減少,汎血球減少,溶血性貧血,白血球減少,無顆粒球症があらわれることがあるので,定期的に検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には,投与を中止し,適切な処置を行うこと。
偽膜性大腸炎,出血性大腸炎:偽膜性大腸炎,出血性大腸炎等の重篤な大腸炎があらわれることがあるので,腹痛,頻回の下痢があらわれた場合には,投与を中止し,適切な処置を行うこと。
痙 攣:痙攣(強直間代性,ミオクロヌス,意識消失発作等)があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,投与を中止し,適切な処置を行うこと。
アレルギー性紫斑病:アレルギー性紫斑病があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,投与を中止し,適切な処置を行うこと。
急性腎不全:急性腎不全があらわれることがあるので,観察を十分に行い,乏尿等の症状や血中クレアチニン値上昇等の腎機能低下所見が認められた場合には,投与を中止し,適切な処置を行うこと。
〈参   考〉 企業報告

 

症例の概要

NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
1
80代
慢性呼吸不全
(慢性肺気腫,亜鉛欠乏症)
200mg
21日間
自己免疫性溶血性貧血
投与56日前 感冒症状あり。セフジトレンピボキシル処方される。
投与28日前 外来受診。体調不良を訴える。同時に食欲不振もあり。
投与15日前 胃カメラ施行:ポリープ1ケのみ。
投与開始日 外来受診。体調不良が続き,頭痛出現を訴える。同日より従来のエリスロマイシンに変更して本剤処方開始となる。
投与13日目 内科入院。頭痛,食欲不振等の症状続く。LDH,ビリルビンの上昇,ハプトグロブリンの低下より,溶血性貧血の診断。直接クームス試験,間接クームス試験も陽性であり,自己免疫性のものと診断した。
投与19日目 入院後も症状続き,貧血改善せず。
投与21日目
(投与中止日)
本剤中止。
中止19日後 症状次第に改善。検査上もヘモグロビン改善。
中止42日後 リンパ球遊走阻止試験施行。
本剤:陽性,セフジトレンピボキシル,ファモチジン:陰性
中止52日後 症状もほぼ消失し,退院。
企業報告
臨床検査値
   投与56日前 投与開始日 投与13日目 中止19日後 中止63日後
赤血球数(×104/mm3 447 331 257 315 420
ヘモグロビン(g/dL) 14.6 10.5 8.8 10.5 13.4
ヘマトクリット(%) 43.0 32.7 27.3 33.5 40.2
網状赤血球数(‰) 64.7 9.8
LDH(IU/L) 324 1093 1008 439
総ビリルビン(mg/dL) 0.8 1.6 1.1 0.4
ハプトグロブリン(mg/dL) 5
直接クームス試験 (+)
間接クームス試験 (+)
併用薬:セフジトレンピボキシル,ファモチジン,ペントキシフィリン,トリアゾラム,複合ビタミンB剤,ピコスルファートナトリウム,テオフィリン,塩酸プロカテロール,臭化イプラトロピウム,硫酸亜鉛

 

NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
2
60代
上気道炎
(なし)
400mg
8日間
上半身間代性痙攣
投与約10ヵ月前 上気道炎にてA院で加療中(マクロライド系抗生物質を含む),間代性痙攣を来し,B院にてCT,MRIで頭部検査するも,異常を認めず。
点滴加療するも症状改善されず(精神・神経科)。原因不明であった。
そのまま放置し,2~5日後症状消失。
投与開始日 C院(当院)にて上気道炎加療開始。
投与8日目
(投与中止日)
夜から,間代性痙攣(両肩を上下させる運動[回/0.2~0.3秒]が持続)が始まる。
約10ヵ月前と全く同じ症状のため,また苦痛もあまり強く訴えないため,投薬を中止。
投与10~13日目 症状消失。
企業報告
併用薬:葛根加朮附湯エキス,桔梗湯エキス,塩化リゾチーム,リン酸ジヒドロコデイン・dl-塩酸メチルエフェドリン・マレイン酸クロルフェニラミン配合剤

 

NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
3
10歳未満
マイコプラズマ感染疑い
(急性気管支炎)
200mg
3日間
アレルギー性紫斑病
投与7日前 咳嗽が出現した。
投与5日前 37.5℃の微熱があり,夜,咳嗽が増強した。
投与3日前 軽度の咽頭発赤を認め,テオフィリン,カルボシステイン,塩酸プロカテロール,セフロキサジンを処方し,昼から内服した。
投与1日前 38.4℃の高熱が出た。
投与開始日 胸部にラ音を認め,胸部X線検査でも異常を認め,急性気管支炎と診断した。病因として,肺炎マイコプラズマを疑い,またテオフィリンの吸入も考えて,本剤を処方した。
投与3日目
(投与中止日)
発熱なく,咳嗽も軽快したが,昼頃から下顎に発疹が発現し,腹痛を訴えるようになった。本剤は昼まで内服した。
中止2日後 腹痛が続き,下肢にも発疹が出現した。
中止4日後 当院小児科に来院し,アレルギー性紫斑病と診断した。輸液,トラネキサム酸,カルバゾクロムスルホン酸ナトリウムの注射を開始。
中止5日後 腹痛は訴えず。
中止10日後 発疹(出血斑)は消退した。
中止18日後 その後は特に問題なく経過している。
企業報告
臨床検査値
   中止4日後 中止12日後 中止18日後
血小板数(×104/mm3 53.4 37.6 29.1
出血時間(分.秒) 2.30
凝固開始時間(分.秒) 4.30
凝固完了時間(分.秒) 9.30
第XIII因子(%) 79
プロトロンビン時間(秒) 11.9
APTT(秒) 34.1
ルンペルレーデ反応 +(6個) 3+
併用薬:セフロキサジン,カルボシステイン,塩酸プロカテロール,テオフィリン

 

NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
4
60代
気管支炎
(慢性腎炎,気管支喘息,心不全,肺嚢胞)
400mg
11日間
急性腎不全
投与17日前 肺嚢胞,気管支炎による呼吸困難,低酸素血症で入院。
入院後,セフォペラゾンナトリウム(2g×10日間服用)→本剤で気管支炎は軽快した。
投与4日目 低酸素血症が十分回復しないため,在宅酸素療法で退院。
投与7日目 尿量減少し,呼吸困難増悪,全身浮腫出現。
投与8日目 本院受診し,著しい低酸素血症(O2 5L/分投与下でPO2 69.8mmHg,PCO2 59.0mmHg),心不全を認めたため,フロセミド静注を使用したが,利尿は不十分(尿量1250mL/日)で,塩酸ドブタミン,塩酸ドパミンも使用。
投与9~10日目 上記の利尿剤使用するも尿量500mL/日の乏尿。
投与11日目
(投与中止日)
心不全改善せず,クレアチニンも4.3mg/dLまで上昇し,血液透析(2.3kg徐水)を施行。本剤投与中止。尿量900mL/日。
中止1日後 尿量1300mL/日。
中止2日後 尿量2700mL/日。
中止3日後 尿量3300mL/日。
中止4日後 尿量1900mL/日。
中止5日後 尿量1650mL/日。
中止6日後 尿量1300mL/日。
中止7日後 血清クレアチニン2.4mg/dLと回復し,心不全も消失。
企業報告
臨床検査値
   投与7日前 投与3日前 投与8日目 中止2日後 中止7日後
BUN(mg/dL) 41 53 84 26
クレアチニン(mg/dL) 2.2 2.6 4.7 2.4
血中ナトリウム(mEq/L) 143 143 143 145
血中カリウム(mEq/L) 5.4 5 5.2 4
血中クロール(mEq/L) 104 110 106 102
尿量(mL/日) 1250 2700
併用薬:ニフェジピン,塩酸テモカプリル,ベンズブロマロン,アロプリノール,一硝酸イソソルビド,テオフィリン,フロセミド,塩酸ジラゼプ,硝酸イソソルビド貼付剤,トリアゾラム,セフォペラゾンナトリウム

  

【3】 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

販売名(会社名) ティーエスワンカプセル20,同カプセル25(大鵬薬品工業)
薬効分類等 代謝拮抗剤
効能効果 胃癌,結腸・直腸癌,頭頸部癌

 

《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
[副作用
(重大な副作用)]
重篤な口内炎,消化管潰瘍,消化管出血,消化管穿孔:重篤な口内炎,消化管潰瘍,消化管出血,消化管穿孔があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,腹部X線等の必要な検査を行い,適切な処置を行うこと。
〈参   考〉 企業報告

 

症例の概要

NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
1
60代
進行胃癌
(脳梗塞,高血圧症)
120mg
9日間
胃穿孔
胃部症状,体重減少のため近医受診。貧血,CEA高値,上部消化管造影検査にて胃の病変を指摘。
投与23日前 GIFにて胃幽門部にType2の胃癌を指摘。
投与15日前 CTにて切除不能進行胃癌と診断。
投与開始日 本剤120mg投与+シスプラチン療法開始。
投与8日目 シスプラチン(110mg)投与。
投与9日目
(投与中止日)
午前中より左上腹部痛が出現。理学所見では,左上腹部に圧痛を認め,緊急CT検査を施行。CTにてfree airを認め,胃穿孔と診断。緊急手術施行。本剤投与中止。術中所見にて前庭部の胃癌の病変部(前壁側)に穿孔を認めた。
中止12日後 術後の経過は良好であり,胃穿孔は回復。
企業報告
臨床検査値
   投与
9日前
投与
6日前
投与
開始日
投与
7日目
投与9日目
(投与中止日)
中止
1日後
中止
11日後
白血球数(/mm3 5400 4400 5600 3200 8400 6200 3300
赤血球数(×104/mm3 373 398 337 295 309 368 281
ヘモグロビン(g/dL) 9.6 10.8 9.3 8.2 9.0 10.4 8.3
血小板数(×104/mm3 31.5 25.9 28.4 30.6 33.5 25.0 31.2
総蛋白(g/dL) 6.2 5.7 5.4 5.4 4.2 5.0
アルブミン(g/dL) 3.6 3.3 3.2 2.6 2.7
総ビリルビン(mg/dL) 0.6 0.5 0.6 1.0 1.3
直接ビリルビン(mg/dL) 0.1 0.1 0.1 0.4
AST(GOT)(IU/L) 14 12 12 16 17 35
ALT(GPT)(IU/L) 11 11 10 12 12 78
LDH(IU/L) 160 149 175 265 196 196
Al-P(IU/L) 218 198 168 168 132 532
γ-GTP(IU/L) 14 14 18 11 119
BUN(mg/dL) 11 11 8 17 12 9
クレアチニン(mg/dL) 0.6 0.6 0.6 0.5 0.5 0.6
血中尿酸(mg/dL) 3.5 3.5 2.4 1.8 1.6
総コレステロール(mg/dL) 155 145 113 89 113
中性脂肪(mg/dL) 67 60 53
空腹時血糖(mg/dL) 87 86 119 251 149 136
血清Na(mEq/L) 133 136 137 131 131 138
血清K(mEq/L) 4.2 4.1 4.6 3.4 3.9 4.1
血清Cl(mEq/L) 100 100 102 99 99 99
CRP(mg/dL) 0.3 7.3 3.1
併用薬:シスプラチン,酒石酸イフェンプロジル,塩酸ベニジピン,トロキシピド,トランドラプリル,トリアゾラム,D-マンニトール,塩酸ラモセトロン,エチゾラム,デキサメタゾン,メトクロプラミド

 

NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
2
60代
胃癌
(なし)
(1クール目)
120mg
14日間
 ↓
(2クール目)
120mg
28日間
 ↓
(併用療法
1クール目)
120mg
21日間
 ↓
(併用療法
2クール目)
120mg
12日間
胃穿孔
投与開始日 本剤120mg投与開始(1クール目)。
投与22日後 貧血発現。人赤血球濃厚液(1単位)輸血(2日間)。貧血は同日回復。
投与28日後 本剤120mg投与開始(2クール目)。
投与35日後 人赤血球濃厚液輸血。
投与70日後 本剤120mg併用療法投与開始(併用療法1クール目)。
投与78日後 シスプラチン100mg点滴静注投与。
投与112日後 本剤120mg併用療法投与開始(併用療法2クール目)。
投与120日後 入院にてシスプラチン100mg点滴静注投与。
投与124日後 退院(副作用なし)。
投与125日後
(投与中止日)
腹痛出現。他院受診し鎮痛剤を筋注するが軽快せず当院紹介。来院時,腹膜炎症状あり胃癌穿孔による腹膜炎の診断にて緊急手術(洗浄ドレナージ,胃瘻造設術)を施行(穿孔部位は胃癌の潰瘍底に一致していた)。CT:腹水多量。本剤投与中止。
中止3日後 人赤血球濃厚液輸血(2日間)。
中止45日後 退院。
中止130日後 死亡。
死因:胃癌,剖検:なし
企業報告
臨床検査値
   投与120日後 投与123日後 投与125日後 中止3日後 中止17日後 中止38日後
白血球数(/mm3 19200 26100 40300 31000 17400 17100
好塩基球(%) 0.7 0.4 0.1 0.1 0.5 0.5
好酸球(%) 2.1 0.3 0.2 1.4 3.3 2.3
好中球(%) 76.1 87.9 94.2 94.5 74.1 71.9
リンパ球(%) 17.3 10.3 4.7 3.3 16.9 22.4
単球(%) 3.8 1.3 0.8 0.7 5.2 2.9
赤血球数(×104/mm3 331 287 328 268 299 322
ヘモグロビン(g/dL) 9.2 8.1 9.2 7.4 8.5 9.1
ヘマトクリット(%) 28.9 24.6 28.2 23.0 26.2 28.0
MCV(FL) 87.3 85.7 86.0 85.8 87.6 87.0
血小板数(×104/mm3 50.5 47.3 46.2 27.2 55.9 25.1
総蛋白(g/dL) 6.5 4.8 4.5 5.9 6.6
総ビリルビン(mg/dL) 0.81 1.23 1.37 0.37 0.67
AST(GOT)(IU/L) 24 17 17 14 12 16
ALT(GPT)(IU/L) 10 10 8 7 5 4
LDH(IU/L) 447 420 365 285 235 281
Al-P(IU/L) 201 158 114 124 207 255
BUN(mg/dL) 9.0 16.6 36.9 21.7 15.4 13.5
クレアチニン(mg/dL) 1.13 1.18 1.67 1.15 0.71 0.97
CRP(mg/dL) ≦0.5 1.9 18.7 1.2
血清Na(mEq/L) 136 137 134 133 135 139
血清K(mEq/L) 4.4 3.7 3.8 3.6 4.3 4.0
血清Cl(mEq/L) 111 98 98 101 99 105
併用薬:シスプラチン

  

【4】 メルファラン(注射剤)

販売名(会社名) アルケラン静注用50mg(グラクソ・スミスクライン)
薬効分類等 アルキル化剤
効能効果 下記疾患における造血幹細胞移植時の前処置
 白血病,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫,小児固形腫瘍

 

《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
[副作用
(重大な副作用)]
ショック,アナフィラキシー様症状ショック,アナフィラキシー様症状があらわれることがあり,そのような症状に伴ってまれに心停止が起こることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
重篤な肝機能障害,黄疸:AST(GOT)・ALT(GPT)の上昇,ビリルビン値上昇,Al-P上昇,LDHの上昇等を伴う肝機能障害や黄疸,また,黄疸,急激な体重増加,有痛性の肝腫大等を伴う肝中心静脈閉塞(症)があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
〈参   考〉 企業報告

 

症例の概要

NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
1
40代
同胞末梢血幹細胞移植の前処置/多発性骨髄腫
(ネフローゼ症候群,慢性腎不全)
70mg/m2
2日間
肝中心静脈閉塞症(VOD),慢性腎不全の増悪,悪心,嘔吐,粘膜炎,皮疹
2回目の移植を行う患者。
投与3日前 同胞末梢血幹細胞移植の前処置としてリン酸フルダラビンの投与開始(4日間)。
投与開始日 本剤投与開始。
悪心,嘔吐が発現。
治療のため,メトクロプラミド,パモ酸ヒドロキシジン,塩酸グラニセトロン,消化性潰瘍治療薬を投与。
終了1日後 同胞末梢血幹細胞移植を実施。
終了6日後 粘膜炎が発現。
治療のため,消化性潰瘍治療薬,塩酸リドカイン(外用うがい液)を投与。
終了7日後 皮疹が発現。治療のため,ステロイド軟膏,亜鉛華軟膏を投与。
終了10日後 肝中心静脈閉塞症(腹水,体重増加,肝不全)が発現。
ウルソデオキシコール酸,イコサペント酸エチル,グリチルリチン・グリシン・システイン配合剤による肝庇護療法を実施。
終了11日後 悪心,嘔吐は軽快。
終了15日後 肝中心静脈閉塞症による二次性の心不全が発現。
治療のため,昇圧剤,利尿剤を投与。
終了19日後 慢性腎不全の増悪が発現。
治療のため,昇圧剤,利尿剤の投与。
終了21日後 肝中心静脈閉塞症のため死亡。
剖検:なし
企業報告
臨床検査値
   投与
4日前
投与
開始日
終了
2日目
終了
7日後
終了
12日後
終了
16日後
終了
21日後
AST(GOT)(IU/L) 24 96 84 60 17 6 156
ALT(GPT)(IU/L) 54 140 143 108 54 25 197
LDH(IU/L) 299 342 340 239 164 119 70
Al-P(IU/L) 534 591 587 634 563 293 428
BUN(mg/dL) 21 17 23 36 83 108 203
血清クレアチニン(mg/dL) 1.7 2.0 2.1 2.5 3.4 2.9 4.9
総ビリルビン(mg/dL) 0.5 0.6 0.5 0.9 4.8 6.5 17.6
CRP(mg/dL) 0.1 0.1 0.1 0.7 7.5 11.7 18.7
併用薬:リン酸フルダラビン,ファモチジン,スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤,フルコナゾール,レボフロキサシン,硫酸ポリミキシンB,ダルテパリンナトリウム,塩酸ドパミン,フロセミド,グリチルリチン・グリシン・システイン配合剤,塩酸グラニセトロン,アロプリノール,アシクロビル,幼牛血液抽出物,メナテトレノン,トランドラプリル,シクロスポリン,カンレノ酸カリウム,メトトレキサート,塩酸セフォゾプラン,フィルグラスチム(遺伝子組換え),人血清アルブミン,オメプラゾールナトリウム,プレドニゾロン,ウルソデオキシコール酸,イコサペント酸エチル,メロペネム三水和物,消化性潰瘍治療薬,塩酸ラニチジン

 

NO. 患者 1日投与量
投与期間
副作用 備考
性・
年齢
使用理由
(合併症)
経過及び処置
2
10代
未満
自家末梢血幹細胞移植の前処置/神経芽細胞腫
(薬剤性肝機能障害)
35mg
1日間
 ↓
30mg
2日間
肝中心静脈閉塞症(VOD),感染性発熱,口内炎
身長80cm,体重9.2kg
投与14日前 肝機能障害認める〔AST(GOT)70IU/L,ALT(GPT)43IU/L〕。
投与開始日 移植前処置として,本剤投与開始。
投与3日目 移植前処置として放射線全身照射(3Gy×2)を実施(2日間)。
終了2日後 自家末梢血幹細胞移植を実施。
終了5日後 感染性発熱が発現。
移植前よりアンピシリンの投与を行っていたが,38.9℃の発熱が出たため,メロペネム三水和物及びフルコナゾールに変更。
終了7日後 解熱しないことから(40.4℃),塩酸バンコマイシンの投与開始。
終了10日後 口内炎が発現。口内がかなり荒れており,粘膜の剥離も認められた。口内炎に対する治療は実施せず。
終了11日後 CRP15.2mg/dL。
終了12日後 口内びらん,口内出血を認めた。また,同日検査にて総ビリルビンが1.3mg/dLに上昇し,この頃から100g/日前後の体重増加を認め始めた。
終了14日後 白血球数の回復とともに解熱(感染性発熱は軽快)。
起炎菌,感染巣は,はっきりしなかった。
また,同日より口内炎の改善傾向が認められた。
肝を3横指触知。
終了15日後 肝中心静脈閉塞症が発現。
終了17日後 舌に白い部分もあるが,口唇はきれいになった。
終了18日後 口内炎は回復。腹水による腹満,体重増加,有痛性の肝腫大(3横指)が認めた。肝中心静脈閉塞症を疑い,アルプロスタジルアルファデクスの投与開始。
終了19日後 体重増加,腹満増強,尿量減少。肝中心静脈閉塞症の増悪と判断し,アルテプラーゼ(遺伝子組換え)の投与開始。
終了20日後 腹満,胸水貯留による呼吸困難が出現。
コハク酸プレドニゾロンナトリウム及び乾燥濃縮人アンチトロンビンIIIの投与も開始。
終了21日後 プロテインCの補充目的で新鮮凍結血漿の投与開始。
終了23日後 アルテプラーゼ(遺伝子組換え),乾燥濃縮人アンチトロンビンIIIは効果が認められなかったので,投与中止。呼吸困難が進行したため,腹部ドレナージを留置し,症状の軽減を図った。
終了24日後 肝は硬く,4横指触知。
終了25日後 腹部ドレナージの量及び体重は減少。プレドニゾロンの投与中止。その後も肝腫大は遷延し,硬く触知されたが軽減し,肝生検の施行は見送った。
終了36日後 肝中心静脈閉塞症は軽快(総ビリルビン1.2mg/dL)。
終了44日後 総ビリルビン0.8mg/dL。
企業報告
併用薬:硫酸ポリミキシンB,スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤,アムホテリシンB,ウルソデオキシコール酸,酢酸トコフェロール,アシクロビル,塩酸グラニセトロン,アンピシリンナトリウム・クロキサシリンナトリウム配合剤,ダルテパリンナトリウム,リン酸デキサメタゾンナトリウム,ペンタゾシン,ジアゼパム,チアミラールナトリウム,炭酸水素ナトリウム,乾燥スルホ化人免疫グロブリン,マレイン酸クロルフェニラミン,コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム,人ハプトグロビン,メロペネム三水和物,フルコナゾール,ナルトグラスチム(遺伝子組換え),塩酸バンコマイシン,メシル酸ナファモスタット,カンレノ酸カリウム,アセタゾラミドナトリウム,アルプロスタジルアルファデクス,アルテプラーゼ(遺伝子組換え),乾燥濃縮人アンチトロンビンIII,プレドニゾロン,パニペネム・ベタミプロン配合剤,ファモチジン,塩酸アマンタジン,ホスホマイシンナトリウム,イミペネム・シラスタチンナトリウム配合剤,耐性乳酸菌,ヘパリンナトリウム,グルタチオン,メフェナム酸,フロセミド,ミダゾラム,塩酸ヒドロキシジン,人血清アルブミン
 

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使用上の注意の改訂について(その157)

 前号(医薬品・医療用具等安全性情報 No.202)以降に改訂を指導した医薬品の使用上の注意(本号の「3 重要な副作用等に関する情報」で紹介したものを除く。)について,改訂内容,主な該当販売名,参考文献等をお知らせいたします。

 

1 〈精神神経用剤〉
塩酸ミルナシプラン
[販売名] トレドミン錠15,同錠25(旭化成ファーマ)
[副作用
(重大な副作用)]
肝機能障害,黄疸:AST(GOT),ALT(GPT),γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害,黄疸があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
〈参   考〉 企業報告

 

2 〈精神神経用剤〉
オランザピン
[販売名] ジプレキサ細粒1%,同錠2.5mg,同錠5mg,同錠10mg(日本イーライリリー)
[副作用
(重大な副作用)]
痙 攣:痙攣(強直間代性,部分発作,ミオクロヌス発作等)があらわれることがあるので,異常が認められた場合には,投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
横紋筋融解症:横紋筋融解症があらわれることがあるので,筋肉痛,脱力感,CK(CPK)上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇等が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。また,横紋筋融解症による急性腎不全の発症に注意すること。
〈参   考〉 企業報告

 

3 〈骨格筋弛緩剤〉
ダントロレンナトリウム(経口剤)
[販売名] ダントリウム25,同50(山之内製薬)
[副作用
(重大な副作用)]
胸膜炎:胸膜炎があらわれることがあるので,胸痛,胸水貯留等が認められた場合には観察を十分に行い,適切な処置を行うこと。
〈参   考〉 企業報告

 

4 〈自律神経剤〉
臭化ジスチグミン (経口剤)
[販売名] ウブレチド錠(鳥居薬品)他
[用法及び用量に関
連する使用上の注意]
コリン作動性クリーゼを防ぐため,医師の厳重な監督下のもとに通常成人1日5mgから投与を開始し,患者の状態を観察しながら症状により適宜増減すること(コリン作動性クリーゼは投与開始2週間以内での発現が多く報告されている)
なお,効果が認められない場合には,漫然と投与せず他の治療法を検討すること。
[重要な基本
的注意]
本剤による急性中毒症状として意識障害を伴うコリン作動性クリーゼがあらわれることがあるので,以下の点に注意すること。
 1)投与開始2週間以内での発現が多く報告されていることから,特に投与開始2週間以内は初期症状(徐脈,腹痛,下痢,発汗,唾液分泌過多,縮瞳,呼吸困難,血清コリンエステラーゼの低下,線維束れん縮等)の発現に注意すること。
 2)通常成人1日5mgから投与を開始し,患者の状態を観察しながら症状により適宜増減すること。
 3)患者に対し,腹痛,下痢,発汗,唾液分泌過多等の異常が認められた場合には,本剤の服用を中止し,速やかに医師等に相談するよう説明すること。
重症筋無力症患者で,ときに筋無力症状の重篤な悪化,呼吸困難,嚥下障害(クリーゼ)をみることがあるので,このような場合には,臨床症状でクリーゼを鑑別し,困難な場合には,塩化エドロホニウム2mgを静脈内投与し,クリーゼを鑑別し,次の処置を行うこと。
 1)コリン作動性クリーゼ:徐脈,腹痛,下痢,発汗,唾液分泌過多,縮瞳,呼吸困難,血清コリンエステラーゼの低下,線維束れん縮等の症状が認められた場合又は塩化エドロホニウムを投与したとき,症状が増悪又は不変の場合には,直ちに投与を中止し,硫酸アトロピン0.5~1mg(患者の症状に合わせて適宜増量)を静脈内投与する。さらに,必要に応じて人工呼吸又は気管切開等を行い気道を確保する。
 2)筋無力性クリーゼ:呼吸困難,唾液排出困難,チアノーゼ,全身の脱力等の症状が認められた場合又は塩化エドロホニウムを投与したとき,症状の改善が認められた場合は本剤の投与量を増加する。
手術後及び神経因性膀胱などの低緊張性膀胱による排尿困難の患者で,本剤による急性中毒として意識障害を伴うコリン作動性クリーゼ(初期症状:徐脈,腹痛,下痢,発汗,唾液分泌過多,縮瞳,呼吸困難,血清コリンエステラーゼの低下,線維束れん縮等)があらわれることがある。このような場合には,直ちに投与を中止し,硫酸アトロピン0.5~1mg(患者の症状に合わせて適宜増量)を静脈内投与する。さらに,必要に応じて人工呼吸又は気管切開等を行い気道を確保する。
[副作用
(重大な副作用)]
コリン作動性クリーゼ:本剤による急性中毒症状として意識障害を伴うコリン作動性クリーゼ(初期症状:徐脈,腹痛,下痢,発汗,唾液分泌過多,縮瞳,呼吸困難,血清コリンエステラーゼの低下,線維束れん縮等)があらわれることがある。このような場合には,直ちに投与を中止し,硫酸アトロピン0.5~1mg(患者の症状に合わせて適宜増量)を静脈内投与する。さらに,必要に応じて人工呼吸又は気管切開等を行い気道を確保すること(コリン作動性クリーゼは投与開始2週間以内での発現が多く報告されている)
[高齢者への投与] 高齢者では,肝・腎機能が低下していることが多く,体重が少ない傾向があるなど副作用が発現しやすいので,1日5mgから投与を開始し,特に投与開始2週間以内はコリン作動性クリーゼの初期症状の発現に注意し,慎重に投与すること。
[過量投与] 徴候・症状:本剤の過量投与により,意識障害を伴うコリン作動性クリーゼ(初期症状:徐脈,腹痛,下痢,発汗,唾液分泌過多,縮瞳,呼吸困難,血清コリンエステラーゼの低下,線維束れん縮等)があらわれることがある。
処 置:直ちに投与を中止し,硫酸アトロピン0.5~1mg(患者の症状に合わせて適宜増量)を静脈内投与する。さらに,必要に応じて人工呼吸又は気管切開等を行い気道を確保すること。
〈参   考〉 企業報告

 

5 〈アルキル化剤〉
メルファラン (経口剤)
[販売名] アルケラン錠(グラクソ・スミスクライン)
[禁忌]
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
[用法・用量に関連
する使用上の注意]
腎障害のある患者では本剤のクリアランスが低下し,本剤による副作用が増強するおそれがあるので,投与量が過多にならないよう考慮すること。
[慎重投与] 腎機能障害のある患者
[副作用
(重大な副作用)]
ショック,アナフィラキシー様症状:ショック,アナフィラキシー様症状があらわれることがあり,そのような症状に伴ってまれに心停止が起こることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
溶血性貧血:溶血性貧血があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
〈参   考〉 企業報告

 

6 〈抗ウイルス剤〉
ラミブジン(100mg)
[販売名] ゼフィックス錠100(グラクソ・スミスクライン)
[副作用
(重大な副作用)]
血小板減少があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
〈参   考〉 企業報告

 

7 〈あへんアルカロイド系麻薬〉
塩酸オキシコドン
[販売名] オキシコンチン錠5mg,同錠10mg,同錠20mg,同錠40mg(塩野義製薬)
[慎重投与] 心機能障害あるいは低血圧のある患者
薬物・アルコール依存又はその既往歴のある患者
薬物,アルコール等による精神障害のある患者
〈参   考〉 企業報告
 

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お知らせ

この医薬品・医療用具等安全性情報は,厚生労働省において収集された副作用情報をもとに,医薬品・医療用具等のより安全な使用に役立てていただくために,医療関係者に対して情報提供されるものです。

医薬品・医療用具等安全性情報は,医薬品医療機器情報提供ホームページ(https://www.pmda.go.jp/)又は厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)からも入手可能です。

また,NTTのファクシミリ通信網サービス「Fネット」を通じ,最近1年間の「医薬品・医療用具等安全性情報」がお手元のファクシミリから随時入手できます(利用者負担)。

「Fネット」への加入等についての問い合わせ先:0120-161-011