独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

平成24年度 第4回医薬品・医療機器安全使用対策検討結果報告(医薬品関連事例) 別添3

本文別添1別添2|別添3|別添4

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(医療事故)

No 事故の
程度
販売名等 製造販売
業者等
事故の内容 事故の背景要因の概要 改善策 調査結果
1 障害なし エスラックス静注バイアル50mg/5ml MSD株式会社 患者は体重約 1kg であり、エスラックス(原液は 10mg/ml の溶解液 5ml/バイアル)を至適量投与するためには通常希釈して使用することが望ましいとなっている。しかし、準備する際に希釈するのを忘れて、原液を投与してしまった。結果として想定投与量の 10倍量が投与され、手術終了時に筋弛緩効果が残存し、自発呼吸ができない状態であった。麻酔科指導医も希釈しているものと思い込み、交代の際に原液を投与した。しかし、手術終了前に指導医が原液であることに気付いたため、担当科である NICU の医師に説明し、NICU に帰室後は、筋弛緩薬の効果が消失するまで人工呼吸管理を行なった。当日夜から 翌朝にかけて体動が認められたが、患者は慢性肺疾患を合併していたため、人工呼吸管理を継続した。 2日後の朝、無事抜管し、抜管後の患者の全身状態は良好である。 エスラックスを希釈するのを忘れていた。指導医も担当医が希釈したと思い込み、原液を投与してしまった。小児麻酔では、必要とする薬剤量が少ないため、原液を希釈あるいは一回投与量を分注して準備し、指導医と担当麻酔医2人でダブルチェックすることが通例とはなっている。今回も一回量は準備されていたが、この内容を確認する明確な取り決めがなく、ダブルチェックをしていなかった。 患者が小児の場合、当科で新たに作成する薬剤希釈表にしたがって各薬剤の希釈方法と一回投与量をあらかじめ計算して用紙に記入する。開始前に指導医と担当麻酔医が10倍希釈した薬剤を50mLのシリンジに準備し、その50mLのシリンジから一回投与量をシリンジ(1ml、2ml、10mL)に分注して、患者入室前の準備を完成させる。指導医もその準備を確認した上で、用紙にサインする。 心理的状況(慌てていた・思い込み等)
2 不明:事故が直接原因ではないが、結果的に死亡に至った。 デノシン点滴静注用500mg 田辺三菱製薬 18:30頃 医師Bがganciclovirの用量について、医師Eに電話で相談。添付文書あるいは抗菌薬に関するガイドブックの推奨量の通りでよいとのこと。5mg/kgで12時間毎静注との記載。医師A,Bの2人で確認。
18:55頃 医師Aがganciclovir(デノシン)の注射を指示。一回量250mgが適正な用量であったが、医師Aは暗算で計算を行い、オーダーに直接入力したので、計算間違いに気付かないまま2500mgと入力。デノシン点滴静注用500mgが5バイアル+生理食塩水100mLのオーダーとなった。
19:00過 看護師Dが注射カレンダーを見ながら「デノシン500mg 」5Vを物流請求。
21:00過 看護師Cが薬剤部に受け取りに行き、病棟に戻り「デノシン500mg」5Vと生理食塩水100mLを混合した。その際、容易に5Vを溶解することができた。
21:30頃 看護師Cが点滴静注を開始。その後残75mLのところで滴下が止まっているのを看護師Dが発見。確認すると、ラインと側管の接続付近に結晶の析出を認めたため、デノシンとメインの点滴(ビーフリード)の配合変化だと思った。その後、ライン交換し、残りを点滴投与し、全量投与できたため医師には報告しなかった。
翌日
0:30頃 当直薬剤師より、デノシンについて病棟へ3回電話があった。1回目は、デノシンがすでに5V払い出してしまったため、翌日分はない、2回目は、翌日分が確保できそうなので、デノシンを払い出すことが可能となった、3回目は、デノシンが過量投与されている可能性があり、指示量を検討するため明日の分は交付できない、という内容であった。
電話を受けた看護師は、患者の「翌日分の処方の在庫がない」という連絡だと思い、すでに過剰投与しているという連絡だとは思わず、医師に伝えなかった。また、既に初回投与終了していた。
3:30頃 医師Bは当直だったのでが病棟に顔を出した際に薬剤部からの電話の内容を聞き、再度デノシンの投与量について確認したところ、過量投与が発覚した。医師Bが担当看護師にバイタルサインの測定および一般状態の観察、翌朝の採血を指示。その後発熱は見られたがクーリングにて対応。その他明らかな変化は認めなかった。翌日の採血でも状態の明らかな変化を疑う所見は認めなかった。
【ganciclovirの投与の必要性について】
原因不明の意識障害が出現し、精査の結果髄膜炎やその他の中枢神経感染症が否定できない状態であった。結果的にサイトメガロウイルス感染は否定的となったが、その時点での重症度を考慮すれば十分なコンサルトをした上での使用は妥当であったと考える。
【過量投与の原因について】
ganciclovirの使用を決めた時点で準夜帯に入っており、医師・看護師とも人手が少なかった。その上で、普段使い慣れない薬剤の使用に際し投与量や方法の確認が十分ではなかった可能性がある。医師同士ならびに医師看護師間で確認を十分に行うことが必要であったと考える。
【背景】
グループの医師は4人であったが、当日一名は出張、一名は夏期休暇であった。加えて、他の入院患者の急変などにより連日夜間までの業務が続いたこともあり、繁忙による疲労があったことは否めない。
  • 医師A、Bは、抗CMV IgM抗体陽性という検査結果のみから、感染管理室医師Cに治療方針を相談し、耳鼻咽喉・頭頸部外科チームリーダーへの報告や指示を仰ぐことなく、夜間にデノシンの投与を決めた。
  • 時間外当日のオーダーは薬剤部で処方受付・調剤をしないことになっており、指示(注射カレンダー)を確認した看護師が病棟単位で払いだされる物流請求で薬剤を入手するため、処方鑑査がない。
  • 物流請求の薬剤は、薬剤師が準備して薬品交付棚に置き、看護師は交付棚を開けて置いてある薬剤を取り出すため、薬剤師と看護師が顔を合わせることはない。
  • 看護師は、デノシンなど初めて使う薬剤については、主治医に副作用や観察の注意点を確認することになっていたが、業務が繁忙で出来なかった。当該病棟は耳鼻咽喉・頭頸部外科単独病棟であり、医師と看護師のコミュニケーションに問題はなかった。
  • 各病棟に「薬剤関連事故の対応」を配布しており、『注射薬を混合した際の混濁または沈殿が現れた場合は、混濁または沈殿が現れた注射薬を破棄し、配合変化について薬剤部に問合せを行う。』と記載されているが、周知できていなかったため、看護師は薬剤部へは相談しなかった。
  • 薬剤師は、当該患者の翌日分の個人処方を調剤していてデノシンが足りなくなり、物流請求で払い出したデノシンが過剰投与されているのではないかと気づいたが、そのことを看護師だけに伝え、医師には連絡していなかった。
  • 当事者の医師A、Bは職場経験が3~5ヶ月と浅いが、該当科内での他の医師との意思伝達は問題なかった。
  • 医師A、Bはデノシンが毒薬であるとの認識が薄かった可能性がある。
  • 筋弛緩剤のみ管理方法(患者名の記載や空アンプルの保管など)が決まっており、毒薬の管理について取り決めはない。また、物流請求で夜間でも毒薬の払い出しが可能な状態にある。
  • 夜間の薬剤師は2名の当直で、当日22時までに入力された翌日使用分の処方の調剤(鑑査を含む)を行っている。
医師による指示の確認は、できるだけ複数人で行うことが望ましい。とりわけ普段使い慣れない薬剤を使用するときなどは、十分な専門家のコンサルテーションを仰いだ上で複数人の医師で指示出しをする必要があると考える。また、伝達の際も医師と看護師が書面上だけでなく口頭でも確認することが重要である。
また、重要な薬剤が処方されたとき夜間は必ず当直薬剤師のチェックを通るようなシステム、あるいは通常の用量用法と大きく異なる処方をオーダー時に警告するようなシステムの構築が、リスクマネージメントの観点からは必要と思われた。
  1. システム
  • 毒薬は、抗がん剤に準じた、処方制限量、アラート表示をするシステムに改善できるか検討する。

  • 可能であれば毒薬や危険薬は物流請求ではなく、個人処方による調剤に変更できるか検討する。

  • 添付文書が容易に閲覧できるシステムに改善した。

  1. 医師への教育
  • はじめて処方する薬剤は、少なくとも添付文書を熟読してから処方するよう周知する。

  • 単純ミスを起こさないよう個々人が方策を考えるため、本事例を共有する。

  • 指示受け、与薬する看護師に、薬剤の副作用、危険性について説明し、観察の注意点について指示すべきことを医療安全推進室がRMを通じて周知させる。

  1. 看護師への教育
  • 看護師が調製、投与する薬剤については、看護師がその副作用や危険性について基本的な事項を理解すべきであるが、単純ミスを犯さないように、個々が責任を自覚する。

  • 夜勤の業務多忙の中で発生しており、夜勤体制の見直しが必要である。

確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
3 障害残存の可能性がある(低い) ヒューマリンR注100単位/10mL 日本イーライリリー 肺癌に対し左肺下葉切除を行った。DMがあり術前よりインスリンにてコントロールしていた。翌日より経口摂取開始し,インスリンはヒューマリンRを持続注入し,血糖値によるスケールに応じて増減していた。
その日の20:00の血糖が314mg/dLであった為,スケールに従いヒューマリンR1.2単位/hに増量した。その後再検せず,翌6:45検温時に意識レベルが300に低下しているのを発見し,当直医に連絡。血糖は測定域以下となり測定できず,発汗を認めた。6:50に大塚糖液50%20mlを静注し,血糖99mg/dLとなったが意識レベルは戻らず。再度大塚糖液50%20mlを静注し,血糖210mg/dLとなったが意識レベル戻らなかった。その為,さらに大塚糖液50%20mlの静注を2回施行した。その後も意識レベルの変化がない為,8:30頭部CTを撮影。CT上は出血や梗塞の所見はなく,低血糖昏睡と診断し治療開始した。16:00(発見後9時間)まで血糖は200前後で経過したが,意識レベルは変わらなかった。
その後、神経内科と第三内科に相談し、ステロイドとグリセオール投与にて治療を開始した。
持続でインスリン投与中であったが,医師の指示は一日6検であり,食事を開始していた為,食前と食後2時間で測定していた。当事者は患者の夕食後20:00の血糖が314mg/dlであった為,インスリンの流量を増量した。インスリン流量変動後の血糖再検の指示がなかった為,測定しなかった。22:00には患者と会話をしているが,その後は入眠している様子であったため,夜間のラウンド時は点滴や尿量の確認のみ行っていた。声を掛けることはしておらず,意識レベルの低下には気付かなかった。持続インスリンを増量する事による影響が考えられておらず,医師の指示のまま測定しなかった。
医師は昼食2時間後の血糖値でインスリンの流量を変更していることを,経過表で確認した。食後は血糖が上昇することは当然であるため,インスリンの指示を変更する必要があると考え,翌朝からの指示変更をした。医師は看護師に指示変更の意図や,指示変更したことについて,指示簿指示を見ればわかるだろうと思い直接言葉では伝えなかった。
持続インスリン投与時は開始時や流量変更時は2時間毎に血糖測定を行う。また血糖が安定してからも4~6時間毎には血糖測定を行う。
夜間でも血糖測定時などには声をかけて意識状態を確認する。
DMやインスリン使用についての知識を深める。
指示内容は担当医師チーム内でも共有する。
医師は指示の変更をする場合,理由も含めて看護師に直接伝える。
判断に誤りがあった

連携
4 障害残存の可能性なし 10%塩化ナトリウム液 不明 患者に中心静脈栄養を開始する際に,組成内のNaを4ml投与する入力を80ml投与する指示をした。指示した医師は誤りに気づいて修正したが,それが看護師に伝わっておらず,当初のまま点滴をしてしまった。 電子カルテの注射登録時の単位をmlとA(アンプル)を誤って入力したため,投与前に誤りに気づき指示を変更したが,口答指示ができておらず,電子カルテ上の指示は修正したが,修正前の指示で投与されてしまった。 電子カルテ入力時の確認と入力ミスした際に修正した後で看護師に口答指示を十分行う。 確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
5 障害なし ナウゼリン坐剤10 協和発酵キリン
  1. 薬剤師Aはその日は17:15~8:30までの勤務であった。
  2. 18時頃より徐々に外来調剤が増え、20時には約10分に1件のペースで処方が出ていた。外来処方箋が発行された時に調剤を行い、患者が取りに来るまでに対応しながら、緊急注射、定期注射の調剤を行ったり、病棟からの問い合わせの対応をしたりした。
  3. 20時20分頃、散剤を含む処方箋(患児B)が発行され、散剤の分包機を始動させている間に、次の処方箋(患児C)が発行され坐薬の調剤を行った。
  4. 坐薬の調剤(患児C)を行い、検薬準備をして監査台に置いた。
  5. 事務当直より会計が終了した患者が今から薬剤を取りに来るという連絡をほぼ同時に2件受けた。⇒散剤の患者(患児B)と坐薬の患児(患児C)
  6. 調剤した薬剤と処方箋の確認を行った。(検薬)
  7. 患児(患児C)の母親が薬剤科に来られ、処方された薬剤を薬袋から出して実際に見せながら坐薬の使用方法、効能等について説明した。(ナウゼリン坐薬30mgとアルピニー坐薬100mgを渡した)
  8. 20:50、別患児(患児D)の調剤時に、先ほど調剤した患児(患児C)の坐薬が同じ規格の指示なのに、薬剤の外装の色と違うことに気が付き、誤調剤を疑い自宅に電話連絡した。
  9. 渡した薬剤を調べてもらうとナウゼリン坐薬が30mgであったこと、既に患児Cにナウゼリン坐薬を1剤使用し、過量投与された後であることが判った。
  10. 10.21:00、薬剤師Aは外来担当医に報告し、そのまま経過観察し症状が悪化すれば連絡するように家族に説明することを、指示された。
  11. 薬剤師Aは外来担当医師、夜勤看護師長に対応を依頼したが救急外来が多忙なため、薬剤師が対応することになった。
  12. 21:05、薬剤師Aは再度自宅に連絡し、考えられる副作用の説明を行ったが、家族より入院して経過をみたいと希望があった。
  13. 薬剤師Aは外来担当医師に家族の希望について報告し、患児Cは経過観察のため入院となった。
  14. 薬剤師Aは上司(副薬剤科長)に報告した。
  1. 調剤時に薬品棚の表示をよく確認できていなかった。
  2. 1薬剤に対し複数規格があるものが68品目(内服52、外用16)あり、分かりにくい
  3. 同時に複数患者の調剤を行っている。
  4. 処方箋と調剤薬の5Rの確認が行われていない。思い込みで検薬を行っている。
    ※5Rとは、正しい患者か(Right Patient)正しい薬剤か(Right Drug)正しい量か (Right Dose)正しい方法か(Right Route)正しい時間か(Right Time)
  5. 夜間休日体制の時間帯であるため、自己検薬となってしまう。
  6. ナウゼリン坐薬を患者に渡す時に調剤薬を確認せず、使用法のみを説明して渡している。
  7. 事故発見時の初期対応を薬剤師が1人で行っている。その後の対応も、救急外来が多忙なため、薬剤師が(医師と相談しながら)対応した。
  1. 日常から注意、確認する習慣をつけることを目的に、院内で採用されている薬剤で成分量が二規格以上ある薬剤(68品目)については、規格数字を調剤者、検薬者が赤丸で囲むことにした。
    また、年齢を意識するように処方箋の年齢にレ点チェックをすることとした。
  2. 調剤時に注意をする薬剤(薬剤の薬形が似ているもの、通常時間内にダブルチェックにてミスが指摘されたことのある薬剤)については、処方箋の薬剤名に★印を記載した。
  3. 薬剤棚に二種類以上の規格がある製剤については、別規格ありのシールを貼りつけた。特にナウゼリン坐薬の棚については、薬剤名表示の規格を大きくし、写真を貼附し確認を容易とした。
  4. ナウゼリン坐薬をオーダーした場合は、処方箋の薬剤名の後ろに『(3歳未満確認)』が出力されるようにした。
  5. 窓口で薬を渡す時に、患者と薬剤師で処方箋と調剤薬の確認を行い、薬を渡すことを徹底するとともに、確認する内容を表示しわかりやすくする。
  6. お薬説明書で印字された、写真および処方箋と薬剤を患者と共に確認する。
  7. 自己検薬の方法は内規に記してあるが再周知した。
  8. 事故発生時の報告体制の見直し。
確認が不十分であった
6 障害残存の可能性がある(低い) トリパンブルー試薬 不明 染色に用いるトリパンブルーを同色の染色液であるピオクタニンと間違えて投与したため、角膜実質含め全層が青色に染まってしまった。手術の継続が困難であり、手術中止となった。
手術共通台の上にトリパンブルーのシリンジとピオクタニンの瓶が隣り合って並べてあり、トリパンブルーのシリンジは空であった。担当医はトリパンブルーのつもりでピオクタニンを吸った。術者は担当医が用意したピオクタニンを眼内に注射した。
清潔野の台の上に類似色の2剤を置いていた。ピオクタニンは薬剤部で製剤し小瓶に入れ滅菌しているが、滅菌袋に薬剤名が添付されている。袋から清潔野に出した時には小瓶に薬剤名は記載がないため、準備投与時に薬剤名確認をせず、色の記憶で準備した。 ピオクタニンと取り違えの可能性があるトリパンブルーの使用を中止し、代替品を申請した。代替品はアンプル分注されており、薬剤取り違えのリスクを低減する。 確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
7 死亡 プレドニン錠5mg 塩野義製薬 当日、受診され、前回と同じ処方内容(プレドニン30mg/日)の処方箋を発行すべきところ、処方すること自体を忘れたが、担当医はそれに気付かず、処方箋が発行されていると思い込んでいた。患者も処方箋がないことに疑問を感じたが、服用しなくてもよいと理解して薬剤が無くなった時点で中止した。薬が切れた4日後頃から息苦しさが増強し、再度受診。来院時SpO2:74%で下顎呼吸を呈し、酸素マスク下3L/分で96%で、胸部レントゲン写真・胸部CTで問質性陰影の増悪を認め緊急入院となった。この時点で担当は、処方箋が発行されず患者はステロイドを服用していなかったことが発覚した。
入院後、ソル・メドロール1000mg/日X3日間によるステロイドパルス療法ならびに抗菌薬・抗真菌薬の投与を行ったたが、呼吸困難は更に増悪し、更に塩酸モルヒネを追加した。患者家族は蘇生処置を希望されず、その後死亡された。
  • 処方箋を発行する際、処方箋への押印は処方医本人が押印することになっているが、押印を看護師に任せており、処方箋が発行されていないことに気付けなかった可能性がある。一般的に診察は患者と医師の2名で行われるため、今回の事例のように医師が処方し忘れた場合、患者が処方箋のないことを申告しなければそのまま発行されないケースが発生する。
  • 処方すべき処方は、プレドニンとその副作用予防の薬剤の2剤のみであり、仮に、処方箋が発行され幾つかの処方のうちプレドニンのみが忘れられていたなら、院外薬局から疑義照会があった可能性がある。
  • 患者に対し、プレドニンの中止による基礎疾患の憎悪や離脱症候群による容態悪化についての説明を口頭で行っているが、薬剤の継続説明や投薬したことの確認(処方箋あり)が不十分であった。
  • 処方箋の押印は必ず医師本人が行うように徹底する。
  • 投薬したことを患者へ口頭にて説明すると同時に、患者とダブルチェックを行うよう習慣づける。
  • 診察室の医師および患者に見える場所に、「処方箋はもらいましたか。」「次回診察日は正しく予約されていますか。」などのポスターを掲示し患者参加型でWチェックできる環境作りを行う。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
8 障害なし - - 9時15分頃,A医師より抗生剤を変更しました,お願いします,と注射指示箋を手渡された。指示内容は点滴静注用バンコマイシン125mg生理食塩水5mlを1時間で実施するものであった。復唱しないで受け取り,注射薬を常置薬の場所から乳児処置室のミキシングのトイレに置いた。この時点で注射指示箋の注射薬品名(バンコマイシン)のみ確認していた。10時の実施の指示であったため,日勤の業務を開始した。9時45分頃から4人の患児のバイタルサインを測定し,1人ずつ保清にとりかかっていると10時を少し過ぎていたことに気が付き,慌ててバンコマイシン注射を作成した。点滴静注用という認識はなく,抗生剤のバンコマイシンという認識であった。また,心臓グループの注射指示で,24時間持続で実施している注射薬以外の側管注の指示はワンショット静注がほとんどであったため,ワンショット静注という思い込みがあり,ミキシングするにあたり注射指示箋を5Rに沿って確認しなかった。
5mlの注射筒にバンコマイシンを1ml(100mg)吸った。次に1mlの注射筒で0.25ml(25mg)吸って5mlの注射筒に入れた。この時点で5mlの注射筒に1.25ml(125mg)のバンコマイシンが入った。その次に生理食塩水を3.75ml吸って全量5mlにした。ラベルは手書きで,日時と患者名,薬品名と投与量,溶解液と総量を記入した。10時15分,注射指示箋の日時と患者名,薬剤名と量のみ確認し,ワンショット静注した。その薬10分後,顔面紅潮していることに気が付いた。全身を見ると全身も著明に紅潮していた。すぐバイタルサインを測定した。Bp40/20mmHg,HR140回/分,SPO2 70%まで低下していた。通常Bp110/60mmHg,SPO2 80%位である。直ちに状態を報告し,B医師が診察した。B医師から注射が何時に施行されたか等の質問を受け,注射指示箋を見返してみると流量が5ml/時と書かれていたことにこの時点で気が付き,ワンショット静注したことを直ちに報告した。10時30分頃,指示で点滴ルートを新しいものに交換し,B医師がデキサート3.3mg/1mlを1A静注した。その後もなかなか血圧が回復しないため,持続注入していたカテコラミンを3.5γから10γに増量した。またSpO2も不安定であったため,呼吸器のFi02を75%から100%へ変更した。13時頃より血圧が上昇してきた。16時頃になり,70/30mmHg台まで上昇がみられ,SPO2も80%台で安定してきた。全身の紅潮も消失した。
  1. 注射の指示受けから実施までのプロセスで確認事項がすべて不適切であった。
     ・指示変更を受けた時,指示内容の復唱確認をしなかった。
     ・注射薬を準備した時,ラベルを手書きする時,注射薬をミキシングする時,実施する時に注射指示箋を5Rで確認しなかった。
  2. 投与方法(流量・時間)を確認しなかったため,5mlの注射筒に準備し,ワンショットであるとの思い込みがあった。
  3. 点滴静注用バンコマイシンは,希釈して1時間以上かけて実施する薬剤であるという正しい知識が欠けていた。
  4. 注射実施の時間が過ぎて慌てていた。
  5. 土曜日は看護師が2人体制である。10時はバイタルサインを測定し終わり,保清や授乳に取りかかるなど業務が集中する時間帯である。
  1. 実施直前の確認は必ず注射指示箋の5Rを指でなぞって行う。
      ミキシング台の正面に上記文面を貼って注意喚起する。
  2. 薬剤に関する知識を身につける。(治療マニュアルから点滴静注用バンコマイシンの添付文書をスタッフ連絡ノートに添付し,スタッフ全員に注意喚起を促す。)
  3. 要注意薬剤のリストを薬剤部から取り寄せ,申し送り時にスタッフに周知する。
  4. 申し送り後,スタッフで業務連絡を行い,注射業務を行う時はお互いに声をかけて注射業務に集中できるようにする。
  5. 当日のリーダーは患児の状態を把握してチーム間の業務調整をし,積極的に声掛けする。
  6. 当事者には,指示受けや注射実施時の確認について乳児室リーダーから実地で指導を行った。
  7. 土・日・祝祭日の業務の改善を図る。
    患者全体の安全を確保するために,拘束時間を要する重症患者の保清はベッドバスから清拭に変更する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
9 障害残存の可能性がある(高い) ワーファリン1mg エーザイ その後、21時すぎ、突然言葉が出ない、右上肢麻痺、唾液が垂れるなどの症状が出現し救急外来受診。
左前頭葉に新鮮脳梗塞あり、入院加療となった。ラジカット・アクチバシン開始。
9日の診察の際、心不全原因の徐脈に気をとられジゴキシンを中止としたが、誤って同じRpにあるワーファリン
まで削除になったことに気付かなかった。(「Rp毎削除」を選択した)
処方後の確認(プリントアウトした後や記録画面)をしていない。
院外薬局では「心拍数の低下があると言われ中止となった」と患者が話しており、薬剤師の疑義照会はなかった。
元々4.5mg服用している患者であるが、急に中止になることはあり得ず、“4.5mg”の重要性理解ができていなかった。
患者も「ワーファリンも飲まなくていい」と思っていた。
ワーファリン処方時は必ず1Rpの単独処方を行う。
処方後の確認を必ず実施。(プリントした処方箋や画面)
院外薬局へ情報公開を行い、再発防止策、薬剤師教育を依頼
確認が不十分であった
10 障害残存の可能性なし バレリン水薬 大日本住友製薬 抗けいれん薬再開の指示を担当者が見落とし2日間与薬されていなかった。 電子カルテ導入し指示の記載方法が2通りとなっているため、指示の見落としとなる可能性がある。 病院として統一した指示の記載形式とする検討を行っている。 確認が不十分であった
11 障害なし ノボラピットフレックスペン ノルディスク ファーマ 持参薬のインスリン注射(ノボラピッドフレックスペン)の使用期限が2切れていたが気づかず使用した。入院後は持参薬を看護師が預かり、投与していた。 使用期限を確認しなかった。 持参薬剤の使用期限を確認する 確認が不十分であった
12 障害残存の可能性なし ミオコール アステラス製薬 血圧下降時の指示がミオコール減量だったが、下血のために血圧下降あり。指示を確認しないままミオコール増量と思いこんで2時間で5mlの増量を行った。 指示内容を最後まで確認せず、思いこみでミオコールを増量した。 指さし呼称と看護師2名での確認の徹底。 確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
13 障害残存の可能性なし ロキソニン 第一三共 翌月お昼に個人購入した市販の胃薬(アバロンS)とロキソニンを内服したところ、気分が悪くなり、嘔吐、下痢があり、息苦しくなった。また、下肢に皮疹がでて痒くなったため来院。来院時、SPO2 84脈拍120/分、顔面紅潮、足首から末梢に皮疹があり、球結膜の充血、吸気時に喘鳴があった。気管支喘息発作、および薬剤アレルギーを疑い、酸素投与(マスクO2 3Lから 5L)、ソルコーテフ100mg、ネオフィリン250mg投与にて、呼吸苦、気分不良は改善傾向であったが、薬疹は上肢にも出現してきたため、経過観察が必要と考えられ入院。経過観察し、症状消退したため2日後に退院。 入院歴のある患者で、アスピリン喘息の既往がカルテに記載されていたが、処方する際、医師は確認しなかった。 薬剤アレルギーの既往がある場合は、疑いも含めてカルテに記載する。処方時は患者への問診と共に、患者プロファイルや入院サマリーなどを必ず確認する 確認が不十分であった
14 障害残存の可能性がある(低い) レミナロン注射用100mg シオノギ製薬 入院時全身状態不良であり、血管確保も困難な状態であった。レミナロン持続点滴(レミナロン注射用500mg、ブドウ糖注射液5% 250ml、24時間で滴下) のため、左手背にて血管確保し点滴実施していた。血管外漏出直後は冷罨法とステロイド軟こうの塗布を行った。その後、経過を追っての観察が不十分で、潰瘍化見られた。漏出から1週間後、主治医の指示で被覆材(ハイドロサイトADジェントル)にて経過をみていてが、皮膚の乾燥が激しく、患者が被覆材をはがしてしまうこともあった。漏出から1か月後、乾燥強く、デュオアクティブET貼布していたが、これもはがすことがあった。漏出から40日程経過した頃壊死組織へと変化していった。 直後は観察を行っているが、その後の皮膚の変化を客観的に正しく評価できておらず、皮膚科へのコンサルトもなく、当該部署だけで対応していた。 マニュアルの血管外漏出時の対応の項目で、必ず、速やかに皮膚科への相談を行うことを追加した。また、血管確保の部位も確実な点滴ができるか、薬剤によっては主治医とも十分に検討することを追加した。医療安全情報No.33「ガベキサートメシル酸塩使用時の血管外漏出」を院内メールで配信、印刷しての病棟への配布、同時に看護師長会議や医療安全の委員会での周知を行っている。 観察が不十分であった

判断に誤りがあった
15 障害残存の可能性なし ワーファリン エーザイ ワーファリンの内服が継続されていたため、手術前にK2投与して手術は実施された。 当院は薬剤管理が薬剤師の範囲ではなく、看護師に任されている。薬剤管理が不十分となった。又医師も循環器内科から心臓血管外科へと移行時で、連携が不十分だった。 薬剤師への薬剤管理を依頼したが、人員不足のため確実ではないが、協力をする事になった。 確認が不十分であった

連携
16 障害残存の可能性なし ボスミン外用液0.1% 第一三共株式会社 患者は、人工骨頭挿入術施行のため、皮膚切開前に20万倍ボスミン(1%キシロカインE2倍希釈)を切開部周囲に局注予定であった。執刀医は「20万倍ボスミン」を準備するように指示を出したが、器械出し看護師、外回り看護師はどちらも外用の塗布用ボスミンを使用するものと思い込み、外用ボスミン液20ml+生理食塩水20ml(2000倍ボスミン液)を作成した。皮膚切開前に執刀医から「ボスミンください」と指示をされて、通常外用で使用する方法であるガーゼに浸した形で渡したが、執刀医から「これじゃなく注射で」と言われたため、2000倍に希釈した塗布用ボスミン液をシリンジに20ml吸い、カテラン針をつけて執刀医に渡した。
執刀医は指示した20万倍ボスミン液であると信じ、そのまま15mlを局注した。局注後まもなく患者のHRが100台まで上昇し、約40分後から突然250/140の異常高血圧が出現した。降圧剤の投与や麻酔深度の調整を行い、40分程度で高血圧、頻脈は落ち着いた。手術終了後、原因検索をしているときにボスミン過剰投与の可能性を疑い、当事者に確認したところ、100倍量のボスミン過剰投与が判明した。その後、脳出血や肺水腫の検索のため、CTを施行したが明らかな異常所見はなく、麻酔からの覚醒も良好であった。循環作動薬使用中であったため、全身管理目的でICU入室となった。
薬剤調剤時の確認不足。医師の指示の確認不足。術野においてアドレナリン製剤を多様に使用すること。〈局注〉20万倍ボスミン:1%キシロカインEを2倍希釈。40万倍ボスミン:1%キシロカインEを4倍希釈。〈外用〉塗布用ボスミン(5000倍ボスミン):ボスミン外用液を5倍希釈。キシボス(2000倍ボスミン):ボスミン外用液20ml+4%キシロカイン液20ml。 外用の塗布用ボスミンを希釈した状態で製剤する。可能であれば製剤に色をつける。エピネフリン製剤に関する勉強会を実施する。外用の塗布用ボスミンの瓶に1000倍ボスミンであることを目立つように明記する。外用ボスミン、局注用ボスミンに関して医師の指示の言葉の統一を図る。指示を受ける際、作成段階、医師に渡す際に希釈する薬剤名、希釈方法を必ず復唱する。 確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
17 障害なし ポンタールシロップ3.25% 第一三共
  1. 11:35フリー看護師が冷蔵庫に入っていた患者本人処方のポンタールシロップを食前に与薬した。
  2. 処方箋は確認せず、薬液ボトルの氏名のみで確認して患者へ渡した。
  3. 患者は疑問に思わず内服した。
  4. 12:40受け持ちの看護師が病室に行くと、患者より呼吸困難の訴えあり。酸素飽和度93~94%、喘鳴あり。メプチンエア吸入する。
  5. 13:15廊下を歩いている患者の酸素飽和度を測定すると80%台低下あり。
  6. 患者より「白い薬を飲んだ」と報告があった。
  1. ポンタールシロップは手術のルーチン指示だった。
  2. アスピリン禁忌だったため、ポンタールは中止の指示が出ていたが、指示受けした看護師は返納処理をしなかった。中止であることの記載もしないまま冷蔵庫に入っていた。
  3. 当事者の看護師は、冷蔵庫にあったポンタールシロップを処方箋の確認をせずに与薬した。アスピリン禁忌だという情報は取れていなかった。
  1. 禁忌薬剤があることの情報を共有する。
  2. 与薬時は基本的な確認のルールを守る。
  3. 指示受けをした看護師は、最後まで責任を持って返納処理をする。
  4. 患者への服薬指導後は理解していることの確認をする。
確認が不十分であった
18 障害なし フロリード 持田 処方したフロリードゲル(抗真菌剤)により、内服されていたワルファリンの作用増強で、PT-INRの延長をきたし、出血傾向となり、その治療目的にて20日後に心臓外科に緊急入院した事例。 相互作用のある薬剤の存在に気づかなかった。 薬剤の投与の際に、重大な相互作用がある薬剤には十分注意する。 確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
19 障害残存の可能性がある(高い) ワーファリン錠1mg エーザイ
  1. 前院持参薬が切れるため主治医が同処方をした。(次回定期処方まで)
  2. 5日後に主治医は、1週間後の内服開始の定期処方をした。その際にワーファリンは凝固検査の結果でコントロールしたいと考え、この定期処方からは意図的にはずした。
  3. その後、主治医は凝固検査のオーダーとワーファリンの処方を忘れた。
  4. 1ヵ月後18時頃に看護師が訪床したところ、意識レベル低下、右共同偏視、左片麻痺状態を発見した。
  5. 頭部MRIの結果、右中大脳動脈領域に新しい梗塞像を認めた。
  6. 19時頃に主治医から家族に再梗塞発症の説明をしたところ、家族から質問があり、主治医は「前院と薬を変更していない。」と答えた。主治医が後ほどカルテを見直していると、定期薬処方後のワーファリンの処方忘れに気づいた。
  1. 主治医は、ワーファリンを凝固検査結果から調整して投与する予定であったが、凝固検査も含めてオーダーしないまま失念した。
  2. その治療方針等が診療録に記されていなかった。
  3. 上記のため、循環器医師は高齢及び骨折治療中、バイアスピリンも内服していることから主治医はワーファリンを中止したと捉えた。
  4. 薬剤師は、ワーファリンはコントロールのため定期処方からはずすことがあるため、定期処方にその薬剤がないことを主治医に確認しなかった。
  5. 同じく、看護師も指示受け時に主治医に確認しなかった。また、ワーファリンの処方がないことを見落とした可能性もある。
  6. 薬剤を投与した看護師も処方箋と薬剤の照合はしているが、ワーファリンが処方されていないことに気づかなかった。
  7. 17日間ワーファリンが投与されなかったため、再梗塞のリスクが高まった。
  8. 患者は過去にワーファリンの自己怠薬エピソードがあったことや、バイアスピリンも内服していることから、主治医の記憶が「前院でワーファリンからバイアスピリンに切り替わって転院してきた。」にすり替わった。
  9. 上記のため主治医は家族に誤った説明をした。
  1. 主治医はワーファリンコントロールの予定等の治療方針を診療録に記載し、チーム医療に役立てる。薬剤師、看護師はその情報から疑義照会する。
  2. 主治医は、ワーファリン処方時に合わせて凝固系の検査をオーダーする習慣をつける。(必要な場合において)
  3. 薬剤師は、薬剤管理指導時に凝固検査のチェック、服用状況、副作用等を確認する。
  4. 心房細動のある患者には脳塞栓症のリスクがあることを主治医は事前に患者家族に説明する。
確認が不十分であった

記録等の記載
20 障害なし アトニンO注5単位 あすか製薬 2年前、第1子を帝王切開術にて出産時、子宮収縮剤アトニンを使用して、頻脈とST低下が生じたが、アトニンによる有害事象という認識が低く、アレルギー剤として登録されていなかった。第2子出産のため選択的帝王切開術を施行した。術中に弛緩出血をきたし、アトニンを使用したため、胸痛・ST低下・血圧低下などの虚血性心筋障害が出現した。術中に血管拡張剤を使用して症状は改善し、後遺症もなく退院となる。
  1. 麻酔科医は前回の有害事象について把握していたが、術者への情報の伝達がされていなかった。
  2. 電子カルテのアレルギー情報にアトニンが記載されていなかった。
  3. 前回の手術記録にあったアトニンによる有害事象を見落としていた。
  4. 前回の有害事象の際の説明が十分でなかったため、患者が有害事象について理解しておらず、医療者に伝えることができなかった。
  1. 麻酔科医と術者は、事前に情報交換を行うと伴に、術前のタイムアウトにおいてもアレルギー情報等の確認を徹底する。
  2. 医師は、アレルギーや副作用等の有害事象について、必ず薬副作用欄に登録をし、内容等を診療録に記載する。
  3. 2回目以降の手術の際は、前回までの手術記録を必ず確認する。特にアレルギーや副作用等の情報については十分に確認する。
  4. 有害事象等が発生した場合は、患者に対し正確に理解できるように説明をしたうえで、紙面に薬剤名等を明記し患者に渡す。また、その内容について診療録に記載し、記録に残す。
確認が不十分であった

記録等の記載
21 障害なし - - (小児科)
同日夕両親にインフォームドコンセント。同準夜帯で翌日分として化学療法注射指示箋発行(医師A)。本来乳児例はプロトコール上通常体重換算量の半量投与となっていたが,この時点でそれを見落としていた。同日中には指示箋のダブルチェックは施行されず。翌日指示された量のアクチノマイシンDが病棟に着き,減量されていないことに気付かずそのまま患児に投与(医師A)。投与後おかしいことに気付き(医師A),発覚。
(薬剤部)
20時51分,翌日投与分のコスメゲンが処方される。通常,抗癌剤のミキシングについては時間外の調整依頼・変更は受けていないが,主治医からの依頼があり,また,調製担当者も残っていたことから,当該処方を受けることになった。薬剤準備,病名チェック,検査値(白血球,血小板,ヘモグロビン,肝機能,腎機能)チェックを行ったが,小児科に関してはプロトコールの確認を必ずしも必要としない運用であったため投与量のチェックは行われなかった。そのため乳児の投与量を半量とすべきことに気付かないまま,処方箋通りにコスメゲンを調製し,病棟に払い出した。
(小児科)
初めに指示した際に治療プロトコールを熟読せず,投与量の思い込みがあった。また投与時にも初めの指示が正しいとの思い込みがあり発生した。また,通常化学療法は本来小児科病棟で行っているが,術後間もないため他病棟で行われた。このため病棟内で行われる3重,4重のチェック機構が機能しなかった。

(薬剤部)
  • 小児科のプロトコールは把握が難しく,かつ,ミキシング開始当初よりプロトコールの確認を必ずしも必要としない運用であったため,プロトコールの確認が不十分であった。
  • 小児科のプロトコールに関しては,unicare上に登録されておらず,薬剤部内のプロトコールの資料も整理されていない状況であり,実際には確認しづらい環境であった。
  • 小児科のみならず他診療科のミキシングも行っているが,薬剤部にはどのプロトコールを使用しているかの情報がなく,疾患名,使用薬剤から薬剤師が推測して使用プロトコールを判断している。
  • 時間外の調剤依頼や変更に対し,薬剤師が十分対応できる体制ではない(基本的には,時間外の依頼,変更は受けないことになっている。)
(小児科)
化学療法の際には,指示を出す時点でその内容を充分確認し,間違いのないよう心がける。担当医が常に複数の過程でチェックを行える体制で臨むことを徹底する。疾患によっては術後5日以内の薬剤投与が規定されており,これまでも同様に小児科転科前に外科病棟で小児科指示のもとに化学療法が施行されていた。小児科病棟では化学療法を施行される場合には注射指示確認簿が存在し,指示確認に活用されよりチェック体制が働くようになっている。部署が異なるとチェック体制が甘くなる可能性がある。化学療法が必要な場合には,開始期限までになるべく化学療法施行予定の病棟にあらかじめ転科しておく。転棟が不可能な場合には,主治医のダブルチェック体制が働くよう充分に意識して診療にあたる。
(薬剤部)
体制が整うまでは以下の体制で行う。
  • 抗癌剤調製依頼時には患者ごとに使用するプロトコールのコピーを薬剤部へ送信する。
  • 抗癌剤調製の処方オーダー時には,フリーコメント欄に使用プロトコール名を記載する。
  • 薬剤部では処方監査時に送信された患者ごとのプロトコールのコピーと照合し,投与量・投与日・投与間隔をチェックする。
  • 登録プロトコールの必要な部分を薬剤部で整理し保管する。
  • 現状では,原則として時間外の依頼・変更を受けない。
  • 将来的に,小児科における抗癌剤調製時の処方チェック体制についてはプロトコールをプロトコール審査委員会に通してunicare上に登録し,抗癌剤調製を実施している他の病棟と同様の体制とする。また全病棟の抗癌剤調製を実施し,がん化学療法の安全性確保に寄与する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
22 障害残存の可能性なし ヒューマリンR注100単位/ml 10ml 日本イーライリリー 担当看護師Aは、患者の輸液が15時少し前に切れていると他看護師より声を掛けられ、あせって準備を始めた。点滴作成する前に指示簿と現物を見ながら準備した。指示内容は、フルカリック2号1,003ml・ヘパリン5,000単位4ml・ヒューマリンR28単位<80ml/時間>であった。指示簿を確認した看護師Aは、ヘパリン5,000単位4mlとヒューマリンR4ml(400単位)を注射器で吸って準備し、それぞれトレイへ置いた。その後、看護師Bへダブルチェックをお願いした。ダブルチェックは、2人で一緒に小さい声で読み上げるように同時に行った。看護師Bが、「インスリンが多いね」と口に出したが、「多いんですよ」と言われ、納得してしまった。ダブルチェックを終えた看護師Aは、すぐに輸液を混注し、ラベルを貼り、患者のネームバンドとラベルのバーコ-ド認証を実施し患者の輸液更新を実施した。
  1. オーダリングシステムの問題として、印字文字が小さく分かりにくい。単位とmlが同じ目線で確認できる印字の配置になっていない。
  2. 余裕をもった輸液の管理、残量確認が出来ていない。切れてからあわてて準備している。
  3. ダブルチェックは、時間差で違う人が2回行うと院内規定でなっていたが、少しでも早くチェックを済ませたいというあせりと、習慣的に2人一緒にいつも行っていた。
  4. 指差し呼称を行わず、黙示で小さな声で確認する習慣があった。他スタッフもそうしていた。
  5. インスリンをマイジェクター以外で吸ってはいけないという意識がなかった。知らなかった。
  6. ネームバンド認証で「○」となり、安心して、最終実施する際、ラベルや指示内容の再確認を行わなかった。
  7. 低血糖時のプロトコールの活用が浸透していなかった。
  1. オーダリングシステムの整備(単位とmlが同じ目線で確認出来る印字配置)
  2. 指示内容が分かりにくい場合や間違いやすいと思う場合マーカーで色づけの工夫を行う
  3. インスリンやマイジェクターの保管場所へ、「インスリンはマイジェクターのみ使用」と明示
  4. 糖尿病やインスリンに対する院内職員全体の講義開催
  5. 院内規定のダブルチェックや指差し呼称の確認がきちんと出来るよう職場風土を変えていく。ルール違反者は、その場で注意し合う。
  6. 患者急変時は、一人で対応せず、出来るだけ早く人を多く集め、迅速かつ適切な対応が出来るよう、日頃より訓練しておく。
  7. 低血糖プロトコールを有効に活用し、適切な処置を行う。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
23 障害なし ラシックス サノフィ・アベンティス 持参薬の中にラシックスがあったが前回処方の薬はそのまま残っており家族は「のんでいない」と言った。担当看護師は、持参薬のラシックスに休薬中のメモを付けて薬剤部に提出し、薬剤師は鑑別書のラシックスに休薬中と記載した。入院時よりSPO2:95~98%であり観血的整復術を実施し特に問題なく経過していた。その後、SPO2:80%と低下あり酸素吸入開始。翌々日、内科対診の結果胸水貯留認められ慢性的なうっ血性心不全だったものが利尿剤の休止で徐々に代償できなくなってきたものと診断されラシックスの静脈注射が開始された。 救急入院でありかかりつけ医の情報提供書は無い。また、いつもならカルテに持参薬続行・中止の指示記載があるが時間外の入院で当直医と主治医が違ったためか、その指示記載はない。持参薬の鑑別書は、医師、薬剤師、看護師の3者が確認することとなっているが、医師は見ることは少なくその都度看護師が確認することが多い。担当看護師は、家族の「のんでない」の言葉のみで休薬とし医師への確認が不十分だった。
  1. 医師は持参薬の鑑別書の確認を習慣化する。また持参薬や院内処方の継続指示内容はカルテに記載する。
  2. 看護師は、休薬している薬に関しても鑑別後に一旦主治医に確認する。また鑑別用紙に変更、中止、再開時に内容と署名を記載する。
確認が不十分であった
24 障害残存の可能性がある(低い) フェアストン錠 日本化薬 開始約1ヵ月後、AST 24,、ALT 23。その後、JBCRG-15の規定に従い、TORを3錠へ変更。開始約2ヶ月後、AM8:00に内服後すぐに来院されたため、10:00まで待っていただき(内服後2-4時間で採血の規定)、採血を行う。結果は葉書で伝えることにする。投与3ヶ月、葉書を作成する際に、肝機能異常(AST 236, ALT 395)に気付く。本人に電話をするも連絡が取れず(留守電にならず)、携帯電話は持っていない。翌日、再度連絡し、出来るだけ早く来院してもらうよう伝える(同日は来院できないとのこと、翌日の来院予約)。TOR内服中止の指示。翌日、来院される。AST 746、ALT 1328、T-Bil 1.1、LDH 577 、γ-GTP 81と急性肝炎にて同日入院加療となる。 葉書制度の問題:臨床試験の採血を行うために、診察後採血まで1時間以上まってもらい(血中濃度測定の時間)、患者は仕事の関係上急いでいることから更に結果が出るまで1時間以上(診察終了後2時間以上)待ってもらうのは患者に申し訳ないと思い、結果は葉書で知らせする事にしてしまった。その結果、葉書を作成するまでの3週間、検査結果を確認することをしなかったために異常値の発見が遅れている。
薬剤性肝障害に対する注意の問題:通常は薬剤の変更や薬剤量の変更を行った際は、結果は必ず診察時にチェックしている。今回、検査の至急依頼を行っていたが、TOR投与後3週間の肝機能が正常値であったこと、臨床試験の規定に従い、TORを3錠に増量したが、TORの3錠投与は通常投与している量であることから、葉書で結果を知らせるという判断になったと考えられる。
薬剤の変更、薬剤量の変更は当患者のみでなく、すべての患者の採血結果は同日、患者も同時にチェックする事に決めた。今回のケースは、重篤な状態となりうる危険性があった。従って、システムの改善が必要であると判断し、今後は原則的に郵送による結果報告をやめ、直接患者に伝えることとする。郵送は県外など遠方でどうしても再度受診することが困難な患者にのみ適応し、確認方法を確立する予定である。更に現在当院では、肝機能データに関して前回と比較して20倍値で、主治医へ連絡するシステムを取っているが、今回の事例では20倍値であったことから選別できなかった。従って、10倍値での報告が可能かを検査科と検討していく予定である。 報告書(忘れた・不十分・間違い・不適切)
25 障害なし ミダゾラム注 サンド 20:50に嘔気・発汗・顔面蒼白となり主治医へ連絡。呼吸苦あるため輸血中止しHCUへ転出、バイパップ装着試みるが嫌がる様子あり医師からミダゾラムを持参するよう指示あり。当事者の担当看護師は薬品金庫からミダゾラムを取り出し、誰にも告げぬままCVラインから1AをIVした。周囲の医師・看護師は投与したことに気付いていなかった。付近の看護師がミダゾラムの空アンプルの入ったトレイを手にしている担当看護師に気付きどうしたのか尋ねるとIVしたと答えた。医師はミダゾラム1Aを生食10mlで希釈しその内2mlを使用するつもりでいた。まもなくSPO2/70%まで低下し自発呼吸微弱となるがFIO2100%でバイパップ装着しSPO2上昇見られ事なきを得た。
  1. 担当看護師は受け持ち患者の急変に初めてあたりパニックになっていた。しかし担当看護師の状況を確認できる周囲の余裕もなかった。
  2. 通常は声に出して確認してから実施、実施後も声に出して告げる事になっている。当事者は普段から声出し確認ができていなかったが充分な指導ができていなかった。
  3. 薬剤に関する知識が不足していた
部署での振り返り
  1. 知識不足:まずは常備薬剤(救急カート、金庫内の薬剤)に関する学習会を設ける
  2. 急変時の対応についてのシュミレーション:DC使用、救急カート内の物品の取り扱い方、声出し確認・Wチェックの重要性について再学習
  3. 1年目看護師の受け持ち患者急変時の周囲のフォロー体制について検討:リーダー中心に周囲が声掛けを行い1年目看護師は患者のそばから離さず記録を指示する、など。
  4. ACLSの勉強会を計画
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
26 障害残存の可能性なし フェンタニル 不明 フェンタニル(0.3ml/H)持続投与中の患者。腹痛を訴え、疼痛時の指示を確認した。
フェンタニル0.2mlフラッシュの指示あり。
受け持ち看護師に投与量を確認したが、実際の早送り時、思い込んで2.0ml/Hのフラッシュをしてしまった。
その後、眠気・呼吸抑制あり。
医師指示を確認したが、確認したつもりになっていて、実施時に指示量を間違えてしまった。
自分の受け持っていた患者に2.0mlフラッシュを実施した患者がいて、混同してしまった。
早送り実施時は必ず医師指示を声に出して読み、確認してから実施する。 確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
27 障害なし ピトレシン注射液 第一三共 午前2時頃、当直医師は患児の多尿・尿濃縮力低下が続くため治療を検討した。前日の日中には、小児内分泌専門医に事前に相談をしたため、ピトレシン投与を決定した。 当直医師は、これまでピトレシン注射液の使用経験が少なかったため、指示を出す前に、パソコン内のDI画面(医薬品添付文書と同様の内容)情報を見た上で、ピトレシン注射液0.5単位(静注)の指示入力をし、ワークシートを出力した後、深夜リーダー看護師へ指示を出した。 その際、看護師にはDI画面を見せながら、0.2単位/kg(=0.5単位)が、正しい値であると説明した。
ピトレシン0.2U/kg(2.7kg)を皮下注射するところ、0.5単位を静脈注射した。
医師は使い慣れない薬剤であったため、薬剤の使用方法を資料で調べ、また病棟薬剤師にもコンサルトをして薬用量を算出していた。しかし、その算出量がカルテに残さなかったために、実際に投与した医師へ情報共有が出来なかった。また、薬剤師が用量計算したメモ用紙が存在したが、当直医師にそのメモ用紙が渡らず伝達されなかった。
投与した医師は、内分泌の専門医師にコンサルテーションを受けていたが、1回投与という記載に対し、投与方法は静脈内注射と思いこんでしまった。
DI画面(医薬品添付文書情報)では「成人にはバソプレシンとして1回2~10単位を必要に応じて1日2~3回皮下または筋肉内注射する。」と記載されており、静注の場合、成人おいては0.1単位であるという記載がされていたが医師は見落してしまった。
使い慣れない薬剤の使用方法に関する情報共有の方法を検討。コンサルテーション内容についても、カルテに必ず記載する。
小児薬用量の過量投与に対するアラート機能を含めて検討をしていく。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
28 障害なし ラミクタール錠100mg GSK 以前にラミクタール6錠(朝夕)7日分の処方の記載があったが、この時点では、デパケンとの併用はなかった。
脳神経外科処方薬ラミクタール2錠(朝夕)を神経内科に入院当日に持参されなかった。そこで、外来カルテを参考に脳外科処方薬を処方した際、Do処方を誤解しラミクタール6錠(朝夕)で処方した。再処方時には2錠で処方。患者がこれに気付いた。
  1. do処方転記の際に不注意であった。
  2. デパケン併用時のラミクタール常用量が200mg/日だという知識がなかった。
  3. 患者家族が多忙だったため、処方薬の持参依頼を怠った。
  4. 入外ともに手書き処方箋の運用であり、服薬指導管理者の薬歴チェックに依存している。
  5. 現在、入外ともに手書きの処方箋による運用であり、服薬指導担当者により薬歴チェックに依存しているのが現状である。今後、電子カルテ運用に向け準備を進めている。
  6. 薬剤科においてラミクタールの処方鑑査に以下のチェック表を用いている。
    1. ラミクタールの代謝阻害(バルプロ酸Na)との併用
    2. 同代謝促進剤(カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、プリミドン)との併用
    3. ラミクタールに影響を及ぼさない(影響が明らかでない)薬剤との併用
    1~3の組み合わせにより、1日投与量を一覧にしたチェック表を用いて、ラミクタールの投与量が適正か否かを確認している。当該事例においては、確認作業が行われていなかった。
do処方転載の際は、ダブルチェックを依頼。もしくは薬剤科へ外来処方と同じか確認を依頼する。
新薬処方の際には専門医へ意見を求める。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
29 障害残存の可能性なし アトニン-O注5単位,
メチルエルゴメトリン注0.2ミリグラム「あすか」
あすか製薬株式会社,
あすか製薬株式会社
妊娠誘発性高血圧症( PIH )合併および児頭骨盤不均衡で緊急帝王切開が行われた。11時33分児娩出後、麻酔担当医は指導医より子宮収縮薬のアトニンを点滴静注するよう指示されたが、誤って別の子宮収縮薬のメチルエルゴメトリンを投与した。メチルエルゴメトリン 1A を生理食塩水 100ml に希釈して点滴静注した後、2A 目を同様に点滴静注しはじめたところで血圧の上昇を認め(130台/70台mmHg から 160台/80台mmHg )、誤投薬に気付いた。メチルエルゴメトリンを含む点滴剤を中止し、アトニンを含む生理食塩水に交換した。さらにアプロバンの持続投与を開始し、手術後は手術室内の回復室で経過観察をしたが、アプロバン投与を中止することはできず、血圧が回復してきたため病棟での観察とした。翌日にはアプロバン投与は中止でき、血圧上昇による患者への影響も認められていない。 アトニンとメチルエルゴメトリンはいずれも子宮収縮促進剤であり、数アンプルずつまとめて病棟から持参される。麻酔担当医は、 2剤を 1アンプルずつ袋から出して麻酔用カートに用意した。指導医よりアトニン投与を指示された際に誤ってメチルエルゴメトリンを投与したが、バイタルサインの変化が起きるまで完全にアトニンであると思い込んでいた。アンプルカットの前に薬剤名を確認しなかった。さらに同系統の薬剤をまとめて置いていた事が、判断ミス・誤投薬に繋がったと考える。 薬剤投与前にアンプルの薬剤名を必ず確認することを周知徹底し、指導する。また、PIH合併患者の子宮収縮剤として昇圧作用を示す可能性があるメチルエルゴメトリンが準備されていた点など、帝王切開に際しての薬剤の準備について今後産科と協議しながら検討したい。
事例発生後、麻酔科医は、取り違え防止のためアトニンだけを準備することにした。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
30 障害残存の可能性なし 不明 不明 せん妄あり、安定剤内服など行うも効果なかった。術後5日目、術前に出ていた術後の不穏指示であるセレネース注5mg1mlを筋肉注射。その後全身の震えありパーキンソンによる固縮が悪化したが経過観察にて改善。 せん妄に対して通常セレネースを用いており、今回も同様に投与したが、セレネースはパーキンソン病には錐体外路症状の悪化をきたすため禁忌となっていることに気づかずに投与してしまった。 病気に対する禁忌薬の把握をしっかりと行う。 確認が不十分であった
31 障害なし ヒューマログミックス50注カート,
ヒューマログ注カート
イーライリリー,
イーライリリー
糖尿病に対してインスリンを投与中の患者。ヒューマログ3単位を皮下注射の指示が出ていた。インスリンの皮下注射は看護師が実施する指示であったので、担当看護師Aが注射伝票でヒューマログ3単位皮下注射の指示を確認後、用意してあったインスリンを確認したところ患者の名前が書かれたキャップにはヒューマログ50ミックスの本体が付いていた。指示されていたものとは違うインスリンが用意されていたので、指示受けをした看護師Bに「これで大丈夫?」とペン型インスリンを見せた。看護師Bはキャップについていた名前を見て「これで大丈夫」と答えたため、看護師Aはそのままヒューマログ50ミックスを皮下注射した。本体の指示はヒューマログ3単位の指示であったため、誤った薬剤が投与されてしまった。
  • 患者氏名・インスリンの薬剤名・投与単位数をシールに記載してペン型インスリンのキャップに貼って運用していた。
  • 自己注射の患者あるいは自己注射指導中の患者が使用するペン型インスリン注入器は、対象患者すべてのペン型インスリン注入器をペン立て様容器にまとめて入れて管理していた。
  • 自己注射等の患者は、時間になると長椅子とテーブルのある処置室に集まり、患者はペン立て様容器に入っているペン型インスリン注入器のキャップに貼られたシールを見て取り出し、看護師がそれを指示書と確認した後、患者が自己注射していた。
  • 長椅子には、多いときには3~4人並ぶこともあった。テーブル上には境がなく、外したキャップが同時にテーブル上に何本も置かれることがあり、この時に誤って他人のキャップを取り、気付かずに付け替えてペン立て様容器に戻してしまったことで、キャップと薬剤本体が違う患者のものと入れ替わった可能性がある。
  • 注射伝票の指示と薬剤(インスリン本体)の確認を一人で行った(ダブルチェックしていなかった)。
  • 指示された薬剤と用意された薬剤が同一で無いことに気付きながらも口頭確認だけでそのまま誤投与してしまった。
  • 確認を求められた看護師Bは、キャップの名前と種類・単位数のみで確認していた(シール記載のインスリン名はヒューマログ・3単位であった)。
  • インスリン投与前には、インスリンの注射指示書と用意されている薬剤・単位数の確認を看護師2名でダブルチェックする(声だし・指さし確認を実施する)。
  • キャップに氏名等のシールを貼ることを中止して“インスリン本体”に氏名のみを記載するように変更。投与単位数はシールに記載せずに指示書で必ず確認する運用に変更した。
  • 院内共通で、専用の引き出し型書類ケースを新たに準備し、患者のペン型インスリン注入器は、一つのトレー(引き出し)に一人の患者のインスリンとインスリン伝票を入れることにした。注射を実施する際は、トレーのままテーブルに出すことにした。
  • 注射指示書と用意されている薬剤が同一でない場合は、投与前に担当医師に再確認する。
確認が不十分であった
32 障害残存の可能性なし 点滴静注用バンコマイシン0.5g Meiji Seika 髄注の前に、滅菌手袋をして別の処置を行い、引き続きバンコマイシン髄注を行った。その際に、本来であれば医師が調剤し準備しているバンコマイシンの準備をしていなかった事に気付き、処置に付いていた新人看護師にバンコマイシン1Vを生食(生食100mlがその場にあり)に溶解し、4ml手渡すようにその場で口頭指示を出した。溶解時に使用する生食の量は指示しなかった。医師は生食100mlで溶解し、その中の4mlを手渡すように意図していた。手渡された4mlのバンコマイシンを投与した。看護師は生食8mlを生食100mlから採取し、それでバンコマイシン1Vを溶解し、4ml手渡していた。投与直後にバンコマイシンの溶解を生食8mlで溶解し、その内の4mlを手渡した事を知らされ、過量投与(20mg投与予定が250mg程度)が判明した。投与直後に気がつき、20ml髄液をスパイナルドレーンより採取し濃度提出。
生理食塩水100mlで洗浄し、その後10ml採取し濃度提出。洗浄後の濃度は治療範囲内であった。
処置に付いた看護師は、その処置についたのは初めてだった。
口頭指示マニュアルを遵守出来ていなかった。
医師が調剤すべきところを準備せずに処置に臨んでしまった。
髄注用の注射液は医師が作成する。
5Rの確認を遵守する。
口頭指示マニュアルを遵守する。
新人看護師は、初めての処置に付くときにはその旨を話し、先輩に指導を仰ぐ。
確認が不十分であった
33 障害残存の可能性なし 点滴静注用バンコマイシン0.5g Meiji Seika 抗菌薬変更のオーダーを行う際にバンコマイシンの用量を計算間違いで10倍量(1回0.027gであるところを0.27gとオーダー)をオーダーしてしまった。1回投与されたところでオーダーした主治医本人が過量に気づく。 土曜日の休日であり、人員不足であるところに緊急入院患者がNICUにあり、主治医は非常に忙しい環境にあった。
通常だとバンコマイシン10mg/kg/回投与で体重2.7kgの患児だったので、10mg×2.7=27mgで、0.027gと換算するところを0.27gと換算した。主治医の計算間違いとオーダーを受けた看護師側の計算間違いが同時に生じ、ブロックがかかりにくかった。
今回は、バンコマイシン(0.5g)1バイアルを5mlの生理食塩水で溶解し、1mlのシリンジにその内の薬剤を0.27ml取り、それを新たな5mlの生理食塩水のシリンジに混入し、シリンジポンプで注射実施の予定であった。
処方の際に体重の記載が患者情報としてもれており、薬剤鑑査のチェック機能が働かなかった。通常、成人領域であれば抗菌剤を10倍量オーダーすれば、電子カルテ上、薬剤部、看護師側から過量である旨指摘されるが、患児が体重約3kgだったので10倍量のオーダーをしても使用量は約1/2バイアル(1バイアル:0.5g)に過ぎず、過量のチェックがどこからもかからなかった。
NICUで使用する抗菌薬は種類が限られているため、抗菌薬と体重との換算表(イメージとしてはドーパミン点滴に印刷されている表)と各抗菌剤の溶解方法を記した資料を作成し、医師側・看護師側双方が持ちそれを見ながら用量のまちがいがないかチェックする。また、薬剤部にこの資料を置き、処方内容のチェックを行っている。現在、15歳以下の患者の調剤については、量の確認が入るシステムであるが、注射薬についてはまだ導入されておらず、今後検討予定である。
抗菌薬をオーダーする際は使用量mgだけでなく、フリーコメントの欄に、「○○mlで溶解、うち○○mlを使用する」と必ず記載する。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
34 障害なし アバスチン点滴静注用100mg/4mL 中外 院内調製のアバスチン硝子体内投与を行うに際して、3名の患者に対して薬剤の入っていない空のシリンジを用いて処置を実施した。
眼科外来看護師が院内薬剤部で調製されたアバスチン(1.0mg/40μL)入りシリンジを薬剤部へ受け取りに行った。その際に320本のアバスチン入りシリンジと、80本の余剰(未使用)のシリンジを合わせて渡されたが、受け取った眼科外来看護師は未使用のシリンジが含まれていたことを認識していなかったため、眼科外来に持ち帰ったすべてのシリンジ400本を外来手術室の-80℃冷凍庫にて保管した。アバスチン入りシリンジは、解凍するために事前に数本ずつ-80℃冷凍庫から4℃冷蔵庫に移し保管された。
1週間後、看護師は、アバスチン硝子体注射処置準備のため、処置時に医師がアバスチン入りシリンジを外袋から取りやすいように外袋の開封口を開けて、処置室の当該患者用の処置台の上に準備した。アバスチン入りシリンジの外袋には「アバスチン(1.0mg/40μL)」と薬剤名が記載されたラベルが貼られているが、-80℃で保管している間にラベルがはがれてしまうことがあったため、看護師は準備時に外袋のラベル貼付の有無を確認しなかった。
更に本来ラベルが貼られている面を下にした状態で処置台に準備されていたため、医師も処置前に外袋のラベル貼付の有無は目に入らなかった。
医師が、アバスチン硝子体注射施行しようと準備されたシリンジを手にした際に、シリンジが空であることに気づき廃棄し、別のアバスチン入りシリンジで注射を施行した。処置終了後に調査したところ、受け取りのアバスチンシリンジの中に空のシリンジが含まれており、3本がすでに患者に注射されたことが判明した。
アバスチン入りのシリンジは、眼科用無菌製剤であることから、清潔のため、クリーンベンチ内で個包装袋から注射筒を半分出して薬剤を吸引し、その後、袋に戻して開封部分を熱板で封じ、個包装袋の上からアバスチンのラベルを貼付している。そして、100本の場合は箱に調製品にいれ、セロテープとラベルで封緘して交付、100本未満の場合は、ビニール袋に入れ、同じく封緘して交付している。また、未使用シリンジについては、箱に残したままとし、眼科担当者に未使用分であることを伝え返却していた。
院内調製のアバスチンについて、作成された薬剤の受け渡し方法に関する明確なマニュアルがなかったため、調製して渡した側の薬剤部と、受け取った眼科外来看護師の間に認識の乖離があり、未使用のシリンジが含まれていることに気付かなかった。
また、シリンジ(0.5mL)の中に準備された注射薬液量は0.04mLであり、視認することが困難であった。
眼科、薬剤部、看護部の関係3部署の協議のもと、アバスチンの管理および実施に関するマニュアルを作成した。マニュアルにおいて、薬剤部からの受け渡し時に未使用のシリンジを渡さないこと、投与前にアバスチン入りシリンジの外袋に貼付された薬剤名を記載したシールの内容を、医師と看護師でダブルチェックし投与薬剤に誤りがないことを確認すること、投与時に必ず針先からの薬液の排出を確認することで、空でないことを確認することを明記した。 確認が不十分であった
35 障害残存の可能性がある(高い) 注用ワイスタール1gバッグS ニプロファーマ 事故当日、逆行性胆管炎の治療としてワイスタール1gバッグを処方する際、「この薬品はアレルギーのため、使用の際注意が必要です」と警告が表示されていたにも関わらず、この警告は既知のアレルギー情報である、ガベキサートメシル酸塩注とロザルタット注の表示であると判断し、ワイスタール1gバックが追加されているのを十分に確認しないままオーダを実行してしまい結果的に投与に至った。14時03分側管よりワイスタール1gバック点滴開始した直後に咽頭の違和感を訴えられた。直ちに外来看護師によりワイスタール1gバッグを中止し外科外来医師に連絡した。14時10分、自発呼吸が弱まり痙攣様症状を認めたため、ステロイド剤とアドレナリン注を投与しメディカルコントローラーに連絡。14時17分、救命医学科の医師到着。内頚動脈触知できず心臓マッサージおよび気管内挿管を行った。14時40分、心肺蘇生を行いながらGICUに移室、その後に心肺再開し集中治療を開始した。 仮性膵嚢胞小腸吻合・胆管空腸吻合部拡張術後も、繰り返し逆行性胆管炎を発症しており、半年後にガベキサートメシル酸塩注とロザルタット注の投与直後に膨隆疹と血圧低下を伴うアナフィラキシー症状を認めたため、電子カルテにアレルギー情報としてこの2剤を登録した。その後、逆行性胆管炎の治療に使用していたワイスタール1gバッグ投与後に掻痒感と膨隆疹を認めたため(血圧低下や呼吸困難は認めず)、抗菌薬を変更すると同時に電子カルテにアレルギー情報としてこの「ワイスタール1gバッグ」を追加登録した。事故当日、ワイスタール1gバッグを処方する際、「この薬品はアレルギーのため、使用の際注意が必要です」と警告が表示されていたにも関わらず、この警告は既知のアレルギー情報である、ガベキサートメシル酸塩注とロザルタット注の表示であると判断し、十分に確認しないままオーダを実行してしまい結果的に投与に至った。
当院の職員は、知り得たアレルギー情報を取捨選択することなく電子カルテの「患者プロファイル」に登録するよう周知徹底している。また、初診受付時の診察券を交付する前に患者からの申告に基づいたアレルギー情報を事務職員が電子カルテの共有情報として入力している。
なお、登録方法は、1.当院採用マスターから選択する、2.コメント(文字情報)として入力する、の二通りがあるが、いずれの方法から入力されたアレルギー情報も処方オーダする際に画面に自動的に掲出される。また、処方を完了する際に、方法1で入力した薬品をオーダした場合、または、方法2より入力されている場合はすべてに、「チェック結果表示」として警告される。しかし、今回の事例のように、不十分な確認により「戻る」をクリックするとエラーではなくワーニングであるため処方が実行されてしまう。
アレルギー情報が登録されていると、電子カルテの患者名の上に「アレルギー」と表示するようにしており、文字サイズや配色を工夫して視認性を高めている。さらに、アレルギー情報が未登録の場合はアレルギー歴がない場合と区別するため、「アレルギー未登録」と表示し登録を促すようにしている。
  1. 注射指示票にアレルギー情報を印字して、投与する看護師にも容易にアレルギー情報を確認できるようにする。
  2. 電子カルテ上に表示されるアレルギー情報の文字を大きくするなど視認性を向上させる。
  3. 登録されているアレルギー薬剤を処方した場合、現在は警告のみでオーダすることが可能なため、新たに「絶対禁忌薬」を設定し処方時には、エラーとしてシステム上オーダできないよう変更する。これは医療安全管理部で検討し、今後、医療情報部、セーフティマネジャ会でも審議する。対象は、アナフィラキシーをきたした医薬品や医師が投与不可と判断した医薬品とする。
確認が不十分であった

システム
36 障害残存の可能性がある(低い) ニューモバックスNP MSD ニューモバックスの予防接種にあたり、接種患者が多数いたため一欄表を作成し、接種した後に接種した日の日付を書き込むことにしていたが、記入を忘れた。
そのため、2週間後にカルテを確認せず、予防接種をしていないものと思い込み、再接種してしまった。
通常は、前日又は当日に医師がカルテに指示し、それとともに4 枚つづりの注射処方箋に医師が内容を記入。そのうちの3枚を薬局におろすと薬局から個人ごとに透明なビニール袋に処方箋一枚と薬剤が入れられた状態でニューモバックスが上がってくる。
今回は、ニューモバックスを接種する人数分を薬剤から一括で払いだしてもらい、接種後に注射伝票をきるという流れにしていたため、一括で19人分の薬剤を伝票なしで借り受けし、冷蔵庫に保管していた。接種する人数が多いことから接種する患者の一覧表を作成し、接種した日をメモ的に記入することにした。
原因は、接種後、カルテに必要事項は記入していたが、患者一覧表に記入することは忘れてしまった。患者一覧表が空白であったため、まだ、未実施だとA看護師は思い込み、カルテでの確認をせず冷蔵庫に保管していたニューモバックス0.5mLをそれぞれ、5人の患者に予防接種を行った。
翌日、B看護師から前日にニューモバックス接種後の1人の患者の腕が少し発赤しているが予防接種を打ったのかと聞かれ、カルテを確認し、再接種したことがわかった。
通常は、ワクチンを指示日に実施出来ない場合には再度医師の確認をとり実施していた。
  • 予防接種の注射も他の薬品同様に個人ごとに薬局から払い受ける。
  • 注射の手順・マニュアル通りに実施することを徹底する。
  • 一覧表は予定表であり、全てカルテで確認の上注射を実施するよう徹底する。
  • 院内各病棟との情報共有を図り、予防に努める。
  • 院内の予防接種の注射薬に関する薬局とルール作りを行い、一括借り受けを廃止する。
記録等の記載

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
37 障害残存の可能性なし 在宅酸素療法用酸素ボンベ 不明 退院当日、病室の酸素配管から在宅酸素療法用の酸素ボンベに変更した。院内エレベーターに乗車中に呼吸困難を自覚、嘔気が出現。うずくまり冷汗著明となった。ストレッチャーに臥床させたところ症状は回復し、その時点でSpO2は90%台後半であった。その後は症状なく経過した。心原性、肺塞栓症、出血などによる失神の可能性を考え、経過観察のために退院中止とした。その後、携帯用酸素ボンベの圧力計がゼロであったことが判明した。 携帯用酸素ボンベは自宅にあったものを家族が持参したもので退院にあたり看護師は酸素流量は確認したが酸素の残量は医師、看護師、在宅酸素業者、患者とも確認していなかった。 在宅用酸素ボンベに切り替える場合は酸素残量が十分であるか確認する。 確認が不十分であった
 

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(医療事故)

No 事故の
程度
販売名等 製造販売
業者等
事故の内容 事故の背景要因の概要 改善策 調査結果
38 障害残存の可能性なし アドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」 テルモ 麻酔セットの中にアトロピンとアドレナリンが並ぶ形で配置されていたが、確認行動を取らずに、誤ってアドレナリンを1mg投与した。直後に頻拍発作、ST上昇が見られ、循環器医師コンサルタント。心エコーにて全体的に壁運動低下見られCAG検査施行となった。
  • 当事者の確認不足
  • 当事者は麻酔セットの中にアトロピンとアドレナリンの2種類が入っていることを知らなかった。
  • 麻酔セットの中にアトロピンとアドレナリンが並んで配置されていた。
  • 麻酔セットの中の注射薬配置変更
  • 使用頻度の少ないアドレナリンをビニール袋に入れ、使用までにワンクッション置き、気づかせる工夫
  • 指差し呼称の徹底
確認が不十分であった
39 障害なし ソル・コーテフ注射用100mg ファイザー 医師は「ソル・コーテフ100mg1v投与」を口頭指示した。処方する際にソル・コーテフ100mg1Vを処方するところを100V処方した。看護師は処方は手元にあったが口頭指示の「1V」のみで投与し、会計事務はあきらかに誤りであると判断し「1V」の請求をした。当事者がカルテ整理をしているときに誤りに気付いた。(医師が100Vの処方をしたが適正量の1Vが投与された事例)
  1. 当事者が以前、働いていた病院では単位を「mg」で処方することになっており単位がmgで統一されていた。今回も「100mg」で処方するつもりであったが、単位の確認が不十分で「V」であることに気付かず「100V」で処方した。
  2. 100倍という指示が処方できるシステムの問題がある。
  1. 院内安全対策セミナーで単位確認を十分行うように注意喚起した。
  2. 院内安全対策委員会で検討し電子カルテシステムで制御できないか検討している。
確認が不十分であった

システム

オーダリング時等の誤入力
40 障害残存の可能性なし ロピオン静注50mg 科研製薬 患者は、以前より「ロキソニン」の内服にて気分不良や血圧低下の副作用があり、また、前回の入院中では、「アセトアミノフェン」の使用後に喘息様発作を認めたことから、アスピリン(NSAIDs)喘息の可能性が高いとしてアレルギー情報にも登録していた。術後、疼痛の訴えに対し、アレルギー情報を確認しないまま禁忌薬のNSAIDsである「ロピオン注」を投与した。帰室移動中より呼吸苦や鼻閉感を訴え、帰室後には呼吸苦に加え嘔気が出現した。
SpO2(room air)は70台に低下、また収縮期血圧も60mmHg台に低下したため、アドレナリン0.1%0.5mLを筋注するなどして状態はようやく安定した。
今回の手術前におけるブリーフィング時には、アスピリン喘息の可能性からNSAIDsは使用しないよう注意喚起していた。しかし、手術時間は予定外の事象などから大幅に延長し、終了は夜勤帯となった。
このため、指導医が交替となったが、アレルギー情報については十分に申し送られなかった。また、この指導医は他の手術室の患者の抜管と重なるなどしていたため、アレルギー情報の確認を怠り、アレルギー禁忌薬の「ロピオン注」を投与してしまった。
  • 麻酔科の術前カンファレンスにおいて、アレルギーの有無を必ず確認する。
    薬剤アレルギーがある場合には「NSAIDsアレルギー」などのプレートを新規に作成し、途中で麻酔科医の交替があっても確認できるようにする。
  • 麻酔科セット薬品にアレルギー禁忌薬がある場合には、「使用禁忌薬」のプレートを挟むなど、誰がみてもわかるようにする。
  • 手術記録は、アレルギー情報が確認できるカルテとは別のサブシステムへの入力になるので、アレルギー情報が入力されているカルテも必ず確認することを徹底する。
確認が不十分であった
41 障害残存の可能性なし ルテオニン点滴静注50mg あすか製薬 術前に投与されていたルテオニン入りの輸液が、手術開始後術中に誤って残350ml全量急速投与され、ルテオニンの効果で子宮収縮がやや不良となり、高度の頻脈からVTを引き起こした。抗不整脈薬、β1受容体遮断薬投与後、Afとなり、術後ICU入室管理を要した。 通常溶解するメインの輸液を使用しなかった(薬品添付文書、当院のルールではTzに溶解するところをソルアセトFに溶解した。助産師は主治医にTzに溶解しないのか確認したが指示の変更はなかった。)通常のOP出しはソルアセトF単独輸液に切り替えてOP出ししている。
主治医は、OP出し時単味のソルアセトFがつながっていると思っていたがOP出しの助産師に確認していない。ルテオニンは輸液ポンプ管理だが、ソルアセトF単味と思っていた主治医は、OP出し時輸液ポンプははずしてフリー滴下で出すように助産師に指示した。助産師は輸液がソルアセトFであり、OP室も近いので輸液ポンプからはずしOP出ししてよいと判断し、手術室看護師に申し送った。3:22入室の深夜緊急OPであり、麻酔医は手術室準備のため、申し送りホールでの申し送りを聞いていない。手術室看護師は麻酔医に輸液情報の伝達を忘れた。麻酔医は入室時ソルアセトFがつながっていることは見たが内容の記載まで自身の目で確認していなかった。
手術室入室時は単味の輸液に切り替えてOP出しする。
ルテオニンは添付文書通り、Tzに溶解する。
ルテオニンは必ず輸液ポンプ使用を原則とし、フリー滴下は禁止する。
帝王切開緊急手術の申し送りは手術室のルーム内で行う。
麻酔医は入室時、輸液を自身の目で確認する。
病棟持参の輸液は原則使用しない。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
42 障害なし イオメロン ブラッコ 70歳代の虚血性心疾患の男性患者。ステント挿入後6ヶ月後の評価の心臓カテーテル目的で入院し、心臓カテーテル検査を実施した。心臓カテーテルの結果、手術適応と判断された。その術前検査のため、主治医は、造影CTを日未定でオーダし、同意書をオーダ画面より出力した。16時、造影CTの呼び出しがあり、検査室へ出棟した。患者は、造影剤投与後に蕁麻疹、咽頭違和感、血圧低下を認め、プレショック状態に陥った。
ステロイド投与、酸素投与を行い経過観察していたが、虚血性の症状が見られ、最終的には救急外来でミオコール等を使用し、症状の消失を確認して病棟へ帰棟した。
 当該患者は、以前から入退院を繰り返し、もともと造影剤(イオメロン)によるアレルギーがあるという情報があったが、今回の造影CTの際には、このアレルギー情報が共有されていなかった。共有されなかった背景に、循環器内科主治医は、造影CTをオーダした際に、造影CT検査の同意書を出力したが、患者に渡し、患者がチェックしたのか、医師が聞き取りを行いチェックしたのか記憶が定かではない。しかし、最終的には、造影CT同意書の内容確認はされていなかったため、造影剤アレルギーの有無の項目は「無」にチェックされていた。
 この同意書を用いて、CT検査室で、放射線科医師・看護師・技士でアレルギーの確認が行われ、更に、院内のサブシステムである放射線科RIS端末の患者情報を確認するとアレルギー情報はなかったため、アレルギー無と判断し、造影剤(イオメロン)を投与し検査を実施した。放射線科で使用されている端末は、院内のメインシステム(オーダリング)とはリンクしていないため、院内のメインシステムの患者プロファイルのアレルギー情報は反映されていない。
 病棟薬剤師は、患者の入院当日に、当該患者にアレルギーがあることを認識していたことと、外来カルテのアレルギー情報が記載されていることを把握しており、患者にひとつひとつアレルギー情報の聴き取りを実施していたため、正確なアレルギー情報を把握した。病棟薬剤師は、院内メインシステム(オーダリング)にアレルギー情報を入力し、アレルギー情報を医師に伝え、注意換気を促した。循環器内科医師は、心臓カテーテル実施前に、ステロイドの予防投与し特に問題なく検査は終了した。しかし、この情報は、同意書にも記載されず、院内メインシステムとサブシステムの情報がリンクしておらず、造影CT時に情報の共有がされなかったため、禁忌薬である造影剤(イオメロン)が投与された。
  • 循環器内科主治医の造影剤CT撮影時の同意説明の方法と問診が不適切であった。
  • 間違って記載される可能性のある同意書を用いて最終確認が行われている。
  • 院内メインシステムに入力されている患者アレルギー情報が、サブシステムの放射線科端末とリンクされていない。
  • 検査説明時の同意書の質を確保するための医師の教育を行う。
  • 中央部門との連携する際の、それぞれの責任を明確にする
  • メインシステムとサブシステムの情報共有の推進と調整を行う
判断に誤りがあった

記録等の記載

システム
43 障害残存の可能性がある(低い) デュロテップパッチ 不明 再生不良性貧血で当院血液内科外来通院の患者が,嘔吐頻回,下肢脱力感出現したため,夜間救急外来受診し,精査目的で緊急入院となり,翌日に意識レベル低下(SPO2=60%台)したためICU入室,挿管され呼吸器管理となったもの。救急外来時に医師が麻薬使用の有無について本人及び患者家族に確認し,使用していないとの返答があったが,清拭時にデュロテップパッチ8.4mg3枚が貼られているのを発見し,直ちに除去した。除去後症状改善し,リハビリのため転院。デュロテップパッチ過剰貼付のため,嘔吐,下肢脱力,呼吸抑制等の症状が出現したと考えられる。 デュロテップパッチは他院にて処方(デュロテップパッチ8.4mg10枚を3日毎に1枚ずつ交換するように指示)されたものであり,本院にて把握していなかった。増量可能であったかは不明。
患者及び患者家族に麻薬の認識・使用法についての理解がなかったために聞き取りによる確認で発見ができなかった。また、入院が夜間で、患者が既に部屋着を着ており、入院時の着替えをしなかったため、全身の確認を行っておらず、視診による確認が遅れた。
入院時には、患者の全身の隅々まで観察し、記載にない湿布や貼付剤の使用がないか確認する。 患者・家族への説明
44 障害残存の可能性なし 不明 不明 昨日主治医に「点鼻薬の使用量を間違えた」と母親から電話連絡があり、本日外来受診。来院時母親に聞いたところ、20時にデスモプレシン0.025ml使用するところを0.2ml点鼻したとのこと。20時~8時まで排尿無かったが8時過ぎに350mlの排尿があった。患者の体調は特に変わりなかった。医師診察後、デスモプレシン点鼻薬は中止となり、デスモプレシン・スプレーに変更になった。 入院中は、看護師が点鼻薬の指示投与量をチューブに入れ、患者に手渡していた。
母親によると、退院時点鼻薬の使用方法の説明を受けたが、説明した看護師も分かっていなかったようであり説明が理解できなかったとのこと。また、理解できなかったが説明書が付いていたので「まあいいや」と思ってそのままにして帰ってしまったと話す。退院説明を行ったのは、就職した新人看護師であった。
薬剤師が、退院指導に関わることは、まだ一部の症例のみで、当該事例病棟での薬剤師による退院指導は施行されていない。
退院指導として、点鼻薬の練習を行う。もしくは退院後は使用方法が理解しやすく簡単に投与できるスプレータイプに変更することを医師と相談する。退院時親を含めて最終説明を行い、分からないことがないか再度確認する。 知識が不足していた・知識に誤りがあった

患者・家族への説明
45 障害なし なし なし 糖尿病にてインスリン強化療法を行なっていた患者。退院後のインスリン量調整のために、急激な血糖値低下を確認。早朝から昼食前にかけて血糖値は200台を推移していることや、当日朝プレドニン内服行なっていること、昼食時食事量が全量であったこと等から、急激な低血糖の原因は患者本人によるインスリン過剰投与である可能性も十分考えられた。
過剰なインスリン投与により、退院後低血糖起こすことも考えられたために、指導医から時効型のみで血糖管理を行なうよう指示があった。インスリン量の変更のため、カルテ、処置オーダー、指示簿に速効型インスリン中止する旨記載する際、指示簿のみ時効型インスリンを中止するよう誤って記載した。翌日、朝のインスリン皮下注射の際に指示簿にて確認した看護師により速効型インスリン皮下注。血糖値は87と低血糖状態ではなく、症状も特に呈していなかった。同日夕、指導医により指示簿のみの記載があったことが確認され、病棟担当Nsに連絡を取ったところ速効型インスリン皮下注したとの報告があり、指示簿の修正と共に患者本人の状態を確認する形とした。
自分に余裕が無く仕事をしていた。 指示簿、カルテを記載する際は、食い違いが生じていないかを確認していく。上級医確認の周知徹底。 記録等の記載

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
46 障害なし バレリン錠200mg 大日本住友 17時に病棟師長より誤薬調剤の報告があった。
当該患者の1週間前の処方を確認し、「1日量でバレリン200mg錠 9錠 (計1800mg) 7日分」であったが、「バレリン100mg錠 9錠(計900mg)7日分」を調剤し、病棟に払いだされ、5日間服用されていた事が判明した。患者はその間に2回の発作を起こしている。直ちに病棟に行き、看護師長、主治医、副薬剤部長とで患者家族に誤薬があった事を報告し謝罪した。主治医に確認後、直ちに200mg錠に戻し、夕より開始となった。
  • バレリン錠は200mg、100mgの2種類の規格が採用されており取り違えを防止するために薬剤棚の場所を離しておいたが200mgの表示がバレリン錠のみの表示で200mg規格が抜けていた。
  • 規格違いの薬剤の取り違い防止対策として場所を離しておく、「複数規格あり」の表示をする等を行っていたが、調剤時に複数規格のある薬剤では調剤時に規格確認のためにレ点を付けているが今回は調剤者、確認者ともにこの確認作業を怠っていた。
  • 通常、調剤を行う場合には調剤者、最終確認者とも規格が数種類ある場合には指差し呼称等により規格の確認を行っている。
今回の事例では調剤者、最終確認者2名ともにバレリン錠が2規格あることは知っていたが、調剤者は処方箋を見た時点で品名のみを確認して規格の確認(指差し呼称等)を実施していなかった。また最終確認者も同様に品名、数量の確認だけを行い規格の確認を怠っていた。
  • 病棟で与薬時に、「バレリン○錠」mg数を言っていなかった。
  • セット時に薬剤シートをはさみで切って、貼付用紙にホチキスでとめているため表示がわかりにくい。
  • 当センターでは全ての処方箋について処方歴の確認は行っていない。一部の薬品(ハイリスク薬、副作用の発現防止のため漸増が必要な薬品)についてのみ確認をしている。
  • 調剤の流れは下記の順番になります。処方箋の疑義照会は(4)、(5)で主に行う。
    1. 電子カルテよりデータの抽出
    2. 部門システムへのデータ移行
    3. 部門システムより処方箋、薬袋の発行
    4. 調剤
    5. 第三者による最終監査
    6. 病棟への交付
<薬剤>
薬品棚の表示方法(単位数)再確認、電子カルテ薬剤名、複数規格<大><小>明示調剤時、バーコードリーダーチェックの導入検討処方箋にチェックボックス□を印刷し調剤時の規格確認を徹底させる指導、機会ごとに「どんな小さな出来事でも、大きな事故につながる」ことを強調し、常に「危機意識」を持ち、業務にあたるよう指導する。
<病棟>
服薬指導を導入。薬のセット方法を検討。与薬時は、薬剤名、単位数、錠数を指さし声だし確認。
確認が不十分であった
47 障害なし 炭酸水素ナトリウム「ヨシダ」 吉田製薬株式会社 処方調剤中に使用していた乳糖の薬瓶が空になったため、予備の薬瓶を使用したところ、薬剤の色調および粒径がそれまで使用していた乳糖と異なることに気付いたことで、散薬の一部に調剤間違いがあったことが発覚した。重曹の出庫記録から、発見日から4日前までに乳糖の薬瓶に重曹が充填されていた可能性が高く、2日前に調剤した薬剤のpH試験を行ったところ、2日前の薬剤はアルカリ性反応がなかったが、前日分と当日分の薬剤はアルカリ性反応があり、賦形剤として乳糖ではなく重曹が調剤されていたことが分かった。
1回分の散薬の服用量が少量の場合、直接治療上の効果に影響ない賦形薬として「乳糖」を加えることで患者が服薬しやすい分量として調剤を行っている。今回、散薬の一部に「乳糖」を加えるべきところ、誤って「重曹」として調剤された。この事例は、「乳糖」が入るべき薬瓶に「重曹」を取り間違えて充填されたことが原因と判明した。
対象となったのは1日目の処方分で入院32名、外来1名、2日目分の処方分として入院27名、外来3名の患者。
誤って調剤された重曹は1回分0.2gと少量であり患者の治療および健康に直接的被害を及ぼす可能性は低いと考える。
  • 保管している乳糖や重曹は商品の包装のままビニール袋に入っており、そのビニール袋は薬剤名の記載がある箱に入っている。中のビニール袋には薬剤名やバーコードの記載はない。
  • 粉末の薬剤の中には、100g入りの商品も出ており、100g入りだと薬瓶に詰め替えることなく使用することができるため、作業も簡便となる。乳糖や重曹は500g入りの商品しかなく、調剤のためには薬瓶に充填する必要がある。
  • 乳糖と重曹のストックは、調剤する台の一番下に同じカゴに入れ保管してあった。充填する際は、カゴはそのまま置き、該当する薬剤の箱のみ取り出していた。
  • 散剤充填システム(認証作業)は、1)画面上の「充填モード」をタッチする、2)薬剤の箱に印字されているバーコードを読み込む、3)薬剤部共通のパスワードを打ち込む、4)薬瓶の底に埋め込まれているチップを読み込む、5)認証終了となるが、箱と薬瓶が間違っていた場合に画面に警告が出て、音が鳴るようになっている。
  • 散剤充填システムの警告音は、集塵時の音などで業務中の調剤室の中で聞くには低く、小さく感じる音であった。
  • 散剤充填システムの警告画面は、警告画面が出たとしても無視して、そのまま作業を進めることが出来る仕様であった。しかし、警告画面は無意識に消してしまうようなものではなかった。
  • 散剤充填システムは、マニュアルもあったが、ほとんど使用されていなかった。その理由として、「画面の見にくさ」「警報音の音量が小さい」「認証システムの使いにくさ」がある。
  • 散剤充填システムの過去データを見ることはできるが、充填作業の記録は必須にはなっていなかった。
乳糖と重曹を別のカゴに保管し、今までと同じ台の下に2段に分けて保管することにした。必ず、充填認証システムを使用することとし、「充填認証システムの認証と記録の追加」「乳糖と重曹の置き場の変更」「充填認証記録を毎日チェックする」をし、充填時のマニュアルを遵守することの徹底。
充填記録(いつ、誰が、充填したか)を残し、管理者が毎日確認するようにした。
確認が不十分であった
48 障害なし パセトシン細粒 協和発酵キリン 患児Aに投薬するために準備していたパセトシン細粒を、誤って患児B(個室で隣の部屋)に投薬した。
患児の体重はいずれも13kgだった。
  • 1つのトレイに2人分の内服薬を準備した。
  • 散剤を溶解するために薬袋を取り上げた際に、思い込みがあった。
  • 投与時に、患者確認を怠った。
  • 患者誤認をしないという思い込みがあった。
  • 幼児であったため、本人にフルネームでの確認は可能であったため、年齢を考慮してフルネームでの確認を厳守する。
常に患者誤認のリスクがあることを認識し、
  1. 薬剤の準備は、1患者1トレイの原則を厳守する
  2. 薬剤投与の5Rを厳守する
  3. 入室する時、溶解する時、投与する時にはベッドネームやネームバンドでの患者確認を厳守する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
49 障害なし セルシン 武田 アルコール摂取後に嘔気嘔吐、悪寒戦慄、めまいで救急外来を受診した患者。セルシンを静注するよう指導医から指示され,実施前にも指導医と確認し合ったが,分注していた量(指示量の2倍量)を静注してしまい呼吸抑制をきたした。速やかに呼吸状態は安定し、独歩帰宅可能となった。 注意深く確認をしなかった。 投与量は十分確認してから投与するよう注意する。 確認が不十分であった
50 障害なし セレネース, ジゴシン 大日本住友,
中外
病棟で患者の点滴準備を実施していた。薬局で準備された点滴カートから薬品を取り出し確認し、患者氏名の貼り付け作業をしていたところ、“セレネース1A”のところが“ジゴシン1A”が用意されていたことに気付いた。薬剤部に確認してセレネースに交換してもらい患者に影響は出なかった。
  • セレネースとジゴシンは包装が類似している。・薬剤の混注前に確認作業で誤りに気付けたため、患者への影響が防げた。
  • 包装や形状、色など見た目が類似している薬剤は多くあることを再認識する。・ダブルチェックによる確認作業の重要性を再認識し、各部署できちんと確認作業を行う。
確認が不十分であった
51 障害残存の可能性なし プラビックス錠 75mg サノフィ・アベンティス 頚髄症の診断にて,他院から当院紹介があり,椎弓切除術目的で転院となった患者。冠動脈ステント術の既往があるため,入院時から抗凝固剤(ヘパリン)の持続注入を開始。前医からの退院時要約には「バイアスピリン,プラビックスについては内服中止」と記載があったが,一包化された薬袋からプラビックスは除去されておらず,バイアスピリンについては,除去されているものと,そうでないものがあった。看護師Aは中止している抗凝固剤はバイアスピリンのみであると思い込み,一包化された薬袋のうち,バイアスピリンが除去されていない薬袋からバイアスピリンだけを抜いた。薬剤師Aは持参薬確認表を確認したが,気づかなかった。その後、看護師Aが内服薬をチェックした際,手術前に中止するべきプラビックスが一包化された薬袋に含まれていることに気づき,主治医に相談,出血リスクが高いと判断し,手術を延期したもの。1週間後に頸椎椎弓形成術を施行となった。
  1. 看護師及び薬剤師による入院時の持参薬の確認が不十分であった。「中止のため抜く必要がある」と読み取れたが、バイアスピリンのみと誤認し、プラビックスを除去し損ねていた。
    持参薬確認表に記載されていた薬剤:ラシックス(20)、アポラスノン(25)、バイアスピリン(100)、プラビックス(75)、ニフェランタンCR(20)、ブロプレス(8)、アクトス(30)、ニコランタ(5)、ガウトマロン(50)、グリメピリド(3)、グリメピリド(1)、アトルバスタチン(10)、ファモチジンD錠(20)、ケントンカプセル(200)、メチコバール(500μm)
  2. 看護師による持参薬確認の際,薬の効能についての知識が不十分であった。
  3. 医師による持参薬に関する指示が口頭のみであり,また医師による「持参薬確認表」の確認及びサインができていなかった。
  4. 基本的に持参薬確認表は薬剤師が作成するが、休日、夜間、入院患者が多い平日は看護師が作成し、その後、薬剤師が確認し、主治医が指示を出す。
  1. 持参薬と転院元の退院時要約の記載内容をダブルチェックする。2.土日祝日等看護師が持参薬を確認する場合は薬の効能について確認する。また土日祝日明けに薬剤師が「持参薬確認表」と持参薬を確認し整理する。3.医師は入院時に持参薬の内服指示を入力する。また,持参薬の内服中止指示も必ず入力する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
52 障害なし ワイパックス,
エビリファイ
ファイザー株式会社,
大塚製薬株式会社
自己管理の患者が服薬時間を理解できておらず、13時に「朝のくすり飲んでいないんだけど、いつ飲んだらいいですか?」と確認に来た。朝薬はなく、就前薬を服用しようとしていた。 自己管理能力のアセスメントが不足していた。 患者指導を重点的に実施しながら、確認を徹底して行うことで自己管理の継続を図る。 判断に誤りがあった
53 障害なし ポリフル細粒,
酸化マグネシウム
アホットジャパン株式会社,
持田製薬株式会社
自己管理の患者が20時に服薬した薬包を看護師に確認させに来た際に、持参した薬入れに薬が残っているのを発見した。 自己管理患者の朝の薬包を看護師が確認不足であった。 服薬ごとの確認を患者と共にきちんと行う。 確認が不十分であった
54 障害なし ネオシネジン5mg/1ml/A,
エフェドリン 40mg/1ml/A
興和製薬,
大日本住友
自然気胸の手術の為、麻酔導入後、左主気管支に挿管した。左側臥位にて挿管チューブの位置等を調整していたところ、血圧が47/19mmHgに低下。薬剤準備カートからエフェドリン40mg/1ml/1Aを投与しようと思い、近くに配置されていた塩酸フェニレフリン(ネオシネジン5mg/1ml/1A)を取り出し、生食8mlに希釈し1.2mg投与した。
血圧57/23mmHgと低値遷延しているため、エフェドリンと思い準備したフェニレフリンを1.2mg投与した。HR30台に急激に低下した。Sp0294% 収縮期血圧140mmHg HRの低下に対してエフェドリンと思い準備したフェニレフリンを1.2mg投与し、更に1.2mg追加投与した。(合計4.8mg投与)
一時的にHRは正常になったが2段脈からVT出現しリドカイン60mg投与にて改善した。その後、指導医師が薬剤カートを確認した際に、塩酸フェニレフリン(ネオシネジン5mg)の空アンプルを発見。エフェドリンは未開封であったことから薬剤の誤投与が発覚した。VT出現という危険な状況に陥ったこと及び、心臓精査の必要性も考え手術は中止となった。手術後の患者の意識レベル清明。一般状態は安定していた。3日後、再度手術を行い、軽快退院となった。
  1. 麻酔用薬剤カート内の配置が近かった為、取り違えた。
  2. 外観が1mlのアンプルで類似していた。
  3. 薬剤を取りだした時、投与する時、投与後のアンプル薬剤名の確認をしなった。(確認行為の教育が徹底していない)
  4. フェニレフリン(ネオシネジン)5mgを採用しているが、間違えた時の影響度を考慮することが不足していた。(間違えても身体的影響が少ない方法の選択)
  1. 塩酸フェニレフリン(ネオシネジン)5mgから塩酸フェニレフリン(ネオシネジン)1mgに採用を切り変えた。
  2. 薬剤投与時の確認方法の周知徹底
確認が不十分であった
55 障害残存の可能性なし イオパーク300 100mL 富士製薬工業株式会社 15時頃、肺がんの疑いでCTガイド下経皮針肺生検を施行。CTで左胸腔内の液体貯留を認め血胸と診断したため、出血源の検索、止血処置目的で放射線科にコンサルトした。家族に塞栓術の施行と造影剤使用によるアレルギー出現の可能性を説明して同意書を取得し、血管造影室で放射線科医師が肋間動脈を造影したが出血部位は同定できなかった。その後、血圧低下を認めたため、出血性ショックや造影剤アレルギーを疑いカルテを再確認したところ、造影剤アレルギー既往が判明し、妻にも再確認して造影剤ショックと診断した。その後、昇圧剤、ステロイド等の投与にて血圧が回復した。 CTガイド下経皮針肺生検での血胸の発生率は0.092%と非常にまれな合併症のため、医師は造影剤アレルギーに対して事前確認していなかった。病棟看護師と血管造影室の看護師間の申し送りでは、造影剤アレルギーがあることは申し送られていたが、緊急造影検査のため医師に伝えることができなかった。 CTガイド下経皮針肺生検患者については、診療科の事前カンファレンスで造影剤アレルギーについて全員確認する。造影剤アレルギー情報に対し、医師、看護師、放射線技師など職種を超えた情報共有を徹底する。 確認が不十分であった
56 障害残存の可能性がある(高い) シスプラチン点滴静注液 マイラン製薬株式会社 両親へ症状・治療説明を行い、化学療法を開始することの同意を得た。その後、化学療法開始。主治医はプロトコルを見ながら電子カルテに薬剤を手入力した。入力を中断し、すぐに再開したが、その際次のページのプロトコルと見間違い、予定していたプロトコルと異なる内容を入力した。この際ダブルチェックは行っていない。医師は間違ったプロトコルのまま処方オーダーを行い、1日目の化学療法はを施行した。翌日からは休日だったため、主治医は外来診療終了後に、当該患者の3日分の処方オーダーを行った。処方の時間が時間外であったため、主治医が薬剤部へ取りに行き3日分が払い出された。薬剤師はシスプラチンの量が多い、とは感じたが、小児化学療法は実質的に1人で行っていたために、処方した医師を「この医師なら間違いはないだろう」と信頼し、疑義照会をしなかった。4日後、腎機能悪化を認め、予定されていた薬剤の投与を中止。また、患者より聴力障害の訴えがあり、再度、プロトコ-ル内容を確認した結果、シスプラチンが4倍投与(シスプラチン 計360mg)されたことが発覚した。 実施された化学療法は、これまでにも実施回数が少なく、また、小児科の場合、薬剤処方が成人と異なり体表面積や体重計算など調製が細かく複雑で、今回、処方プロセス及びシステムを検証したところ対応が不十分であったことが判明した。
化学療法のレジメン登録は、一部行っていたが、小児科での登録は投与量の問題、患者の個別性が大きいことから行っていなかった。
小児科は4名の医師で対応していた。化学療法は実質的に1人で行っており、相互にチェックする仕組みは機能していない。また、当該医師は、外来など日常診療の負担もあり多忙であった。
当該医師は外来終了後、時間外に処方オーダーを行ったため、化学療法担当薬剤師のチェックが手薄なまま払い出しが行われた。
レジメン登録を行っている化学療法については、薬剤師がレジメンの確認、ミキシングを行っている。登録されていないものについては、薬剤部は薬剤を払いだすのみであり、病棟で医師・看護師(小児科については医師)がミキシングを行っている。
輸液に関しては準備から実施まで全て医師が行っているため、病棟看護師は指示簿に記載された化学療法の内容を見て、指示受けを行ったが、指示に関しておかしいと思った看護師はいなかった。
病棟薬剤師は一部のみ配置されている。服薬指導がメインとなっており、化学療法にはほとんど関与できていない。
再発防止に向けて、院内における化学療法の処方システム及び診療科の体制について再検討し、ほとんどのプロトコルをレジメン登録した。
レジメン登録されていない化学療法の薬剤の払い出しに際しては、該当部分を明示した文献の添付を義務付けた。
医師1名を増員、外来の担当を免除する、他医療機関への患者受け入れなど、診療科のサポート体制を強化した。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
57 障害残存の可能性なし なし なし 複数の病院から大量の薬剤を処方されており、抗甲状腺薬のメルカゾールの処方指示がもれた。 当直帯での処方薬剤の確認および引き継ぎが不十分だった。 必ず当直帯、日勤帯での指示一般のダブルチェックを行う。 確認が不十分であった
58 障害なし フェノバール散10% 藤永 他院から転入院。持参薬は、(1)フェノバール散10%、1回0.9g 一日1回夕食後 (2)ダントリウムカプセル25mg 1回1C一日2回朝夕食後 (3)リオレサール錠5mg 一回1T一日2回朝夕食後 (4)セディール錠10mg 一回1/2T、一日1回夕食後、であった。(1)は1週間分、(2)-(4)は3、4週間分の残薬があった。入院から1週間後、(1)フェノバール散10%を20日分追加処方した。その後、再処方時に医師は(1)~(4)すべて2週間分処方のつもりでカルテに記載したが、手書き処方箋に(1)フェノバール散10%を記載せず、フェノバール散10%が処方されなかった。再々処方日、看護師がフェノバール散10%が処方されず服用していない事に気づき医師に報告した。 医師1人の忘れたことが確認されなかった。 薬剤師の確認、看護師の確認、医師の処方後の投与薬剤の確認を行うこととした。 確認が不十分であった
59 障害残存の可能性なし 5-FU 協和発酵キリン株式会社 3コースの3日目、5-FUは側管からポンプで3-4ml/hで投与、メインルートは、初日のシスプラチン投与の腎保護のため大量補液で、ポンプを使用し110ml/hで投与されていた。担当看護師が、患者入浴後に抗がん剤を別の看護師とダブルチェックののち再開したが、輸液ポンプの上で点滴棒が廻ったと思われ、ルートが交差していたのに気づかず、2ルートを逆に設定して再開したため、5-FUが110/hで投与された。5-FUの5日間持続点滴の残量であるday3-day5の5-FU:3515mgが1時間45分で投与された計算になる。事故発生後、通常よりも早くから口腔粘膜障害が出現し、投与後2週間で、好中球0になり骨髄抑制が強く現れ、遷延した。対症治療でグランや血小板輸血を行い、徐々に軽快、事故後約1ヶ月の入院加療となった。 1.)輸液を投与する際の基本的な事項が確認出来ていない。
2.)ダブルチェックができていない。ダブルチェックを依頼された看護師は、担当看護師が十分確認を行っているものだという安心感から、5FUの輸液ボトルと残量のみを確認することしかしていなかった。
3.)投与再会後、再度確認を行っておらず、発見が遅れた。
4.)注意喚起のために輸液ポンプ及び5-FUのルートに「5-FU」のシールを貼っていたが、大丈夫だという思い込みから、効果が発揮されなかった。また輸液ポンプの高さを調節するネジが緩んでいることが多く、ドアや体にあたると容易に向きが変わりやすい状況にあった。
5.)抗がん剤を取り扱うことが多く、慣れから抗がん剤を扱う緊張感が薄れていた可能性がある。
  • 抗がん剤の取り扱い、輸液ポンプの準備と管理の看護手順を遵守する。(輸液ボトルから針刺入部まで指で辿って、指差し・声だし確認を徹底する)
  • ダブルチェックは依頼された看護師が、間違いがないか確認することであることを再認識し、ダブルチェック基準・手順を遵守する。
  • 抗がん剤は毒性のある薬剤であり、医療者の管理不足により、高度な副作用、場合によっては治療関連死のあることを再教育する。
  • 5-FUの5日間持続投与方法について多職種で、再検討する。
  • 5-FUの5日間持続投与方法は、一日分を調剤して、毎日更新することに変更した。
確認が不十分であった
60 障害残存の可能性がある(高い) ロプレソ-ル錠20mg ノバルティスファ-マ 心臓造影CTのために通常心拍を60回/分以下にするため、β-遮断剤(ロプレソ-ル)を検査1時間前に内服させる。患者は心機能が悪かったため、主治医は内服しないと問診票に記入し、研修医に見せ、カルテのポケットに入れていた。もともと心臓弁膜症や冠動脈バイパス術後でもありβ-遮断剤(ア-チスト)を内服していた。研修医は問診票のことを忘れ、ロプレソールの処方と内服指示を指示簿に入力した。検査当日、看護師は指示簿を見て、処方されたロプレソ-ルを患者に渡して内服の確認を行った。検査前、病棟から放射線部門の看護師への申し送りは、指示簿に基づいて作成された申し送り書で行った。その際に、ロプレソールを内服したことは申し送られたが、持参薬アーチストについての申し送りはなかった。
検脈時、心拍60台。13:00より心臓造影CT施行。検査中は心拍40台であった。放射線部の看護師は次に行う透析室でモニタリングされると思い、病棟看護師にはバイタルサインの変化を伝えず、検査終了後の搬送は看護助手が行った。13:40検査終了し帰室後、昼食摂取中、14:10ベッド上で意識消失しているところを看護師が発見する。心拍30台、房室ブロック出現。昇圧剤投与後、血圧89/46mmhg。体外式ペ-スメ-カ-挿入することとなる。この時点で徐脈の原因がβ-遮断剤の重複内服によるものではないかと発覚した。その後、自己脈や混合脈で60~70回/分で経過し、抜去した。
指示を出した研修医はローテーションで4月から循環器内科に勤務しており、前の診療科である心臓外科でも心臓造影CTは実施されており、その際、ロプレソールを内服させることの知識はあった。
使用された問診票は心臓外科及び循環器内科独自のもので、院内で登録された文書ではなく、心臓外科、循環器内科の医師や外来スタッフ、放射線部門のスタッフ以外はその存在や運用について知らなかった。病棟においても、医師は問診票を印刷してカルテポケットにいれていたが、病棟看護師はその存在を知らなかった。循環器医師は病棟看護師も問診票は知っているものと思い込んでいた。
心臓造影CTにおいては、問診票、指示簿、放射線部門システム(RIS)の3種類の情報があり、外来では問診票、病棟では指示簿、放射線部門ではRIS、の情報を優先して業務が行われていた。
放射線部門の看護師は、問診票、RISの両方の情報を指示として、臨機応変に心臓造影CT患者に対応していた。
RISは電子カルテシステムとは別システムであり端末も異なっている。患者の基本情報など一部を除き電子カルテシステムとのリンクはなかった。
病棟では指示簿に基づいて看護業務が行われるため、病棟看護師は指示簿通りにロプレソールを投与した。
患者は検査前日に入院したため、研修医は持参薬継続指示を出す以前に、心臓造影CTのためのロプレソールの処方を行っており、後に持参薬継続指示を行った際にβ-遮断剤が重複していることには気付かなかった。
心臓造影CT施行の患者でβ-遮断剤の重複内服をしている患者は他にも多数いるが、この患者の場合、意識消失の既往があるため一概にβ-遮断剤のみで徐脈(房室ブロック出現)になったかどうかは不明である。
薬剤部では、β-遮断剤を内服している患者が心臓造影CTを受ける際、ロプレソールを併用することがあるため、疑義照会の対象とならなかった。
検査終了後、放射線部門の看護師は検査中のバイタルサインの変化を病棟看護師に伝達しなかったため、看護助手が搬送を行った。
1.医師・研修医は患者の持参薬を確認して指示する。
  • 心臓造影CT検査でβ-ブロッカ-剤を投与するかは、医師が電子カルテの指示簿に入力し、同時に処方する。看護師は指示簿を確認して指示を受ける。
  • 入院患者の心臓造影CTの場合、病棟では問診票は使用しない。医師が指示簿に入力する前処置をセット化 し、確認の漏れがないようにする。
  • 放射線科より、入院患者の心臓造影CTの運用について全診療科に通知を出し周知した。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
61 障害なし 不明 不明 内服薬をPTP包装のままカップに7個入れたものを遅出の看護師が患者に渡した。患者はいつもは薬が裸錠でカップに入っていたため、そのまま口に入れたところ痛みで吐き出した。そのことを担当看護師に伝えたが、誤飲したとは考えず、吐き出されたPTPから裸錠にして個数を確認しないまま投薬した。翌日になって、患者からこの出来事を聞いた看護師が誤飲の可能性を考え主治医に報告。レントゲン撮影でPTP状のものが映し出され、内視鏡での異物除去を行った。誤飲した薬の数が不明であり、経過観察を要した。
  • 患者は弱視があり、PTP包装のままであることがわからなかった
  • 投薬した看護師は患者とは別のチームで、弱視等の患者情報を把握しておらず、自分でPTPから取り出せると判断した
  • 看護師が管理する薬剤の与薬の手順では、患者が嚥下するまでを確認することをルールとしているが、守られなかった
  • 投薬した看護師は部署経験が約半年で、院内の手順を知らなかったもしくは聞いていたが忘れていた
  • 手順の再周知
  • 自己管理以外の投薬時は、患者のところにPTP包装のまま薬がいかないようにする
  • 可能な範囲での薬剤の一包化
判断に誤りがあった

連携
62 障害残存の可能性がある(低い) オムニパーク140注220mL 第一三共 ヨード造影剤アレルギーの既往がある患者にヨード造影CTを施行し、アナフィラキシーショックが起きた。電子カルテ導入となっていたが、紙カルテにはアレルギー記載があったが電子カルテ上にはアレルギー情報の記載がなかった。患者に造影剤使用CTの同意書をもらい、造影剤副作用の確認をすると副作用歴はないとのことであった。造影剤オムニパークを110ml注入し、撮影した直後に悪心の訴えあり。血圧60台に低下、手足は冷たく顔色不良、紅潮なし。呼吸苦の訴えあり、酸素投与開始。ボスミン使用し血圧上昇。 電子カルテ導入に伴い、アレルギー情報が継続されていなかった。問診し副作用歴がないこと、同意書があったことでアレルギーはないと判断した。 電子カルテ上のアレルギー情報の記載を徹底する。 確認が不十分であった

記録等の記載
63 障害なし なし なし 午前1時、9時、17時と1日3回抗生剤が投与されていた。午前9時日勤看護師が抗生剤を接続しようと患者の接続点滴ルートを確認したところ、午前1時に夜勤看護師が抗生剤を取り違え、他者の抗生剤を投与されたと思われる抗生剤が接続されたままになっているのを発見する。投与終了後より、既にかなり時間が経過しており、経過観察となる。 カートに6名分の抗生剤を名前を表にしてのせ、1部屋ずつ抗生剤の投与を行った。通常部屋の前の名前、ベッドネーム、点滴の名前を確認し投与を実施していたが、名前の認識を思い込み他患者の抗生剤を投与してしまった。 薬剤と氏名の確認を改めて徹底する。原則に従い1患者1トレイとして行動する。 確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
64 障害残存の可能性なし オーラップ錠3mg,
クラリス錠50小児用
アステラス,
大正製薬
風邪にて外来受診、抗生剤も必要として、急ぎのこともあり、院内処方でクラリスを処方。薬剤師は院外処方の内容を知らず、そのまま渡し、昼に内服した所、いつもと異なる傾眠傾向となった。家族からの連絡で確認した所、併用禁忌薬であった。 院内外で処方されていたため薬剤師も確認できなかった。医師の処方薬に関する知識が不足していた。 月ごとの処方は院内院外の統一。院内薬剤師も他の処方薬の確認することとした。 確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
65 障害残存の可能性なし リオレサール錠5mg ノバルティス 薬包に朝昼夜の投薬時間帯が書かれているにもかかわらず、夕食後分が一回分足りず、朝食後分が1回部分多いことに気づかれた 確認できない状況があるが、おそらく投与薬包を間違えたものと考えられた 朝昼夕の区別を色分けにする。薬剤名も袋に記載する 確認が不十分であった
66 障害なし フェノバール散10% 藤永 外泊帰りの早朝、朝食後服用薬を飲んでいないため、帰院時に内服させ、さらに別な看護師が帰院後の朝食後に内服薬を服用させてしまった。
その夜、翌日の予約準備で朝の分が不足している事に気づかれ、当日朝の予約担当者に確認し発覚した。
帰院後の服薬記録方法が確率されていなかった。
飲ませたか飲ませなかったのか、複数の看護師が別々な所で確認したため情報の共有がなされなかった。
服薬記録を取ること、ひと声かけて次の介護者に申し送ることとした。 確認が不十分であった
67 障害残存の可能性なし セルシンシロップ0.1% 武田 胃瘻造設の患児に食後薬を注入、容器返却で別な患者のネームのついた注射筒であったことに気づいた。 注射筒に書いてある名前の確認がされなかった等、リスク回避の手順を行っていなかった。 複数の職員で確認することが形骸化しないようマニュアル読み合わせ等を行う。 確認が不十分であった
68 障害残存の可能性なし 不明 不明 慢性のうつ病で外来通院中の患者が今回電気痙攣療法を受けるために入院になった。その前に、他院の禁煙外来にかかっておられチェンピックスという禁煙補助薬を処方されていたが、入院前に、当院に入院になった際の質問をされたので、外来主治医から、「紹介状を持ってきていただければ当院でも禁煙の継続治療と同薬剤の処方が可能と思います」と伝え、入院前にも同様の確認があったので病棟医長からも同じ内容の旨が伝えられた。
しかし、チャンピックスは院外処方のみ可能であったため、実際には院内での処方が不可能であったため、当初の予定とは異なり、同薬剤を処方してもらうことができなかった。そのため、患者が立腹され、外来主治医として謝罪はしたものの「これは重過失である。余分に費用負担などがかかるようなら病院側で負担してほしい」などと繰り返した。患者相談室にも苦情を言われたとのことで、対応を相談中。
相談された際に禁煙外来があるので当然チャンピックスが院内処方も可能であると考えてしまい、そのことを確認しておくことをしなかったことが最大の問題であろうと思われた。 患者が他院で薬を処方されており、入院後に院内での継続使用の可能性を尋ねられたら、実際に処方可能かどうかを確認する。 確認が不十分であった
69 障害残存の可能性なし ハイカリックNC-L輸液 テルモ 規定の速度より倍以上も速度指示したため、高血糖症状を起こした。 使用する薬剤の注意事項を十分理解していなかった。 輸液内容、速度について医師だけでなく、薬剤師、看護師のチェックも入れる。 確認が不十分であった
 

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(MRIに関連した事例)

No. 事故の
程度
事例の内容 背景・要因 改善策 評価案
70 障害なし MRI検査施行にあたり画像検査上、造影剤使用での検査が必要と判断し、造影剤を静脈注射し、撮影終了後、読影時に慢性腎不全及び透析導入中のカルテ記載に気付く。造影剤メーカーと相談し、早急の透析が望ましいと判断し当院腎透析科へ相談したが、当直時間帯でスタッフがおらず本人が院外にいたため、従前より透析をされている近医での対応が望ましいのではないかと返答であった。近医連絡し夜間透析可能との返答いただき対応をしていただいた。 造影剤準備・使用時に他の患者の入れ替え等に対応し、注意散漫となっていた。
また、造影剤使用判断時に問診票・質問票の目視確認が疎かであった。
  • 造影剤使用検査時の問診票・質問書等の各スタッフの目視確認。
  • HIS及びRIS上の注意項目の視認性の向上。
  • MRI検査前の腎機能測定の必須化及び検査施行の可否を含めた厳密化。
  • 検査依頼伝票(紙伝票)の腎機能に関する欄の記載の徹底化及び記載項目追加。
確認が不十分であった
 

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(自己管理薬に関連した事例)

No. 事故の
程度
事例の内容 背景・要因 改善策 評価案
71 障害残存
の可能性
なし
肺炎治療のため、プレドニンの内服を自己管理で行っていた。本人用の薬ボックスで患者が自己管理していた内服薬が、6日前に切れていたのを発見した。処方箋には小さい字でボックス管理されていることは記載してあったが、見逃されていた。患者は他の診療科から内服が出ていて、プレドニンの切れに気づかなかった。 多数診療科の内服薬があり患者も理解していなかった。自己管理薬剤に関しては曖昧な運用があった。
  • 処方箋に薬剤の位置を明確に記載する。
  • 電子カルテ上付箋機能にプレドニン服用を明記する
確認が不十分であった
72 障害なし 夕食の与薬時、患者が自己管理の袋を持って来て、「夕食後に飲む薬がない」と言った。薬を確認すると毎食後に服用するクロザリル錠がVDSにセットされていた。カルテの医師指示票を確認すると毎食後になっており、前回処方と変更はなかった。本人へ謝罪しセットし直した。
※ 事例内の「V D S 」とは、vor dem Schlafen(就寝前)の略と思われる。
処方箋と薬の照合確認不足。
  • 薬と処方箋の内容を確実に照合する。
  • ダブルチェックを徹底する。
確認が不十分であった
73 障害残存
の可能性
なし
入院中の患者に内科外来にてプレドニン12.5mg/1 ×(朝)が13日分処方となった。受け持ち看護師Aは1週間分をセットし、残りはナースステーション内の残薬ボックスに保管した。翌週の定期処方日に受け持ち看護師Aが看護師Bに配薬業務を依頼した。しかし、依頼された看護師Bがプレドニンを1 週間分セットし忘れたため、翌日から1週間プレドニン12.5mg/ 日が無投薬となった。患者は内服薬の自己管理を導入したばかりであり、薬袋をそのまま渡してしまったため、無投薬が1週間発覚しなかった。 原疾患の悪化の可能性が高く、無投薬との因果関係は明確ではない。無投薬の原因は依頼業務時の確認行為を忘れたことによりナースステーションで保管していたプレドニンがセットされなかった。
  • 必ず複数の人数で投薬内容を確認すること。
  • 患者に薬の必要性を十分に説明し無投薬防止に協力を得る。
確認が不十分であった
74 障害残存
の可能性
がある
(高い)
術前の自己での血糖コントロールは特に問題なかった。術後の経過は問題なく、数日で心電図モニターは中止となり、当日は点滴もしていなかった。 前日眠前BS157mg/dL にてレベミル7単位皮下注し、当日7:30にBS測定予定であった。眠前マイスリーを内服し2時、4時巡視時は寝息を立て入眠中で異常はなかった。7時検温にて訪室すると意識消失、下顎呼吸を呈しているのを発見された。その時点の血糖は37mg/dLであった。相談を受けた医師が末梢ルートを確保して50%ブドウ糖静脈内投与を施行するも意識の回復が見られなかった。挿管、人工呼吸施行し、JCS300 にて観察中。自発呼吸あり。 30年来1型糖尿病を基礎疾患に有していた患者。肝右葉切除術という大侵襲手術により外科的糖尿病も加わっていた。当該診療科では1型糖尿病の肝切除術の経験は初めてであった。肝機能の改善もあり、食事が開始され、点滴が中止となるなど、血糖管理上変化のある時期であった。術前はご自分で血糖測定とインスリン量を管理され、入院後も自己管理にて血糖コントロールしていただいていた。
その為内科への密な連携が十分ではないまま、自己管理開始時にタイミングよく内科診察ができていなかった。術前に行われた説明がどの程度患者に理解されていたかの確認ができていなかった。患者への説明追加などが必要であった可能性がある。血糖値の変動が想定していた以上に大きかった。そのため変化を予測した血糖管理指示ができていなかった。
  • 自己にて血糖測定時間やインスリン量調整していたが、インスリン自己管理を開始した日であり、振り返ると血糖が変動する可能性は考えられ、その観点では眠前から朝まで測定間隔があいていたため、測定時間をきちんと検討行っていく。
  • 朝の検温の前に、術後・重症患者は必ず全員訪室し状態確認を行う(6時頃)。
  • 糖尿病患者の手術の際は通常内科に連絡し、術前より指導、指示を依頼し、栄養状態の変化の際には連絡を行い、その都度対応しているが、自己管理している患者については連絡が漏れやすい為、当事例のように、より生命の危険に直結しやすい1型糖尿病患者である場合はもう少し密に連絡を取り合うよう話合いを行う。
判断に誤りがあった
75 障害残存
の可能性
がある
(低い)
肺がん疑いの患者は、既往に糖尿病があり、インスリン自己注射をしていた。当日、PET検査が予定されており、禁食の指示となっていたが、患者は、朝インスリン10単位を自己注射してしまった。10:00 血糖値89mg/dL と医師に報告し、経過観察と指示を得る。その後、10:45 血糖値48mg/dL まで低下し、50%糖15mL 静脈注射し改善する。PET検査は午後に変更となった。検査前日、患者にはPET検査があること、朝は禁食とインスリン中止を説明してあったが、患者には認識がなかった。 肺がん疑いで生検手術目的に入院し、既往に糖尿病がある患者。PET検査のため朝食が禁食となっており、ご本人もその旨を知っていた。しかし、前日、オリエンテーションするも、当日、聞いていないと患者から発言あり。
  • 前日のオリエンテーションの際、患者の目につくように用紙に記入し、掲示をしておく。
  • 当日の朝、声かけをしておく。
患者・家族への説明
76 不明 同姓の患者Aに対し患者Bに指示されていたノボラピット30 ミックス注22 単位を皮下注。その後患者Bにインスリンを皮下注しようとして間違いに気がついた。看護師は感染の可能性について失念し、マイクロファインプラスを新しいものにして患者Bにノボラピット30 ミックス注を皮下注した。患者A、患者Bは、インスリン自己注射を指導中の患者であったが自己注射の指導中だったためインスリンは看護師が預かっていた。患者Aは本来ノボラピット3単位皮下注の予定だったため朝までフィジオ35 500mL+10%グルコース1Aを朝まで持続投与し1時間おきの血糖測定を行った。血糖は90-100mg/dL で経過。翌日患者Aと家族、患者Bと家族に改めて説明し謝罪した。感染症の有無を調べるための採血を行う。両患者とも感染症は陰性。ウィンドウピリオドを考え6ヵ月後に再度採血を行う予定。製造販売業者に対してノボラピット30 ミックス注に血液の混入がなかったか調査を依頼した。 患者が入浴をしたいといっていたため看護師はあせってインスリンの皮下注射を行った。又、本来行うべき確認行為(患者氏名、注射伝票、薬剤)を怠った。ノボペンを介しての感染の可能性がある事の知識が不足していた。
  • 患者確認の徹底(患者氏名、注射伝票、薬剤を声だし指差し確認する)。
  • 感染症に対する知識を高める。同姓の患者がいる場合はシールを貼り注意喚起する。
  • インスリン自己注射導入する患者に処方されたインスリンは、患者のベッドサイドで管理する。
  • 患者がどの薬剤を何単位使用しているか情報を共有し患者の協力を得る。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)

患者の外見(容貌・年齢)・姓名の類似
 

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(医薬品添付文書上、【禁忌】の疾患や症状の患者へ薬剤を投与した事例)

No. 事故の
程度
事例の内容 背景・要因 改善策 評価案
77 障害残存の可能性なし 糖尿病性腎症による慢性腎不全で、当院腎臓内科へ紹介となり、外来でフォローされていた。翌年3週間程度の入院を要し、その間ジルテック(1日10mg)を服用。退院時にはドライシロップが処方された。
翌月、透析導入目的で再入院となった際、退院時処方を持参薬として持ち込まれ、その後院内処方へと切り替わる際に「ジルテック」から「ザイザル」へ変更。薬剤の性質上用量を半減しなければならなかったが、そのまま10mg(添付文書で1日最大10mg)を処方した。本来透析中の患者には禁忌とされている薬剤であったが、薬剤師もその認識が希薄であったため、疑義照会は行われておらず継続して服用した。外来透析可能として退院翌日、40度の発熱でER受診となり、感染による敗血症及び高度の白血球減少症と診断され、緊急入院となった。白血球減少の原因が敗血症によるものか薬剤の副作用によるものかは不明であるが、可能性を否定できない。抗生剤の投与により翌日には解熱し、全身状態は改善した。
変更後の薬剤が透析患者に禁忌であることの認識が希薄であった。透析により除去できると思った。
  • 腎不全患者への適切な薬剤量の確認を行う。
  • 薬剤部での会議で事例報告、注意喚起を行う。
確認が不十分であった
78 障害残存の可能性なし 大腸ポリープ切除術目的にて入院。前処置としてニフレック、ラキソベロン液が処方されており、初回面談時に使用目的および注意事項について患者に説明を行った際に、患者から、以前に多量の液体の下剤を飲んで吐き気があったことおよび外来医から良い薬が出ているので大丈夫、と言われたことについて話があった。ビジクリア錠へ変更となったが、嘔吐があり、50錠中25錠のみ服用し検査は終了した。検査翌朝、急性高P血症が原因と見られるテタニー症状が出現した。 腎機能が低下していることは処方歴からも認識していたが、ビジクリア錠が重篤な腎機能障害のある患者に禁忌であることを認識していなかった。
  • 警鐘事例として院内周知を行った。
確認が不十分であった
79 障害残存の可能性がある(低い) 乳癌術後肝転移に対して、ホルモン剤を使用していたが、肝転移増悪のため、ティーエスワンを開始した。この際、腎機能障害があることを考慮し、ティーエスワンの量は80%とした。12日後、飲水困難・全身倦怠感にてティーエスワン中止。WBC:8100、 CPR:3.40、外来にて抗生剤投与。その後39度の発熱あり、他院にて透析後、入院。DIC、間質性肺炎、重篤な粘膜障害を認めた。透析中にVT出現し、CPR施行(VT出現との因果関係は不明)ICU管理後、一般病棟に転棟。その後、感染症、粘膜障害に対する保存的治療を継続し、全身状態の改善を認め退院となった。 透析患者に対するティーエスワン投与禁忌の認識が不足していた。腎機能障害患者に対してはティーエスワンは減量と認識していた。
  • 使用薬剤について処方前、投与前に禁忌、および注意投与症例を確認する。
確認が不十分であった
80 死亡 外来で維持透析中の患者。処方されていた経口血糖降下剤(グリミクロン錠40mg1錠朝食前)で血糖コントロールをしていた。血糖コントロールが不良となり患者の希望で、内分泌内科に紹介となった。内分泌内科を受診し、同科の医師がグリコラン錠250mg3錠(1錠毎食後)を処方した。約1ヵ月後、患者は転倒し、右大腿骨転子部不顕性骨折を生じ整形外科に入院。骨接合術を施行。数日後より嘔吐あり、ショック状態となりICUに入室。著明なアシドーシスあり。グリコラン内服による乳酸アシドーシスと診断し、間歇的血液透析、持続的血液ろ過透析等を実施した。 処方をした内分泌内科の医師はグリコランが透析患者へは禁忌薬であるという認識がなかった。血糖コントロールを依頼した腎臓内科医師はメトホルミン塩酸塩が透析患者へは禁忌であることは知っており、内分泌内科でグリコランが処方されたことは知っていたが、グリコランがメトホルミン塩酸酸であると理解していなかった。また、内分泌科医師がメトホルミン塩酸塩を処方することはない、という思い込みがあった。看護師は、グリコランが透析患者には禁忌だと知らなかった。薬剤師は、患者が透析患者と分からずチェックできなかった。
  • 院内へ注意喚起:禁忌薬の副作用に注意、配慮して使用するよう医局に対して注意した。
  • 透析患者への禁忌薬一覧表を作成し院内へ配布する。
  • 処方オーダー時、透析患者への投与注意のコメントを出すよう検討中。
  • オーダー画面の商品名の後へ分類名又は一般名を入れることを検討中。
  • 薬剤師が週1回程度透析患者の内服薬チェックを行う。
確認が不十分であった
81 障害残存の可能性がある(高い) 膀胱癌の手術目的で入院後、前医で処方されていた常用薬21種類のうち8剤がなくなったため、主治医(研修医)が処方を行った。この際、スロービッド(テオフィリン)4cap・分2 を処方すべきところを、誤ってスローケー(塩化カリウム)600mg × 4・朝眠前分2・7日分を処方していた。
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)の術前から術中にかけて徐脈(35/min 前後)がみられ、倦怠感の訴えもあったため、手術終了直後の17時に血液検査を行ったところK 6.8mEq/L であった。指導医の指示で帰室直後に再検査を行ったが、K 7.0mEq/Lであったため緊急で血液透析を行った。透析中に血液浄化センター医師がスローケーの処方を発見し、予想外の高カリウム血症の原因が判明した。透析終了時にはK4.7mEq/L に低下し、徐脈および倦怠感も改善した。
主治医(研修医)は、スローケーがカリウム製剤であること、透析患者へのカリウム製剤の投与は禁忌であるという知識を有していた。また、本来、処方すべきであったスロービッドについてはテオフィリンであることを確認していた。しかしながら、オーダー入力画面で「スロー」と入力したところ「スローケー」のみが表示されたが、これをスロービットと思い込んで処方した。
指導医は研修医が行った処方に誤りがないか確認していなかった。
薬剤師による服薬指導の際、患者が一包化されている薬の中から剤形の大きいスローケーを指して、「この新しい薬は何か?」と尋ねたが、「カリウムを補給する薬」であることを聞き、「普段からカリウム制限を指示されているのにおかしい」と患者は感じていた。また、服薬指導を行った薬剤師も疑問に思い主治医に確認しようと思っていたが、機会がなくそのまま放置された。
  • 薬剤の処方には細心の注意を払うべきであることを周知する。
  • 研修医が複雑な処方や危険性の高い薬剤の処方を行う際は、指導医とともに行うこととする。
  • 指導医は研修医が単独で行ったオーダーを確認する。
  • 薬剤師は疑問を抱いた処方については必ず主治医に確認する。
確認が不十分であった

類似名称
82 障害残存の可能性がある(高い 左眼硝子体手術後6日目に発生。患者のカルテには、左眼黄斑円孔の病名が記載してあった。
担当看護師が点眼施行。点眼薬は、1日4回点眼のクラビット・リンデロン・ジクロード点眼と、1日3回点眼のミドリンPの2袋。手術部位の左眼表示がベッドサイド掲示してあり、左眼には眼帯をしていた。クラビット等の点眼は左眼に実施し、ミドリンPのみ別の袋に入っていたので、「右眼にも差すのか」と思い右眼に点眼した。点眼直後、患者より「右眼もするの?」と言われ、点眼部位の間違いに気づく。看護師は、「そんなに害になる薬ではない」と説明し、その後左眼にミドリンPを点眼した。通常検査時に散瞳薬で使用しているので害になるとは感じていなかった。
11:30 患者が見えにくさを感じて、「今日は診察遅いね。」と話していた。
12:30 右眼眼圧が60mmHg 以上で測定不能。患者が「右眼がぼやっとして見えにくい。看護師さんが間違って右眼に眼薬をさした。」と話した。ミドリンPによる右眼の緑内障発作と診断し、安静臥床とグリセオールの点滴を施行した。
13:15 グリセオール終了後も、眼圧は60mmHg 以上で、右眼にサンピロ2%点眼し病室へ戻った。
患者は前房が浅いためミドリンP使用時は注意を要する患者であった。
16:15 再度グリセオール200mL 点滴を実施し、その後レーザー治療を実施した。
当事者は新卒で入職3.5月であり、眼科パスの患者の担当は「白内障」患者で経験があるが、「硝子体手術」の患者は初めて担当した。
ミドリンP だけが別のビニール袋に入っていたため、反対眼だと思い込んでしまい部位確認をしなかった。
処方箋控えには、「左眼」と黒字で記載されているが、字が小さく、処方薬品名、点眼部位、回数、用量の全てが同じ大きさと字体であるため、注意喚起しにくかった。
眼科パスオーダー用の用法ラベルが、フォントが小さく、点眼部位の字の色が、右眼が赤色、左眼がオレンジ色で、同系色で判別しにくかった。
点眼薬は、薬剤部から透明なビニール袋に処方箋控えと共に薬剤が入った状態で払い出しされる。
病棟処置室では薬剤専用冷蔵庫の点眼薬用の箱に、チーム別に保管している。
患者個別に用法(点眼部位と回数)毎にまとめて保管していなかった。
小袋に入っていない点眼薬の用法を記入した用紙は、薬袋には入っているが、点眼実施の際に袋から取り出して見る習慣がなかった。
当事者は散瞳薬として検査の前に使用した経験があったが、ミドリンP の副作用や禁忌についての知識はなかった。
チームの先輩看護師は、点眼部位間違いの報告を聞き、すぐに医師に報告するよう伝えたが、その後の確認を行わなかった。
ミドリンP の術後追加オーダーの理由が医師の経過記録に記載されておらず、看護師の申し送りや記録にも内容記載がないため、患者の治療内容の情報共有ができていなかった。
  • 薬剤部と看護部で協議し、入院患者の点眼薬処方時は、全て用法シールを薬袋に貼付することになった。点眼用法シールは、字体を大きくし、右眼は青色、左眼は赤色、両眼は緑色とし、点眼回数を記入するものとした。
  • 点眼薬は、患者毎に用法(点眼部位と回数)毎にまとめて冷蔵庫保管する。
  • 眼科パスの手術眼や点眼部位表示がわかりやすいように書式を変更する。
  • 注意を要する薬剤や手術と反対眼であっても、禁忌や注意を要する点眼薬やケアーがある場合は、入院時に申し送りをする。注意事項は、外来申し送り書に記入し、カルテ表紙に右上に記載する。
  • 看護基準に眼科手術プロトコール(白内障・硝子体)を追加し、新人看護師や部署変換した看護師が処置や薬剤・ケアの知識を得ることができるようにする。
  • 看護部と医療安全対策部で協働し、入職研修時に薬剤安全使用についての研修内容を追加する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
83 障害なし 眼底の診察のため。緑内障で入院中の患者A(散瞳薬禁忌)に、誤って散瞳薬であるミドリンPを点眼したことにより、緑内障発作、眼圧上昇をきたした。当日、チームの回診前散瞳の担当であった看護師は指示簿を確認し、チェック用の病床マップに注意書きを記載した。このとき、患者Aは「散瞳無し」であることを確認していた。点眼薬のケースをワゴンに乗せ、指示簿を確認しながら部屋を回った。患者Aは、医師の診察を受けている最中で部屋に不在であった。散瞳すべき患者の点眼は終了したので、病床マップは破棄した。その後回診のため、患者Aを暗室内に誘導した際に、散瞳をし忘れたと思いこみ、ミドリンPを点眼した。回診終了後、主治医が検査の際に両眼散瞳していることに気づき、点眼、点滴などを行った。 患者は散瞳禁止であったが、散瞳薬が準備されていた。
入院患者にはミドリンPを含め3種類の検査用点眼薬を準備することになっていた。
使用禁忌薬を除くルールがない。(術後には使う場合があるため)使用禁忌やアレルギーについて、検査用点眼薬の袋に注意書きをしている場合もあったがルールになっていなかった。
散瞳に回る際、点眼薬のケースは部屋ごとに分けてあり、散瞳の有無に関わらず、全てワゴンに乗せていた。
回診前直前に回った際に患者が不在であったため、患者確認ができなかった。
散瞳しない患者が不在であった場合、どうするかのルールがない。
指示簿を再確認せずに点眼を行った。
暗室で初対面の患者をみて、散瞳し忘れたと思いこんだ。
散瞳禁忌の患者がいたことを忘れた。
散瞳する患者がほとんどであり、回診に支障がないよう散瞳することに意識が向いていた。
散瞳する患者への点眼は終了していたのに、それを確認するツールがなかった。(チェックをした病床マップは破棄していた)
指示簿は指示の記載のみで、散瞳したことを記載する欄がない。
暗室内に点眼薬のワゴンは置いているが指示簿はなかった。
散瞳禁止の患者であることを暗室内で回診につく看護師が共有する体制がなかった。
患者は自分が散瞳禁止であることを知らなかった。
患者に禁忌であることを、知らせることがルールになっていなかった。
  • ミドリンPの禁止指示が出た段階で、検査点眼薬の袋から確実にミドリンPを抜き、ユニパックに禁止やアレルギー表記をする。
  • 禁忌札を作成し、回診前から終了時まで患者に掛けておく。
  • 暗室内に点眼薬のワゴンを置くのをやめる。
  • 散瞳禁忌の患者の指示簿は暗室内の入り口のファイルに挟んでおき、患者入室の確認の際に、再度指示簿で確認する。
  • 散瞳をした患者をチェックした病床マップは回診終了まで置いておく。
  • ケアフローに回診前散瞳を実施したことを記載する。
  • 回診前に、指示簿で禁忌の患者がいることを確認しておく。
  • 禁忌札を掛ける際に、患者にその旨説明する。
    以上の内容を踏まえ、「回診前散瞳手順」、入院時検査点眼薬準備手順」を作成した。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
84 障害残存の可能性がある(高い) 上部消化管内視鏡の前処置で鎮痙薬を使用する際、緑内障を指摘されている患者に禁忌のブスコパンを誤って筋肉注射してしまった。問診欄には、ブスコパンからグルカゴンに指示が変更されていたが見落とした。さらに、患者へ緑内障の有無を確認したにもかかわらず、医師があえてブスコパンを指示していると解釈し施行してしまった。前処置担当看護師に、筋肉注射の施行確認をされ間違いに気付き検査担当医師に報告した。上部消化管内視鏡検査は予定通り施行されたが、頭痛・気分不快などの症状出現はなかった。その後眼科受診し、緑内障は否定されていたことが分かった。 問診欄には、ブスコパンからグルカゴンに指示が変更されていたが見落としてしまった。さらに、患者へ緑内障の有無を確認したにもかかわらず、医師があえてブスコパンと指示していると解釈し確認せずに施行してしまった。
  • 指示確認を確実に行う。
  • 禁忌薬品が指示されている時は医師、他の看護師、患者に再確認してから使用する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
85 障害残存の可能性なし 前処置の抗コリン剤の注射を施行するため、問診票を確認。全ての項目に「いいえ」とチェックしていたので、依頼書、カルテ、本人に確認をせずブスコパンを静注した。静注後に依頼書に抗コリン剤不可と記載している事に気付く。患者と確認したところ眼科にて緑内障の診断はうけていないが眼が見えにくいと返答あり。ブスコパン静注後、眼痛、視力低下見られず。 問診票のみの確認しか行わなかった。
  • 医師と看護師で確認を行う。
  • 予約時に問診票のチェックを患者と共に行う。
  • 依頼書のチェックを必ず行う。
確認が不十分であった
86 障害残存の可能性がある(高い) 多発性血管炎に伴う高血圧にて神経内科にて降圧剤(ディオバン)を処方されていた患者が妊娠した。妊娠後産科に紹介され、神経内科と産科にてフォローされていたが、妊娠25週にて羊水過少症が発生し、産科入院となった。入院時産科医によりディオバン内服していたことに気付かれ、羊水過少症の原因が薬剤に起因するものであることが示唆された。 診療科間における投薬内容の確認不足。
  • 妊婦への処方薬剤確認の 徹底。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
87 障害なし 片頭痛を訴えた妊娠末期の妊婦に医師の指示で禁忌薬であるロキソニンを内服させた。 知識不足。
  • 与薬の際には、十分に作用、副作用、禁忌の確認を行い、このようなことがないようにする。
  • 疑問に思った時点で必ず調べてから指示実施をする。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
88 障害残存の可能性なし パーキンソン病にて当院神経内科通院中、胃癌を認め胃全摘術を施行した。術後絶食期間中に不眠の訴えがあり、セレネースを指示セレネースは錐体外路症状を悪化させる事があるためパーキンソン病の患者には禁忌であった。患者は翌日、寡動状態となった。 主治医の認識不足のため、セット展開を用いて術後指示を出し、禁忌薬を処方した。
  • 基礎疾患をもっている患者に対しては新規に処方する際、添付文書を確認する。
確認が不十分であった
89 障害なし HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)のためヘパリン禁止の患者に、抗生剤終了後ヘパロックをした。受け持ち看護師に「抗生剤が終了したのでヘパロックします」と声を掛け実施。受け持ち看護師がヘパリン禁止ということに気づき声を掛けた時には、すでにヘパリン生食を投与した後だった。 患者の枕元に「ヘパリン禁」の貼り紙がしてあったが、消灯後であったため気づかなかった。 受け持ち看護師が多忙だった為、応援看護師が定期薬(時間薬)のDIV及びロックを実施した。
ヘパリン禁止の表示はベッドサイドにしていたが、消灯後であり気付かなかった。応援看護師には禁忌についての情報が伝わっていなかった。
  • ヘパリンのⅣロックを中止とし生食ロックに変更した。
  • 申し送り基準を見直し、全体の申し送りで患者の禁忌・注意事項を申し送るようにした(患者の状態を送る前に禁忌・注意事項を申し送る)。
  • 表示方法、内容を検討。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
90 障害なし 手術後、点滴が終了したためヘパリンロックを行った。事後に統合セット(普段よく使用される注射オーダーの事前入力であり、必要時その画面より取り込み、注射のオーダー入力できるようになっている。例えば、疼痛時・腹痛時等の継続指示等。本来は医師しか注射のオーダーは出せないことになっているため、継続指示の注射箋発行の際に使用されている)からヘパリンロックをオーダーしようとして画面を開いたところ、画面に「HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)にてヘパリン禁」の表示がされていた。 外来カルテにはヘパリン禁忌の記載があったが、入院診療情報記録の中にヘパリン禁忌が記載されていなかった。外来看護師から情報伝達がなかった。注射オーダリングにはヘパリン禁忌が記載さていたが、注射を準備する前に統合セットからオーダーしなかったため実施後に発見することとなった。統合セットからのオーダー指示を出す場合のマニュアル違反(マニュアルでは注射を準備する前に注射箋を出す)。
  • 統合セットから指示の注射を探しオーダー後に実施を行う。
  • 入院時には外来カルテから情報収集を行う。
確認が不十分であった
91 障害残存の可能性がある(高い) 1時30分本人が深夜勤務看護師A に頭痛を訴え、鎮痛剤を希望。看護師A が当直医に上記を報告、カルテを確認しながら病名などを報告(この際、禁忌薬剤欄に記載が無いことを確認している)。当直医がアセトアミノフェンは常備していないか確認するがなかったため、常備薬のロキソニン服用を指示。
1 時40分看護師A がロキソニンを与薬
2 時45分深夜看護師B がトイレに付き添い
2 時50分本人がトイレから出てくると喘鳴あり、呼吸苦あり。
2 時55分病室に戻った後、吸入開始、ベッド上で後方に倒れ心肺停止、心マッサージ開始。その後心拍再開、人工呼吸器装着する。
入院カルテの表紙に禁忌薬剤記入欄があるが、記入がなかった。この記載に関する院内規定もなかった。入院時記録にもその記録はなかった。入院時紹介病院より軽度認知症があるという情報はあったが、入院時、看護師がアレルギー歴を聴取の際、本人からのみの確認で「アレルギー鼻炎あり」と看護記録に記載。オーダリングの患者プロファイル画面に禁忌薬剤の入力がなかった。(オーダリングの患者プロファイル画面に禁忌薬剤を入力すると、次回からオーダリング起動時にプロファイル画面が自動に開き、禁忌薬剤があることの注意喚起ができるシステムになっている)。禁忌薬剤の記載は外来カルテの表紙のみであった(夜間の当直対応では外来カルテの確認までは困難と思われる)。
  • 入院カルテに禁忌薬剤を記入することのマニュアル化と徹底。
  • 夜間口頭指示の医師と看護師間の情報交換に関するマニュアル作成。
  • アスピリン喘息に関する知識の向上(研修計画中)。
確認が不十分であった

記録等の記載
92 障害残存の可能性がある(高い) 耳鼻咽喉科で慢性副鼻腔炎に対し、鼻内視鏡手術が全身麻酔下に行われた患者で、手術終了後全身麻酔覚醒前に術後鎮痛目的でフルルビプロフェンアキセチル(ロピオン注)を50mg 静脈内投与した。その後、麻酔からの覚醒は良好で抜管、循環・呼吸状態が安定していることを確認し、手術部内回復室へ移動した。そこで更に15分間状態を観察し、再び循環・呼吸状態が安定していることを確認し、病棟へ帰室となった。
しかし、手術部から退出後病棟のエレベーターホールでエレベーターを待っている間に徐々に呼吸困難感が出現し、同時にモニターしていたSpO2 も90%程度に低下した。
直ちに付き添って帰室していた耳鼻咽喉科医師が喘息様発作と判断し、酸素投与を行いつつ帰室した。
帰室直後より酸素投与、ハイドロコートン300mg 投与、サルタール吸入により速やかに改善した。術後第一日目にも呼吸困難が出現したため、ステロイド、ネオフィリン内服、ツロブテロールテープ貼付、サルブタモール吸入を行い軽快した。以後は、呼吸系の問題はなく、後遺症、新たな合併症は認められず経過した。
軽快後、患者及び家族に対し、経過及びアスピリン喘息という診断、素因であることが強く疑われるので、今後は鎮痛薬等の必要時には注意を要すること、医療機関にかかる際には必ず伝えることを説明し了承された。
患者は、以前にバファリン内服時に軽い呼吸困難が出現していた既往があり、耳鼻咽喉科への前医からの紹介状にはアスピリン喘息の疑いが指摘されていた。しかし、麻酔科医の術前診断時には、外来カルテに貼付されていた紹介状を読んでいなかったため、本人からの既往歴聴取では、バファリン内服と呼吸困難の関連性が明確でなかったため、術後鎮痛の目的でフルルビプロフェンを投与した。投与後20 分以上経過してから、その投与に起因すると思われる喘息様発作が発症したと考えられた。
  • 患者の既往、素因等の情報は確実に伝達される様に考慮する。
  • 何らかの重要な情報がある場合は、カルテの表紙に注意を必要とするマークを表すこととする。
確認が不十分であった
93 障害残存の可能性がある(低い) 難治性腸腰筋膿瘍の原因として消化管穿孔が疑われ消化管外科カンファレンスにて症例呈示したところ、注腸造影による確認が必要と判断されたため、整形外科担当医が注腸造影を予約した。
注腸検査は担当科か、担当科から依頼を受けた消化器内科、あるいは消化管外科が行う取り決めとなっていたが、担当医はそのことを知らないまま検査室に患者を搬送した。担当医は注腸検査の経験がなく、看護師から「来週にしたらどうか」といわれたが、患者の容態が思わしくないこともあり、その場で自分で行うことを決めた。看護師から「造影剤には腸管に残るものとそうでないものの2種類があり、緊急手術になるなら腸管に残らないものがいいのではないか」と助言されたが、担当医は緊急手術になることはないと考え、「残るものでも構いません」と答えた。これによりバリエネマ75%(バリウム)が選択され、注腸検査が実施された結果、S状結腸間膜内にバリウムが漏出した。担当医は造影剤についての知識はなかった。
午後、数日前に当患者のCTを読影した放射線科医が自主的にカルテをチェックしていたところ、バリウムが注入されたことに気づき、判明した。腹膜炎の発症が心配されたが、保存的治療でコントロール可能であった。
経験のない手技を上級医に相談無く一人で実施し、禁忌薬を用いた検査が実施されてしまう体制があった。
  • 教育体制の見直しを図る。
  • 禁忌薬剤を使用できない(あるいは確認を求める)体制の構築。
判断に誤りがあった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
94 障害残存の可能性がある(高い) S状結腸癌の疑いの患者が、全結腸内視鏡検査のためにニフレックを内服したが、1.5リットルほど内服した時点で腹痛・嘔吐を訴えた。検査は中止し、その後症状は改善したため、絶食と安静で経過観察していた。
翌日4時20分頃、排便後意識レベル低下及び血圧低下等を来たしているところを看護師が発見。すぐに医師に報告し、指示で酸素投与及び補液を開始。緊急CT等を施行しイレウスと診断。血液ガス分析で著明なアシドーシスを認め、全身状態の改善を図った後、緊急手術となった。
CTで狭窄が疑われるS状結腸癌の患者に対して、ニフレックを投与した。
  • ニフレック投与の適応を慎重に行う。
確認が不十分であった
95 障害残存の可能性がある(高い) 糖尿病(血糖300mg/dL 程度、HbA1c 8%程度)のため当院糖尿病・代謝内科に通院し、内服薬(アマリール1mg/day)が処方されていたが、一時通院を中断した。
約1 年ぶりに当院糖尿病・代謝内科外来受診。血糖値120mg/dL 程度、HbA1c 5%程度と血糖コントロール良好のため、糖尿病・代謝内科外来担当医より、内服薬は不要で通院も不要と判断され、以後糖尿病・代謝内科には通院していなかった。
その後、不眠を主訴に当院精神神経科受診(躁うつ病のため近医に通院していたが、患者本人の「不眠」の自覚症状が良くならないため本人の希望により当院を受診)。
セロクエル25mg1錠が処方された。以後、当院精神科外来に通院し、25mg2錠が処方されていた。3ヶ月後体調不良、口渇、多尿、多飲、体重減少出現、意識レベルも低下したため当院救急外来受診。血糖値600mg/dL 程度、身体所見で強い脱水を認め、高血糖による高浸透圧状態と診断され、緊急入院となった。
外来担当医は、抗精神病薬セロクエルが糖尿病に禁忌であることを知っていた。
また、患者が、過去に当院の糖尿病・代謝内科を受診し、「糖尿病」という病名が登録されていたことは確認していた。
しかし、患者に糖尿病があるかを尋ねたが、「以前検査を受けたが何ともないといわれた。薬も飲んでいない。」と回答されたこと、当院での最終検査の血糖関係のデータが、正常値( 血糖値120mg/dL 程度、HbA1c 5%程度)であったことから「糖尿病はない」と考えセロクエルを処方した。
以後の外来において、抗癲癇薬の血中濃度や、肝機能、血算等、の検査は行なわれたが、血糖値の検査は行なわれなかった。
  • 院内の全職員向け電子メールにて、「当院においてセロクエル処方後に高度の高血糖となった事例があったこと、非定型抗精神病薬であるセロクエルならびにジプレキサが糖尿病患者に禁忌であり、また投与中は血糖値と高血糖症状の有無の確認が必要であること」について、注意喚起を行なった。
  • セロクエルの処方をおこなった診療科(精神神経科)のカンファランスにおいても、本事例に基づいた注意喚起が行なわれた。
  • 糖尿病患者に禁忌である非定型抗精神病薬(セロクエルならびにジプレキサ)について、初回処方時に、血糖値を測定し確認するよう警告をだすシステムを作成することとした。
確認が不十分であった
96 障害なし 前立腺肥大がある患者にブスコパンを筋注した。尿閉あり。 指示表の確認不足。
  • 検査前には必ずカルテで患者の情報を得て、問診票と合わせて患者に確認する。
確認が不十分であった
97 不明 両白内障を手術後退院。以後外来で経過を観察をしていた患者であった外来受診時、医師よりハイパジールコーワ点眼が処方された。患者は、20時に初めてハイパジール点眼を点眼する。20時30分息苦しさが出現し、顔面蒼白となる。本人より救急車の要請があり家族が救急車を要請する。
意識レベル呼名反応は見られた呼吸30回脈拍120回/分21時10分に救急車内にて心肺停止状態となる。アンビュー加圧しながら当院の救急外来時搬送される。気管内挿管、エピネフリン静注、気管内注人工呼吸装着。循環動態のサポート薬を開始する。自己心拍再開、ICUに入院となる。入院時当院の眼科で処方した点眼薬の影響が強く疑われた。
前回の入院経過を調査した結果、前回入院時に喘息の発作を起こした経緯が有ったが、処方時は喘息の認識がなく処方をしており、喘息患者に禁忌の処方をしたことが分かった。問い合わせた結果、副作用報告は、7件報告されていたが今回の事象のような重篤なものはなかった。後日、家族に処方した点眼薬により重篤は副作用が現れたものと考える旨説明する。その後患者の呼吸管理、全身状態の管理を行う。
問診の結果記録が不十分であった。外来のカルテの既往症の確認項目の中に喘息はピックアップされていなかった。処方医は、点眼薬の喘息患者への副作用についての認識が不十分であった。
  • 眼科の外来カルテの既往症の項目に喘息の項を追加印刷する。
  • 問診結果のカルテ記載を徹底する。
  • 医療安全月間のキャンペーンを行い注意喚起し巡視で確認指導を行う。
確認が不十分であった