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安全対策業務

自己血回収セット等に係る使用上の注意等の自主点検等について

薬食審査発第0910001号
薬食安発第0910001号
平成16年9月10日

各都道府県衛生主管部(局)長 殿

厚生労働省医薬食品局審査管理課長

厚生労働省医薬食品局安全対策課長

自己血回収セット等に係る使用上の注意等の自主点検等について

 自己血回収セットの準備中にアスピレーションライン(術野側の吸引チューブ)で異物がリザーバー(血液を一時保持する場所)内に混入したとの報告がなされた。検証の結果(詳細は別紙1参照)、アスピレーションラインを閉塞させ減圧度を保った状態で吸引源(院内の壁吸引、装置内のポンプ及び医療機関での外付けポンプ)の減圧度を下げることにより、自己血回収セットのリザーバーの両側(アスピレーション側と吸引源側)で圧の逆転現象が発現し、これによりリザーバーの吸引源側のラインに存在する異物等の混入が引き起こされる可能性が示唆された。
 現在使用されている自己血回収セットの多くに同様のリスクが考えられるため当該製品群の製造業者、輸入販売業者、外国製造承認取得者又は国内管理人(以下「製造業者等」という。)に対し、下記のとおり自主点検等を行い、適切な措置を速やかに講ずるよう、御指導方お願いする。

  1. 上記と同様のリスクを有する当該製品群の製造業者等においては、添付文書の禁忌欄に、以下の点が明記されているか自主点検を行い、記載が不十分である場合には、速やかに添付文書を改訂すること。また、併せて医療機関に対し適切な使用方法及び当該リスクについて注意喚起すること。

    1)禁忌欄に「アスピレーションライン(術野側の吸引チューブ)を閉塞させた状態で吸引器の減圧操作を行わないこと。」

    2)上記1)の理由として「アスピレーションライン(術野側の吸引チューブ)を閉塞させた状態で、吸引源(院内の壁吸引、装置内のポンプ及び医療機関での外付けポンプ)からの吸引の中止又は減少が起こった場合に、圧の逆転現象が発生し、リザーバー(血液を一時保持する場所)と壁吸引部との間に存在する異物が混入する可能性があるため」

    3)禁忌欄に「吸引源とリザーバーの間に必ずレギュレーター(吸引制御装置)を使用すること。また、レギュレーターとリザーバーの間に使用する吸引ライン(レギュレーターとリザーバーを繋いでいるチューブ)は滅菌済みのものか単回使用で滅菌が施されているものを使用すること。なお、レギュレーターの設定値は吸引源で規定されている吸引圧以下の設定にはしないこと。」

    4)上記3)の理由として「レギュレーターを使用しても圧の逆転現象は完全に防げないことからレギュレーターとリザーバーの間に使用する吸引ラインは滅菌済みのものを使用する。また、レギュレーターの吸引圧の設定は、吸引源で規定されている吸引圧以下とした場合にレギュレーターが適切に使用できないため、設定値以下にはしないこと。」

    5)禁忌欄に「レギュレーターとリザーバーの設置位置について、リザーバーはレギュレーターに比べ高い位置で設定すること。また、設定できない場合にはレギュレーターとリザーバーの間に使用する吸引ラインをレギュレーターとリザーバーポートの低い位置で弛ませること。」

    6)上記5)の理由として「リザーバーポートを高い位置で設定することにより、圧の逆転現象を軽減し、異物のリザーバーへの混入のリスクを低減するため。また、体温などによる結露がリザーバーポートに混入しないため。」

    7)禁忌欄に「吸引源とリザーバーへの接続ラインは分岐をさせずに、単独のラインとする。」

    8)上記7)の理由として「他の分岐ラインの圧開放による圧の逆転現象を防止するため。」

  2. 同様のリスクを有する自己血回収セットを含む医療用具を承認申請中の者においても、添付文書(案)について自主点検を行い、必要な改訂を行う旨、医薬品医療機器総合機構に申し出ること。
  3. 同様のリスクを有する自己血回収セットを含む医療用具を治験中の者においても、必要に応じ治験実施医療機関に対し情報提供を速やかに行い、注意喚起すること。
  4. 製造業者等においては、滅菌済みで単回使用のレギュレーターとリザーバーの間に使用するラインとして、吸引ラインを自己血回収セットに加えることができないか検討すること。

以上

 

別紙1

自己血回収セットによる異物混入の発生メカニズムについて

  1. 自己血回収セットの構造
    自己血回収セットは、吸引源(院内の壁吸引、装置内のポンプ及び医療機関での外付けポンプ)により吸引を行うことにより手術野における血液を、リザーバ内に貯血した後、付属する遠心分離装置等により血液を再度患者に返血することを目的とする医療機器である。

    自己血回収セットの構造

  2. 今回の不具合の発現過程
    以前に手術等で吸引された異物がリザーバーポートと吸引源の間にある吸引ラインとその途中にあるフィルターに保持されており、その吸引ラインを再度使用した場合に下記「3.圧の逆転現象の発生メカニズム」で示すリザーバ内と吸引部での陰圧逆転現象が発現し異物がリザーバー内に逆流したものと考える。
  3. 圧の逆転現象の発生メカニズム

    (1)本不具合の前に吸引源を使用し、痰、排泄物等の異物がリザーバーポートと吸引源の間にある吸引ラインに保持され汚染された状態である。

    (2)上記の吸引ラインを使用して、自己血回収セットを繋ぎ準備又は使用する。

    (3)準備又は使用中にアスピレーションラインを閉塞させた状態とする。

    (4)閉塞させた状態であるためリザーバ内と吸引源は同じ陰圧状態となる。(下図1)

    (5)吸引源の吸引を中止又は吸引圧を急激に落とす(吸引源の電源を切る。チューブ類の外れ。設定の変更など)ことにより、一時的に吸引源の減圧度がリザーバ内に比べ弱い状態となり、この減圧度の差によりリザーバ部が吸引源側を吸引することとなる(陰圧の逆転が起こる)。(下図2)

    (6)圧の逆転現象が発現したことから上記の吸引ラインに保持されている異物等がリザーバ部に混入する。

    図1

    リザーバーが閉鎖状態の図

    図2

    リザーバーが閉鎖状態の図

  4. 他で圧の逆転現象が発現する可能性のある取扱い方法。

    (1)レギュレーターを使用しているが、一時的に多数の箇所での使用が重なり吸引圧がレギュレーターの設定値以下となりレギュレーターの意味をなさなくなった場合。

    (2)吸引源からリザーバーまでのチューブ類に分岐を持たせ、圧の開放が行われた場合。