2020年7月
SARS-CoV-2のパンデミックにより、これまでに全世界の感染者は1400万人を超えており、グローバルヘルスにおける尋常でない課題となっている。COVID-19の治療薬を開発している多くの申請者は、臨床試験を実施しているかつ/または第Ⅲ相臨床試験の案について各規制当局に相談をしている段階である。
2020年7月20日、ICMRAの後援の下、世界各国の規制当局による電話会議が開催され、開発者からの提案に基づき様々な規制当局が蓄積した経験に基づいて、COVID-19の治療のために行われる臨床試験の主要評価項目として使用できる様々な評価項目の許容可能性について議論した。
主要トピック:
- COVID-19治療に用いられる医薬品のランダム化比較試験において想定される主要評価項目
以下に、参加した世界規制当局間で概ね合意した見解を示す。
COVID-19治療に用いられる医薬品に関するランダム化比較試験の主要評価項目
- COVID治療薬の治験実施者より、試験の対象集団(例:軽症の外来患者と重症の入院患者)によって異なる主要評価項目が提案されてきた。
- COVID治療のために開発される医薬品について、世界全体で将来の臨床試験を迅速かつ一貫して実施するため、どの評価項目が規制当局にとって受け入れ可能と判断できるのかを議論し、可能であれば合意をしていくことが重要であろう。
- ワークショップは一部の参加当局からの発表で始まり、いくつかの実施中もしくは完遂した臨床試験で使用され、審査当局にとって受け入れ可能と判断された主要評価項目について説明された。
- この新型ウイルスの5ヵ月にわたるパンデミックのみで、COVID-19疾患の自然経過に対する我々の理解は迅速に進んだことが示された。しかし、より詳細な疾患経過の特徴と、患者の異なる症状に対する管理方法は、COVID-19治験薬の臨床試験デザインにやはり非常に有益な情報となると考えられる。
- 主要評価項目は理想的には臨床的意義があるもの(生存や患者の状態の把握)にするべきだが、加えて、現実的なサンプルサイズで十分に検出できることや計測可能であることも必要である。欠測値/併発イベントおよび死亡率の取り扱いについて、感度が良くかつ適切な方法を定義する必要もある。
- 中等症/重症のCOVID-19入院患者には、COVID-19治験薬の臨床的ベネフィットを提供するための主要評価項目として適切と考えられ、かつ承認をサポートできるようなオプションのポートフォリオがあるということで合意した。このオプションとしては、投与28/29日までにおける回復までの期間、段階的スケールにおける2段階の臨床状態の回復(ベースライン状態と共変量を調節した比例オッズモデルを用いた一次分析)、ランダム化後の28日以内の死亡率(特に重症COVID-19患者向け)、90日後以内における持続的な回復(生存および再発なしと定義)までの期間などがある。
- 死亡率だけが許容可能な主要評価項目ではないことは合意されたが、死亡率を主要評価項目としない試験においても、すべての場合において、死亡率は主要な副次評価項目として収集されるべきである。生存期間(time to event)の評価項目では、死亡記録の取り扱いは、規制当局と議論され、明確化されるべきである。Time to event評価項目について、死亡率が主要な副次評価項目として評価される場合、最悪の結果として、28日後(もしくは試験期間の最後の時点)の原因不明の死亡は許容可能なアプローチと考えられる。
- 議論されたその他の評価項目は次の通り:疾患進行、ランダム化からある時点までの人工呼吸器非装着日数、回復率
- ある時点における比例オッズに基づいた評価項目の場合、臨床的に意義のある治療効果を把握するために最も有益な時点をどのように選択するかは課題として残っている。
- 軽症のCOVID-19外来患者には、死亡率は、主要評価項目として適切ではなく、試験の主要目的にもよるが、重症への進行率や、事前に定義された時点における非入院患者の割合が適しているとして合意された。疾患進行の客観的基準を評価項目の定義に含めるべきということは、妥当であるだろう。入院率といったいくつかの評価項目は、客観性に欠き、許容されないと考えられた。
- POC(proof-of-concept)試験においては、ウイルス学的な評価項目が有用であることは基本的に合意されたが、第Ⅲ相試験の主要評価項目は、試験の主要目的を考慮して決定されるべきである。
- COVID-19治療における標準治療は進化しており、今後の臨床試験デザインを考える上で適切に考慮する必要がある。
時間の都合上、他の重要な点(組み入れる患者集団、コントロールアームの定義)については今後のワークショップにおいて議論されることとなった。