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独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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国際関係業務

高品質な医薬品の利用可能性の向上を目的とした規制当局の医薬品品質知識管理システム(PQ KMS)

ICMRA

 

本和訳は英語が正文であり、あくまでも参考訳です。齟齬がある場合には英語が優先します。
 

ICMRA-ICH-PIC/S-IPRP共同リフレクションペーパー

2022年7月21日付版

背景及び論拠

 運用上のアジリティは、患者のニーズを満たすために必要な医薬品の利用可能性に影響を与えるもので、医薬品製造工程の変更、技術革新、サプライチェーンの変化を一例とする多くの課題で必要とされている。新規治療薬製造における承認後の経験に基づく継続的な改善の追求や、製品ライフサイクルの後期における業務、設備、供給業者の通常の更新やその他の承認後変更(PAC)において、製造業者は、国際的に調和されたガイドラインに示される既存の枠組みを用いて、積極的に医薬品の品質を管理することが求められる。具体的に言うと、これにはICH Q10 医薬品品質システム[参考1]が含まれ、ICH Q9 品質リスクマネジメント[参考3]の原則を適用し、ICH Q12のライフサイクルマネジメントに関するガイドライン[参考4]に示される達成のための手法及びツールを活用しながら、ICH Q8 製剤開発[参考2]のガイダンスに基づくことである。
 企業がこうしたPACを各社の医薬品品質システム(PQS)内で管理する一方、現在の運用環境では、各地域及び各国の規制当局による事前承認が個々に必要である。製品が患者にとってグローバルに利用可能となるには、規制当局の審査プロセス及び期間を多大に要し、しばしばその重複につながる可能性がある。これは規制の複雑さを示しており、サプライチェーンの混乱などの課題への対処や複数地域での重要医薬品への緊急ニーズを満たすための大幅な増産において製造業者のアジリティを著しく制限する可能性があり、重要な医薬品の供給に直接影響を及ぼす可能性がある。
 重要な点として、規制当局は国民の信頼を維持しつつ、通常極めて限られた人材やその他のリソースで業務を行いながら医薬品アクセスを確保しており、技術が急速に進化し、公衆衛生上の課題と患者のニーズが増加するダイナミックな事業環境により良く対応するためには、当局もまた、より高いレベルのアジリティを求めている。アジリティの必要性は、例えば、ICMRAが作成し、PIC/Sが公開したGMP調査のリライアンスに関するガイダンス[参考5]に明示されているように、調査のリライアンスに関する重要性の認識において強調されている。調査のリライアンスを深め、調査情報を共有し、PQSの成熟度について情報交換することが、ICH Q12ガイドラインの実装とともにますます重要となる。
 規制当局の有効性及び効率をさらに向上させるため、当局間のリソース及び情報をこれまで以上に活用し、規制の複雑さを軽減させるための実用的なアプローチの追求に向けた支援が拡大している。最終的に、このアプローチで必要なのは、すべての参加地域の規制当局が当局への申請時に求める形式及びデータの期待事項について同一の要件を採用し、審査・評価・調査に同一の基準を適用することであろう。重要な点として、スポンサーは、すべての地域で同一の製品について同一の品質関連書類(すなわち、同一の製剤、施設など)の提出が必要となるであろう。情報交換の促進や世界各国の規制当局が徐々に遂行する評価に関するリライアンスの向上に加えて、参加規制当局への同一の関連書類の提出は、秘密情報の共有に関する法的懸念を未然に防ぐ一助となる。
 データ提出、期待事項、評価及び調査を整合させるための調和作業は、規制当局のPQ KMSの開発を支援する上で不可欠であり、PQ KMSは規制当局間で共有する集合的なリソース及び情報の活用において必要である。この調和作業より、調査のリライアンスが高まり、スポンサーによる複数回に分けた提出の必要性が大幅に軽減又は排除され、しばしば並行して実施される化学、製造及び品質管理(CMC)関連のPACに関する評価の重複が回避され、高品質な医薬品の利用可能性が高まる。

1. はじめに

 本共同リフレクションペーパー(RP)では、規制当局のPQ KMSの開発を支援するために必要な調和作業に対する、協調的なマルチステークホルダー・アプローチを概説する。提案された調和作業は、規制のリライアンス[注1][参考7]及びアジリティのさらなる進展、並びにグローバルな規制機関間における、製造業者の医薬品品質及びリスクマネジメント能力の状態に関する情報の適切、適時かつ効果的な共有を支援するもので、薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)[参考6]が想定する効率性の向上に貢献する。
 具体的には、想定されるPQ KMSは、医薬品及び生物学的/バイオテクノロジー医薬品のグローバルな開発・製造・供給を支援する国際協調の強化を目的としている。PQ KMSにより、調査分野におけるさらなる協調とリライアンス、及び規制当局による医薬品品質情報の評価に関するさらなる収束が可能となる。同時に、製造のアジリティや新たな製造所の追加が促進され、グローバルなサプライチェーンの回復力が強化される。PQ KMSを最大限に活用する上で重要な鍵を握るのが、成熟した実地PQSと対になる製品・工程知識の向上である。
 ICMRAは、この取組みを前進させるために世界の指導的役割を果たしており、PQ KMS作業部会[参考8](国際規制調和と情報共有に関する経験豊富な既存機関による取組みの調整促進を担う)を通じて戦略的ビジョンを提供している。これには、医薬品規制調和国際会議(ICH)、国際薬事規制当局プログラム(IPRP)、医薬品査察協同スキーム(PIC/S)が含まれる。
 さらに、産業界やその他の関連する技術グループなど、その他の主要ステークホルダーからの情報も求められる。主要ステークホルダーは、医薬品品質知識管理の強化という規制当局間の共有ビジョンに向けて、密接に協力して取り組むことが不可欠だ。これは、規制当局のPQ KMSの確立、及び安全で有効な高品質の医薬品へのタイムリーなアクセスの達成と公衆衛生の保証を最終目的とする、産業界の品質管理におけるアジリティの促進を通じて行われる。
 PQ KMS確立の重要な長期的ベネフィットとして、以下が挙げられる。

  • リスクベースの標的を絞った、製造業者への効率的で強化された監視を支援する品質情報の迅速な統合及び分析。これは、主要な規制情報について、固有の製品識別子及び施設識別子や情報交換のための一般的に合意されたデータ標準の使用など、調和のとれた構造化・標準化された電子フォーマットへの移行で可能となる。
  • 改善され、一貫性を有し、迅速な規制当局の意思決定。これは、医薬品製造施設の他、医薬品の製造、品質及びリスクマネジメント能力のすべての重要要素に関するもので、安全な知識管理システムにおいて参加する複数の規制当局の権限のあるユーザーが寄与し、利用可能な秘密情報及び非秘密情報を、規制当局間で安全に共有することによって促進される。
  • 例えば、PACの管理における産業界と規制当局双方の能力の改善が挙げられるが、現在、コモン・テクニカル・ドキュメント(CTD)の標準的なフォーマットを使用しているすべての規制当局に対して、ゆくゆくは一つの製造販売承認申請(MAA)とそれに関連するPACで共通データセットの同時申請を行う可能性を支援し、最終的に規制当局の負担を軽減する枠組みを構築する。
  • 規制当局間の相互リライアンスのさらなる強化。これは、スポンサーに対する具体的なデータの期待事項や規制当局間の審査基準を調和させる取組みによって促進され、他の規制当局の評価や関連する決定の同等性を確かなものにする。
  • 同様に、調査報告書の構造化されたデータフォーマットの仕様を通じて、製造施設の監督に関する規制当局間の相互リライアンスの強化も可能となる。
  • リスクベースのPACに対するPQSの有効性を評価する包括的なツールの開発により、調査チームは調和された枠組みの下で製造業者PQSの有効性を評価し、この情報を審査担当者に伝え、製品ライフサイクルマネジメントを促進することが可能になる(ICH Q12参照)。

 産業界のステークホルダーは、PQ KMSの概念の恩恵を受けるために、管理及び製品知識を確保する必要がある。規制当局のPQ KMSを開発する上で最終的な鍵を握るのは、製品及び工程知識の強化である。このような知識が製造業者の成熟した実地PQSと相まって、PQ KMSの枠組みを最大限に活用できる。さらに、規制当局のPQ KMSを確立することにより、成熟した実地PQSや医薬品ライフサイクルマネジメントに関する既存の技術・規制ガイダンス(ICH Q10[参考1]とICH Q12[参考4]にそれぞれ概説)のグローバルな実装がさらに促進される。

 本共同RPは、グローバルなPQ KMS能力の強化に向けて組織間で必要な計画・調整・情報伝達について、ICMRA、ICH、PIC/S及びIPRPがそれぞれ進むことができる具体的な次の手順に焦点を合わせている。

2. 調和作業の提案分野

 以下の項では、各組織がPQ KMSの開発支援に向けて完了する予定の調和作業に関する大まかな概要を示す。各組織の技術専門家は、その権限の範囲内で一定分野の作業を進めなければならないが、ICMRAとの定期的な連携により、全体的な戦略的方向の整合性を確保する。さらに、固有識別子の使用促進には、完了した又は継続中の作業に基づく共同アプローチが必要である。この場合、ICH、IPRP、PIC/S及びICMRAは、産業界と協力して、国際的に調和された医薬品関連の固有識別子の開発・採用・運用・管理・維持を完了するために必要な調和作業を進める。

ICH-データ項目及び標準

 ICHは、ICHガイドラインの作成を通じて、安全で有効かつ高品質な医薬品が、最もリソース効率に優れた方法で確実に開発・登録・維持されるよう取り組んでいる。ガイドラインは、規制当局及び産業界の専門家で構成されるICH作業部会が作成し、ICH総会で規制当局メンバーによって採択される。
 ICHに対して提案される作業は、主として、CTDの品質モジュールで提出されるデータ項目及びデータ標準に必要な調和のさらなる詳述又は明確化に重点を置いている。提案された作業アプローチは、取組みの余計な重複を回避し、効果的かつ効率的な方法で確実に作業が完了するために、このスペースで進行中(既存のデータフォーマットを活用)又は完了した取組みを補完することを目的としている。
 具体的には、規制当局への提出を支援するためのデータフォーマット及び基準の確立に重点を置く。現在、ICH M4Q(R2)専門家作業部会(EWG)で進行中の作業は、この機会への対処に大いに役立つ。M4Q(R2)[参考9]では、PAC、データ解析のような新たな概念、及び審査をより容易にする先進製造に対応するため、全面的に刷新した品質関連要素などをCTDに含める予定である。M4Q(R2)に関する作業の後、ICHは、品質に関する申請資料の構造化(例えば、CMC情報を構造化されたフォーマットで提出するための基準)に関する追加作業を計画している。
 ICHは、CTDの品質モジュールを用いた申請の対象となるデータ項目及びデータ標準の調和を通じて、PACに関するPQ KMSの能力をさらに向上させ、PQS評価を支援する。標準化された同一の申請書類又は品質関連書類を複数の規制当局に提出することにより、規制当局間の情報共有が大幅に促進され、共同評価が可能となり、収束を促進し、最終的にはPACの評価及び結果における規制当局間のリライアンスの向上が可能になる。

IPRP - 規制当局による評価と期待事項の整合化

 IPRPは、規制当局が相互関心のある問題について情報交換し、規制当局が協力できる会議体である。現在は複数の作業部会で構成されており、Quality Working Group(QWG)[注2]及びIdentification of Medicinal Products(IDMP)Working Group[注3]が中心となって本共同RPで提案されている調和作業を進めている。具体的には、IPRP内で提案される作業の目的は、品質評価アプローチの基準及び文書要件を検討し整合させ、規制当局間の収束を促進し、最終的にはリライアンスをもたらすことである。
 IPRP QWGは常設の規制当局のみの作業部会であり、新たに発生する重要な品質問題をはじめとする品質関連問題を内密に議論できる場である。一方、これによりICHガイドラインの実装が促進され、相互的に、QWGは必要に応じて、ICH環境内でのより広範な議論に適したトピックを特定することもできる。
 IPRPでの実施が提案される作業は、新規申請の品質評価、またPACに関連して、利用可能な調和された技術ガイドラインを考慮し(又はそれに基づいて)、参加規制当局間の規制期待事項の収束に焦点を合わせるものである。
QWGは、共通の品質評価ツールを開発し医薬品規制当局が利用できるようにすることで、原薬及び製剤の審査プロセスの効率性及び有効性を高めることを目指している。これには、品質用語の用語集の作成、共通原薬マスターファイル(ASMF)/ドラッグマスターファイル(DMF)提出書式、及び共通品質評価報告書テンプレートが含まれるが、これに限定されない。さらに、IPRPは、品質審査担当者のためのトレーニングツールやガイダンス文書を作成することで、規制当局間の品質問題の解釈の相違を減らすよう支援する。
 規制当局全体の負担を軽減し、収束を進める上で、IPRPが進めることができる別の課題はPACの領域である。QWGは、現在の状況を分析し、科学及びリスクに基づく共通の枠組みに取り組むことで、収束や共同評価、最終的には、PAC評価のリライアンス強化を経時的に促進できる。これらの取組みは、CTDの品質モジュールで提出するデータの要件の調和に関するICHの取組みによって促進される。

PIC/S - 調査

 PIC/Sは、主としてヒト又は動物用の医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)における、参加規制当局間の法的拘束力のない非公式な協力の枠組みである。PIC/Sは、GMP分野で共通の基準を作成し、調査官に教育訓練の機会を提供することにより、調査手順を世界的に調和させることを目指している。調査の調和、調査報告書テンプレート、及び固有の施設識別子の設定に関するPIC/Sの現在の取組みは、リスクに基づく焦点を導入するPQ KMSに寄与する。
 提案されるPIC/Sの作業は、PQSに注視しながら調査関連の要素に注力することである。本稿では、規制当局によるPACの審査における、PQSの有効性評価の重要性を指摘している。PACの審査及び評価には、調査当局と医薬品品質審査担当者の両方の専門知識を伴う側面があるが、PIC/Sの調査チームとリーダーシップは、グローバルPQ KMS能力のいくつかの重要側面の開発において極めて重要であると期待される。
 PIC/Sが検討する調和作業には以下が含まれるが、これらに限定されない。

  • 構造化された電子形式(施設情報の将来的な仮想レポジトリを想定)に取り込まれる、販売申請で提出済/提出中の主要な施設属性の特定
  • 調査報告書用の構造化されたデータフォーマットの仕様(レギュラトリー・リライアンス及びリスク/解析ベースの監視を容易にするため)
  • 調査官向けPQS評価のためのさらなるツールとテンプレート
  • 関連するPIC/S Inspectorates Academy(PIA)トレーニングモジュールの作成と発行
  • PIC/S当局から提供されたGMP調査情報の活用とリライアンスの促進

 PIC/Sは、効果的なPQSの運用を確実なものとする、他の重要要素を評価するためのアプローチやツールを強化する機会を検討し、追求する。他の主要ステークホルダーと協力して、リスクベースのPACに対するPQSの有効性を評価する包括的なツールを開発することで、すべての調査チームは調和された枠組みの下で完全なPQSの有効性を評価することが可能となる。これは、産業界の現状に関する情報や知識の調査官間での共有をさらに進め、規制対象企業におけるPQSの健全性を審査担当者に提供し、継続中の製品ライフサイクルマネジメントの監視を支援する実用的な手段となる。

組織横断的な協力 - 固有識別子

 規制当局は現在、収集した情報を最大限に活用する能力に限界がある。国や地域の識別子を使用する当局もあるが、製造施設、医薬品、物質(ISO IDMP 11238に準拠)、製造販売承認申請、及び/又は製造販売承認申請ホルダーに共通し、かつ相互運用可能な固有識別子は、現在のところ利用できない。また、国際的に合意された用語(例えば、MedDRA)を用いて、共通の基準を採用する必要がある。固有識別子の開発には相当な取組みがなされており、PIC/Sによる固有の施設識別名(UFI:Unique Facility Identifier)の公表に加えて、International Organization for Standardization for the Identification of Medicinal Products(ISO-IDMP)の取組みやこれらの要素の一部に関するコーディング規約などがある。
 ICMRA PQ KMS作業部会は、新たなサブ作業部会を設立し、現在の基準の状況、その実装及び新たな基準の潜在的必要性を検討し、完了済の作業に基づく医薬品関連の国際的に調和された固有識別子の開発・採用・運用・管理・維持に向けたアプローチの概要をまとめる場とすることを提案する。新たなICMRA PQ KMSサブ作業部会が実施するこの後続作業には、ICH M2 Electronic Standards Working Group、ICH QDG(Quality Discussion Group)、IPRP IDMP Working Group、PIC/S Working Group on UFIなどの継続中の取組み、及びWHOなどのその他の関連専門情報などを考慮し、関連する技術専門家が参加する。

3. PQ KMS関連ワークストリームの調整

 ICMRA PQ KMS作業部会は、ICMRA PQ KMSグループとともに、またICH、PIC/S及びIPRP内(以下、4組織という)で実施されるさまざまなワークストリームについて、組織横断的な調整を行うことができる。各組織は、本稿で概説されているコンセプトに基づいて、複数年にわたる作業計画の作成に努める。各作業計画では、各組織が協調的かつ優先順位付けして取り組む具体的な調和又は収束のトピック/プロジェクトを特定し、今後5年間に開始すべき作業に焦点を当てる。

  • 特定された各トピックについて、組織は開始予定時期(例:2023年から2027年の第1四半期、第2四半期、第3四半期又は第4四半期)を明確にし、同様に終了目標時期を示す。
  • 4組織が協力して、役割分担したトピック(例:固有の施設識別子の実装、PACに関して調査所見やPQSの健全性に関するその他の尺度が規制の柔軟性にどのように影響を及ぼすかを明確化し、拡大させる)の調和された実装を共同で計画する。
  • ICMRA PQ KMS作業部会は、4組織の作業計画の作成を促進し、その後、個別の作業計画を共同見解と共通ロードマップに統合するためのテンプレートを提供することができる。統合された作業計画により、各組織内での作業の進め方における優先順位付けと順序付けをさらに改善することができる。
  • ICMRA PQ KMS作業部会は、ICMRA全体会議に最新報告書を提供する。また、ICH、PIC/S及びIPRPとの定期的な連携に加え、要求に応じて、予定されているPQ KMS作業部会会合において、必要に応じてICMRAサミット会合のトピックを提案する。
  • PQ KMS作業部会は、少なくとも年1回、産業界及びその他の外部ステークホルダーと公開会議の開催し、進行中の作業を提示・協議し、今後の計画を精査し、ステークホルダーからの情報収集を目指す。これは、非営利団体主催の国際会議と併せて行う場合もある。
  • 4組織が協力して、PQ KMS作業部会が主導する年次レビューを実施し、必要に応じてステークホルダーからの情報を反映させて取り入れ、これまでの経験と進歩に基づいて、作業計画に対する更新を収集する。

4. 今後の検討事項と課題

仮想リポジトリの技術プラットフォームの支援

 調和作業を実施する前に想定されるPQ KMSに対する具体的な技術的解決策を定義することは、本共同RPの範囲を超えているが、技術及びプラットフォーム戦略を開発することで、PQ KMS能力の持続的な提供を進めるための選択肢が検討できる。どのような仮想レポジトリであっても、機密保持契約や企業秘密、情報セキュリティやサイバー脅威からの保護、並びに現在の技術を活用し既存の規制当局やスポンサー/販売承認取得者のシステムとインターフェースで接続する能力を維持するために、情報や規制当局の評価への安全で管理・許可されたアクセスなどを確保する必要がある。今後の戦略では、適切な技術プラットフォームのより長期的な管理、資金調達、個人データ保護、データ完全性、及びその望ましい進化、並びに仮想情報リポジトリの短期開発及び安定のある継続的な運用性能の必要性にも取り組む。

法的及び規制上の検討事項

 より長期のロードマップを前進させ、具体化する作業の一環として、地域によって違いが生じる可能性があり、調査・分析を深める必要のある領域が少なくとも2つある。例えば、安全な仮想レポジトリに含めることを提案されている情報の一部には、様々な地域の厳格な法的要件及び/又は規制要件に従い公開される、商業的秘密データや企業秘密が含まれる。その他の地域の、情報の保管やアクセスに関する法的及び規制要件には注意が必要である。こうした課題や提案された選択肢又は解決策のさらなる分析が、技術及びプラットフォーム戦略には含まれる。例えば、PAC申請に関する現行の地域の法的及び規制要件は様々であり、規制当局が収束を目的として申請要件及び関連する評価において調和を達成できる程度には、限界がある。最終的に、規制当局によるPACの評価に対するリライアンスを時間と共に促進するためには、特定の機関(IPRPなど)が実施する調和作業には、将来の収束に向けた分析、考察及び計画が必要となる。

5. 能力-パイロット戦略

 パイロットとは、規制情報の共有及び協力を拡大する知識管理システムの能力に関する試験で(特定の製品やスポンサー及び参加規制当局に対する、CMC又はPAC審査を伴うより狭義に定義された事例を通じて行う)、PQ KMS能力の開発を進める上で複数の目的を果たす。これには以下が含まれる。

  • 規制当局による評価及び調査の収束に適しており、かつ相違がある領域を特定・伝達
  • 評価を裏付けるのに必要最低限な技術プラットフォームの要素となる可能性のあるもの、及び現在の法的パラメータが障壁となるかもしれないが時間の経過とともに対処可能な領域のさらなる明確化
  • 複数の地域におけるほぼ同時の審査及び承認の可能性を目指して、複数の規制当局に、同一の製品及び製造施設に関する同一のCMC情報を提出及び評価する経験を産業界に提供
  • 「早期成功」が最も達成可能と思われる製品の種類を特定
  • 稼働可能なPQ KMS能力及び最大の成果を挙げるための規制面での協調への取組み方について、規制当局と産業界の双方の信頼の強化

 また、ICMRA PQ KMS作業部会は、COVID-19治療薬及びワクチン[参考10]の製造能力向上に関する2021年のICMRA産業ワークショップ以降、こうしたパイロットの取組みの監督も行っている。2つのパイロットの取組みは、それぞれ、共同CMC PAC評価及び共同ハイブリッド調査[参考11]に焦点を置いている。現在、そして今後起こりうる新たなパイロットプロジェクトは、最終的にPQ KMS能力によって裏付けられる、将来の国際的な規制の収束に向けた出発点となる。

6. ステークホルダーへの働きかけと参画の戦略

 提案されたグローバルPQ KMS能力は、規制当局及び産業界にとって遠大な利益をもたらすことが予想される。したがって、PQ KMS能力と関連する利益を実現するためには、関連するすべての外部ステークホルダーの参画が重要となる。ICMRA年次総会の周辺で行われる公開ワークショップ及び/又は追加の公開ステークホルダーセッションの計画を通じて、ステークホルダーへの定期的な働きかけと参画の場が見込まれている。さらに、PQ KMS能力に寄与しているICMRA及び規制機関は、それぞれの組織が手がける調和や収束の作業に対して関心のある特定の地域社会やその他の関連するステークホルダーとの的を絞ったコミュニケーションも求めている場合がある。そうした参画計画は、各組織の複数年の作業計画に組み込まれるべきである。
 

結論

 本共同RPでは、高品質な医薬品の利用可能性の向上を最終目標とした、グローバルPQ KMSの開発を推進するために、国際的な規制収束・調和に関する組織を主導するという共通のビジョンと大志について概説する。また、相乗効果を高め、作業の重複を避けるために、随時取組みの調整を要するICH、PIC/S、ICMRA及びIPRPにおいて、個々に、又は共同で実施される作業の大まかな構想を提供する。これは、継続的な協力、定期的な参画、及び組織を越え、主要ステークホルダーと共同で獲得した教訓や作業の進歩に関する情報の共有を通じて達成される。



[注1] WHOは「レギュラトリー・リライアンス」について、ある地域の規制当局が自身の決定を下す際に、他の規制当局や信頼できる機関が実施した評価、もしくはその他の信頼できる情報を考慮に入れ、重要視して意思決定する行動のことである、と定義しており、本RPではその定義を使用している。
[注2] https://www.iprp.global/working-group/quality
[注3] https://www.iprp.global/working-group/identification-medicinal-products

参考文献

[参考1] ICH(2008)「ICH調和3極ガイドライン 医薬品品質システム Q10」
https://database.ich.org/sites/default/files/Q10%20Guideline.pdf [343.37KB]にて入手可能

[参考2] ICH(2009)「ICH調和3極ガイドライン 製剤開発 Q8(R2)」
https://database.ich.org/sites/default/files/Q8%28R2%29%20Guideline.pdf [563.16KB]にて入手可能

[参考3] ICH(2021)「ICH調和3極ガイドライン 品質リスクマネジメントQ9(R1)」
https://database.ich.org/sites/default/files/ICH_Q9-R1_Document_Step2_Guideline_2021_1118.pdf [575.29KB]にて入手可能

[参考4] ICH(2019)「ICH調和ガイドライン 医薬品のライフサイクルマネジメントにおける技術上及び規制上の考え方に関するガイドライン Q12」
https://database.ich.org/sites/default/files/Q12_Guideline_Step4_2019_1119.pdf [361.40KB]にて入手可能

[参考5] PIC/S(2018)「GMP Inspection Reliance」
https://picscheme.org/docview/2475にて入手可能

[参考6] ICMRA(2021)「グローバルな医薬品品質知識管理:レギュラトリー・リライアンスとアジリティの向上」
https://www.icmra.info/drupal/strategicinitatives/pqkms/statementにて入手可能

[参考7] WHO(2021)「55th report of the WHO Expert Committee on Specifications for Pharmaceutical Preparations」
TRS 1033 - 55th report of the WHO Expert Committee on Specifications for Pharmaceutical Preparationsにて入手可能

[参考8] ICMRA(2022)「PQ KMS Working Group Overview」
https://www.icmra.info/drupal/sites/default/files/2022-07/pqkms_wg_overview.pdf [272.45KB]にて入手可能

[参考9] ICH(2021)「M4Q(R2) Common Technical Document on Quality Guideline」
https://database.ich.org/sites/default/files/ICH_M4Q-R2_ConceptPaper_Endorsed_2021_1115.pdf [107.65KB]にて入手可能

[参考10] ICMRA(2021)「Enabling Manufacturing Capacity in the COVID-19 Pandemic」
https://www.icmra.info/drupal/sites/default/files/2021-10/covid-19_manufacturing_capacity_ws_report.pdf [407.74KB]にて入手可能

[参考11] ICMRA(2022)「Pilot Program for Collaborative Assessment of COVID-19 Related CMC Post-Approval Changes and Collaborative Hybrid Inspections」
https://www.icmra.info/drupal/en/strategicinitatives/pqkmsにて入手可能


ICMRA-ICH-PIC/S-IPRP共同リフレクションペーパー