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国際関係業務

COVID-19ワクチン開発に関する世界規制当局ワークショップ

ICMRA

薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)の下で、医薬品規制当局、世界保健機関(WHO)及び欧州委員会(EC)から専門家を招集しバーチャル会合を開催

2020年3月18日

 
 

SARS-CoV-2のパンデミックにより、これまでに全世界での感染者は20万人を超えており、グローバルヘルスにおける尋常でない課題となっている。ワクチンメーカーや他の企業は、RNA、DNA、タンパク質及びウイルスベクターワクチン等の多様な技術やプラットフォームを用いてSARS-CoV-2ワクチン候補を開発中である。SARS-CoV-2の感染が急速に拡大する中、SARS-CoV-2ワクチン候補の開発スケジュールについては、第I相臨床試験に迅速に移行するために加速化が求められている。したがって、SARS-CoV-2ワクチンの臨床開発プログラムにおいて求められる非臨床データや予備的臨床データの種類や範囲は、この難題に立ち向かうワクチンのアンメットメディカルニーズに対する総合的なリスクベネフィット評価を重視して検討すべきである。
 

2020年3月18日に開催された世界規制当局の初ワークショップでは、17カ国から20機関を超える医薬品規制当局の代表者、並びにWHO及びECの専門家が参集し、SARS-CoV-2ワクチン候補の開発における規制上の考慮事項及びヒト初回投与(ファーストインヒューマン:FIH)試験を開始するために求められる非臨床試験データについて協議した。協議では、欧州医薬品庁(EMA)と米国食品医薬品局(FDA)が共同議長を務めた。

会合の要点

本会合では、2件のプレゼンテーション、及び世界の規制当局の代表者間でのラウンドテーブル・ディスカッションが実施された。
 

主要トピック:
  • FIH試験を開始するために求められる非臨床試験データ
  • FIH試験開始前におけるSARS-CoV-2ワクチンにより誘発される疾患増悪の理論的リスクを見積もる必要性

以下に、参加した世界規制当局間で概ね合意した見解を示す。

FIH試験を開始するために求められる非臨床試験データ
  • FIH試験を開始するために求められる非臨床試験データの範囲は、ワクチンの構成成分、当該構成成分について得られている根拠データ及びこれに類似した製品におけるデータによって決まる。
  • SARS-CoV-2ワクチンの開発を加速するために、同じプラットフォーム技術について集積されている知見を活用することを検討するべきである。
  • 既承認ワクチン又は治験中のワクチンの製造に用いられているプラットフォーム技術について特性が十分に明らかにされている場合、同じプラットフォームを利用した他の製品における毒性に関するデータ(例:反復毒性試験や生体内分布試験データ)や臨床データを、SARS-CoV-2ワクチン候補におけるFIH試験開始の根拠データとして利用することは可能である。
  • ワクチン製造者は、FIH試験を開始する前に毒性試験等の特定の非臨床試験を実施する必要がないと考える場合には、データに基づいた合理的な根拠を提示しなければならない。
  • FIH試験の開始前には、SARS-CoV-2ワクチンの構成成分の安全性を裏付けるために、CMC(品質及び製造管理)の特性が十分に明らかにされていなければならない。
  • すべてのSARS-CoV-2ワクチン候補について、動物試験データを入手し、当該ワクチンにより惹起される免疫反応の特徴を明らかにすることが必要である。
  • FIH試験を開始する前にSARS-CoV-2ワクチン候補に関する有効性を動物感染モデルで実証する必要はない。
FIH試験開始前におけるSARS-CoV-2ワクチンにより誘発される疾患増悪の理論的リスクの見積り
  • 本会合の参加者は、現在のパンデミックを考慮し、SARS-CoV-2ワクチン候補のFIH試験を早期に開始する必要性を認めた。一方で、臨床試験に参加する被験者が不当なリスクにさらされることがないよう、リスクを軽減する方策の重要性を強調した。
  • ワクチン誘発性の疾患増悪に関する懸念については、現在開発されている適切な動物モデルを含む科学技術が利用可能となった場合に当該評価が必要となるという特殊な状況にある。
  • 疾患増悪のリスクについて現在得られている知見及び理解、並びにヒトでの疾患増悪の発症を予測するための有用性については限界があるものの、動物モデルでの試験は、SARS-CoV-2ワクチン候補によるワクチン誘発性の疾患増悪の可能性を理解する上で重要と考えられる。
  • ヒト以外の霊長類の使用には限りがあるため、FIH試験開始前にすべてのSARS-CoV-2ワクチン候補においてそれらを用いた試験の実施を要求することは不可能であり、そのような要求はワクチンの臨床開発を著しく遅らせることにつながることを認識する必要がある。
  • SARS-CoV-2ワクチンのFIH試験開始にあたり、ワクチン誘発性の疾患増悪の可能性を見積もる必要性については、特定のSARS-CoV-2ワクチン候補に関連した利用できるデータ全体に基づいて検討すべきであり、それにはワクチンの構成成分、当該ワクチンにより誘発される免疫応答(例:Th1型への偏向した免疫応答及び中和抗体価)、並びにFIH臨床試験のデザインが含まれる。
  • 全員一致ではないが、参加者は全体的に以下の内容に関して合意した。
  1. ワクチン構成成分の中には、惹起される免疫応答に関する知見に基づく適切な根拠が得られているものもあり、そのような場合には、動物モデル試験によるワクチン誘発性の疾患増悪の可能性の評価を先に終えていなくても、FIH試験で適切なリスク軽減の方策が講じられることにより、FIH試験の開始は許容される。
  2. 一部のワクチンでは、FIH試験に進む前に、非臨床データ(例:動物モデルによるワクチン投与後の感染試験データ、動物モデルを用いた免疫に関する病理学的評価等)が必要な場合がある。
  3. ワクチン誘発性の疾患増悪の可能性を見積もる動物モデル試験を実施せずにFIH試験の開始が許容される場合であっても、通常、第II相及び第III相試験において多数の被験者を組み入れるまでに動物モデル試験のデータが利用可能となるよう、FIH試験と並行して当該動物モデル試験を実施することが求められる。

 

  • FIH試験において考慮されるリスク軽減の方策として、若年の健康成人の組入れ、被験者に理論上のリスクを知らせる適切なインフォームドコンセント、入念な安全性に関するフォローアップ及び頻繁なモニタリング等が挙げられる。
  • 規制当局は、世界の規制当局コミュニティーに対して継続的かつタイムリーに試験結果に関する注意を呼び掛けるための、動物モデル試験及び臨床試験に関するデータを共有する仕組みを構築する必要性を表明した。


ICMRA Press release
ICMRA Summary report