
本和訳は英語が正文であり、あくまでも参考訳です。齟齬がある場合には英語が優先します。
2024年11月26日付版
序文
COVID-19のパンデミックでは、規制当局、医療従事者などによる意思決定を支援するために、信頼性の高いエビデンスを迅速かつ効率的に作成する必要性が強調された。実用的なエビデンスを提供した臨床試験の注目すべき成功例がいくつかある一方で、パンデミックの間に実施された臨床試験のほとんどは、関連するリサーチクエスチョンに答えるためのデザインという点で不十分であり、実用的な結果を生み出すことができなかった。共有フレームワークの中で複数の介入を評価するという特徴を持つプラットフォーム試験と、そのデザインに組み込まれた適応性(アダプタビリティ)は、特定された課題の多くに対処するための効果的な解決策となりうる。
規制当局は、パンデミックによって引き起こされた公衆衛生上の必要性と緊急性を理解し、信頼できるエビデンスを得るための優れた臨床試験デザインと実施を奨励した。不適切にデザインされた、あるいは実施された臨床試験は、研究資源の浪費を招く可能性があり、最も重要なこととして、危機的な時期に参加者の努力を無駄にしてしまう可能性がある。また、このパンデミックでは、規制上のアプローチと対応能力に関するグローバルな差異が浮き彫りにされた。パンデミックから得られた重要な教訓の一つは、規制上の対応能力を拡大し、規制上のアプローチに関するコミュニケーションと調和を強化する必要性である。
本稿では、我々は国際的なプラットフォーム試験を計画し実施するための機会と課題を論じる。また、効率的で信頼性の高いプラットフォーム試験を促進する規制上の観点に注目することを目的として、様々な認識と考慮事項についても議論する。試験結果の信頼性を維持するとともに、参加者の安全性を確保することに焦点を当てる。
本稿には3つの主要なセクションがある:
- 試験のデザインと実施に関する考慮事項。これには、パンデミック期間中にプラットフォーム試験を実施する際に考慮する必要のある実施計画の要素(特定のデザイン要素を含む)の策定など、試験の主要な特性に関する議論が含まれる;
- 特定の認識されている障壁への対処や成功のための手段を含む、規制上の考慮事項;
- COVID-19パンデミックから得られた教訓についての簡潔な議論。
本稿の読者には、公衆衛生上の緊急事態に直面している国内および国際的な規制当局、ならびに臨床試験の計画および実施に関わるその他のステークホルダーが含まれる。本稿がまた、公衆衛生上の緊急事態におけるプラットフォーム臨床試験の迅速な確立と効率的な実施を促進し、公衆衛生上の意思決定のための強固なエビデンスを提供することを、我々は期待する。
試験デザインに関する一般的な考察
プラットフォーム試験にはいくつかの臨床試験デザイン上の特徴があり、予め定められた計画に基づき異なる時期に異なる治験薬がプラットフォームに「参加」および「離脱」することで、複数の治験薬を持続的に、場合によっては異なる疾患/状態において評価することが可能である。
公衆衛生上の緊急事態時には、プラットフォーム試験を緊急事態の進展に対応した効率的な枠組みとして用いることができ、組織的かつ安定した方法で公衆衛生に関連する複数の問題を調査できる。また、(初回またはその後の)販売承認/認可に向けた規制当局への提出資料のための、安全性・有効性に関するデータも収集できる。例えば、そのような公衆衛生上の緊急事態を引き起こす、異なる菌株、または病原体の新たな変異株(emerging variants)に対する治療の評価は、プラットフォーム試験において様々な方法で取り組むことができ、このようなデザインは、別の群または臨床試験による治療の評価よりも好ましい可能性がある。
評価対象となる介入は、単一の治験薬と併用療法の両方を包含することがあり、また、それらの比較の具体的なデザイン(コアプロトコルまたはサブプロトコルに記載)により、ベネフィットとリスクの評価に必要な範囲とレベル(例えば、薬物動態、薬力学、疾患経過の早期と後期の両方の臨床エンドポイント)で、データを収集し、治療効果を分離することができる可能性がある。
公衆衛生上の緊急事態において、予防または治療薬の安全性・有効性を確立する上でのプラットフォーム試験のさらなる利点は、これらの選択肢を効率的に臨床ケアに組み込むことができることであろう。
臨床試験は、参加者の健康と安全と試験データの妥当性を守り、関連する国際的、国内的状況に応じたガイダンスを遵守するため、医薬品規制調和国際会議(ICH)が定めた医薬品の臨床試験の実施に関する基準(Good Clinical Practice standards)を引き続き満たすべきである。さらなる教訓については、ICMRA文書「COVID-19パンデミックにおけるGCP及びGMP規制監督への遠隔アプローチに関する規制上の経験の考察」で議論されている。
試験デザインに関する具体的な考慮事項
介入の選択
プラットフォーム試験において評価の対象となる可能性のある治験薬の選択及び/又は優先順位付けのため、明確で透明性のあるメカニズム及び基準を、事前に規定することが望ましい。そのような基準は、例えば、新たに得られたデータにより示される治療の可能性、科学的妥当性またはアンメットメディカルニーズに基づくことができる。試験対象とすることを支持する十分なデータがある候補治験薬が複数ある場合には、候補薬間の優先順位付けにおいては、データが最終的に販売承認を裏付けた場合の広範な入手可能性やアクセスの可能性等の、実際的な側面を考慮に入れることが可能である。進展する知識に基づいて、新しい候補薬をプラットフォームに組み込む柔軟性が、プラットフォーム試験の成功の鍵となる可能性がある。
エンドポイント(評価項目)
公衆衛生上の緊急事態における試験では、患者にとって重要な側面の評価を可能にするよう、臨床転帰のエンドポイントを定義、または選択すべきである。これらは、真の効果が特定される可能性を高めるため、また、試験イベントが定義されている場合には、それが体系的に収集されるために、十分に正確かつ精密で、測定可能でなければならない。このような試験では、世界保健機関(WHO)または国際的なイニシアチブで定義されているようなコアアウトカムセット(COS)を、入手可能な限り追加的に記録することを考慮すべきである。公衆衛生上の緊急事態の性質に応じて、例えば新たに開発された尺度を用いるなど、以前には用いられていなかった臨床試験の新しいエンドポイントを定義する必要があるかもしれない。たとえエンドポイントが新規のものでなくても、例えば、28日目まで観察された回復するまでの時間であっても、臨床的意義と統計的検出力の両方を確実にするため、そのような主要エンドポイントの期間を慎重に選択する必要があるかもしれない。作用機序および対象患者集団、例えば疾患の重症度や特定の治療オプションが対象とする状態に基づいて、異なるエンドポイントが使用され得る。これによって決まる一般的な選択は、回復までの時間と死亡までの時間の間のエンドポイントである。プラットフォーム全体にわたって一貫性が必要であるが、医薬品がそのベネフィットを示す機会を与える柔軟性も必要である。
対象集団
治験実施計画書には、治験対象集団の明確な定義を示すべきである。満たすべき選択/除外基準が多ければ多いほど、治験対象集団はより限定され、試験結果の一般化可能性が低くなるため、より広範な集団への適用が難しくなる。相対的な治療効果を推定するためには、内部対照が必要である。
アダプテーション
公衆衛生上の緊急事態に対処するプラットフォーム試験デザインの中で一般的に採用されているアダプテーションには、治療群の開始と中止、あらかじめ決定されたランダム化の規定の修正、中間解析に基づく決定、対照と標準治療(standard of care)の更新、および進展する知識に基づく選択/除外基準の変更可能性が含まれる。
エンドポイントのアダプテーションやサンプルサイズの再推定も行われることがあり、既存の一般的に適用可能なガイダンスを考慮に入れるべきである。例えば、公衆衛生上の緊急事態のごく初期の段階では、最適な主要エンドポイントが明確に定義されていない可能性があり、複数のエンドポイントの評価を開始して、開発の後期の段階で最適なエンドポイントに焦点を合わせることもある。
デザインの実用化
可能であれば、専門知識と能力を有するネットワークは、国レベルだけでなく、国際/地域レベルでも構築されるべきである。これらのネットワークは、公衆衛生上の緊急事態に事前に対処するための、臨床試験に関する研究者、施設および専門家(方法論、倫理等)のネットワークとすることができる。このようなネットワークは、施設やスタッフの特定とトレーニング、および優先的緊急事態に対するシミュレーション/危機対応訓練の実施に有用である。可能な限り、公衆衛生上の緊急事態が発生する前に、そのようなネットワークを構築することが検討されるべきである。
可能性のある施設をできるだけ早く特定し、開始前に準備することが推奨される。そのような準備には、遠隔医療によるものを含め、トレーニング及び医療専門家の交流によるものが含まれる。治験責任医師、治験分担医師および重要な治験スタッフを事前に特定し、トレーニングを行うことにより、施設の質が向上する。
参加者を十分に集め、維持するための慎重な計画が最も重要である。公衆衛生上の緊急事態におけるニーズに合わせて、医療提供エコシステムが迅速に調整、変化しなければならないことを考慮し、試験は、試験結果の信頼性と有意義性に不可欠な活動とデータ要素に焦点を当てるべきである。適切な場合、臨床診療の一環として日常的に収集されるエンドポイントの使用を考慮すべきである。これにより、研究の実現可能性と効率性が向上する。
測定ツール
デジタル・ヘルス・ツール(DHT)は、参加者と試験スタッフの負担を軽減しつつ、試験をさらに効率化する重要な機会を提供する。将来の公衆衛生上の緊急事態に先立って適切なDHTを特定することは、これらを確実に導入し、データ収集に利用できるよう、検討されるべきである。DHTが用途に適していることを保証するために規定されるDHTのパラメータには、アプリケーション・プログラミング、アーキテクチャ、およびバリデーション基準が含まれる。
規制上の考慮事項
公衆衛生上の課題に対処するため、主要な科学的知見が、承認された介入や医療行為に迅速に反映されるには、規制当局による強化された協力が必要である。規制機能の機動性により、医薬品の迅速な開発と、審査及び監督に関する科学的基準の維持の両方を確保できる。例えば、緊急事態における患者と地域社会の関与に関する、地域に適したガイダンスに従うべきである。
極めて重要なその他の規制上の考慮事項は、承認に必要となる生成されるデータの規制上の要件に関する国際的な整合及び、その点についての開発者やスポンサーへのタイムリーなインプットの提供である。これは、できる限りの整合を確保し、生成されたデータを実用的なものにするためである。
公衆衛生上の緊急事態は、実施される様々な公衆衛生上の措置を踏まえると、特有の問題を引き起こす可能性があり、従来型の臨床試験の実施を妨げる可能性がある。従って、いくらかの規制上の機動性が、緊急時に非常に役立つ。これらは、参加者の安全を損なうことなく、治療へのアクセスを可能にすることで、スポンサー及び治験責任医師の管理負担の軽減に役立つことを実証している。十分な機動性をもってグローバルな緊急事態から生じる問題に対処可能な規制上の枠組みの整備が、明らかに不可欠である。緊急事態へのタイムリーな対応を確実にするために、機動的な規制がますます重要になっている。既存の地域法令の柔軟性、そのような柔軟性が既存の地域法令の枠組みの中で適用できるもの、とそれ以外の、既存法制の変更あるいは新たな有事立法無しには実装できないものを、区別することが重要である。前者は、時間的制約のある環境で運用する場合に重要となるかもしれない「即効性のある成功」の機会を提供する。
考慮すべき規制上の機動性の例としては、以下が挙げられる:
臨床試験申請(訳注:国内では治験届に相当)・試験後の承認申請手続きの円滑化プロセス
規制当局に情報を提出する方法には、さらなる柔軟性が考慮されるべきである。完全にバーチャルな環境での作業を容易にするため、申請や他の情報(通知、副作用報告など)の電子的な提出が現行の慣行でない場合には、それが考慮されるべきである。これには、これらの文書の電子署名を受け入れることが含まれる。あるいは、電子的に障害が生じた場合には、ハードコピー文書の提出を認めることも有用である。規制当局は、緊急事態以外の状況においても、電子申請への迅速な移行に向けて取り組むことが推奨される。
理想的には、治験実施計画書は、治験実施計画書違反や逸脱を避け、参加者の安全性を損なうことなく、治験実施計画書自体が必要な柔軟性を可能にするよう作成されるべきである。参加者をリスクにさらす治験実施計画書の重大な違反の報告は、依然として不可欠である。規制当局が他の逸脱の情報の提出を要求する場合、個別に提出するのではなく、累積された逸脱のリストを定期的に提出するか、又は提出せずに治験マスターファイルへ保管することを認めることを検討することができる。
臨床試験申請の迅速な規制審査
規制当局は、差し迫った脅威に対抗することを目的とした、臨床試験申請の審査を迅速化することの重要性を認識する。可能であれば、これらの申請を扱う専任チームを設けることが有用であり、これにより審査官は、自然歴に関する知識が進展していく特定の状況に焦点を当てることができる。
また、公衆衛生上の緊急事態への対処を目的とした試験のための、規制上の申請前相談へのアクセスを迅速化することも、考慮する必要がある。多施設共同治験の承認には複数の関係者が関与するため、厳格かつ迅速な承認プロセスを確保しつつ、重複を減らすための措置を講じる必要がある。例えば、規制当局と研究倫理審査への並行提出システムや、リスクに応じた柔軟なプロセスの採用は、関係者間の効率的な調整を確実にすることができる。
異なる臨床試験デザインの優先順位付け
適切にデザインされ計画された大規模な国内又は国際的な臨床試験は、信頼性のある結果を出す検出力を有し、データが入手可能になるにつれて治験薬を追加または削除することを可能にする。そのような試験は、タイムリーで臨床的に実用的な回答を提供する可能性がより高いため、優先されるべきである。公衆衛生上の緊急事態への対処について関連情報の提供が可能な臨床試験の推進には、公衆衛生当局や他の政府当局からの追加的な支援を求められる可能性がある。
COVID-19試験は十分に支持されていたが、先に述べたように、多くの試験では、医薬品の承認や公衆衛生上の政策の決定に必要な実用的なデータは得られなかった。ここでの教訓の1つは、試験のための調整された優先順位付けスキームの利用である。例えば、「重要な」試験を支援するための指定スキームを作成した国もある。これは、COVID-19研究の特定、資金提供、実施を迅速に行うために用いられたもので、COVID-19との戦いにおいて最も優先度が高いと考えられる臨床研究に、価値のある、限られた資源を確保するための優先順位付けプロセスが含まれていた。このようなスキームには、試験の迅速化した規制上・倫理上の審査の両方が含まれる。
同意
緊急事態において、試験参加前のインフォームド・コンセントの原則は適用される。一部の規制当局によって伝達され実装された柔軟性に基づくと、伝統的な方法に対して、同意を得るための代替的な方法、例えばe-コンセント、または証人による文書化を伴う口頭での同意が適切である場合がある。同意および状況は文書化されるべきである。利用可能な技術を使って参加者に情報提供し、同意を文書化することは、試験への参加の遅延を回避するのに役立つ可能性がある。重要なことは、インフォームド・コンセントは、生データを含む結果を、規制当局や、第三者と共有すること(例えば、既存の規制枠組みの範囲内でのメタアナリシスのため等)を見越しておくべきであるということである。
インフォームド・コンセントは継続的なプロセスであり、訪問および介入は、同意の維持および自発的な試験参加に関するやり取りの機会となる。これは、試験内で多くの治験実施計画書の変更が行われる可能性がある公衆衛生上の緊急事態におけるプラットフォーム試験において重要である。再同意の必要性は最小限に抑えられるべきではあるが、迅速な再同意のための準備はなされるべきである。
教訓
COVID-19のパンデミックへの対応から得られた重要な教訓の一つは、医薬品の開発・供給・アクセスを支援するエンドツーエンドのアプローチのため、規制当局、研究者、資金提供者、試験実施者、および関連する第三者と政府との間で、迅速かつ積極的なコミュニケーション、協働、協力、および調整を行うことの利点であった。実際、安全で有効な医薬品へのアクセスを提供するための研究の設計、承認、管理、提供に携わるすべての組織は、しばしば望まれていたもののこれまでに達成されたことはなかった形で協力した。
規制当局は、患者の安全とデータの信頼性を守りながら、治療選択肢の研究と迅速な利用を可能にするものとして機能した。世界中の規制当局は、規制の柔軟性に関するガイダンスを速やかに公表し、ロックダウンやその他の感染コントロール措置の状況下で、試験を効果的に実施できるようにした。
この迅速なガイダンスは歓迎され、単一国で実施される試験の設定と実施に非常に効果的であったが、利用可能な柔軟性は世界的に整合しておらず、多国間試験のスポンサーは、同一地域内を含め、異なる国で異なる枠組みに対応しなければならなかった。ここでの教訓は、より世界的に調和された「核となる」規制の柔軟性が、多国間試験の実施に対する潜在的な障害を減らすのに有用だったであろうということである。さらに、柔軟性のギャップ分析を行うことで、規制当局が自国の法律を批判的に評価し、より良い準備態勢のために変更を加えることが可能か否かを判断することができる。
規制当局と開発者の間の情報共有、相互交流の増加、データ要件のタイミングの柔軟性の増大、標準的な手続に比べより迅速で柔軟性のある審査のタイミングなど、意思決定の迅速化に向けて多大な努力が払われた。開発者と規制当局との間の迅速かつ継続的な協力は、治験の承認とその後の臨床使用の両方のスケジュールを改善するのに役立った。これについては、ICMRAによる「COVID-19 パンデミック時に各国規制当局が実施した規制の柔軟性/敏捷性に関する評価報告 (Report on the review of regulatory flexibilities/agilities as implemented by National Regulatory Authorities during Covid-19 pandemic)」で議論されている。しかしながら、これには開発者と規制当局の双方からの多大なコミットメントと、通常の状況には置き換えできないような、迅速で効率的な相互のやり取りが必要であった。それでもなお、ここでの教訓は、アンメットニーズに対応する、優先度が高い限られた数の医薬品について、パンデミック以外の状況で適用できる「ローリング」レビューのような規制プロセスを、奨励することかもしれない。ただしこれは「通常」審査よりもはるかに資源集約的なプロセスであることを認識した上のものである。この点は、特にプラットフォーム試験にとって関連性が高い。プラットフォーム試験では同一プラットフォーム内の異なる製品について、評価に関する多くの側面が同じである。一般的に、ある製品の試験から得られた知識は、プラットフォーム内のその後の製品の評価に引き継ぐことができるため、ローリングレビュー・プロセスは、プラットフォーム試験の評価において特に効率的である。
COVID-19試験の結果が共有され、迅速に利用可能になったことで、迅速な(条件付きの)規制当局の承認、臨床ガイダンス、実践への採用が支援された。これは、参加者の募集が効率的であり、十分な頑健なデータが迅速に作成され、規制上および政策上の意思決定を支援することができる大規模プラットフォーム試験において、特に効率的であった。学ぶべき教訓の1つは、将来の緊急事態に備えて、すべての医薬品規制当局が公衆衛生上の緊急事態に対応するため、緊急時使用または新たに得られるポジティブなデータに反応できるよう調整した承認プロセスを導入すべきであり、開発者は、審査を円滑化するようコミュニケーションのタイミングと監視をプロジェクト管理すべきであるということである。
優先試験の指定制度に関する教訓の1つは、パンデミック前の段階で国際的なネットワークを構築し、パンデミック状況下でこのような指定を受けた多国間試験の実施判断を迅速にできるようにすることである。もう1つの重要な点は、世間の認識とは異なり、規制当局による評価のタイムラインは守られていたことである。実際、一部の規制当局は、COVID-19試験の評価の作業を優先し、パンデミック期間中に、プラットフォーム試験の治験実施計画書の承認のための評価スケジュールを半分に(14暦日に)短縮した。後者は、この柔軟で実用的な作業方法を周知し期待を管理するため、規制当局のウェブサイトに掲載された。また、プラットフォーム試験における大幅な変更は、最初から試験デザインに弾力性を持たせることにより、新たな試験のための新規の治験実施計画書よりも、評価と承認がより迅速であることも学んだ。
COVID-19のパンデミック中は、試験に関するメディア報道がかつてないほど加熱し、たとえ現場の現実が反映されていなくても、一般市民に(試験の)評価が遅いと認識させたことが明らかになった。これは、ニュースサイクルが科学より先に進み、期待を高め、一般市民の「遅い」という認識を高めるリスクを伴う。重要なのは、治験実施計画書策定の早期に、規制上または科学的な助言のための会議のように、スポンサーが規制当局と連携して助言を受けるために役立つツールを配備することである。
パンデミック時には規制の柔軟性が効率的な臨床試験の実施のために不可欠であるが、こうした柔軟性が品質・安全性・有効性の低下に繋がらなかったことを強調することが重要である。規制プロセスが見直されたことにより、COVID-19試験が優先され、専任チームがより効率的かつ効果的に評価した。規制当局による試験の監督により、評価には、従来と同様の品質、安全性および有効性の評価の高い基準が確実に適用された。
結論
COVID-19のパンデミックにより、プラットフォーム試験という新たな臨床試験デザインが注目されるようになった。規制システムの適応はリアルタイムで、従来よりも短いスケジュールで、また、かつてないほどのメディアの監視の下で行われた。
この公衆衛生上の緊急事態から得られた教訓を忘れず、単にそのような試験を設定し実施した地域での共有されない経験に留めないことが重要である。次の公衆衛生上の緊急事態のため、それが世界のどこで起ころうとも、規制当局は準備を整えておく必要がある。それには、可能な限り速やかに試験を開始できるよう、プロセス、コミュニケーション・チャンネルと、そのような試験の承認方法に関する強力な枠組みが必要である。本稿では、使用可能な臨床試験デザイン要素と、想定される障壁に対する規制上の解決策について記述している。
この経験は、将来、次のパンデミックが起こる際、安全で有効な医薬品の使用を可能な限り早くするため、スポンサー、規制当局、試験実施者および試験の参加者が、迅速・効率的・適切な試験を計画、デザインし実行する用意と意欲があり、準備ができているという未来図を示している。
本稿は、教訓の一部を要約し、それが可能となる方法を規制上の観点から議論するのみならず、より良く効率的な試験に向けた、国際的な規制当局のコミットメントにも焦点を当てている。
