
本和訳は英語が正文であり、あくまでも参考訳です。齟齬がある場合には英語が優先します。
2026年10月1日付
このステートメントは、ヒト用医薬品の規制試験(regulatory testing)に関して、ICMRA参加当局の共通した見解を反映し、国際的に既に進められている取組みを強調するとともに、動物を使用しない試験法やアプローチ(non-animal-based methods or approaches)に対する規制上の受容を目指す継続的な動きを支援するものである。この文書の主な目的は、科学的に妥当な代替法の開発と実装を、可能な場合には推進し、それを国際的に整合性を維持しながら進めることを、奨励することである。
1 序論
歴史的に、医薬品の開発および品質管理試験は、概念実証(proof-of-concept)や作用機序、安全性、品質を評価するため、生きた動物の使用を必要としてきた。しかし、いくつかの国や地域では、規制枠組みを見直し、in vivo試験を必要としない科学的に妥当な方法の受入れを促進している。また、いくつかの地域では、適切な代替法がない場合にのみ動物使用が認められている(注1)。同様に、世界保健機関(WHO)等の国際機関でも、規制ガイドラインを更新し、医薬品開発試験および品質管理/ロットリリース試験で使用する非動物試験の開発および導入を促進している。これらの動物試験代替法には、物理化学的または免疫化学的方法、ex vivo、in vitro(例:単純な2D細胞系、複雑な3D細胞系、生体模倣システム(microphysiological systems))およびin silico試験(例:コンピュータモデリング、AIを活用した大規模データセット分析)、およびヒト由来データの更なる利用(例:マイクロドーズ臨床試験の活用)が考えられる。
近年の科学的発展を踏まえ、ICMRAは、品質および患者安全性が適切に確保されることを前提として、医薬品試験における動物使用への規制上の依存を軽減できる可能性があると認識している(注2,3)。
ICMRAは、医薬品開発者、製造業者、規制当局および国家管理試験機関(national control laboratories)に対して、可能な限り、かつなるべく早期に、代替法または代替アプローチを継続的に促進し実装するよう呼びかける。
この呼びかけは、候補物質の初期スクリーニングおよび早期開発から、前臨床・非臨床試験、さらに承認申請・販売に至るまで、医薬品ライフサイクルのすべての段階に適用されるものである。
2.1 新薬:開発から承認まで
医薬品規制調和国際会議(ICH)が策定するような、国際的に適用されるガイダンスは、安全、有効かつ高品質な医薬品の開発および承認申請に必要な要件を定めている。そうしたガイダンスは、動物の使用に関する推奨事項(3Rs原則:試験法の置換(Replacement)、使用動物数の削減(Reduction)、苦痛の軽減(Refinement))を含めることが可能で、動物使用に基づかない方法に関する考慮事項/基準を提供できる(例えば、ICH S5)(注4)。このように、国際的に調和されたガイダンスは国や地域にわたって期待される規制上の要件の整合を確保しつつ、動物使用の削減に貢献できる。既存のICHガイドラインの改定や新たなガイドラインの策定、具体的には新たなアプローチや非動物試験の採用について期待事項を概説することによって、更なる規制調和が期待されている。
動物使用モデル利用か非動物モデル利用かに関わらず、医薬品開発およびその臨床使用を裏付ける方法は、以下に関して十分なエビデンスを提供しなければならない:
(1)製品が許容可能な安全性プロファイルを有していること、および
(2)治療的又は予防的介入が特定可能な患者集団に対して利益をもたらす可能性がある、という主張を裏付ける、信頼できる科学的エビデンスがあること。
多くの地域および国では、一般的に、ジェネリック医薬品またはバイオ後続品(バイオシミラー)など特定のクラスの医薬品については、動物試験を行う科学的根拠は無いということが、既に受け入れられている。また、薬理作用をいかなる動物種においても有意義に再現できない場合には、ヒトに対するリスク評価における動物データの有用性が限定的となるため、同様の考え方が適用されることがある。このような場合、規制要件は通常、細胞または他のin vitroアッセイや動態モデルにより裏付けられる。これらの確立された状況を総合的に考えると、科学的な妥当性が示される場合には、動物において薬理活性を示す製品も同様のアプローチをより幅広い製品に適用できる可能性があることが示唆される。
ICMRAは、生きた動物による試験を非動物試験法で置き換えるには、慎重で計画的なアプローチが必要だと認識している。全ての非動物試験は科学的妥当性を実証すべきであり、概念実証(proof-of-concept)、作用機序、または医薬品の安全性を裏付けるエビデンスとして使われる場合は、それが規制上受容可能であるかを評価する必要がある。この評価は、幅広い用途への適用を念頭に置いた独立した正式なバリデーションまたはクオリフィケーション(適格性評価)のプロセス、あるいは個別の製品ごとの承認審査・規制手続の中で行われる評価の中で実施することが可能である。
最終的に、一般毒性試験、生殖発生毒性試験、がん原性試験、さらには薬力学および薬物動態試験における動物使用を完全に廃止することが、長期な目標である。これは、漸進的・段階的、そして科学的根拠の重み付けに基づく(weight-of-evidence-based)アプローチによって達成され、国際規制当局、医薬品開発者、代替法開発者の間のオープンな対話と協力を必要とする。
ICMRAは、医薬品開発者に動物の使用を伴わない方法であって、規制上受入れ可能な方法を積極的に活用することを求める。各国医薬品規制当局は、可能な限り、これらの取組みを支援し促進すべきである。
2.2 ロットリリースのための品質管理試験
規制要件を満たす目的で用いられる動物使用を削減する上で、最大の効果は、ロットリリース試験に非動物試験を採用することで達成されるだろう(注2,5)。ICMRAは、適切にバリデーションが行われた非動物試験を、通常のロットリリース試験に実装する可能性があると認識している。さらに、これらの方法がより高い精度および判別力を有しており、場合によっては、現在の動物モデルより優れている可能性があることも認識している。
ICMRAは、各国規制当局にロットリリースのための非動物試験の開発、バリデーションおよび採用を促進するよう要請しており、ロットリリース試験のために動物使用が提案される事例については、その必要性を積極的に検証すべきと考える。In vivoロットリリース試験は、同等あるいはより優れた非動物試験法は無いことが頑健な科学的根拠によって裏付けされる場合にのみ、認められるべきである。
ICMRAはまた、ある当局はロットリリース試験に動物使用を引き続き要求し、他の当局は妥当な非動物試験への置き換えを認めている、というシナリオを避けるため、異なる国や地域間の品質試験要件に関して国際調和の必要性を強調する。
ICMRAは、規制当局に、ロットリリースに関する既存のin vivo試験要件の、適宜見直しと改訂を要請する。
3 移行時期および将来の機会
動物試験のない医薬品開発、承認審査およびロットリリースへの移行については、国・地域ごとに受容のスピードが異なるであろう。ICMRAが医薬品製造業者、開発者および規制当局に対して奨励するのは、協力してこの漸進的パラダイムシフトを可能にし、実装促進において異なる国・地域が異なる規制メカニズムに依拠する可能性があると認識しながらも、実装の調和化をできる限り支援することである。非動物試験の使用促進のため、規制当局は実現可能な場合、適切なインセンティブを考慮する必要がある。インセンティブには、例えば、規制当局との相談機会の優先対応や、科学的助言または試験法のクオリフィケーションに係る手数料の免除が挙げられる(注6,7)。この移行時期には動物試験が継続するため、複数の開発アプローチが並存することになる、つまり、新薬の製造業者はいずれかのアプローチを用いることができる(即ち、一部の動物使用を伴う開発あるいは特定の動物試験伴わない開発)。非動物試験に関する経験が蓄積することで、将来的に動物試験が不要となる可能性が期待される。評価基準および受入れ基準の整合を目的とした、グローバルな規制対話の継続が不可欠となるだろう。
動物試験を依然として置き換えあるいは撤廃できない場合、科学的に正当化される範囲で、動物使用数を削減、または試験法を改善するための取組みを引き続き行う必要がある。
1ICMRAは、この原則は、一定の範囲で動物用医薬品(VMPs)にも適用されると認識している。しかし、VMP使用者の安全性や食品中のVMP残留物に関する消費者の安全性が確保されるよう、試験戦略はヒト用医薬品の場合と異なる可能性が高い。
参考資料
(注1)Directive 2010/63/EU of the European Parliament and of the Council of 22 September 2010 on the protection of animals used for scientific purposes. Available at: https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32010L0063. Accessed February 2026.
(注2)Lilley et al.; Integrating 3Rs approaches in WHO guidelines for the batch release testing of biologicals: Responses from a survey of vaccines and biological therapeutics manufacturers. Biologicals 2023 Feb; 81:101660. doi: 10.1016/j.biologicals.2022.11.002. Accessed February 2026.
(注3)Beilmann et al., Application of new approach methodologies for nonclinical safety assessment of drug candidates, Nat Rev Drug Discov.2025 May. doi.org/10.1038/s41573-025-01182-9. Accessed February 2026.
(注4)See https://www.ich.org/page/safety-guidelines. Accessed February 2026.
(注5)Review of animal use requirements in WHO biologics guidelines. NC3Rs, NC3Rs report to WHO ECBS[1.23MB]. Accessed February 2026.
(注6)EFPIA Recommendations on Phasing Out Animal Testing for Chemical Safety Assessments. EFPIA, efpia-recommendations-on-phasing-out-animal-testing-for-chemical-safety-assessments.pdf[5.35MB]. Accessed February 2026.
(注7)Roadmap to Reducing Animal Testing in Preclinical Safety Studies. FDA, roadmap_to_reducing_animal_testing_in_preclinical_safety_studies.pdf[301.80KB]. Accessed February 2026.
